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W-Seed_運命の歌姫◆1gwURfmbQU_第50話

Last-modified: 2008-02-04 (月) 13:21:07

プラント首都アプリリウス郊外に、戦没者の共同墓地がある。ザフト軍によ
って作られたそれは、簡素な白い墓碑が辺り一面に並んでいる場所だった。
 墓碑銘は、それぞれ死んだ軍人の名前が刻まれているが、遺体が必ずしも埋
葬されているわけではない。戦場で死んだものは、死体が残っている方が稀な
のだ。ある者は戦艦ごと消滅し、またある者はモビルスーツと共に行方不明。
そんなことが往々にしてあるのが戦場だ。
 運良く、という言い方はおかしいかも知れないが、艦艇の中で死んだからと
いって死体が保存されるとも限らない。大きな艦なら死体の安置設備もしっか
りしているが、小型艦だとそれらの設備を事欠く場合もある。するとどうなる
か? 安置室はすぐにいっぱいとなり、医療班は仕方なく死体を焼却処理して
しまうのだ。この死者の生前の意思や、残された親族を無視した勝手な火葬は
当然非難されるが、現実的な理由が戦場という場所では優先される。衛生上の
問題で、死体は保存できないのだ。
 だから、この場所で自身の亡骸と共に眠りにつく死者ほど幸福な者はいない
とされる。死、それ自体は不幸であるが、空っぽの墓碑を訪れる親族の姿を見
れば、死んでもまだ死体がある方がマシだと思わせてしまう。
 今日ここに来た二人の生者も、そう感じたのだろう。それは男女の組み合わ
せであったが、それぞれ違う墓碑を訪れていた。ロッシェ・ナトゥーノと、ミ
ーア・キャンベルである。
 ロッシェは、この世界で恐らく唯一の同性の友人であったハイネ・ヴェステ
ンフルスの墓に訪れていた。手には、墓に添えるための花がある。
「ここはいつも、花で溢れているな」
 ハイネの墓碑の前に立ったロッシェが、少しだけ微笑んだ。そこには、生前
の彼を慕った同僚や部下、親族などが置いていったであろう花束に溢れていた。
どれだけハイネが愛されていたかを象徴するものだ。
 例え、その墓の中が空っぽであっても。
 一方で、ミーアが訪れた墓には多くの花など無かった。家族が添えたのであ
ろう僅かな花が、心ばかりある程度だ。ミーアは、持参した花束をその隣に添
える。
 ディオキアでミーアを庇って死んだ、兵士の墓だった。彼の場合は、ちゃん
と墓の中にその亡骸が埋葬されている。
「昨日、議長に呼ばれた時ね、思ったことがあるの」
 ハイネの墓から移動してきたロッシェに、ミーアは話しかける。
「議長にとって、実はプラントもザフトもただの道具に過ぎないんじゃないか
って」
 ギルバート・デュランダルは良心的な政治家である。
 少なくとも、自分が良心的になれる範囲内では。
「ディオキアで、あの人の命を救ったのは確かにアスランだった。救い、助け、
守って……でもね、議長はアスランが駆けつける前までは多くのSPに守れてい
た」
 それは、ミーアの元から去り、議長を守るために駆けつけた連中であったが、
ミーアは不思議とそのことに対しての不快感がない。
「議長はアスランを賞賛した。彼を絶賛し、称え、勲章とか報償金とか目に見
えるものを贈った。じゃあ、彼を守って死んだ人たちに対してはどうかしら?」
「少なくとも、遺族には年金が支払われると思うが」
 ロッシェが、ただ事実だけを述べる。

 
 

「それはプラントの制度によってであって、誰が議長でも同じこと。ギルバー
ト・デュランダルという人は、彼のために戦い、彼を守るために死んだ人たち
に対して、その死を悼み、涙を流したから?」
 流してなどいない。彼にとって、アスランは自分の命を救ってくれた有能な
部下だが、死んだSPなど彼を窮地に立たせた無能者であった。
「死んでしまった人に涙を流すことも出来ない人のために、あたしは何かをし
たいとは思えない……思えないの」
 例えそれが、議長と対立することになったとしても。

 
 
 

          第50話「歪んだ決意」

 
 

 地上で数々の激戦が繰り広げられ、ファントムペインがその猛威を振るう中、
宇宙は比較的平穏を保っていた。戦場が地上であるため、することがないのだ。
無論、地球衛星軌道などでは小競り合いもしばしば行われたが、ザフト宇宙軍
に関していえば以前と大差ない毎日を送っていた。ザフト地上軍からすれば何
と恵まれた環境であるかと思われるが、ザフトが地上を放棄したとき、次に戦
うのは彼ら宇宙艦隊なのだ。それを思えば、兵士たちの中には常に不安があっ
た。
 ジュール隊隊長のイザーク・ジュールは、来る宇宙での戦闘に向けて部下を
演習でしごいたりはしなかった。このところ、彼は非番や休暇の日は副官のデ
ィアッカと共に度々出掛けることが目立ち始めていた。しかし、勤務態度はい
たって真面目であったし、イザークとディアッカがアカデミー時代からの友人
関係にあることは広く知られていたことなので、二人が連れ立ってどこかに出
掛けようとそれを疑問視する者はいなかった。
 もっとも、不満を覚える者は皆無でなかったが。
「た、隊長、今度のお休みの日なんですが……」
 ジュール隊で3の実力者とされるシホ・ハーネンフースは、イザーク・ジ
ュールを尊敬している。であるからして、彼女が敬愛する上官の休みの予定を
尋ね、何もないのなら自分と一緒に出かけませんか? と、誘いたかったのも、
イザークを慕うシホには何でもない行為のはずだった。
 本人とイザーク以外は、そう思っていないのが実状であったとしても。
「悪いがすることがあってな。このところ忙しくて敵わんわ」
 あっさりと断られたシホだったが、彼女は引き際はよかった。予定があるの
なら仕方ないと、この時は素直に引いた。しかし、後日になって同僚から休み
の日に副官であるディアッカ・エルスマンとどこかに行くイザークの姿を見た
と聞いては、シホが僅かな不満を憶えるのも無理はなかった。
 この二人の微妙な関係に気付いていないのは、当人たちだけだ。そう評した
のはイザークの副官ディアッカ・エルスマンであるとされるが、元気が有り余
っている隊長に比べると、彼はこのところ気分が優れないように見える。何か
悪い病気にでもかかっているのかと部下に心配され、検査も受けた彼であった
が肉体的には軽度の疲労が溜まっているだけで、何の問題もなかった。恐らく、
精神的ストレスが実際以上の疲労感を体に与えているのだろうと医師は判断
し、ディアッカもそれに納得した。

 
 

 ディアッカには、自身の体の不調に思い当たる節があったのだ。そして、そ
れは彼とイザークが勤務時間外や休みの日に揃って姿を消すことにも関係して
いる。
 彼らは時間の許す限り、彼らが所属する組織の本拠地であるウルカヌスに赴
いて日々モビルドールの起動実験に勤しんでいるのだ。アスランが地上で予想
以上の苦難に巻き込まれる中、宇宙での活動はどんどん進んでいた。特にイザ
ークとディアッカがメリクリウスとヴァイエイトを起動させ、完全に操縦でき
るようになってからは全てが上手く進んでいた。少なくとも、イザークの目に
はそう映っている。
 実験を重ね、モビルドールを動かすことも遂に可能となった。今まで起動プ
ラグラムの構築に戸惑っていたのだが、イザークの発案で彼とディアッカ、そ
してアスランの戦闘データを分析し、最も優れたプログラムとしてモビルドー
ルに組み込ませた。コンピューターがエースパイロット三人の戦闘データを重
ね合わせ、最も強いパイロットデータを作り上げる。それがどれほど恐ろしい
ことなのか、ディアッカは反対しようとしたが、強気なイザークを前に何も言
えなくなっていた。イザークはメリクリウスに搭乗し、ゼロシステムを体感し
てから以前にも増して癇が強くなっていた。元々、プライドは高かったが今で
はそれが絶対の自信に変わっている。システムが、イザークを変えたのだ。
 それに引き替えディアッカは、近頃自分の体を侵し始めた不調が、ゼロシス
テムのせいであると確信していた。ディアッカは何故イザークがここまでシス
テムを上手く使いこなすことが出来るのか不思議でならなかった。こみ上げる
不快感と耐え難い苦痛を我慢している自分とは偉い違いだ。
 イザークは恐らくコーディネイターとしての処理能力の高さからシステムを
使いこなしているのだろうと、ディアッカは判断していた。それ以外には考え
られなかった。優れたコーディネイターであればシステムが見せる戦闘予測な
どの情報を素早く処理し、判断することが出来る。自分とイザークでは、きっ
とコーディネイターとしてのデキが違うのだ。
 ディアッカは一人で考え、一人で結論づけた。そして、これは努力で解決す
る問題なのかと悩まずにはいられなくなった。

 

 実験段階とはいえ、ビルゴの起動が成功した事実はイザークたちを喜ばせた。
後はウルカヌスの核融合炉を修復すれば良いだけだが、こちらも順調に修理が
進んでいる。
「当初の予定より大幅に遅れてはいるが、何とかここまで来られた」
 感慨深く、サトーが呟いた。アスランをリーダーとして招いてから、彼は理
想を現実に変えることも不可能ではないと思うようになっていた。彼ならば、
ウルカヌスならば出来ると。
 もっとも、いくつかの失敗もあった。地上にいるアスランとの連絡員として
派遣したヨップ・フォン・アラファスの暴走と、それによってアスランの身を
危険にさらしてしまった事実は、サトーがヨップの人格を見抜けなかったミス
によるものだ。悔やんでも悔やみきれない。アスランはヨップが口先だけの低
脳であり、自分で言うほどの能力など持ち合わせていない自己過信の激しい人
間であることをすぐに見抜いたが、サトーにはそれが出来なかった。
「私はただの武人だが、アスラン・ザラは違う」
 アスランが、一介のモビルスーツパイロット程度で収まるような器の持ち主
ではないことをサトーは理解しているつもりだった。

 
 

 そのアスランは、現在地球にてザフト軍士官として活動している。ザフト地
上軍は連敗続きで疲弊しきっているが、これもまた計画の内であった。
「アスランもそろそろ宇宙に戻ってくればいいものを。ウルカヌスの準備は整
いつつあるというのに」
 イザークの発言であるが、ディアッカはこれが意外であった。というのも、
ゼロシステムによってそのプライドの高さも増幅されたかに見えたイザークで
あったが、不思議なことに増長はしなかったのだ。例えばアスランがいないこ
とをいいことにリーダーの座を奪うとか、好き勝手な意見を出して場を乱すと
か、そういうことを一切しなかった。この事実もまた、ディアッカからみてイ
ザークがゼロシステムを使い来ないしている思わせる一因でもある。
 それがただの錯覚だったことを、ディアッカは最期まで知らなかったのだが。
「そういえば、例のブロックから見つかったパーツはどうなっている?」
 イザークが資料を手にしながら、士官の一人に尋ねた。それは数週間前に発
見された格納庫内部にあった、モビルスーツのものと思われるパーツ類のこと
である。恐らく、倉庫として使われていたのだろう。
「はっ、大半はジャンク品だったのですが、中には組み立てれば使える物があ
るとのことで技術者たちが作業をしています」
「探せば色々出てくるものだな」
 ウルカヌスは広い。広いだけなら時間さえあれば解析も可能だが、各種コン
ピュータを初めとした機器が自分たちの知っているそれと違うのだ。それがウ
ルカヌスの完全解析が出来ない原因となっている。
 例えば、ビルゴ発見当時から存在が認識されているモビルスーツコンテナが
あるのだが、未だにその中身を見ることが出来ない。パスワードロックが掛け
られており、解除が出来ないのだ。ではカッターなどを用いて無理矢理開けて
みてはどうだろうかとも言われたが、コンテナの材質はビルゴやメリクリウス
に使われている装甲材と同じ物らしく、物理的な衝撃に極めて強かった。いっ
そ、メリクリウスやヴァイエイトでこじ開けてみてはと過激な意見も出された
が、中に入っている物が何であるかわからない以上、乱暴に扱うことも危険と
判断された。爆弾の類でも入っていたら堪ったものではない。
 そんなこんなで、いつかしかコンテナの存在は認識こそされているが忘れ去
られたものになりつつあった。

 
 

 宇宙での準備が着々と進む中、地上にいる彼らのリーダー、アスラン・ザラ
は苦難の末に自らが指揮取る戦艦ミネルバをカーペンタリアへと移動させるこ
とに成功していた。なりふり構わず艦艇を飛ばし、コンピューターによって算
出された最短距離を通ったのだ。ミネルバはその足自慢を遺憾なく発揮し、ベ
ルリンから退去した僅か翌日の夜にカーペンタリアへと到着している。
「ファントムペインの基地から奪取した物資があってこそだな」
 奪った食料品や衣料品の大半はベルリンに置いてきたが、エネルギーなどは
豊富にあった。アスランは途中、途中で補給を受けることもなく一気にカーペ
ンタリアに向かったのだ。
 到着したカーペンタリアでは、厳戒態勢がしかれていた。既にベルリンでの
出来事は議長の会見を通して伝わっていた。しかし、それほど混乱していなか
ったのは首脳部の対応がよかったからだろう。カーペンタリア基地ではアスラ
ンに先んじて、ジブラルタル基地から移動してきたウィラードが、基地の艦隊
総司令官に就任していた。というのも、カーペンタリア基地の基地司令官はウ
ィラードの元部下であり、彼に請われたのだ。

 
 

「あんまり年寄りを扱き使うもんじゃないぞ」
 ウィラードはそういいながらも、やるべきことは全てやった。ジブラルタル
艦隊との混成部隊になったカーペンタリア艦隊を戦力として再編し立て直した。
これは容易なことではなく、ジブラルタル艦隊は地中海決戦で半個艦隊余りが
損傷しており、カーペンタリア艦隊もまた開戦時に受けた痛手がまだ癒えきっ
ていない。それを戦力、そして兵力として立て直したウィラードの手腕は、宿
将として賞賛に値する物であったろう。
 実はこの時、ザフト地上軍は純軍事的に見て極めて高い能力を持っていたと
後世の戦史家は指摘している。敗戦続きとはいえ、総兵力でいえばザフト艦隊
は未だ一基地を守るに十分すぎる戦力を有しており、もはやカーペンタリアし
か残されていないという状況が、ザフト軍兵士の緊張感を高めたはずだと。
 ウィラードが聞けば謙遜甚だしいと一笑するであろうが、ザフト地上軍に兵
力と戦闘力が残されていたのは事実である。これにオーブ艦隊が加われば、あ
るいはファントムペインと戦うことも可能なのではないか?
 指摘する声が後世ではなく現世であれば、何かしらの効果があったかも知れ
ない。だが、現状においてザフトもオーブも互いに協力し合おうとは思わなか
ったし、オーブはファントムペインと戦うつもりはなかったのだ。むしろ、ザ
フトとしてはオーブがファントムペインと手を結び、カーペンタリアに大挙し
て攻め込んできた場合も想定しなくてはならなかった。
「カーペンタリアにあの大型機動兵器が投入されたら、艦隊などいくら並べよ
うと一溜まりもないだろう」
「あれは拠点攻略用兵器だというし、敵はまず間違いなく使ってくるだろうな」
 兵士たちの間には、明らかにデストロイへの不安があった。
「でも、ミネルバのモビルスーツが撃破したんだろう? だったら……」
「いや、どうも普通に撃破したわけじゃないらしい」
 シンは、報告書でデストロイ撃破時の状況をどう書くかと迷っていた。本当
のことを正直に書くのなら、シンはデストロイのパイロットに頼まれて、彼を
殺したことになる。何故、彼がそのような願いをシンにしたのか、シンには説
明が出来なかった。その為、シンは「敵機動兵器パイロットが激しい錯乱を起
こし、その隙をついてコクピットを撃破した」と報告書に記載したのだ。そし
て、それは事実からそう離れてもいなかった。
 このため、シンがデストロイを倒せたのはあくまで偶然とされている。シン
自身、自分は勝ったんじゃない、勝たせて貰ったんだと公言していたし、シン
とインパルスがいるからデストロイにも対抗できると考えるのは浅はかと言う
ものであろう。

 

「何かシン、一人で強くなっちゃったね」
「どういう意味だ?」
 ルナマリアの言葉に、レイが尋ねる。
「シンってさアカデミーにいた頃から、どこかがむしゃらなところがあったじ
ゃない? 何事にも必死って言うか、ピリピリしてて」
 出会った頃のシンは、とてもじゃないが愛想のいい少年ではなかった。移民
者という立場を必要以上に意識し、周囲にとけ込もうとしなかったのだ。そん
な彼を、最初ルナマリアは余り好きじゃなかった。顔は悪くないが、態度が悪
い生意気な奴。

 
 

 そんないつもつんけんしていたシンだが、彼は決して素行が悪いわけではな
かった。逆に素行の悪い生徒を注意し、啀み合いになることすらあった。
 シンは理不尽なことを嫌っていた。特に目上の人間が、目下の人間に対して
行う理不尽には過敏だった。学生というのは先輩・後輩という上下関係が明確
に表に現れる場所であり、プラントのザフトアカデミーもそれは例外なく、上
級生が下級生に様々な干渉や圧力を加えていた。
 事件が起きたのは、アカデミー入学からしばらく立ったときである。上級生
の集団の内、リーダー格の男がルナマリアにちょっかいをかけてきたのだ。ル
ナマリアは男に臆するような性格は持ち合わせていなかったが、他の下級生は
明らかに萎縮し目を背けている。
 その時だった。いつの間にか上級生の背後に立っていたシン・アスカが、上
級生の肩を掴み注意をした。静かな口調だったが、ハッキリと。上級生はそれ
を一笑した。下級生が何様のつもりだと。釣られるようにリーダ格の周りにい
る連中も笑い出す。まだ若いのに、随分と下卑た笑いだとルナマリアは思った。
そして、その笑いに対するシンの返答は、顔面への拳の一撃だった。
「お前みたいな、ちっぽけな権力や見栄を誇示する奴がいるから戦争は無くな
らないんだ!」
 シンは叫んで、上級生に飛びかかった。何がそんなに気に触ったのか、ルナ
マリアも呆然としていた。シンは、飛びかかるだけあって喧嘩に強く、恐らく
腕っ節にも自信があったのだろう。しかし、数が違う。上級生の集団は、シン
を羽交い締めにし、リンチにかけようとしていた。ルナマリアは息を呑んだ。
先ほどまでの威勢はどうしたのか、彼女は足が竦んでしまったのだ。助けを求
めるように周りを見るが、同級生たちも同様に反応をしている。
 このままじゃあ、シンが……! 何かを叫ぼうとし、それなのに声が出ない
ルナマリアだったが、不意に鈍い音が辺りに響いた。見ると、シンを羽交い締
めにしていた上級生が頭を抱えて床に倒れ込んだではないか。
「一人を大勢で叩きのめすのは、フェアじゃないな」
 学年首席のレイ・ザ・バレルだった。彼の手には授業で使う分厚い辞書が握
られていた。シンは驚いたようにレイを見る。ろくに話したこともなかった相
手に助けられ、困惑しているのだろう。レイはそんなシンを一瞬見て、小さく
笑った。そして、そのまま近くにいた上級生の一人を殴り倒した。シンも立ち
あがり、拳を構え直す。
 乱闘になった。途中からは、シンとレイだけではなく、他の下級生も加わっ
ていた。前々から上級生からの圧力に不満は、みんなあったのだ。シンもレイ
も強かった。ほとんど二人が倒した気がする。
 やがて、誰かが呼んだのか、教官たちが現れ事態を収拾した。大けがをした
ものはいなかったが、上級生も下級生もそれなりの怪我を負い、ほとんどが医
務室送りとなった。上級生は、下級生が因縁を付けてきたなどといい、自分た
ちに責任はなく、下級生が風紀と秩序を乱したと訴えた。こういう場合大抵の
社会において上の人間の意見が信じられるもので、現に上級生たちは幾度とな
く自分たちに都合の良いことをいっては懲罰を免れてきたのだ。
 それに対し、シンは以下のような反論を行った。
「彼らが下級生の女生徒に無理矢理言い寄り、軍人を志す者らしからぬ行動を
取ったので自分はそれを注意したのです。ですが、彼らはそれを笑い飛ばし、
行為を続けようとしました。どちらに非があるかは明白でしょう」

 
 

 至極真っ当な正論であったが、上級生も反論した。先に手を出してきたのは
他でもないシンであり、彼はアカデミー内の秩序を乱したのだと。
「規律の乱れこそ、問題視するべきでしょう」
 シン共に教官に呼び出されたレイの一言だった。ルナマリアの証言や、下級
生の目撃証言なども相次ぎ、結果懲罰を喰らうこととなったのは上級生グルー
プのほうだった。
 事件が一段落したとき、ルナマリアはどうして助けてくれたのかと尋ねた。
「嫌いなんだ、ああ言うの。偉ぶって、自分は上の人間だから、下にいる奴は
従うことが当然と思ってるような連中は」
 それよりも、とシンはその場にいたレイに向かって問いただした。
「お前こそ、どうして俺を助けてくれたんだ? 一つ間違えば、首席じゃなく
なってたかも知れないのに」
 シンもルナマリアも、レイは優等生のエリートというイメージがあった。普
段寡黙な彼は、シンと違う意味で愛想がいいとはいえず、友達もいない。何故、
危険を冒してまでシンを助けたのか?
「席次なんて、どうでもいい。俺も理不尽なことは嫌いだ。助けたと言うより、
俺もむかついたから殴った。強いて言えば、それが理由だ」
 意外といえば意外な言葉に、シンとルナマリアは思わず顔を見合わせた。
「変か? こういう考えは」
 まじめくさった顔で問うレイの姿に、思わず顔がほころんでしまう。
「いいんじゃない、そういうの」
 ルナマリアは笑った。笑って二人の肩を叩いて一言、
「助けてくれて、ありがと」

 

 以来、三人の友人関係は続いている。そこにヨウランやヴィーノ、ルナマリ
アの妹のメイリンなどが加わって、今日まで来た。シンもあれから刺々しい性
格が随分と丸くなり、個人主義だったレイとも友人といえる仲にまでなった。
特にシンは、元は明るい性格だったのか一度うち解けると友人付き合いの上手
い少年であることがわかった。そんなシンを、ルナマリアは親友だと思ってい
る。
 ルナマリアは、過去の回想へと飛ばした翼を休め、現実へと戻った。
「最近、自分とシンに大きな差が出来てるような気がするの。それはシンの成
長で、実力があがったという事実なんだろうけど……」
「何か、引っかかるのか?」
「アイツがベルリンに一人で行くって言った時ね、私にはそれが信じられなか
った。例え私にシンと同じ機体、能力があっても、決断できなかったと思う」
 シンに自信があったとは思えない。彼は勝算や打算、そんなものを一切無視
して、あの時行動したように思える。シンにとってはそれが普通だったのだ。
真似できる訳のない、シンとルナマリアの違い、彼の強さ。
「それは少し違うな……シンのあれは、正義感というよりも無謀な行動だ」
 レイが少し険しい目つきで呟いた。
「アイツは何事にも必死で、命がけすぎる」
「自棄になってるってこと?」
「というより、他人を守るためなら自分はどうなっても良いという考えだ。賞
賛こそされる考え方ではあるが、俺は余り良い物だとは思えない。アイツは、
もっと自分を大切にしたほうが良い」

 
 

 小さな不安が、レイにはあった。そしてその不安が表面化するのは、すぐの
ことである。

 
 

 カーペンタリア基地ではアスラン・ザラがメイリン・ホークと共に情報収集
に勤しんでいた。
 ファントムペインの次の標的は、オーブか、それともザフトか? オーブが
どのような対応を取るのか、それも気になっている。
「アスランさん、ヘブンズベースの方から報告が届きました」
「見せてくれ」
 オーブのレドニル・キサカは、本国の危機に対してとても精力的だった。ア
スランはこれまで、メイリンを介して得たキサカの情報を大いに活用してきた。
しかし、ベルリンの一件から数日、送られてくる情報は内容面において充実さ
に欠けていた。というより、大半はオーブに対するキサカの不安や心配で、こ
れからどうすればいいとか、どう動けばオーブは助かるといった内容ばかりだ
った。アスランとしてはそんなことよりも、もっと具体的な、艦隊の出撃準備
が始まったとか、実はもう出撃しているとか、そういうの情報が欲しいのだ。
「最近、送られてくる情報が少なすぎるな」
「急にどうしたんでしょうね?」
「これといった情報がないのか、あるいは」
 ファントムペインが、キサカによる諜報活動に気付いたか。
「だとしたら、このキサカって人は今頃……」
 メイリンが不安げな声を出す。敵地に潜入した諜報員の活動が敵に露見した
らどうなるのか、考えずともわかることだ。
「もう少し使えるかと思ったんだがな。残念だ」
「残念って、助けてあげないんですか?」
「どうやって? この場合、しっぽを掴まれた方が悪いだろう」
「それは、そうですけど……」
 アスランの思わぬ非情さに、メイリンは言葉をなくしてしまう。利用するだ
け利用して切り捨てるというのか。
「……一応、いつでもオーブに戻る準備をするようにと送ってくれ」
 メイリンの反応に気まずさを感じたのか、アスランはそういってキサカへの
対応策を提示した。
 メイリンは、その時自分の中に生まれた不安が何なのかわかっていなかった。
少しだけ、一瞬だけアスランへを信頼する思いが揺らいだ気がした、そんな気
がしたのだ。それが、自分もまたキサカのように、必要が無くなれば切り捨て
られるのではないかという将来への不安であることに、メイリンはまだ気付い
ていな
い。彼女がそれに気付くのは、まだ先のことである。

 

 その頃、カーペンタリア基地の資料室で、シン・アスカも独自にオーブにつ
いての情報を集めていた。といっても、アスランと違い彼が入手できるのは資
料室に保存された電子新聞のバックナンバーや、ニュース映像などの記録を閲
覧することで得られる、一般人と大差ない情報であった。情報部のデータなら
ば、もう少し詳細な内容が見られるのかも知れないが、シンにはそれを見る権
限がなかった。

 
 

「アスハはどう動く……どんな選択をするんだ」
 シンの心中は複雑だった。シンはオーブが嫌いだ。というよりも、長く代表
を務めているアスハ家が嫌いだった。
 前大戦の折り、ウズミ・ナラ・アスハの決断、理念を守るために行った旧連
合との勝ち目のない戦い、シンはその時両親と妹を失った。
 アスハは理念のために国民を犠牲にし、国を戦火に巻き込んだと、シンは未
だに思っている。確かに独自の理念を抱える国に住む以上、ある程度の覚悟は
必要なのかも知れない。しかし、人の命よりも大事な理念など、本当にあるの
だろうか? 戦後、ウズミ・ナラ・アスハはオーブの理念を守り、最期まで戦
った獅子王として祭り上げられ、殉死した英雄となった。娘のカガリ・ユラ・
アスハにして、父親を尊敬しきっている。なるほど、ウズミは理念を守り満足
して死んでいったかも知れない。
「でも、それは一個人の自己満足だ」
 そして、オーブは再び戦乱の危機に晒されている。あの国はまた、国の理念
を守るために戦う道を選ぶのだろうか? アスハが戦って自滅しようと、そん
なことはシンに知ったことではない。だが、オーブとそこに住む人は違う。ア
スハやそれを取り巻く政治家の滅びの美学に国民が付き合わされる理由がどこ
にある。
 権力者にとって最も安いのが国民の命であり、国家の生存のためなら平気で
それを切り売りする。犠牲になった命のためにどんなに嘆き悲しもうと、それ
は自己陶酔以外の何物でもない。自分は国家の理念を守るため、私情を殺し、
戦ったのだ。自分は何と勇敢で、立派な人間なのだろうかと……
「オーブがまた戦火に巻き込まれたとき、俺は」
 どうすればいい? オーブを守るために戦うのか? あの国が滅びるのは、
謂わば自業自得じゃないか。理念のために国を焼き、俺の両親と妹を、大好き
だった妹のマユを殺したんだ!
「マユ……」
 シンは制服のポケットから携帯電話を取り出した。ピンク色が可愛らしいそ
れは男が持つには似つかわしくない。当たり前だ、これはマユの携帯だったの
だから。
 携帯を眺めながら、シンは思った。オーブという国が滅びるのは、確かに自
業自得だ。けど、そこに住む人まで巻き込んで言い訳がない。あそこには多く
の市民がいて、かつてのアスカ家のような家庭が幾つもあるはずだ。
 もし、自分のような経験をする者が現れたら……
「それだけはダメだ……それだけは絶対に、もう二度とあんなことがあっちゃ
いけない。守らなくちゃ、そうだ、俺が守らなくちゃ」
 呟くシンの姿は、何かがおかしかった。
 彼の変化に気付いている者は、まだ一人もいない。

 
 

 ファントムペインの対オーブ侵攻が噂として囁かれる中、ファントムペイン
の根拠地であるヘブンズベースに、一機の航空機が降り立っていた。そう、オ
ーブ元首専用機、カガリの乗る機体だった。
「ここが、ヘブンズベースか」
 中立国オーブ連邦首長国代表カガリ・ユラ・アスハと、ファントムペイン最
高司令官兼ブルーコスモス盟主ロード・ジブリールとの間に会見が持たれたの
は、世界を賑わせたプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの失言
騒動から、僅か五日後のことだった。

 
 

 こんなにも早くに双方の会見、会談が実現したのは申し込まれた側であるジ
ブリールがそれを拒まなかったからで、カガリはいくつかの条件を元に彼との
対面を果たした。その条件とは、一つに双方が会う場所としてヘブンズベース
を指定し、カガリがここを訪れる際に海路ではなく空路を使用すること、など
であった。会見を申し込んだのはオーブ側であり、となれば相手が場所を指定
することには文句はない。空路の指定にしたって、わざわざ時間の掛かる海路
を使用する理由はない。
 こうしてカガリは、オーブの政治家としては史上初となるヘブンズベースの
大地に足を踏むことになったのだ。
「ここがヘブンズベースか」
 かつては旧地球連合軍最高司令部として名を馳せたここも、今ではファント
ムペインの本拠地となっている。多くの艦艇と、強力な武装、モビルスーツに
守られたここはまさに大群を擁する要塞基地であった。
「意外に艦船の数が少ないな」
 カガリが空路を利用したからなのか、パッと見た限りでは軍港にはそれほど
の艦船がいないように見えた。それとも、ヘブンズベースにはいくつかの軍港
があり、そこに収容されているのだろうか。
 不審に思いながらもカガリは基地側が用意した車に乗り込んだ。敷地が広い
ため、移動も車なのだ。窓の外に見える景色は軍事施設らしい殺風景さがあっ
た。無論、軍事施設が華々しいわけがないとわかってはいるのだが……

 

 到着した本部もまた、軍事施設らしい佇まいをしていたが、中は割りと綺麗
な作りだった。カガリは女性士官案内の元に応接間に通された。この際、護衛
であるSPは隣室で待機するようにとの指示があった。当然、SPはこれを拒否す
るが、
「いや、構わない。ここまで来たんだ、腹を決めよう」
 笑って謝絶すると、カガリは一人部屋に入った。室内にジブリールはおらず、
コーヒーを運んできた士官の話では少し遅れて来るという。待たされるのは好
きではないが、嫌いなわけでもない。
 しばらくして、ジブリールが部屋に入ってきた。彼もまた護衛や従卒の類は
連れていない。実際に会うのは始めたが、カガリはその病的なまでに白い肌に
目を奪われた。
「遅れて申し訳ない。代表が到着されたということで、しておかねばならない
仕事がありましてね。それを行っていました」
「何のことだ?」
「いえ、害獣の駆除をね、していたんですよ。いるでしょう? 穀物を食い荒
らす卑しいネズミが」

 
 

 この時期になって、ファントムペインはアスランが危惧したとおり、ファン
トムペインの機密が外部に漏れているのではないかと深刻な問題になっていた。
というのも、今ではカーペンタリアに逃げ込んだミネルバもつい先日までは大
西洋を荒らし回る海賊の類に等しい存在だった。ファントムペインの補給基地
や補給船団を襲っては物資を強奪し、それはもうやりたい放題だ。

 
 

 しかし、この時問題になったのは何故ザフトがこうもこちらの情報を知って
いるのか、ということである。補給基地や物資集積所の位置ならともかく、補
給船団の行動ルートまで知っているのは不自然すぎる。そうした事実が、今回
の情報漏洩疑惑に繋がったのだ。つまり、アスランのせいだったのである。
 報告を受けたジブリールは組織内部に秘密裏に査察と調査を開始した。これ
がベルリン侵攻の一週間ほど前の話である。ファントムペインの憲兵は優秀で
あったが、意外なほどに時間が掛かった。憲兵隊は各国の諜報員と思わしき人
物の割り出しには成功したのだが、プラントやザフトと繋がりのある人物は一
人も見あたらなかったのだ。
 これはアスランの作戦勝ちと言うべきか、ファントムペインの憲兵隊はキサ
カとアスランの繋がりまで知ることは出来なかった。
 そのキサカであるが、彼は現在帰国の準備を進めている。アスランからの助
言を得て、国を守るために帰るのだ。彼はカガリが極秘裏にヘブンズベースへ
と来ていることを、オーブから知らされていなかった。オーブが直接連絡を送
ることで、彼の存在を露見させたくないと考えた、謂わば配慮だった。
 だが、それは杞憂に終わった。
「早くオーブに戻って、カガリの手助けをせねば。オーブ軍人として、オーブ
の理念を守るために私は……」
 官舎の私室で最低限の荷物をバックに詰めるキサカ。脱出の準備は既に始め
ている。この上はさっさとオーブに戻り、今後の対策を練らなくてはいけない。
「何、ザフトが、アスランがきっと手を貸してくれるはずだ」
 この期に及んでの楽観論は、彼がアスランを信用していたからだろう。
 既にアスランが彼を見限り、切り捨てたという事実も知らずに。
「ウズミ様、オーブは私が必ず守って見せます」
 今は亡きオーブの獅子に語りかけながら、キサカは荷物を詰め終わった。後
は機を見て脱出するだけだ。既に船の用意はしてある。夜になって、警備の薄
い時間帯を狙うとしよう。そうすれば、自分はオーブに帰れる。
「残念だが、貴様はオーブには帰れんよ」
 声は、私室の扉からした。
 キサカが振り返ると、電子ロックをしておいたはずの扉が開き、十数人の兵
士が部屋の中に飛び込んできた。憲兵の制服を着た彼らは、ライフルをキサカ
に突きつけた。
「これは……一体」
 驚くキサカの前に、一人の男が歩み出てきた。キサカはその男の顔に驚いた。
他でもない、ファントムペイン最高司令官ロード・ジブリールその人だったか
らである。
「オーブの代表が来る前に、室内の掃除をしておこうと思ってな。ネズミを嫌
う少女は多い……薄汚い耳で聞き耳を立てる、ドブネズミなら尚更だ」
「な、何の話だ。私は!」
「貴様の身元は割り出した。通信記録も一部であるが入手できている。諦める
のだな」
 キサカは身構える。狭い室内、相手は十人前後、ジブリールまでの距離は近
い……やれる!
「ハァッ!」
 キサカは身を屈め、近くの憲兵にタックルをした。突然の行動に憲兵たちの
間に動揺が走る。ライフルを構えるが、味方に当たることを恐れて撃つことが
出来ない。キサカは、倒した憲兵の腰から素早く拳銃を奪うと、ジブリールに
その銃口を向け――

 
 

「愚か者が」
 ジブリールが撃った銃弾に眉間を撃ち抜かれた。
 巨体が倒れ、血と脳髄を吹き出しながら死に絶えた。
 レドニル・キサカ一佐、オーブの佐官としてアスハ家に仕え、自分なりにオ
ーブのことを思って活動してきた男が今、この世を去った。彼が愛した、オー
ブ以外の場所で。

 
 

 そんなことがつい数十分前にあったとも知らずに、カガリは素直な疑問を口
に出した。
「ヘブンズベースにもネズミは出るのか」
 その反応があまりに正直だったために、思わずジブリールは笑ってしまった。
カガリとしては、何故笑われたのかも良く分からない。
「まあ、ネズミの駆除を終えた後も一つ報告しなければならないことがありま
してね、代表には随分とお待たせしてしまって」
「それは構わないが……報告というのは、大西洋連邦へか?」
 いくら極秘会談とはいえ、ファントムペインの後ろ盾である大西洋連邦ぐら
いには連絡するだろう。
 しかし、ジブリールは首を横に振った。
「大西洋連邦も含まれてはいますが、もっと広い範囲ですよ」
「もっと広い……まさか、この会談を世界に公表したのか!?」
 そうすることで、オーブを頼る各国を失望させ、オーブの求心力を削ぐつも
りなのか? カガリは政治家としての神経をとぎすませ、考えられるだけの対
策を練ろうとするが……
「それも違います。まあ、この会談が行われていることも時期にわかることで
しょうがね」
 ジブリールは笑っていた。彼は邪悪そうな笑みを浮かべて、カガリを見た。
間違いなく、カガリが見てきた中で一番最悪な笑みだった。
「ちょっと世界に向けて発表したのですよ。オーブに向けての宣戦布告をね。
艦隊を送ったと表明してきました」
 ジブリールは、嘘をつかなかった。

 

                                つづく