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W-DESTINY_第26話2

Last-modified: 2007-11-10 (土) 22:04:42

カガリは、会議の席で頭を捻っていた。連合の行動が、あまりにも納得出来ない。最も自分が悩むのは何時もの事だが、ユウナや他の重臣までが首を傾げている。
先日のスエズの戦いで戦局は決まったと見ていた。後はこれ以上傷口を広げない内に停戦条約を結ぶと予測していたのだが、連合の動きを見る限り、交渉はしても交戦を続けるつもりとしか思えなかった。
「カガリ様は如何思われます?」
質問されて解る訳無いだろうと叫びたいのを堪えて、冷静に返答する。少なくとも軍事関係はカガリの数少ない得意分野だ。何しろ実戦を経験しているのだ。質問する方もそれを知っている。
「如何も何も変だな。どう考えても潮時だ。それでも抵抗するとは……」
そう言いながらウナトに目を移す。
「ウナトはコープランドをどう評価してる?」
「優秀な男です。決して自棄になる人物ではありません」
「ですが、実際にまだ抵抗しようとしてます。勝ち目などあるはずも無いのに」
その口調には連合よりのウナトを責める気持が混ざっている事をカガリは見て取った。それを諌めるためにも強めに注意をする。
「軽率な事を言うな! 勝ち目が無いなど、こちらの予測にすぎん」
「で、ですが、どう見ても…」
「全てが見えてるなど自惚れるな。現状で分かってるのは、自棄になる筈の無い男が、無謀と見える行動に出ている事だ。だったら答えは2つ……」
続きを促すようにユウナを見る。
「本当に自棄になったか、あるいは勝算があるのか……まあ、3つ目に勝算とまでは行かなくても、現状より少しでも有利に交渉するため、もう一戦やろうとしてる可能性もありますが」
「……そういう訳で3つだ。我々としては、連合の思惑を知らねばならない」
決めたつもりだったが、少し考えが甘かったと、カガリが赤面しながら答える。
「それが望ましくはありますが、分からないのを前提にオーブの対応を決める必要があるかと?」
「ユウナ?」
「すでにオーブに参戦の要求は来ています。何とか理由を付けて突っぱねてはいますが、そろそろ限界に近い……次のザフトの侵攻目的がヘブンズベースなのは明らかですし、時期的に見ても今からだとこちらの準備が間に合わない。ゆえに大軍は無理と言えますが、少しは派遣する事が可能です」
「わかってるさ。理念に固執してオーブの立場を悪くすなって事だろ。一度くらい兵を出さないと、連合各国に戦後まで恨まれかねないって事は承知してるさ」
予測の1つ目、これなら連合は敗北するだろう。ならばザフトに反感を抱かれすぎない程度に、兵を派遣して義理を果たすのが良いだろう。
2つ目の勝算がある場合、これは味方するべきだが、やはり連合に大勝されても困る。カガリ個人だけで無く、オーブを支えるコーディネーターの技術者の反発が怖い。
3つ目は、それこそ派遣すべきだ。そこで停戦交渉時に上手く立ち回ればオーブは再び中立の地位を取り戻せる。

「ん?……待てよ……」
カガリはどちらにせよ、一度は派兵するべきと考えた時、ある疑問が浮かんだ。
「ユウナ、お前は何で連合が時間稼ぎにしか見えない交渉を続けてると思う?」
「2つ目の勝算がある可能性、切り札でもあるのかもしれません。それの準備期間を稼いでる」
「兵を送るのは危険だな」
カガリは、その切り札が大量破壊兵器の可能性に思い至った。以前も基地と引き換えにサイクロプスを起動させ、味方の兵ごとザフト軍に大ダメージを与えた実績がある。
「その可能性は低いかと」
「何故だ?」
ウナトの反論にカガリは尋ねた。
「コープランド大統領が、それをするとは思えません。例えブルーコスモス盟主しろと言っても拒否する男です。何故ならサイクロプスの類は連合の、特にユーラシアに反感を買います」
「前回の件が尾を引いてるからな……ですが、それでは反論として少ないですね」
「では、ユウナはやると思うのか?」
「可能性としては低いでしょう。ですが、やった場合も考えるべきです」
「そんな事は分かりきってる。その上で私は派兵をするべきだと考えてる。危険は少ない。ならば…」
「そんな好い加減な予測で兵を派遣しろと言うのか!?」
「キサカは下がれ!」
カガリが一喝してキサカを黙らせる。だが、軍人の彼の言い分も最もだ。好い加減な予測で兵を危険な場所へと送り出すのはカガリも反対だ。
「いや、ここは軍人の意見を聞きたいと思います。貴官等はどう思う?」
ウナトがカガリを制し、この場にいキサカとトダカに尋ねる。現在のオーブではカガリやユウナが将官だが、実質は一佐の彼等が取り仕切っていた。
「我々は行けと命じられたら何処へでも行く所存です」
トダカが口火を切る。もっとも彼の場合は、そう言うだろうと予測していた。良く言えば実直、悪く言えば柔軟性が無い。指揮能力はキサカより遥かに上だが、指揮以外の任務は苦手としている。
「私は先程も申したように…」
「キサカ。父上が聞きたいと言ったのは軍人の意見だ。保護者の言葉では無いよ」
同じ事を言おうとしたキサカをユウナが苦笑しながら遮る。キサカの場合は、最大の欠点がまずカガリの保護者になろうとする事だ。
「そ、それでは……」
キサカもバツが悪そうにしながらも、自分の意見を告げる。
「そもそもの原因は我々の情報不足。ここは私に行かせてもらいたい」
「君が戦場に出て情報を集めてくるって言うの?」

その会話を聞きながら、カガリは先程のキサカの発言が自分の本心の代弁だったと気付いた。しかも、ウナトもユウナもそれを承知している態度だ。自分だけが気付かなかった。
「だが、貴様1人では行かん方がマシだな。連合に余計な怒りを持たせる」
「だが、大軍の派遣は危険ではある」
「ちなみに君は連合の思惑をどう見てるんだい?」
カガリの事に全てを優先させる欠点を持ち、2年前もカガリの汚点にしかならないゲリラ活動を手伝い、更には粗雑で口の利き方も知らず、指揮能力も低いキサカだったが、奇抜な発想と柔軟性だったら、他の誰をも上回るものがあった。それゆえにトダカと並ぶ地位にいた。
今回もウナトとユウナは、トダカでは無く、この男の発想に期待して質問していた。
「ウナト殿の言った通り、サイクロプスは無いだろう。だが、連合が諦めてない事は明白。私だったら、ヘブンズベースに意識を向かせて、プラント本国に奇襲をかける。他にもゲリラ的手段ならばあるが」
「連合が使うとは思えない……かな?」
ユウナの言葉に黙って頷く。
「だが、キサカの様な男を雇う可能性とてある」
連合が、この劣勢に大胆な人事をした可能性をウナトは指摘する。
「それこそ危険だ。私のような人間の行う作戦は戦争を泥沼化させる。だったら…」
「スト〜ップ。そこまでにしよう。いるかいないか解らん人間の事を今に考える必要は無い」
暗に暗殺をほのめかすキサカを制すると、ユウナはカガリに向き直る。
「キサカの言う通り、今のオーブは情報が足りません。ここは最小限の部隊……空母を一隻分のMSを率いて1度参戦しておきましょう」
「少数である以上は精鋭でなくては話にならん。MSは全てムラサメを」
「待てキサカ。何もそこまで……」
「サイクロプスの可能性は残っているのだ。だったら、いざと言う時に逃げ出せる兵は少しでも欲しい。私の得た情報を持って帰らせなければならん」
ムラサメの性能なら、サイクロプスの様な大量破壊兵器の牙から逃げ出せる可能性があった。
「そうだな、それにどの道、南米大陸を迂回してる暇は無いんだ。パナマから空路を行く以上はムラサメの方が良いしね」
カガリは少しは成長したつもりだったが、まだまだと自分の未熟を痛感しながら、彼等の意見に頷いた。
「わかった。ではキサカを指揮官とした部隊を…」
「待った。指揮官は佐官より将官の方が望ましい。それで、連合には随分と面子が立つし、情報も集めやすい……それにキサカが馬鹿な真似をしないように見張らないとね」
「ユ、ユウナ?」
「指揮官として僕が行く。良いよねキサカ」
ユウナの視線が反対は許さないと言ってるのを読み取り、キサカは黙って頷くしかなかった。

オーブ軍出陣の情報をジブリールから聞いたネオは、突然の事に流石に驚いていた。
オーブ軍が少数でありながら、最新鋭のMSを率い、しかも指揮官はオーブのNo.3のユウナと来れば連合の中心である大西洋連邦としても無下には出来ない相手であった。
「しかし、また何で急に?」
「同盟を締結した以上、一度は戦闘せんと不味いと考えたのだろうが……セイラン家の息子の方が指揮官と言うのがな」
「盟主が警戒していた人物ですね?」
「ああ、おそらくはコチラの事を嗅ぎ回ってくる」
「何ゆえ?」
「他所から見れば連合が、これ以上戦争を続けるのは不自然だろ?」
「なるほど……どんな切り札を隠し持っているか調べに来たと?」
「おそらくは」
「それで、教えますか?」
「デストロイはな。核融合の開発が上手く行ったと伝える。それで、例のエネルギー問題も戦争が終った後に協力していくとな」
「たしかにザフトの真似をして、技術の無条件公開は今更ですしね」
「そうだ。今回の戦争に協力してくれた国に。と言えば奴等も働かざるをえん」
「では、自動操縦システムの方は?」
「そこまでは言えんな。核融合だけで充分だ」
「承知しました。しかし、野戦では無く篭城戦で援軍とは上手いものですな」
「だから喰えん男なのだよ」
2人はユウナの考えを読んでいた。艦隊同士の戦闘の場合は、先鋒を命じられる恐れがあるが、基地防衛の戦闘では先鋒など無かった。さらに外様である以上は重要な区域は機密に当たるため任せられない。
それこそ遊撃で上手くやれば自軍の損害を最小限に食い止められる。
「で、今はどの辺りに?」
「すでにパナマ基地にオーブの空母が到着した。そこから飛行タイプのMSと輸送機で飛んでくる。
 それで私は本土へ戻る事にする。後の事は任せるがオーブには……」
ブルーコスモスが連合のバックに付いている事は公然の秘密だが、だからと言って盟主が堂々と基地を動いてるのを見られるのも芳しくなかった。
それを踏まえて、ジブリールは基地を出て、最後の指示を仄めかす。
「ええ、奴等の戦力は侮れませんからね。それに地理的にカーペンタリアに近い。今の内に飴と鞭をちらつかせて……」
「分かっているなら良い。奴等にはまだ使い道がある」
ジブリールは笑みを浮かべながらネオに後事を託しヘブンズベースを後にした。

アスランは出撃を目前に控え、オーブがヘブンズベースの援軍に到着したとの報を受けていた。
「よりによってユウナが来るなんて……」
アスランの中にはユウナに対する苦手意識があった。アスランが政治のことを考えるようになったのは、ユウナの話し相手になった事が切欠だった。その意味ではユウナはデュランダルの前のアスランの師に当たる。
しかも、アスランをプラントに送り出したのはユウナで、目的はオーブのためだったはずだ。だが、アスランはユウナの思惑を大きく離れ、オーブの不利益になる行動をしている。その後ろめたさは、決して消えてはいなかった。
「聞いた話によると、厄介な人間との事ですが?」
共にいたゼクスがユウナのことを聞いてくる。
「ああ、オーブは中立を謳ってきたが、すでに同盟を締結した以上は、一度は戦闘しないと後々まで連合に所属する国と余計な摩擦を生み出すと判断したのだろう」
「なるほど。それで自軍の被害を最小に収めるために自ら出てきたと?」
「それだけじゃ無いだろうな。オーブの立場からすれば、連合の徹底抗戦の姿勢は不可解だろう。その理由を探りたいだろうし……下手したらオーブにまで貴方方の世界の事が知られるかも」
ゼクスはアスランが逡巡もせずにオーブの立場や考えを言い当てたところから、アスランが常にオーブの事に頭を悩ませている事を見取っていた。
「なるほど……確かに厄介な相手のようですな」
「だが、俺が超えなければならない相手だ」
アスランの心を悩ませている事も含め、多少同情する気持も含めた言葉に、それを承知しているかの様な力強い返答が返ってきた。
「俺はオーブから、ユウナから、そしてカガリから逃げ出す訳にはいかない。いずれは対峙せねばならぬ相手と最初から分かっていた事だ」
「……そうですな」
「ましてや、このタイミングでシンが戻ってくるんだ。俺はアイツに無様な姿を見せたく無い。笑われるのは構わないけど、幻滅されたくは無いんだ」
「……はい」
暗にお前はどうなんだと言われているのが分かる。シンの復帰の知らせを聞き、レイとルナは張り切り始めたが、ゼクスは未だに精彩を欠いていた。その精神力ゆえに戦闘には影響しないが、周りに気を使わせる事があることを認識していた。
だが、何とかせねばと考えてはいても、脳裏には未だに自分を責めるリリーナの姿が消えなかった。
(シン、貴様はどうやって心の傷を癒せたのだ? 私はどうすれば……)
ゼクスの問いに答える者はいないまま、ミネルバはザフトの旗艦として、ヘブンズベース攻略のためにジブラルタル基地を出港した。

「荷物はそれだけかね?」
デュランダルはシンの軽装に弱冠の戸惑いを隠せなかった。
「ええ、俺の荷物も大切なものも、今は全部地球にあるんで」
だが、シンの闊達な答えに笑みを漏らす。良い顔だと心から思った。
「それにしても色紙が1枚とはな……」
「結構重要なんですよ。何しろ恩人からの頼まれごとなんです」
「サインがかね?」
「ええ、アスランさんのファンだそうです」
「なるほでね。まあ、良いさ。ところで状況は聞いてると思うが」
「はい。先程ザフト軍はジブラルタル基地を出港。現在はヘブンズベースに向けて行軍中。そして、ヘブンズベースにはオーブ軍が小規模ながら援軍に参戦する模様!」
「よろしい。君には急いで向かってもらうが、傷は大丈夫だね?」
「問題ありません!」
「デスティニーのマニュアルは?」
「全て、頭に叩き込みました!」
「よろしい。君には、ここからデスティニーで直接飛んでもらうが、衛星軌道手前でハイネの部隊からナスカ級が迎えに来る。そこで最終チェックを受けて降下してもらう。その前にデスティニーに不備が無いか自分でチェックしてくれたまえ」
「了解!」
どんな艦艇を使うより、デスティニーの方が速く行けると踏んでの選択だ。しかも移動しながら各兵装をチェックしなければならないのはシンにとって、かなり無茶なスケジュールだった。
しかし、ヘブンズベース攻撃は連合に時間を与えたくないため、少しでも急ぎたいのと、シンの体調を万全な状態にしたい理由から最も適すると思われた方法だった。
「それと君の最優先の任務は分かってるね?」
「……はい!」
シンが最も優先したいのはマユとステラの確保だが、デュランダルはそれ以上にキラを倒す事を優先しろと暗に伝えた。
シンも、それは承知している。これは言わば契約なのだ。シンがデュランダルの命令を聞く代わりにシンにとって大切な人を救ってもらえる。
何も難しく考える必要は無い。自分は自分に出来る事をするだけだった。
「それでは行きます」
「ああ。期待している」
シンはデュランダルに敬礼すると、パイロットスーツに着替えデスティニーのコクピットにその身を委ねた。

「エンジン始動……各部オールグリーン……凄い」
初めて乗る機体だと言うのに身体に馴染む。まるでMSの手足が自分のものの様に感じられる。
これほどの一体感は慣れしたんだつもりのインパルスでも味わえなかったものだ。
「ある意味、当たり前か……」
モニターに映るデュランダルに目をやる。この機体、デスティニーは彼が自分用にと作ったMSなのだ。
傷付いて戻ったシンに厳しい言葉を投げつけた。それが自分の目的のためだとは承知している。しかし、それでも、その言葉には優しさが感じられた。何も全てを打ち明けなくても、上手く言ってシンをその気にさせる事くらい、彼の話術なら楽に出来るだろうに。
それでも自分を信じたからこそ、全てを話してくれたのだろう。
「それに、あの時の感覚の事も教えてくれた……これがあればマユを感じられる」
遺伝子工学の権威でもある彼に聞いた全ての人が持つと言う力。それが、あの時の感覚の正体。
これまでは自分を振り回していたが、キラの強さの一旦は、それを自在に操れる事だと言う。
ならば、自分もそれをやらなければならない。
「英雄ってものが何なのか、俺には良く分からないけど……やれる事はやります」
少なくともデュランダルの目的はシンにとって不快なものでは無い。それは尊敬するアスランの目的でもあった。以前インド洋の基地で、自分を本当の意味で救ってくれたのはアスランだった。無力な自分でも出来る事がある。
「貴方を守ると誓った。それは今でも変わらない」
自分に出来ない以上は、それを出来る人の手助けをする。そんな当たり前で難しい事が出来るのは、側にアスランがいたからだ。しかも今度からは別の方法でも手助けできる。自分が英雄とやらになれば、上手く扱き使ってくれるだろう。
そのためにデスティニーが出来た。デスティニーの起動音を聞きながら、デュランダルからアスランに受け継がれようとしてる。彼が築くと信じている新たな世界の事を思う。
そこには一緒に支えてくれたレイやルナといったミネルバの仲間たちも笑って暮らせるはずだ。
「今から帰るから」
今やミネルバはシンの帰る場所だった。家族を失った自分を受け入れてくれた友人たち。心配かけた事を謝ろう。そして共に過す未来を勝ち取ろう。
「みんな一緒に……マユとステラも」
何より、コーディネーターとナチュラルの共存はステラと共に暮らすには必要な事でもあった。
ステラは強化されてるとは言え、ナチュラルなのだから。
それに平和にならなければマユとは暮らせない。マユとの間から失われた時間と絆を取り戻さなくてはならなかった。
「俺は、今度こそ見捨てないから」
弱かった過去の自分の罪。あの時マユを救えなかった事が全ての始まり。

彼女が今まで何をしてきたのか、どんな思いをしてきたのか、シンには薄々と分かっていた。
自分の集中力が極限まで高まった時の感覚。
その時にマユから流れてくる感情を感じ取っていた。その苦しみを少しでも癒してやりたい。
「マユがどうあっても俺は受け止めるから……だから、」
そして、自分と、ある意味ではマユと同じ傷を持つ男を思い浮かべる。罪に汚れた男。CE世界のパトリック・ザラやムルタ・アズラエルをも上回る大量虐殺を実行せんとした男。
その罪が消えるはずも、ましてや彼の性格では忘れて、第2の人生を歩むなど出来るはずも無いだろう。
だが、シンはその男を尊敬していた。今でも、否、全てを知った今でも、ああなりたいと願う目標。
その男が今、苦しんでる事が分かる。
「貴方に伝えたい事があります……隊長」
その苦しみが少しでも癒せるなら……
天井を見上げると、ゆっくりとゲートが開く。すでにデスティニーは飛び立つ準備が出来ていた。
「シン・アスカ。デスティニー征きます!」
大切な人々が待つ地球へと向け、運命の名を関するMSが、その真紅の翼から光を生み出し力強く飛び立った。