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W-Seed_380氏_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 12:57:12

気付くと見知らぬ場所に私はいた。確か私はシェルターの中にいた筈なのに、何故か屋外にいた。
周囲を見回すと、人々が逃げ惑っている。遠くで爆音がする。MSの姿も確認する事が出来る。
クリスマス・ウォー……かつて私が率いた……いや、傀櫑として利用された組織の起こした動乱以来起きていなかった戦争が起きている――。
私はあの記憶を呼び起こす。天使による攻撃。躊躇いのない一撃を……。
逃げなければ。しかし足がすくんで動かない。早く逃げなければならないというのに過去の出来事が私の体を支配する。

私は動かない体をどうにか動かして這いつくばる様に逃げ始める。
泥が私を汚す。口の中にも侵入してくる。石が私の手足を傷付ける。

どれだけ逃げたのかは解らないが、段々と体が動くようになってきた。私は立ち上がり、痛む足を引きずるように歩き出した。

少女が泣く声がする。私はそちらへと向かう。
私が見たのは少女が業火の前で泣きじゃくる姿。業火の中に朧気な人の姿も見える。辺りには何かが焼ける嫌な臭いが立ち込めている。

胃液が逆流してくる。口に苦い味が広がる。私はそれを堪えながら少女に声を掛ける。
「逃げなければ死にますよ?」

 少女は虚ろな瞳で私を見る。そして徐に口を開く。

「……パパもママも……多分お兄ちゃんも皆死んじゃった……マユ一人……生きててもしょうがないよ……」

少女……マユは夢遊病者の様に一歩一歩業火に近付いていく。私はマユを止めようと後ろから抱き抱えるが、マユの力は思いのほか強く、引きづられてしまう。

「家族が死んだのであれば、貴方は生き延びなければならないでしょう!?」

私は叫びながら四肢に力を込める。しかし少女の力の前には無力であり、業火がすぐ先に迫っている。
 火の粉が私の髪と服を焦がし、熱気が私をさいなむ。

 私は覚悟を決めなければならない。マユを見捨てて逃げるか、マユと共に業火にやかれるか……。
私にはどちらも選べない。第三の選択、マユを助けて逃げる、を選ぶ。
 私の体に流れる……いや、実際には流れてはいないのかも知れないが、偉大な父から受け継いだ血と、女王から学んだ高潔な精神が私をつき動かすのだ。

ドンッ!

私はマユを抱えたまま突き飛ばされた。そして頭上から声が降りかかってきた。

「妙な所で出会うな。トレーズの娘」

私はマユを抱えながら頭を振りつつ、声に答える。

「それは貴方にも言える事ですね、張 五飛」

――to be continued――