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W-DESTINY_第20話1

Last-modified: 2007-11-10 (土) 22:00:59

このままでは殺られる。ネオは自分のウィンダムより、レイのグフが上だという事実を認めていた。
技量は互角でも、グフの得意な近接戦闘を仕掛けてくる。ネオが離れて戦いたくてもグフのスピードの方が上で、相手の距離で戦わざるをえなかった。

「何時までも持たんな……他の連中は?」

ネオは友軍の様子を何とか確認する。スティングのカオスはセイバーと互角の戦い、これは予定通りだ。
そしてインパルスの姿が見えない事からアウルは水中でインパルスと交戦しているはず。
しかし、問題はマユのカラミティが足止めを喰らっている事だ。

「これは俺のミスかな」

ネオは悔しげに目の前の白いグフを睨みつける。本来ならマユを足止めしているバビは自分のウィンダム部隊が相手するはずだったが、レイがネオを抑えているためネオは指揮をする余裕が無くなっていた。
そのためウィンダムの部隊は統制を欠き、ザフト軍に押されて始めていた。

「だが、まだ手はある!JPジョーンズ聞こえるか!」

ネオはグフの4連装ビームガンをかわしながら母艦に通信を入れる。

「上は手詰まりだ!ザムザザーを盾にして前に出ろ!」

ネオはJPジョーンズが前に進み始めた事を確認しながら、目の前のグフに集中する。現在の戦況は互角。だったらステラのガイアを上手く投入すれば勝てると踏んでいた。

「艦長!例の空母が接近してきます!」

メイリンの報告を聞きタリアは驚愕する。

「空母が前に出るって何を考えてるの!?」

空母は言わば前線基地だ。味方のMSの補給や修理を行うのが主な目的で、戦闘能力は低い。
そんなものでミネルバに対抗する気だとすれば正気とは思えなかった。しかし近付いている以上、迎撃しなくてはならない。

「アーサー!迎撃の用意を!」
「了解!CIWS、トリスタン、イゾルデ起動。ランチャー1、2、全門パルシファル装填!」

アスランは黙っておこうかと思ったが、気になることがあったのでメイリンに尋ねる。

「メイリン、空母の護衛は?」
「え?……ザムザザーが付いています!」
「じゃあ、トリスタンは!」
「使えないわね……なるほど只の特攻ではなさそうね」

タリアも敵の狙いに気付いていた。おそらく接近してガイアを斬り込ませる気だろう。

「ルナマリアを呼び戻して!」

ルナマリアはスレイヤーウィップを一閃させ、ザムザザーを斬り裂く。
ザムザザーにスレイヤーウィップの相性は抜群だった。さらにはルナマリアにとって使い勝手も良い。
そのため強敵のザムザザーを既に3機も撃墜していた。

「癖になったら、どうすんの!」

だが、自分でも思っていなかった戦果に喜ぶどころか、女として鞭を振るう自分の活躍に釈然としない気分だった。

「私は健気な尽くすタイプなんだから!……多分」

少しだけ自信を失いかけた時、メイリンからの通信が入る。

『お姉ちゃん!聞こえる!?』
「聞こえてるけど、戦闘中はお姉ちゃんと呼ばないの!」
『ゴ、ゴメン!って、そんな事よりも連合の空母がミネルバに接近してきてるの!』
「空母が?」

ルナマリアは空母の特攻という馬鹿げた戦法に呆れかけたが、確かに接近してくる空母が目に入る。
2機のザムザザーに守られ、さらには甲板にガイアの姿が見えた。

『戻ってミネルバの防衛に参加して!』
「防衛たって……ザムザザーを落とせば良いんでしょ?」
『う、うん。でも強敵だからミネルバと協力して…』
「協力って、近付けたらヤバイでしょうが!」
『でもシン達は、それぞれの敵と交戦してるし、お姉ちゃんじゃ無理だし』
「バカにするな!ザムザザーなら、すでに3機撃墜してるわよ!」
『ウソ!お姉ちゃん幻覚見てるんじゃ!?』
「失礼なことを言うな!」

ルナマリアは機体をミネルバに接近してくる空母とザムザザーに向けながら、グフのスレイヤーウィップが対ザムザザーに相性が良い事を伝えようとする。

「スレイヤーウィップは相性が良いのよ」
『お姉ちゃん……そんな趣味が?』
「違う!」

だが、メイリンはルナマリアと鞭の相性が良いのだと勘違いをした。自分が否定したかった事と間違えられ、ルナマリアは激怒しながら、ザムザザーの迎撃に向かった。

「メイリン、帰ったらお仕置きしてやる!」
『ちょっと!』

ステラは、JPジョーンズの甲板上でミネルバを睨みつけていた。あの船を沈めれば勝ちだと聞いている。

「ん?」

そして、レーダーがMSが1機近付いてきている事を伝える。赤いグフ、ルナマリアだった。

「このぉぉ!」

そしてルナマリアが、ザムザザーの砲撃を交わしながらスレイヤーウィップを一閃させると、護衛のザムザザーが1機撃墜される。

「強い!」

ステラは赤いグフが強敵と悟るとビームライフルで迎撃を試みる。

「させない!」
「ガイアが……よし!」

ルナマリアはガイアが攻撃態勢に入った事を確認すると、わざとザムザザーとガイアの間に入る。

「これで……」

最初にゼクスと模擬戦をした時にやられた戦法。危険だが今やれば抜群の効果が得られるはずだと、冒険を行う。

「……このタイミング!」

ガイアが発砲する瞬間、機体を最も速く移動出来る方向、下に急降下させる。ギリギリで頭上をビームが通り過ぎ、それがザムザザーに反射されるとガイアの元へとビームが飛んでくる。

「クッ!」

ステラは間一髪で避けるが、JPジョーンズが傷付き、その隙を突いてザムザザーも撃墜されていた。

「決まった!私って凄い!」
「よくもっ!」

ガイアのビームライフルとJPジョーンズに搭載されたCIWSがルナマリアを襲う。

「あひゃ!」

ルナマリアは間一髪避けると、急いで距離を取る。

「調子に乗って撃墜されちゃ、カッコ悪すぎよね……って、あれは!?」

JPジョーンズの進路上にアビスに押されて打ち上げられる様にインパルスが浮き上がった。

「シン!」

その勢いで海上に出たアビスは背後ビーム砲バラエーナ改をインパルス放つ。
ルナマリアの目には回避不能と見えた一撃はインパルスが曲芸の様な動きで後ろを向き、背中のシールドで防がれていた。

「あぶねぇ〜!」

シンは咄嗟の機転でビームを防ぎ、声を漏らしていた。そして海上に出た事を確認した後、対艦刀からビームライフルに持ち替える。

「この前みたいには、いかねえんだよ!」

前回、水中戦を意識しすぎてビームライフルを不携帯だった失敗を教訓にし、今回は海上に出て戦う事も意識していた。
そして、海面を漂いながらビームと実弾の両方を撃てるように構えた。だが。

「後1つ足りないんだよ!」

アウルはアビスをMS形態に戻すと、ビームランスを構え海中から突撃を敢行する。

「え?」

性能差では無く機体の差。インパルスは2本の腕に武器を選択して選ぶため、同時には2種類の武器しか持てない。しかしアビスは機体に固定された装備のためビーム、実弾、そして近接武器を同時に使える。
シンはこの場合、一撃でアビスを沈めるチャンスを諦め、再びバズーカーと対艦刀を選び、海中に潜るのが正しい選択なのだが、海中が敵の得意フィールドという先入観と確実にアビスを沈めて、戦争を早く終結させたいという決意が空回りし、対艦刀に持ち替えるか迷ってしまった。

「あ?」

この一瞬の迷いがアビスという強敵相手にどれだけ大きな意味を持つか、すでに目の前までランスが迫っていた。

「シン!」

シンが回避不可能だと思ったとき、目の前のビームランスにルナマリアの出したスレイヤーウィップが巻きつきインパルスを救っていた。

「ルナ!」

シンは自分を助けた上空のルナマリアを見上げた。赤いグフが頼もしく見える。
だが、その時、シンの目の前で一条の光がルナマリアのグフのバックパックを貫いた。

「きゃあ!」
「ルナぁ!」

ルナマリアの悲鳴がインパルス通信機に入る。ガイアの放ったビームライフルでバックパックが破壊されたグフは炎を上げながら落下し、海面に叩き付けられた。

「あ……ルナ?」

シンの目の前で海面を転がりながら叩き付けらるたびに手や足が取れていく。
やがて、転がる勢いが落ちると、そのまま沈んでいった。

「嘘だろ?」

シンの中で、何かが弾けた。

「うおぉぉぉぉぉ!」

その瞬間、シンは叫びを上げる。割れるような頭痛が襲い、体が燃えるように熱くなる。そしてマユが泣いている。
以前、カーペンタリア沖で感じた感覚。否、その時を遥かに上回る苦痛と激しい感情がシンを襲う。

「何だよ!」

その激しい感情にシンは苦しむ。それは終わる事の無い苦しみと、どうしようもない絶望。
だが、何故かすぐに解決する方法を思いつく。

――狂ってしまえばいい――

狂気に走れ。希望は持つな。ただ何も考えずに敵を倒せ。そうすれば苦痛を忘れられる。
シンは流れてくる負の感情に身を委ねた。

「ククッ!」

シンは再びビームランスで攻撃を掛けてくるアビスを見ながら、コクピット内で笑みを漏らす。
もうルナマリアの安否も気にならない。今はただ、目の前の敵をどう倒して楽しむかに専念する。

「来いよ! 遊んでやるからさ!」

シンは突き出されたランスを僅かに横に移動する事でかわすとバズーカーの銃口をアビスに当てて海面に持ち上げる。

「そらよっ!」
「なっ!」

アウルは、それが以前マユにやられたものに似てると感じたが、シンの攻撃は更に辛辣だった。
そのまま引き金を引いたのだ。

「グゥ!」

アビスは、その勢いで吹き飛ばされ、そのままJPジョーンズの甲板に落ちる。

「アウル!」

ステラがアビスに近付こうとした時、インパルスも甲板に上がってきた。

「さあ、まとめて殺してやるよ!」

「何故、浮き上がってこない?」

バビのパイロットが不審な声を上げる。先程まで交戦していたカラミティが突然海中に沈み、そのまま浮き上がってこないのだ。

「なんなの……この感じ?」

マユは頭を抑えながら、カラミティのコクピット内で呻く。
突然、変な感覚が襲い、咄嗟にカラミティのホバーを切り海中に潜った。だが、何時まで経ってもその感覚は消えない。

「何よ?……この暖かさは!」

以前ラクスを襲撃した際に、似たような感じが襲ったが、今回はその時を上回る。
前回は誰かに見られているような感じだったが、今回は包まれている感じがしている。
そして、何よりも自分を突き動かす激しい衝動に困惑していた。

――大切なものを守りたい――

もう2度と失いたくは無い。あんな思いは嫌だ。だから絶対に守ってみせる。
情念とも言える熱意がマユを突き動かす。

「大切なもの?……仲間?」

その逆らい難い衝動に従い、大切なものを考える。

――厳つい顔に似合わないエプロンをして、料理を自分に習ってくる人

――純粋な好意を剥き出しにして、抱きついてくる人

――悪態を付きながら、優しさを垣間見せる人

「……守らなくちゃ……マユの大切な仲間……」

喘ぐ様に呟くとカラミティを浮上させる。

「スティング!ステラ!アウル!絶対に守るから!」

「お姉ちゃん! お姉ちゃん返事をして!」

ミネルバのブリッジでメイリンの悲鳴じみた呼びかけが響く。ここから、ハッキリと見えたのだ。
ルナマリアのグフが撃墜されるシーンを。ブリッジを緊迫感が包む。
爆発はしなかったものの海面を跳ね上がった事でも分かるように、かなりの勢いで墜落したのだ。

『戦闘中はお姉ちゃんと呼ばないの!』

通信機から聞こえる声にメイリンは安堵の笑みを浮かべる。
それは艦長席や他のクルーにも聞こえていたが、タリアの顔は冴えなかった。彼女がアーサーに目配せをすると同時に、アスランが立ち上がってメイリンの元へと向かう。

「お姉ちゃん!良かった……怪我は無い?」
『人の話を聞かない子ね……まあ良いわ。こっちは無事。それよりザクの準備をして』
「え?」
『グフの損傷が激しすぎるのよ。だから戻ったらザクに乗り換えるから、準備をお願い』
「また出るの?自力で戻れるの?怪我は無いの?」
『一度に何回も質問するな!まあ、全部OKとだけ言っておきます!』

ルナマリアの元気な声にメイリンは安心していたが、何時の間にか横に居たアスランが通信機を奪う。

「ルナマリア、怪我は無いのか?」
『アスランさん?だ、大丈夫です!』
「そうか……自分で戻れるんだな?」
『はい!』
「わかった。整備班には伝えておくから、真っ直ぐに帰って来い」
『了解です』

メイリンが不安そうに見つめる中、アスランは整備班に通信を入れる。

「こちらブリッジだ」
『アスランさん!?どうしたんです?』

通信機からヴィーノの驚いた声が聞こえる。

「ヴィーノか、すまないが麻酔を用意しておいてくれ」
『麻酔?何かあったんですか?』
「ルナマリアが撃墜された。本人はまだやれると言い張ってザクを用意しろと言ってる」
『落ちたところ見たんですか?』
「ああ、再出撃は無理だな。本人は気付いていないようだ」

それだけで、ヴィーノは状況を理解する。戦闘の興奮状態でアドレナリンが分泌されすぎて、痛みを感じなくなったのだろう。
こうなった状態のパイロットには何を言っても無駄だ。そして強引に麻酔で眠らせ医者に見せないと、間違いなく死んでしまう。

「医療スタッフへの連絡はしておきました」

アーサーも事態に気付いていたため、先手を打ち医療スタッフに麻酔と運ばれてくるはずのルナマリアの治療の準備をさせていた。

「助かります。ヴィーノ、聞こえたな?」
『分かりました。ルナには油断させるためザクを見せます』
「頼む。やり方は任せる」
『了解しました』

通信を切るとメイリンが不安そうな顔を見せる。

「ルナマリアは大丈夫だよ。君は自分の仕事に専念してくれ」

アーサーが、そう言うとメイリンは頷いて自分の仕事に専念する。そしてアーサーは続けてアスランに謝罪を入れる。自分たちの判断の遅さを責めたのだ。

「申し訳ありません。大使に余計な心配を」
「いえ、俺の方こそ出すぎたマネをしました」

そう言ってタリアを見る。アスランは越権行為だと思っていたが、彼女は笑って首を振るだけだった。
だが、その瞳には悲しみが宿っていた。別に自分たち本スタッフより、客人扱い的なアスランが素早い反応をした事を悲しんでいる訳では無い。なにしろアスランの実力は充分に知っているのだから。
だが、それよりも平和の象徴を目指す身でありながら、戦場において誰よりも的確に判断できるアスランという男の業の深さには、複雑な思いを禁じえなかった。
そのアスランは先程からシンの戦闘を見詰めていた。敵空母の上で2機のGを相手に圧倒している。
普段の彼を明らかに上回る強さ。今のシンに何が起きているのか、この中でアスランだけが、理解していた。

(お前もなのか……シン)

それは、かつて自分も持っていた力。何かが頭の中で弾け、信じられないほどの集中力を生み出す。
アスランはシンに過去の自分を重ねた。それは何故か、ジャスティスで並み居る敵を撃破した時では無く、親友のキラと死闘を繰り広げた姿だった。

カオスの放ったビームライフルが、セイバーの装甲を掠める。それが何度もあり、セイバーのボディにはいたる所がボロボロに傷付いている。逆にカオスは無傷に近く、自分が優位に立っている事をスティングは知っていた。

「だが、落ちねえ」

しかし、だからこそ警戒を強める。相手は僅かの差で攻撃を避け、なおかつ反撃に移ってくるのだ。
少しでも集中力を切らせば、すかさず逆転されるプレッシャーを感じていた。

「このままでは、持たんか」

しかし、ゼクスの方も余裕は無くなっている。自分がここまで追い詰められている事を心の何処かで楽しみながらも、自分が負けたらカオスはミネルバに襲い掛かるだろうから絶対に負けるわけにはいかない。
それだけでは無い。そもそも自分は、何故こんな所で戦っていると言うのだと自分に気合を入れる。

「貴様は何をしている!?私の存在にまだ気付かんのか!」

聞こえはしなくても、この世界の何処かに居るであろうヒイロ・ユイに呼びかける。

「貴様に再び会うまでは……貴様をリリーナの元に戻すまでは、私は倒れる訳にはいかんのだ!」

カオスが襲い掛かってくる。ビームライフルを避け、ビームクロウを避ける。しかし完全にはかわせない装甲のいたる所が傷付き、すでにPS装甲の意味を成さない部分が出来ていた。

「ぬぅ!」

背部パーツを展開させ、威力の高いアムフォルタスでは無く、スーパーフォルティスを連射させて、カオスを牽制する。

「甘い!」

しかし、それを見逃すスティングでは無い。攻撃内容にシールドから撃ってくるCIWSと頭部のCIWSも混ざってきた。普段なら無視して構わない攻撃にダメージを受ける。

「バランサーが!」

機体がバランスを失いかけるが、ゼクスは慌てて制御して攻撃に備える。しかしカオスの攻撃が止まった。
そして、メインモニターは自分を見ていない。

「誘いか?」

だが、躊躇する余裕は無かった。罠だとしても今は隙を見逃すほどのゆとりは無いのだ。
ビームライフルを放つと、反応の遅れたカオスは右手に持ったビームライフルに被弾して失う。
ゼクスは罠の可能性が強いと思っていたが、実際は何かに気を取られていたと判断する。しかし、それはゼクスにとってチャンスを喜ぶよりスティングに裏切られた気分の方が強かった。

「これに当たるとは!戦闘中に何をしていた!」
「しまった!」

スティングの顔に狼狽が広がる。油断するつもりは無かったが、彼の目にJPジョーンズの甲板で繰り広げられる戦闘が入った。アウルとステラのピンチに気を奪われてしまったのだ。

「この代償、高く付くぞ!」

ゼクスが怒りの声を上げながら、ビームライフルを連射する。そしてスティングはビームライフルを失っていた。
確かに高い代償だったと、スティングは悔やむ。ビームライフルを失った事も、アウルとステラが気になり、集中力が低下している事も。

「このままじゃ!」

スティングは一瞬で形勢不利になってしまったが、どうしようも無いことも分かっていた。
その時、下方から巨大な閃光が上がり、セイバーの右側面を貫いていた。

「なっ!」
「ぬぉっ!」
『スティング!』

その閃光はカラミティが放ったものだった。カラミティの砲撃はセイバーの右側の大部分、右腕、右足、そして右側のスラスターの付いた武装パーツを奪っていた。

『大丈夫?』
「ああ……」

スティングはマユの態度に異変を感じたが今はそれどころでは無い。

「俺の事は良い!それよりJPジョーンズだ!アウルとステラが!」
『え?……な!』

マユの視界にJPジョーンズで行われている一方的な攻撃、ほとんど殺戮ショーに近い光景が映った。

『行ってくる!』
「頼む!」

スティングはマユを行かせると、再びセイバーに意識を戻す。

「こんなの……」

その姿は誰の目から見ても戦闘継続は不可能だった。パイロットは無事だろうが、自力で母艦に戻るのが精々だろう。
自分が、あれ程望んだ戦いだと言うのに、その決着は自分が油断し、やられかけた所を味方に救われると言う、決して望まぬ形での結末だった。

「ゼクス……」

何と言っていいか分からない。折角認められたのに今となっては掛ける言葉さえ見つからなかった。
しかし、呆然としているスティングの目の前でセイバーはシールドを外し、残った左腕にビームサーベル
を持たせるとカオスに向けて構える。

「さあ、続けるぞ!スティング」

ビームライフルを失った相手に、シールドはあまり意味を成さないと外した。これで少しはバランスがマシになる。もっとも今更多少のバランスを良くしたとしても、あまり意味は無いが、少しはサーベルを振り回しやすい。
そして、ゼクスはコクピット内で、己を詰っていた。

(決闘に夢中になって、周りが見えんとは)

スティングの散漫に怒りをぶつけたが、自分の方こそ周りが見えていなかったのだ。
スティングは仲間の危機に気を取られたのだと知った。戦場でそれは致命的な行為だが、逆に自分は周りが見えずにカラミティの不意打ちを喰らってしまったのだ。

「言わばお相子と言うやつだな」

既に勝ち目が無い事は分かっている。互角の者が戦っている時に、この損傷は致命的だった。
かつてエピオンに乗り、ヒイロのゼロに左腕を奪われた時も、あれで終わりだった。手足を失っても逆転できる可能性など万分の一も無い。
しかし、今回は決闘では無かった。戦争と言う大局のほんの一部分に過ぎないのだ。簡単に諦める訳にはいかない。情けない話だが、負けない戦いに徹するしかない。

「何をしているスティング・オークレー! 私はまだ健在だぞ!」

そしてカオスが空いている右手にビームサーベルを握る。
上空に対峙し周りを寄せ付けぬ決闘を続けていた2機は、今決着を付けようとしていた。
カオスはセイバーを討ち、仲間を助けるために。
セイバーはカオスを抑え、仲間の下へ向かわせぬために。

「ゼクス・マーキス、不本意だがテメエはここで討つ!」
「それで良い!戦士とはそうあるべきだ!」

カオスが兵装ポッドを展開する。己の最大のスピードで討ちかかるために。

「俺はアンタを心から尊敬する!」
「勝ってから言ってもらおうか!」

「落としはしたが……」

レイはビームソードでネオのウィンダムを両断したが、落下中に別の敵の攻撃を受け、そちらに対応している隙に、さらに別のウィンダムがネオを回収したのを感じていた。

「奴を追いたいところだが」

だが、ミネルバを狙う敵は、一向に怯む様子が無い。ルナマリアの離脱は確実に影響していた。

「今はミネルバを優先する!」

レイはグフの進路をミネルバに向けた。