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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第24話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:55:12

第24話「俺に聖剣を」

「いつもそう簡単に逃がしてたまるかよ、今日こそは逃がしやしねーぞ!覚悟しやがれ!」

「くっ、その声…どうしていつもいつも僕の邪魔をするんだ!君は一体何がしたいんだ!?」

キラは今回、連合の巨大MSが都市を侵略しているという情報を得て、それを止めるべく出撃した。
彼も連合の暴力に晒される人々を助けよう、守ろうと考えたことについてはシンやガロードと同じであったし、
助けたい、と考えたのは彼自身の判断である。
信じているのはラクス・クライン、守りたいのは彼女と世界、これらはキラの中では一貫して決まっている。

思いだけでも、力だけでも

親友アスラン・ザラと相討ちになり、次に意識を取り戻したときに再会したラクス・クラインの言葉であり、
フリーダムを手にしてから今に至るまでキラのスタンスを決定させた言葉でもある。
世界を守るためにフリーダムという剣を託され、思いを実現するため戦っている、とキラは考えていた。

まず、決める、そしてやり通す

さらに、ラクス・クラインが言ったこの言葉を信じて、キラは犯罪者と言われようと、
彼女を信じて世界のためを思って戦っている。
キラ・ヤマトという人間の根本的なものを支えているのは、彼が迷い、苦しんだときに
彼女から差し伸べられた言葉であり、その過程でカガリを連れ出し、シャトル強奪を手伝った。

その過程の中でオーブ、ディオキアと、彼の前に立ち塞がったのがガロード・ランとシン・アスカである。

「じゃきゃあしい!てめえはすっこんでろっつったろーが!
 三枚に下ろされたくなきゃさっさとカガリさんの居場所を吐きやがれ!俺は今、最高に虫の居所が悪いんだよ!」
ガロードにとって、シンがステラを助けようとしていた光景は、
自分が敵に囚われたティファと幾度となく助けようとしてきたものと重なるところが大きい。
そして、シンの必死の説得の末にステラを救出できる希望が見えてきた。
それをあと一歩というところで全て台無しにしたのが、悪意はない、むしろ善意の塊ではあるキラ・ヤマトである。

確かに、シンやガロード、レイがキラに対してやめろ、と戦場で言ったところで彼らは戦っている者同士であり、相手の言葉を信用する義務はない。
だが、信用するかどうかを判断するために、シンが何をするつもりなのかをキラは確認をしなかった、ということはできよう。
その意味では、キラ・ヤマトは他人の意見を聞かない、という言葉は不正解ではない。

ガロードはビームソードを手にして今にも斬りかかろうとしている。
だが、その時、アークエンジェルから通信が入る。
正確に言うと、周囲の全機体に向け、国際救難チャンネルを使っての通信が入っているのであるが。

「ザフト軍、ひとまず待ちたまえ。私はプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルである。
 フリーダムのパイロット、キラ・ヤマトに告ぐ。武装を解除して投降せよ。繰り返す、武装を解除して投降せよ。
 君にはザフト軍への敵対行為を行い、アスハ代表を拉致した等の罪で逮捕状が出ている。
 3分間の猶予を与える、武装を解除して投降せよ。よってザフトの者達はしばらく戦闘を停止せよ」

ガロードは突然上から水を掛けられたような気になり、デュランダルに抗議しようと思ったが、それを見越したかのようにレイから通信が入る。

「待てガロード、今は議長に従え。今お前が奴に攻撃を仕掛けたら気に喰わないから相手の話も聞かずに攻撃を加えることになる。
 それではキラ・ヤマトと同じだ。奴を投降させ、法の裁きを下す、というのが理性的な人間のすることだろう?
 投降すればアスハ代表も見つかるかもしれないし、どのみち3分経てば攻撃命令が出される。今は奴が動いた時に備えるぞ」
「…わかったよ。でも軍人ってのは不便だな」

ガロードはレイの言葉に、軍人としての煩わしさを感じざるを得なかった。
もっともそれは秩序のないことが前提の世界で生きてきたガロードだからこそのものといえなくもないが。

一方で、デュランダルにとっては好機そのものであった。
キラが投降すれば、裁判にかけて合法的に、しかも容易にキラを消すことができる。
投降しなければ、それを理由に討てばいい。投降するはずがないのはわかっているのだから。
そしてデュランダルにとっては幸いなことに、今、レイやガロードの精神状態は敵を討つのに最適なものである。
ここでキラ・ヤマトを消し、拘束したアスラン・ザラも消せば、彼のもう1つの敵は両手を失ったも同然であり、
ユウナのような保険を当てにする必要もなくなる。

だが彼には気がかりな点が2つある。1つは物事がそんなに上手く進むとはあまり考えられないこと、
そしてもう1つは、些細なことのようでとても大きな問題なのだが、

「グラディス艦長…一体、いつからベルリンは盗品の見本市になったんだろうね?」
「…心中お察しいたしますわ」

いつの間にか撤収した連合の使っていたカオスにアビス、キラ達のフリーダムに、ムラサメ…
盗品でないのはウィンダムとデストロイだけであることを考えると、デュランダルは頭が痛かった。

「デュランダル議長?そんな人がどうしてここに…」

他方、キラは突然通信を入れてきたデュランダルに正直、驚いていた。
とはいえ、投降するという選択肢は有り得ない。とすれば何とかしてここを離脱する他ないのである。

さらに他方で、シンはデストロイのコックピットに突き刺さったサーベルを見ていた。
そして、もうステラが戻ってくることはないのだということを少しずつ認識し始める。
もうステラと話をすることもできない、触れ合うことも抱きしめることもできない。
それどころか、もはや亡き骸に手を合わすことすらできないのである。
そして、それと同時に、またしても自分の大切なものを奪っていったフリーダムへの怒りが彼を支配し始めている。
シン自身は怒りの原因や構成を整理できているわけではない。
だがあえて整理すれば、1つは家族を殺したことについての怒りと憎しみ、2つ目はステラを殺したこと自体についての怒りと憎しみ。
3つ目は、やめろと言った、こっちに来るなといったにも関わらず、レイやガロードも止めようとしたにも関わらず、
キラがそれを一切合財無視して攻撃を続けてきたことに関しての怒りであった。

デュランダルが降伏勧告を行なってから3分が経過しようとしている。だが、均衡を破ったのは時の経過ではなかった。
アークエンジェルのレーダーが何物かの接近を知らせて警戒音を鳴らし、ブリッジにチャンドラの声が響いた。
「艦長!所属不明機が1つ、ここに降下してきます!」

ブリッジの面々が一斉に空を見上げると、降下してきたのは大気圏突入ポッドであった。
そのポッドは空中でバラバラとなって行き、中から2機のMSが出てくる。
「あれは…まさかドム・ドルーパーか」
珍しくデュランダルが驚きの入った声をあげ、黒いMSが地上に降り立った。
ドム・トルーパー―ザフトが開発した新型MSであり、試作機が作られた後に行方不明となっていたものである。
「…艦長」
「ええ、盗品の大見本市ですわね」
デュランダルはこれまでになく、ザフトを蝕むクライン派を呪った。

「姐さん、ドンピシャだ!あれ、足つきですぜ」
「浮かれるんじゃないよヘルベルト!マーズを残らせちまったんだ、あいつの分までしっかりやるよ!」
「わかってやす!でも、あの凄え速さの青い戦闘機がいなけりゃ俺達の実力を発揮できたのに…」

彼らはクライン派に所属する元ザフトの兵士である。
キラのデストロイに対する劣勢を知ったダコスタが彼らにキラの援護に向かうことを要請し、
出撃させたのであるが、近辺をパトロールしていたザフトの部隊に発見され、ある機体に執拗な追撃を受けたため、
本来3人セットで作戦行動を行なっていたのだが、マーズが残って追撃機の相手をすることにしたのである。

「ああいう鼻が利く奴もいるってことさね、そろそろキラ様の援護に行くよ、この場からの離脱を最優先にする」
「了解!」
「「ラクス様のために!」」

行動を開始したドム2機はいきなりアークエンジェルに向けてギガランチャーを討ち込むが、そのうちの一発が命中して艦を揺らす。

「レイ、ガロード、聞こえるかね?新しく出てきたMSはフリーダムの仲間だ。迎撃を頼む」
揺れる艦内からデュランダルが命令を伝える。

だが、この隙にヒルダはドムをフリーダムのところまで移動させていた。
「キラ様、お助けにあがりました、敵は我々に任せて離脱してください」
「え、あなた達は?」
「私達はラクス様の手の者です。さあ、早く!」
「わかりました、よろしくお願いします!」

キラがフリーダムを飛び立たせたところで、ガロードとレイが逃がすまいとそれを追うが、彼らの前には、2機のドムが立ち塞がる。
「邪魔すんじゃねえこの黒団子!」
ガロードが苛立ちを隠さずに言い放った。だが、それでヒルダ達がその場をどくはずもなかった。
「キラ様をやらせはしないよ、邪魔をするならお前らの首も貰っておく!」
「やれるもんならやって見やがれ!」
こうしてドム2機とGX・グフが戦闘を開始した。

フリーダムはドムの援護を受けて飛び立っていった、デストロイの残骸の片隅でうなだれていたインパルスを見下ろすようにして。
その光景は、2年前、シンが家族の亡き骸の脇で悲しみと無力感に支配されていたのとほとんど同じであったといえよう。

「ふざけるな…ふざっけるなあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

2年前と同じ状況がシンの怒りを爆発させて、SEEDの力を発動させた。
心は悲しみに支配されているが、頭の中がクリアーになっていき、
シンは全身の血の流れすら感じ取れるほどに感覚が冴え渡ってくるのがわかった。

「キラ・ヤマト、あんたは俺が倒す!今日、ここで!」

シンの中に力が溢れてくるのと呼応するように、インパルスが立ち上がり、フリーダムへと向かっていく。
それを見たヒルダはインパルスに向けてギガランチャーを放とうとするが、それは振り下ろされたビームソードで遮られた。
「俺の首は余所見してる奴なんかじゃ取れねえぞ!」

他方で、ヘルベルトのドムもレイを相手に苦戦を強いられていた。
ギガランチャーはすでにスレイヤーウィップに巻き取られてしまい、今手にしているのはサーベルのみである。
しかも幾度となく切り結んでも、両者の実力はほぼ互角であり、
ドムのパワーをグフがスピードで押さえつけるという形で両者は決定打を欠いていた。
「ギルの邪魔をするお前達を…俺の仲間の邪魔をするお前達をこのままにしておくと思うなよ!」

((取り巻きは俺達が抑える、決着はお前がつけろ))
このとき、ガロードとレイの想いは重なっていた。

インパルスはライフルを発射しながらフリーダムへと迫っていた。
フリーダムもインパルスの動きを止めるべくライフルを撃つが、
メインカメラや両腕を狙った射撃はことごとく紙一重の所で回避されてしまうか、シールドで防がれてしまう。
「くそ!攻撃パターンが見破られてるのか!?」

シンがガロード、レイとフリーダムの動きや戦い方を研究する中で得た成果の1つは
キラはMSを相手にする場合にはコックピットを狙うことはほとんどない、ということである。
研究したデータの中でフリーダムがMSのコックピットを狙ったケースは1件、
クルーゼの駆るプロヴィデンスとの戦いのときだけである。
そして、プロヴィデンスとの戦いを記録したこの映像データはクルーゼの最後の姿を見たいと願ったレイに対してデュランダルが秘密裏に渡したものであった。

だが、このデータを下にして3人は1つの結論に達することが出来た。
つまり、キラは自分より腕が上に人間以外のコックピットを狙わないということである。
キラが、人を殺したくないと思ったためか、単に覚悟がなかったためなのかは3人にとって定かではない。
しかし、3人にはその行動が、まるで自分が戦いたくないのに仕方ないから、殺さないよう戦っている、という傲慢なものに見えた。
特にレイとしては人類のエゴの結晶とも思えるキラのこうした行動が傲慢と自惚れにしか見えなかった。

フリーダムの攻撃を防いでいるインパルスだが、逆にインパルスの攻撃も中々フリーダムにダメージを与えることができずにいた。
特にフリーダムはシールドをネオの攻撃で失っているためシンの攻撃を全て避けており、シンもキラの能力の高さを改めて痛感していた。

「ライフルがダメなら接近戦で!」
するとインパルスはライフルをサーベルに持ち替えてフリーダムに斬りかかる。
しかし、何度か切り結んだ後、振り下ろしたサーベルを強引にパワーで弾き飛ばされてしまい、
その隙に右腕とメインカメラが斬り落とされてしまった。
だが、これも計算のうちである。技量ではやはりキラの方が上なのはわかっていることであった。

シンはシールドを投げつけてからチェストフライヤーとフォースシルエットを
フリーダムに向けて切り離すと、それらにコアスプレンダーの機関砲を浴びせる。
フリーダムは放たれたシールドを切り払っている間に突っ込んできたチェストフライヤーとフォースシルエットをモロに受け止めることになり、さらに機関砲を浴びたシルエットとチェストフライヤーが爆発し、吹き飛ばされてしまう。

「アークエンジェル!チェストフライヤー、フォースシルエット!」
シンがアークエンジェルに怒鳴りつけるように、要求をした。
だが、要求したときには既にチェストフライヤーとフォースシルエットは射出済みであった。
「え、早!?」
シンは自分もティファのように考えたことを喋らずに伝える能力も頭がクリアーになったと同時に身についたのかとも思った。
だが、これは対フリーダムの特訓をする中で、レイが管制も兼任しているアーサーにシミュレーションの結果を伝えて、
前もって取るべき戦術パターンを知らせておいたことによるものである。

そしてチェストフライヤーとフォースシルエットの爆発の衝撃からなんとか立ち直ったキラの前に
万全の状態となったインパルスが姿を現し、再び迫ってきた。
フリーダムは放たれるビームライフルを回避しながら、距離を詰められないように気をつけていたが、
インパルスが再びシールドを投げつけてきたのを見て先ほどのカミカゼアタックが来ると踏んだキラは機体を上昇させてシールドを避ける。
しかし、インパルスは上半身を切り離すことなく、シールドに向けてビームライフルを放つ。
回転しながらフリーダムへと向かっていっていたシールドに当たったビームのエネルギーは
弾かれてちょうどフリーダムが逃れるべく上昇した方向へと飛んで行き、その右腕を撃ち抜いた。

「む、無茶苦茶だ、あのパイロット!」
予想もしなかった攻撃に右腕を失わされたキラは、これ以上インパルスを侮ることができないと感じていた。
確かにディオキアでは危なかったが、フリーダムが損傷したのはオーブでダブルエックスに腕を切り落とされて以来である。
キラにとっては、ガロードとシンがつくづく疫病神に思えてならなかった。
だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
相手を殺さないですめばそれに越した事はないが、クルーゼほどではないにしろ、
それが通じる相手ではないのだとキラは考えを改めることにした。
ここで自分がやられてしまったのでは誰がラクスを守るのか、誰が世界を誤った方向に向かわせないための力になるのか、
それを考えれば、コックピットを狙ったとしても仕方ない、これがキラの出した結論であった。
キラにはラクスよりも大切なものはないのだから。

キラもSEEDを発動させて残った左腕にサーベルを構えると、今度は自分からインパルスに仕掛けていく。
片腕がないため、連続してサーベルを振るうがその攻撃は先ほどまでと違って、
どれも当たればコックピットまで切り裂かれてしまう軌道の斬撃であった。
「動きが違う…ようやく本気ってことか、馬鹿にしやがって!」
シンもフリーダムの動きが変わったことに気付くが、
フリーダムはサーベルを受け止めたインパルスに向け腰部のクスフィアスを至近距離から放つ。
VPS装甲の機体自体に大きなダメージはないが、衝撃までを緩和することはできず、シンにもダメージが来る。
だが、怯んだインパルスの目の前にフリーダムは再び迫ってきており、サーベルを振り下ろしてくる。
その斬撃を、機体を後ろに後退させて何とか回避するが、シールドを手にした左腕がサーベルに切り落とされてしまう。

「しまった?!」
徐々に押していたシンであったが、この連続攻撃には怯まざるを得なかった。
しかもフリーダムの攻撃はそれにとどまらない。
目の前にはフリーダムのサーベルがちょうどコックピットを横薙ぎにするコースで迫っていたのである。
そしてそれを後退して避けるにはタイミングが遅すぎる。
防御や回避は間に合わない、シールドもない、シンにとって絶体絶命の攻撃である。しかし、それでもシンは諦めなかった。

今、ここで自分が死んだら、家族の仇を討てなくなるだけじゃない、
ステラが最後に守ってくれた自分の命を、ステラの死を無駄にしてしまう。それだけは絶対にしてはならない。
だから自分は生きて、生きて、生き抜いてキラ・ヤマトを倒さなければならないのだ。
泥にまみれても、傷ついても、苦しくても戦い続ける強さがキラには欠如し、シンには備わっているものである。
この生きることへの執念がシンに1つの奇跡を起こさせた。

「こんなことでやられてたまるかあああぁぁぁ!」

フリーダムのサーベルがインパルスのコックピットを切り裂こうとした瞬間、インパルスは上半身と下半身を切り離した。そしてフリーダムのサーベルは空を切り、大きな隙が生まれる。
「そこだあ!」
上半身だけとなったインパルスが放ったビームは、フリーダムの象徴とも言うべき青い翼を撃ち抜いた。

背部に大きな衝撃を受けてフリーダムが吹き飛ばされる。だが、シンの攻撃はまだ終わっていなかった。
射出されていたチェストフライヤー、分離していたレッグフライヤーとドッキングしたインパルスは、
切り離したチェストフライヤーをフリーダム目掛けて投げつけ、手にしたライフルでそれを撃ちぬく。
片方の翼を失ってバランスを崩していたフリーダムはその爆発によりさらに吹き飛ばされてしまった。

これにより出来た隙はシンにとって最後のチャンスであった。
「アークエンジェル!俺に聖剣を!エクスカリバーを!」
シンはこれが最後の一撃になると確信していた。
怒りと気合で無理矢理体を動かしていたが、キラ・ヤマトという
最強のMSのパイロットの1人との戦いでシンは消耗しきっていたからである。

アークエンジェルから射出されたソードシルエットからエクスカリバーを手に取り、インパルスがフリーダムへと迫っていく。

「行け!」
格納庫にいるキッドとヨウランにヴィーノが、
「行け!」
シルエットを射出するための管制をしていたアーサーが、
「行け!」
艦内で、レイのザクに乗ってインパルスのパーツの運搬をしていたルナマリアが、
「行け!」
ヘルベルトのドムと切り結んでいるレイが、
「行っけえええぇぇ!シン!」
ドムのギガランチャーをその腕ごと斬り捨てたガロードの声がシンを後押しした。

インパルスはその機体に掛けられるだけの負荷を掛けて、備わった全ての力を出し切って加速してゆく。

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」

シンの咆哮と気迫がキラをも圧迫する。
キラも生き残るために残ったサーベルを投げ付ける。
だが、投げ付けられたサーベルはインパルスの頭部を貫き破壊したものの、インパルスの動きを止めることはできない。

シン、インパルス、レイ、ガロード、アーサー他のアークエンジェルのクルー全ての力と想いが込められた聖なる刃が
その名を世界中に轟かせて一部では英雄とまで言われたフリーダムに突き刺さり、
1つ間を置いたあと、自由という名の剣は大きな爆発音とともに砕け散った。

「キラアアアアァァァァ!」
監視役の兵士が持ってきていたモニターに映るフリーダムの爆発を見たアスランの叫びが独房に響き渡る。

「キ、キラ様!?ヘルベルト!」
「ヘイ!」
そして2機のドムは爆発が起こったのを見ると、スクリーミングニンバスを展開させた上で、
GXとグフを振り切り爆煙に紛れて撤退していった。

数十秒後、爆発の煙が晴れたところから姿を現したのはフェイズシフトがダウンしたインパルスであった。
シンは周囲にフリーダムの姿がないことを確認すると、
「ステラ…」
とだけ静かに呟いてアークエンジェルへと戻っていった。

インパルスから降りたシンを待っていたのはガロードやレイとメカニックの面々であった。
しかし、喜びの表情を浮かべている者は1人もいない。誰もがシンの悲しみを知っているからである。

「みんな、ありがと…レイ、ガロード、ごめんな、せっかく手伝ってくれたのに…」
シンは絞り出したような声で感謝と謝罪の言葉を述べて、一人部屋に戻っていった。
ガロードがシンに声を掛けようとするが、それは隣にいたテクスに制止される。
「今は1人にしておいてやれ。今のシンは例えるならティファを失ったお前と同じだ」
それでも何か言いたげな顔をガロードはしていたが、レイも
「大丈夫だ、あいつは何をしなければならないのかをわかっている。あとは時間が解決すると信じよう」
と言ったため、声を掛けるのを断念した。

アークエンジェルはこの後、ジブラルタル基地に無事到達した。
ここで、シンは新たなる愛機と出会うことになるが、新たな別れがあることをまだ知らない。

つづく
次回「でも、私、後悔したくないの」