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W-Seed_WEED_第04話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 12:55:30

「相変わらず、胸糞悪い場所だな、ここは」

その言葉に振り向いたネオの視線の先にいる少年は皮肉げに笑う。
調整室のカプセルで眠るのはスティング達3人だ。

「記憶操作に精神操作、薬物の使用・・・・・・
上の方じゃ生体CPUなんて呼んでるらしいな、
気にくわねぇ、人間をなんだと思ってやがる」
「それを言われると辛いな、だが、どうしようもない」
「やだやだ、これだから軍隊ってところはよ」
「それでも、俺はこいつらを使ってやらなきゃならない
こいつ等の有用性を上の人間に見せなきゃならないんだ
こいつ等のためにもな」
「でないと、処分されるか、俺の知ってる奴等にもトチ狂った爺どもがいたが・・・
それよりたち悪いぜ、この研究をしやがった奴はよ」
「・・・・・・そうだな」
「おっと、そんな事話に来たんじゃねぇ
イアンのおっさんが呼んでるぜ、
何でもユニウスセブンってのが地球に落ちる軌道を取ってるんだとよ」
「なんだと!」

デュオの言葉を聞き、ネオはブリッジに走る。
残されたデュオはやれやれとため息をつく。
連合が腐りきってる事はここ1ヶ月程度所属しただけでよく分かった。
ネオを始めガーティー・ルー等現場の人間はまともだが上層部の腐敗振りは酷いものだった。
トロワの話を聞く限りザフト側は比較的まともらしい。
デュオとて好き好んで連合にいるわけではない。
右も左も分からないこの世界に愛機とともに放り出され、
拾ってくれたのがたまたま偶然出会ったネオだった、それだけだ。
とりあえずある程度恩を返したら非戦国だというオーブに行ってみるつもりだったが。

「やれやれ、トロワの野郎、しばらく連合にいろだもんな、あいつも何考えてんだか」

いや、トロワの考えは分かる、自分が連合、
トロワがザフトにいる事で情報の共有ができる。
それは異邦人の自分達がこの世界で生きるためには重要な事だ。

「この世界で生きる・・・か・・・・・・」

元の世界に未練が無いわけでもない、ヒルデの事もあるしあの地球圏の行く先も気になる。
トロワだってそうだろう、トレーズはどうかは分からないが。
だが、望郷の念が強すぎるという事も無い。
元の世界に帰れなくともそれはそれで仕方が無いか、程度だ。

「俺ってちょっと薄情かねぇ」

スティング達の眠るカプセルを見ながら、呟いた。

ミネルバの一室、カガリの通された部屋とは別の部屋に
アレックス・ディノ=アスラン・ザラは通された。

「護衛の仕事があるところをすまないな、アレックス君」

椅子に座り目の前にいるのはザフトの中でも特権階級であるFAITHの徽章をつける男。
しかし、アスランはこの男をザフトにいた頃一度も見た事は無かった。
FAITHになる実績があり、見た目もこれほど目立つなら顔ぐらい知っていてもよさそうなものだったが。

「トレーズ・クシュリナーダだ、君が私を知らないのも無理はない、私は君がザフトを去った後、ザフトに入隊したのだからな」

華、というのだろうか、ラクスとはまた違う、圧倒的なカリスマがトレーズと名乗る男にはあった。

「何の用でしょうか、私は代表の護衛なのでそう離れるわけにはいきませんが」
「そう時間は取らせない、少し君と話をしてみたくてね」
「私とですか?」
「そう、君は何故、オーブ代表の護衛などをしているのかな?」
「どういう意味でしょうか?」

カガリの失態でこの船のほぼ全てのクルーが自分の正体を知ってしまっている。
なのでこんな質問がくるとは思っていたが、わざわざこんな部屋まで用意されて二人きりでという理由がわからない。

「私の個人的な興味だよ、そこが君の本当の立ち位置なのかと思ってね」
「・・・・・・・答える理由はありません」
「君はザフト・・・いや、プラント全体にとって得がたい人材だ、前大戦で果たした役割、その能力、将来的にはギルバートの跡を継ぎ、要職に付かねばならぬだろう、その君がなぜ、ただの護衛になどなっているのか、私に話す理由は無くてもプラントの人々に語る義務はある、人にはその能力に見合った立場、戦うべき場所というものがある、立場に見合わぬ小物が世界を動かそうとする姿は醜悪で滑稽だ、しかし、能力のある物が果たすべき役割を理解せずにただ迷走を繰り返すのは同じ程度に害悪だ」
「それは・・・・・・」
「同じ事は君の友人達にも言えるかもしれない、キラ・ヤマト、ラクス・クライン、どちらもオーブで隠遁を続けていると聞く、現在役割を果たしているのは君の護衛対象であるカガリ・ユラ・アスハのみだ、おかげで彼女は自分の枠以上に奔走する事になる、君が護衛についている事で、彼女が苦しむ事もあるだろう」

痛いところを突かれたという思いはある。
現在彼女は自分と、ユウナ・ロマ・セイランの間で板ばさみの状態だ。

「君は、護衛とは違った立場で彼女の側にいるべきだ、そうでなければ君達は苦しむ事になるだろう、そしてそれは、プラントとオーブ双方に悲劇を呼ぶことになる」
「だったら・・・・・・だったら、どうしろっていうんですか!」

図星を突かれたせいか、声が荒くなる。
しかし、男は涼やかに答える。

「決断をする事だ、君が自分自身で本当に必要だと思える決断を」
「・・・・・・・・・」

答えられない、自分は決断したはずだ。
カガリの側にいると、そして支えると。
それは間違いだったのか。
そのとき扉が開き、軍服を着た男がトレーズに耳打ちをする。
トレーズは今までの話が無かったかのように立ち上がり言う。

「ブリッジに急ごう、どうやらユニウスセブンが地球への落下軌道を取っているらしい」
「何ですって!」

MSで出撃を待ちながらシンは苛立っていた、アスハの無神経な言葉に。
力が必要ない?その力がオーブに無かったから自分の家族は死んだんだ。
そして、今回のユニウスセブン落下だ。
力が無ければユニウスを砕く事も、家族を、大切な人たちを助ける事も出来ない。
だから自分は力を求めてザフトに来た。
死に物狂いの努力でたった2年足らずでザフトのエリートの証である赤を着た。
そして、そのエリート達の中で認められ最新機であるインパルスのパイロットとなった。
決して楽な道ではない、ただの民間人だったのだ、2年前までは。
それを・・・自分の努力と家族の死を勝手な理想論で否定し、無視したカガリが、
そしてオーブの理想とやらがシンには許せなかった。

「ずいぶんと苛立っているな」

後ろから声がかけられる。
トロワだ。
シンよりも半年遅くザフトに入隊した少年。
天才というのは彼のことを言うのだろう。
入隊した当時から同期の中で圧倒的に際立っていた。
感情の起伏に乏しく見えるが、面倒見の良い性格でシンもたびたび世話になった。

「トロワか、別に何でもねぇよ」
「先ほどのオーブ代表の事か」
「・・・・・・」
「感情のままに行動する事は人として正しい事だと、昔、俺の仲間が言っていた
だが、先ほどのお前は感情に振り回されていただけだ、そこに冷静さが無ければ、行動とはいえない」
「なんだよ、お説教かよ」
「聞け、お前にも思うところがあるのは分かる、だが、大事な作戦の前だ、士気にも影響するだろう、行動で見せればいい、力の意味と、その使い方を」

先ほどの言い合いは迂闊だったかもしれない。
ルナマリアやレイ、ヨウランたちも気まずい思いをしたかもしれない。
そこに、レイが入ってくる。
トロワ言うことがあるだろうというように、シンからレイのほうに視線を向ける。
確かに、レイの顔を見て気まずく思う。

「その、さっきは悪かった・・・・・・俺のせいで悪い空気作っちまって・・・」
「・・・・・・気にするな、俺は気にしない、お前の言う事にも一理ある、あの場所で言うのは多少問題だったが、内容は正しい」
「・・・ありがとう、レイ」
「例ならトロワに言うんだな、あの後のフォローをしたのはトロワだ」
「そっか、ありがとな、トロワ」
「気にするな」

そう言うと、トロワは薄く笑う。
ユニウスセブン破砕作業の時間は刻一刻と近づいていた。

ミネルバのブリッジでアスランは自分の出撃を志願した。
もはやザフトではない自分がザフトの戦艦で
そんな事を言う事が非常識なのは百も承知だった。
だが、この状況でじっとしている事は出来ない。
案の定、タリア艦長の答えはNOだった。
だが、視線の端で議長とトレーズが目配せをしたのが見えた。

「分かっています、でも、この状況をただ見ている事など出来ません
使える機体があるのなら、どうか」
「気持ちはわかるけど・・・・・・」
「いいだろう、私が許可しよう、議長権限の特例として」
「ですが議長」

タリア艦長が非難がましく言うが、トレーズがそれを遮る。

「ならば、私が今回用意した機体に乗ればいい、今の君には必要かもしれない」

「戦闘ではないのだ、出せる機体なら一機でも多く出した方がいい、
腕が確かなのは君も知っているだろう」

「粉砕作業の支援って言ったって何すればいいのよ・・・ん?」

愚痴りながら愛機のザクに乗り込もうとしてルナマリアが見たのは異形のMS。
インパルスに通じる形状だがどこか禍々しい。
そしてそれに乗り込もうとするアスランだった。

「これは・・・」

見た事の無い機体だった、ザクとは違う、イージスやジャスティスに近いか。
偶然か、機体のカラーも近い。
メイリンの発進アナウンスが響く中、ブリッジのトレーズから通信が入る。

「なんですか?発進前ですよ」
「それは、君の今後の生き方を示す道標になりうる」
「は?」

たかが一機のMSが自分の生き方を示す?

「その機体は戦う敵の姿と自分自身の未来をパイロットに見せてくれる
そういうシステムがその機体には積んである、
もちろん、そのシステムを切る事も可能だ、危険を感じたなら切るといい」

言っている事が抽象的過ぎて意味がわからない。

「乗っていれば分かるだろう、私はここで君の健闘を祈らせてもらう」

トレーズからの通信が切れると、入れ違いにボギーワンが現れたという通信が入る。
状況は混迷を極めているようだ。

「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」

「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」

「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」

後輩のレッドが次々と出る中、アスランの胸にはかすかな不安と予感がある。
それはトレーズの言葉のせいか、それともこの機体のせいなのか。
もしかしたら2年前から持ちつづけていたものなのかもしれない。

『進路クリアー、どうぞ』

しかし、今はユニウスを破壊する事だけを考えなくてはならない。

「アスラン・ザラ、エピオン、出る」

迷いを抱えたまま、迷いを断つ機体に乗り、アスランは出撃する。
自らの乗る機体の恐ろしさを知らずに。