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W-Seed_運命の歌姫◆1gwURfmbQU_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:01:13

「ウルカヌスが、消えた?」
 マリーメイア・バートンによる、真のオペレーション・メテオ終結から数日、戦いの疲
れを癒すガンダムチームに、プリベンターから不可解な報告が届いていた。その日は、偶々
『残ったガンダムをどうするか?』という話し合いをしており、カトルを中心に五人の意見
が出されていたのだが……
「消えたって、おいおい俺達は今、そう言う冗談は聴きたくない気分だぜ?」
緊張が走る室内で、デュオ・マックスウェルだけが極めて明るく、明るく振る舞おうと努力し、
報告者であるプリペンダーのサリィ・ポゥに詰め寄った。
「残念だけど、私もあんな事件の後、こんな冗談を言うほど意地の悪い性格はしてないつもりよ」
「つまり、誰かにウルカヌスが強奪された、ということか?」
 いち早く冷静を取り戻したトロワ・バートンがそう質問するが、サリィは首を振り、
「その可能性も含めて調査中……というしかないわね」
「どういうことだ?」
「それが……何ともおかしな話で……」
 サリィの話によると事の起こりはこうだ。
 元々廃棄資源衛星ウルカヌスは、カトル・ラバーバー・ウィナーによるガンダム廃棄計画に
よって太陽に送られたが、今回のマリーメイア動乱によって急遽戦力を必要としたガンダムチ
ームのため、やはりカトルの手によって再び地球圏へと帰還したものである。
 ガンダムが地球へ向けて発進した後は、とりあえずプリベンターの監視宙域に放置されてい
たのだが……
「マリーメイア一件の事後処理中に、そういえばウルカヌスはどうしましょうかって、プリベ
ンターの会議で議題に上がってね。とりあえず、直してまた太陽に送るにしても、今の状態を
知りたいからってプリベンターの巡洋艦が派遣されたの」
「それで?」
「そしたら、その宙域に着いてプリベンター巡洋艦からおかしな連絡が入って……『ウルカヌ
スが無い。消えてしまっている』って。まったく、驚いたわよ」
「そんなバカな、ウルカヌスは核融合炉が破壊されてますから、動けないはずです!」
 カトルは思わず声を荒げるが、無理もない事情がある。ウルカヌスは、元々とある事件の折
に発見された、OZの秘密工場を備えた衛星であり、その中には……
「誤認の可能性は?」
 今まで黙っていたヒイロ・ユイが、静かに口を開いた。
「私たちもそう思いたかったわ。でも、その報告を寄こしたのがね、プリベンターの技術部門
を総括してくれてる、ハワードなのよ」
「ハワード? あのピースミリオンのか? アロハシャツ来てる」
 発言したデュオを始め、ガンダムチームが何度も世話になっている技術屋ハワード。確かに
彼は、そんな冗談を言うタイプではなかった。
「それで、ハワードは具体的になんて言ってるんだ?」
「…………消えたわ」
「なに!?」
「連絡後すぐ、同じ宙域でプリベンター巡洋艦が、消えた」
 室内に衝撃が走った。
「撃墜されたのか?」
 五飛が、ポツリと、呟くように言う。その無神経な言葉に、デュオは一瞬睨み付けるが、
「違うわ。言葉通り、「消えた」のよ。影も形もなく、何処かにね」
「消えた……」
「だから、もしもの時のことを考えて、みんなにも伝えておこうと思って……」
 ウルカヌス内には、今だ多くの戦力が保持されている。それは、もうこの世に、宇宙であろ
うと地球であろうと、起動させてはいけない。そう言う代物だった。

「でも、僕たちのガンダムはもう……」
 カトルはチラリとヒイロを見る。
「ゼロ以外なら応急処置だけで動かすことは可能だ」
 ヒイロの乗るウイング・ゼロは、ほぼ大破に近い状態になっていた。他の四機はまだマシ
だが、いずれも今すぐに出撃できる状態ではない。
「どうせなら完全に修理したほうが良いだろう。ウルカヌスに収容されているアレは、この
前のサーペントより強力だ」
 トロワの意見に、デュオはやれやれと首を振る。
「折角最後の戦いにするつもりだったのによぉ……いやなことは続くもんだぜ」
「再びアレを使おうとする奴、そいつは悪だ」
 五飛は、そう断言する。
「サリィさん、僕らはこの通り今すぐにでることは出来ません。その間の事は……」
 カトルは、不安そうにサリィを見るが、サリィは笑って、
「安心して、みんなのガンダムが直るまではプリベンターが何とかするわ。今もその宙域に、
プリベンターの精鋭中の精鋭を派遣したから」
「プリベンター<風>って、やつかい?」
 デュオがからかい気味にいうが、サリィは首を振り、
「いいえ違うわ。プリベンター<ローゼンリッター>………薔薇の騎士よ」

 この世界、A.C.197年以降の戦いの歴史にガンダムを始めとしたモビルスーツの存在は確認
されていない。そして、同様にモビルドールもまた、その存在を遂に確認されることはなかった。
 そう、この世界では…………

              第1話『薔薇の騎士』

 プリベンター高速宇宙船の船内、操縦席には二人の男が座っていた。一人は、プリベンター
<ローゼンリッター>こと、ロッシェ・ナトゥーノ。もう一人は、民間資源コロニーMO-構蠡阿
<技術屋>オデルバーネット。先のMO-垢OZプライズを巡る事件で知り合った二人は、事件解決
後も度々顔を合わせる中であった。
 オデルは事件後、父の代から続くエンジン開発者の道を志し、その道の専門家であるハワードに
師事しており、今回、師が巻き込まれた事件を究明するため、ロッシェに同行をしていた。
「星を見ているのか、ロッシェ?」
「あぁ、星はいい……オデル、お前はそう思わないか?」
 ロッシェは、その中世の騎士のような服装で優雅にシートへ腰掛け、星々の海を眺めていた。
オデルはそんな、ロッシェにため息をつき、
「綺麗だとは思うが、私はお前ほど詩的な人間ではないさ」
「もっと、心に余裕を持て。心配なのはわかるが……」
 ロッシェはどこからともなく取り出した薔薇を一輪、ピッと投げ、
「過度の緊迫感や緊張は、人の判断を鈍らせると言うからな。まったく、お前ら兄弟は本当に対照
的だ。弟のほうは常に物事を前向きに考えているぞ?」
「それがアイツの良いところだ。私には、マネでない……」
「そういえば、最近はどうしてるんだ?」
「色々悩んでいるよ、前はモビルスーツの修理工になるのが夢だとか言ってたんが、この時代その
手の職種はほぼないからな……それこそ、お前たちのような職種でないと」

「フッ、プリベンターとてモビルスーツ戦力はそんなに保持していない。使えるのはこの前
ゼクスが使ったトールギスと、その女が乗るトーラス、そして……」
 ククッと、ロッシェは笑う。
「我が愛機だけだ」

 それから暫くして、プリベンター高速宇宙船は、問題のウルカヌス消失宙域まで来ていた。
そこは本当に何もなかった。周辺にコロニーはないし、衛星もない。だからこそ、カトルは
ウルカヌスをここに放置したのだが……
「……モビルスーツで出よう。万が一のこともある、このまま近づくのは危険だ」
「大丈夫か?」
「私が人形風情に後れを取るとでも?」
 不敵に笑い、ロッシェは後部モビルスーツ格納庫に向かった。そこには、前述のロッシェの
愛機が格納されている。
 リーオーをベースにカスタム化されたその機体は、頭部は西洋の兜のように角を生やし、肩
からはマントを纏い、特異な形のビームサーベルを腰に下げる、騎士であるロッシェの意向を
忠実に再現された機体となっていた。そして、その名は……
「ロッシェ・ナトゥーノ、レオス、出るぞ!」
 ハッチが開き、レオスはマントをはためかせながら宇宙へと飛び出した。

「付近に熱反応無し……レーダーにも、モニターにも衛星らしきものは発見できず、か。
レディ・アンから調査の依頼をされたときは絵空事を言うと思っていたが……」
『どうだロッシェ? こちらでは何も確認できないが』
「こちらもだ。もう少し中心部に行ってみる」
 ロッシェは、機体を動かし中心部へと進んでゆく。その後をゆっくりと、周囲の警戒をしな
がら付いてくる宇宙船。
「なんというのだったかな、こういうのを」
『なんだ?』
「私が以前、地上のローフフェラ財団本部にある図書室で、東洋の書物を読んでいたときだ。
東洋ではこんな風に突然ものが消えることに対し、面白い表現をしていた」
『ほう?』
「そう確か……神隠し、とか言ったか」
 その時、突然機体のモニターに異常が起きた。それまで映されていた映像が全て消え、けた
たましいノイズ塗れになった。
「なにっ、これは……」
 機体を動かそうと操作するが、一切受け付けなくなっている。
「オデル! オデル! くそっ、通信も出来ないのか!」
 呼びかけても、宇宙船との通信は遮断され、一向に繋がる気配がない。レオスは行動不能状
態になっていた。
「な、に?」
 それだけではない。今までノイズにまみれたモニターが、突如、白い光を映し出し、輝き始
めていた。
「これは……なんだ、なんだというのだ!?」

 そして、ロッシェ・ナトゥーノは、愛機レオスと共に、『この世界』から消えた。

 C.E73年、10月3日。
 100年単位安定軌道にあるはずだった、ユニウス・セブンが突如地球に向かって動き出
した。これは、現プラント政権に反感を持つ、ザフトの脱走兵によって編成された部隊が、
ナチュラルを殲滅せんとし行った、史上空前の規模のテロ行為だった。
 そして、今、ユニウス・セブンではテロリストとザフト軍による死闘が行われいた。
「我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!」
 部隊の隊長であるサトーが叫びながら、アスラン・ザラの乗るザクへと斬りかかった。
「娘?」
 アスランは困惑しつつ、シールドで受けきる。
「此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか! 貴様等は!」
「何を!」
「軟弱なクラインの後継者どもに騙されて、ザフトは変わってしまった! 何故気付かぬか
ッ!」
「くっ!」
 数の上ではミネルバ及び、ジュール隊がテロリストたちを圧倒していた。しかし、技量の
面では明らかに向こうが上手だった。
「こいつら……戦闘用タイプのコーディネーターかっ」
 現に、テロリストの部隊は数の差を補いながらも善戦している。このままでは、破砕作業
もままならない。
「我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきもの!」
 サトーは叫ぶと、一気に機体を上昇させていった。アスランは彼の言葉を聞き、完全に硬
直してしまっている。
 サトーの機体を中心に、テロリストに機体が集まってゆく。
『隊長、我が方の被害が無視出来ないレベルに達しました』
「…………むぅ」
 部下の報告にサトーは眉を顰める。
『このまま、玉砕覚悟で特攻をかければ、何とかなるかも知れませんが……』
「いや、我々の目的を忘れてはならん。特攻などという行為で、軽々しく命を無駄にするな。
今日のところは引くのだ」
 サトーはそう決定を下し、すぐさま撤退をはじめた。
 それを見た、ミネルバ所属のパイロット、シン・アスカは、
「逃げるのか!? くそっ、逃がすものか!」
 逃亡しようとする、テロリストに追撃を試みようと機体を動かし、
『馬鹿者ッ!!!』
「うぁっ!?」
 強烈な一喝に、硬直してしまった。
『貴様の任務は我々の支援のはずだ。今は破砕作業に従事しろっ!』
 その声の主、ジュール隊隊長イザーク・ジュールは、偶然にもアスランとサトーの接触通
信を聴いてしまい、不機嫌になっていた。彼には今だ固まったまま動けないでいるアスランの気持ちが、よく分かった。
『全機、破砕作業を進めろ。今ならまだ十分間に合う』

「やれやれ……なんとか大丈夫そうだな」
 ミネルバのブリッジにて、撤退してゆくテロリストの一団を見ていたデュランダルは安
堵のため息をついた。
「はい、このまま破砕作業が無事に進めば、地球にはほんの僅かな欠片も落ちることはないでしょう」
 こちらも同じく安心したように、タリアが笑顔を作って言った。
「フフ、このままあれの、欠片一つでも落ちていたら、ブルーコスモス辺りがうるさそう
だからな。強引に開戦と言うことも……おっと、失礼。あまり代表には気持ちのいい話で
はありませんでしたね」
 デュランダルは同じくブリッジにて、事の経過を見守っていたカガリ・ユラ・アスハに、
軽く詫びる。しかし、カガリは首を振り、
「いや、議長の仰るとおり、ブルーコスモスとはそう言う側面を持つ連中だ……何はとも
あれ、あれが地球に落ちることが無くてよかった」
 ミネルバのモニター上に、メテオブレイカーで次々に破砕されるユニウス・セブンが映
し出されている。かつての悲劇の地であり、平和を誓い合ったはずの場所が、砕かれてゆ
く。ミネルバのブリッジは、粛然とした雰囲気になった。
 暫くそれを見つめた後、デュランダルが切り出した。
「代表、私は取り急ぎプラントに戻る必要があります。落下を防ぐことは出来ましたが、
なんの発表もしないわけにはいきませんし、そしてそれは出来るだけ早いほうが良い」
「それはそうだろうな」
「ですが、代表も自国のことがおありでしょうし、すぐにでもお戻りになりたいはずです。
そこで、といってはアレですが、よろしければこのミネルバでオーブに向かっては?」
 デュランダルの突然の申し出に、カガリだけでなく、ブリッジの面々も驚きの声を上げ
るが、察していたタリアはそれを制止、
「私は別に構いません」
 っと、クルーの行動を決定づける一言を発した。
「しかし、それでは議長が?」
「いや、このミネルバにはボルテールという宇宙艇がありますので、私はそれでプラントに
戻れます。しかし、オーブに戻るには大気圏から、地球に降下する必要があります。幸いこ
のミネルバは、大気圏下でも活動できる万能艦です。」
 カガリはデュランダルの破格とも言うべき申し出に考えを働かせる。デュランダルとしては、
今回の事件の当事者であるカガリに、地上で何かと便宜を図って貰いたいという思惑があるの
だろうが、カガリもまた一国の代表として、はいそうですかと行為を受け取るわけにも行かな
い、そこで……
「いや、そこまでして貰うわけにはいかない。ミネルバもまた、事後処理等で必要だろう。
わざわざ地球に降下させることはない」
「では、どうなさるのですか?」
「代わりと言ってはなんだが、破砕作業終了後、この艦を<アメノミシハラ>に向けて欲しい。
オーブ所有の宇宙ステーションだ」
「あぁ、あのロンド・ミナ・サハク氏が管理している……」
「あそこなら降下用シャトルぐらいあるだろう。あまり会いたいとは思わないが、こういう事
態だ、仕方ない」
「わかりました、そのように取りはからいます」
 デュランダルは、タリアにアイコンタクトを送り、タリアもそれを了承した。

 ボルテールに移乗したデュランダルは、長距離通信を飛ばし、プラントと連絡を取った。
「あぁ、私だ。これからそちらに戻る……あぁ、わかっている。勝手な行動を取って悪か
った。ところで、アーモリーワンの様子はどうだ?」
 アーモリーワンは、先日地球連合軍と思わしき部隊に襲撃された、プラントの軍事工廠
で戦闘によるかなりの被害を受けていた。
「私はすぐには戻れないからな……そうだ彼女を、『ラクス』を向かわせ……ほぅ、もう
行かせた? さすがに行動が早いな。あぁ、彼女が行けば動揺する市民をなだめることが
出来るだろう。私もなるべく早く戻るから、それまでよろしく頼む」
 通信を切り、デュランダルは息をついた。丁度ボルテールが発進する。
「しかし、未だに現プラント政権に不満を持つ輩もいるのか……私は、つくづく人気のな
い政治家だな、まったく」
 苦笑しながらも彼は砕かれ、破片とかしてゆくユニウス・セブンの残骸を、寂しげに見
つめていた。

 そして、その頃プラントでは、一台のシャトルが首都アプリリウスから、アーモリーワ
ンへと向かっていた。
「ねぇ〜……なんでわざわざあたしが、そんなところ行かなきゃ行けないの〜?」
 乗っているのは、議長のラクスこと、ミーア・キャンベル。
「いや、だからアーモリーワンにいる一般市民の動揺を防ぐために……」
「そんなの議長とかのお仕事でしょ〜? なんで、あたしが?」
 声が非常に似ているという理由でラクス・クラインの影武者的存在になった彼女だが、
その性格は年相応で、かつてのラクスが持っていた不思議なカリスマに欠けていた。
「あーぁ、折角ラクス様になったのに歌ったり踊ったりもしないで、被災地訪問だなん
て……意外に地味よね」
「ラクス様は、貴女ですよ。あまりそういった発言はお控え下さい」
「はいはい、わかってるわよ……」
 ミーアは不機嫌そうにシャトルの窓から外を見る。遠くに見える星が、何とも綺麗だった。
(あんな星みたいに、あたしも輝けると思ったからラクス様になったのに……これじゃ
あ、まるでただの)
 その時、シャトルに警報音が鳴り響いた。
「な、なによこれっ!?」
 ミーアのお着きが、シャトルに同乗している兵士に確認を取る。
「そ、それが、突然シャトルの前方にモビルスーツが」
「な、なんだと!」
 冗談ではない話だった。プラント付近にザフト軍以外のモビルスーツがいるとは思え
ないが、昨日の今日である。連合だったとしたら折角用意したラクスの身に危険が……
「ねぇ、どうなってるのよ?」
 ミーアが不安そうに声を上げるが、ふと、窓の外から、そのモビルスーツが目に入った。
ふわふわと、ただ宇宙に浮かぶだけのそのモビルスーツは、軍事知識に乏しいミーアであっ
ても、それがザフトのものでないことを告げていた。そして……
「あっ」
 一瞬だが、ミーアはそのモビルスーツに見とれてしまった。そのモビルスーツは、彼女が
今まで見たどんな機体よりも特異的で、優雅だった。
「……騎士?」

 これが、ミーア・キャンベルと、薔薇の騎士ロッシェ・ナトゥーノの、出会いの瞬間だった。