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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第36話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:58:48

第36話「私達がすべきことはオーブを守ることです」

ラクス・クラインの演説の後、オーブ軍の中では慌しく戦闘の準備が行なわれていた。
ユニウスセブン落下未遂事件によって始まった地球・プラントの間で戦争が始まったが、オーブは、カガリという国家元首を拉致されたままだったが、ユニウスセブンを跡形もなく消し去ったサテライトキャノンと、ガンダムダブルエックスの存在を背景に、連合との同盟締結を拒否し、ロゴス崩壊後の連合・プラントの停戦条約締結の仲介に入るなどの中立国としての役目をまっとうしていたため、国力の消耗を回避できていた。
しかし、それでもカーペンタリアの戦力を侮ることはできず、国内の緊張感は高まっていた。

ガロードはオーブに戻ってきてから毎日、フリーデンの格納庫でダブルエックスの姿を見上げていた。

ガロードがアークエンジェルに乗り込んでから、ダブルエックスは、セイラン家の屋敷に移されたフリーデンに保管されたままとなっており、彼以外の人物が操縦するような事態には至っていない。
しかし、カーペンタリアからいずれ押し寄せるであろうザフトを、撃退することができるか、オーブを守りきることができるのか、ということが、守りきれなかったエスタルドでの戦いと重なって、ガロードに重くのしかかっていた。

するとそこに、ロココとナインを従えたキッドがやってきた。

「なあ、ガンダム坊や、ちょっと話があるんだけどいいか?」
「ん、何だ?」
「ロアビィのレオパルドが装着してた戦闘機はもう見たよな?」
「おう。なんでもあの戦闘機も俺達の世界の機体でガンダムと合体できるらしいな」
「…あれはGファルコンって言って、旧連邦が、ガンダムのサポート用の機体として開発したもんなんだけど、大事なのは、そこじゃない。アレを使って、一気にサテライトキャノンのエネルギーをチャージできんだよ」

「いぃ!?ってことはこの世界でもいきなりぶっ放せるってことか?」
「いや、最初っからチャージして出撃すれば、一発撃ってからドッキングして、もう一発、ってのもできる。
 どっちにしても撃つか決めるのはガンダム坊や次第だけど、これからの戦いの鍵を握るのはコイツなんだから、おいら達の責任は重大だぜ」
「…そうだよな…こっちに攻め込ませちまったら、もしかしたらまたシンみたいな奴が出てきちまうかもしれねえ。
 いきなりデュランダルのオッサンに攻撃しかけるような奴らだからな、もう何をしてきやがったって不思議はねえよ」

ガロード自身はできればサテライトキャノンを撃つことなく、これからの戦いを乗り切れればそれに超したことはないと思っているが、撃たなければならない時が来れば、サテライトキャノンを撃つ覚悟を決めていた。
無闇に撃つつもりは当然ながらないが、今、目の前にある世界が滅びるか否かの状況に近付きつつあることは、彼にもよくわかっていたし、立ち塞がるのは今まで幾度も戦ってきたキラ・ヤマトがいる勢力であることから、戦後世界におけるフロスト兄弟らと同様に、話し合いをして終わる相手でないことは明らかであった。
なお附言すれば、確かに、ガロードにとってラクス・クラインというのがどんな人物なのかははっきりとしていないが、カガリを拉致したまま、オーブに攻め込んでくるのであれば戦わなければならない、という認識を持っていた。

するとその時、キッドが思い出したように口を開いた。

「あ、そうだ、シンの奴にデスティニーの修理が終わったって伝えといてくんねーか?」
「デスティニー!?あんだけやられてたのに直ったのかよ!?」
「あったりまえだろ!俺を誰だと思ってやがる!それにレイの奴のあんな言葉聞いちまったら、ぜってーにデスティニーは直してやんねー、って思うだろ!いや、思わねー奴なんて男じゃねえよ」
「…そうだな、じゃあ俺、今から伝えて来るから、ダブルエックスの点検も頼んだぜ!」

そう言ってガロードはシンがいるアークエンジェルの医務室へ向かうべくエレカに乗り込んでいった。

その頃、オーブの行政府の執務室には、1人のオーブ軍将校の姿があった。

「トダカ、君がここに呼ばれた理由は分かっているかい?」

椅子に深く腰掛けたユウナが口を開く。

「大体の理由は…」

ユウナがトダカを呼んだ理由。それはオーブ軍内で強く存在するアスハ派に決断を迫るためである。
オーブの国民は、現実的に経済状況や政治的動向を冷静に踏まえた上でセイランを支持するセイラン派、ウズミ・ナラ・アスハが提唱したオーブの理念に忠実たるべき、とするアスハ派が半分ずつ、国内の意見の中で大半を占めている。
しかし、オーブ軍の中においては、国民全般とは異なり、多くがオーブの理念に従うべしとするアスハ派の人間が多い。
そしてトダカは軍内のアスハ派中心人物の1人であり、ユウナは、これから迫り来るザフト軍の侵攻から国を防衛するための対策を考えるにあたり、アスハ派に強い影響力を有するトダカの決断を迫ったのであった。

「なら話は早い。君は、僕やユニウスセブンから地球を救ったガロード達、ナチュラルとコーディネーターの融和を目指してその実現に大きく寄与したデュランダル議長を支持する元ザフトの諸君とともに、この国を、『オーブは他国の侵略を許さない』との理念に従い守ってくれるのか、それともカガリを拉致し、デュランダル議長を有無を言わさず武力行使で抹殺してプラントを乗っ取って、世界に新たな戦争を生み出したラクス・クラインやキラ・ヤマト率いるテロリストに与するのかを聞かせてくれないか?」

ユニウスセブン落下未遂事件によって始まった戦争が始まってから今までは、オーブは戦争に巻き込まれていなかったし、ユウナ自身がダブルエックスの力を背景にしてではあるが、結果的にオーブの理念に従った政治をしてきたことから、軍内部におけるアスハ派と大きな対立が起こることはなかった。

確かに、キラがカガリの兄弟であることを知っている一部の将校は、完全にキラ・ヤマトを敵視したうえでの政治運営を行なっているユウナのことをよく思ってはいない。
しかし、その中でもカガリを拉致したまま一向に解放しないことや、仮にも戦争を終結させた功労者であるデュランダルを突然の武装蜂起によって抹殺したこと、それが世界各国で極めて大きな批難を受けていることに鑑みて、自分のスタンスを変えるべきかを考えている者も少なくはなかった。
そして、それらの者が待っているのは、トダカのような軍内の中心人物の決断であった。

「…今少し考える時間をいただけないでしょうか。貴方はキラ・ヤマトをよく思われてはいないでしょうが、彼が『かつては』オーブを守るために戦ってくれたことを恩に感じている者もおります」

トダカも決断を迷っていた。迫ってくるのはかつての自国の恩人であり、現在、自国の元首を拉致したままの犯罪者である。
当初、フリーダムがカガリを拉致したときには、その行動を信じていたが、事態の変化は彼の予測を大きく超えていた。
ユウナによる連合との同盟締結の白紙撤回の発表、キラ・ヤマト一行の(トダカにとって)不可解な行動、武装蜂起によるデュランダルの抹殺は、トダカにも衝撃的なものであった。
彼としては、カガリは連合との同盟締結撤回後、遅くとも地球・プラントの停戦条約締結後には解放されると考えていた。
だが、その気配は一向に見当たらず、さらに、カーペンタリアではオーブ侵攻のための準備が着々と進められているという情報が日々自分の耳にも入って来ている。
そして自身は、オーブを守るための軍人であり、国民を守らなければならない立場にあることも確かである。
ゆえに彼は決断のための一押しを欲していたのである。

「…そうか。なら実際に、今までキラ達と戦ってきた者の話を聞きにいかないか?
 君もよく知った人物が今、アークエンジェルにいるから見舞いも兼ねて会いに行こう。
 彼は、キラ・ヤマトに大切な者を何人も奪われている。僕もフリーダムがオーブのために戦ったことは認めるが、そのときキラ・ヤマトが、まさに「自由」に戦ったせいで犠牲になった民間人もいるんだ」

「・・・・・・・わかりました」

「そうか、デスティニーが直ったのか…」

医務室のベッドの上で、ガロードからデスティニーの修理完了を聞かされたシンが呟いた。

「ああ、キッドのやつが頑張ってくれたんだ」
「じゃあ俺も頑張らないとな…」

インフィニットジャスティスとの死闘の末に負った傷も癒えつつあったシンは、日々リハビリに励んでいたが、愛機復活の報に元気付けられていた。
怪我のため医務室にいざるを得なかったシンの耳には、まだカーペンタリアのザフト軍の侵攻準備が進みつつあるとの情報は入ってきていなかったが、キラ・ヤマトを連れたラクス・クラインのプラント乗っ取りの情報は知っていたため、いずれキラ・ヤマトとの戦いの時が来るのだと考えられていたことから、シンはその日に向けて闘志を高めていた。

その時、医務室の扉をノックする音がして、2人の男、ユウナとトダカが入ってきた。

「やあシン君、調子はどうだい?おや、ガロードも来ていたのか」
「ああ、キッドがデスティニーを修理してくれたからそれを教えてやろうと思ってさ」
「そうか。ところでシン君、もう気付いているだろうけど、こっちにいる者に、見覚えがあるだろう?」
「久しぶりだな、元気…ではなさそうだが、また会えて何よりだ」
「トダカさん…お久しぶりです」

フリーダムの戦闘に巻き込まれて家族を失ったシンを救助し、コーディネーターであるシンがプラントに渡るよう勧めたのがトダカである。
だが、トダカはシンが家族を失ったことは知っているが、それにキラ・ヤマトが関与していたということ、シンにとって大事な人間を次々に奪っていった人間がキラ・ヤマトであることまでは知らなかった。

「シン君、それにガロード、今オーブ軍に多くいるアスハ派では意見が割れているんだ。
 君達が戦ってきたキラ・ヤマトはかつて連合の侵略からオーブを守るべく戦いに参加していたことは知っているね?」

自分の心の傷に触れるユウナの言葉にシンの表情が険しくなるが、ユウナはなおも続けて言う。

「そんなこともあったせいか、オーブ軍のアスハ派の中には、カガリを拉致して、ラクス・クラインと共にクーデターを起こしてデュランダル議長を討ってもなおキラ・ヤマトに親和的な者達もいる。
 だから、今までキラ・ヤマト達と戦ってきた君達の意見を聞かせてやってくれないか?
 本当は僕がきちんと説得しないといけないんだけど、どうにも僕はオーブ軍の軍人さん達には嫌われていてね」

ユウナの視線がトダカの方に向けられ、トダカは気まずそうな顔をする一方で、そのトダカの表情を見たシンの表情はさらに険しくなる。
シンはトダカのことを恩人であると思っていたが、その恩人が、世界で最も憎い人間に親和的だと聞かされて、裏切られた、というのに似た感覚を覚えやや呆然としていた。

「トダカさん、だったよな。あんたキラが何をやってきたのか知らねえのかよ!」

そして言葉を失っているシンを横目にガロードが噛み付く。
シンにとってもそうだが、ガロードにとっても、キラ・ヤマトのしてきた行為は、彼らの目にはとんでもないものだとしか映っておらず、オーブの軍人の思考に理解が追いつかなかったのである。
だが、ガロードの言葉を遮ったのは、他ならぬシンの言葉であった。

「トダカさん、俺の話でよければいくらだって聞かせますよ。
 と言っても、俺は絶対にあのキラ・ヤマトを許すつもりはないし、絶対に倒すと決めてますけど、それでもいいですか?」
「・・・・・・あぁ、聞かせてくれ」

それまでと異なる荒立った声と燃え上がるような瞳でトダカを威圧するかのように睨みながらシンがこれまでのこと、オーブでの式典以降の、ディオキアでの戦い、ステラとの出会いと別れ、ベルリンでのフリーダムとの決戦に、脱走したアスランと戦い、メサイアでのアスラン、キラと繰り広げた死闘を語った。

その内容は、トダカにとって、シンがキラ・ヤマトに対して好意的とは到底言えない感情を持っていることを差し引いても、今の自分の立場を変えるべきかを考えさせるものであったが、それでもまだ決め手に欠いていた。
だが、シンはなおも続ける。

「それと俺、実際にディオキアでキラ・ヤマトに会ったんですよ。そん時にはアスハもいたんですけどね」

その言葉に今度はトダカの表情が強張った。

「ほ、本当かそれは…その時カガリ様は何とおっしゃっておられたんだ!?」
「俺に、オーブに戻りたいからアークエンジェルに連れてってくれ、って言ってました。その後、そこにキラ・ヤマトが来て、俺がぶち切れて有耶無耶になっちまったんですけど、確かです。
 それに、それを最終的に邪魔したのはアスランですよ。それはガロードも見てますし」
「ああ、そいつは間違いねえ。結局、胸がでっかい女の人に連れてかれちまったけどな」

「では本当にカガリ様はオーブに戻りたいと思われている、というのか!?」
「少なくとも、キラ・ヤマト達と一緒にいようとは思ってなかったんじゃないですかね、アスハも」
「本当なのか、それは…?」
「俺はキラ・ヤマトは嫌いですけど、これでもトダカさんのことは恩人だと思ってます」
「ほら、言ったじゃないか。君達、僕を信じてくれないから」

シンが何気なく言った、カガリの言葉はトダカには、彼が求めていた「決め手」となっていた。
彼は、あくまでもアスハ派であり、クライン派ではない。
今までは、キラ・ヤマトの行動に疑問点があっても、立場を変える大義名分がなく、キラ・ヤマトの擁護がカガリの利益になる、という多くのアスハ派の考え方と歩調を合わせてきたが、セイランをあまり信じることはできないものの、オーブに戻りたい、というカガリの真意を知ることができ、スタンスを変える理由ができたのである。

「・・・・・・ユウナ様、正直私はあなたをあまり信用できません。
 ですが…私達がすべきことはオーブを守ることです。
 カガリ様を連れたまま、各地で暴れる連中からオーブを守らなければならないことも確かでしょう。
 ですから、カガリ様を救出するために我々は全力で協力させていただきます。
 ただカガリ様が戻られてからはまた考えさせていただきたい」

「それで構わないよ。今はオーブを守り、ラクス・クラインやキラ・ヤマトを倒してカガリを救出することが最優先だ。
 どちらにしてもあくまで僕は、カガリが戻るまでのワンポイントリリーフに過ぎないからね。
 ただ、カガリが戻ってきてからもし僕が彼女を蔑ろにした、と言って僕を討とうとするのなら、そこにいるガロードのガンダムダブルエックスのサテライトキャノンが僕を討とうとするかもしれないから、それに巻き込まれないように気を付けろよ」
「それは脅し、ということですか?」
「いや、どうせ見張るならしっかり見張っててくれ、ってことさ。僕は君も知っての通り信用ってものがないからね。
 ガロードやダブルエックスの力を貸してもらうためには命くらいしか担保にできるものがないんだよ。
 …そうだ、せっかくだから、今度の戦闘の指揮のサポートは君がやってくれ。
 君が僕を監視するっていうならばアスハ派の連中も納得するだろう?」
「…わかりました」

そして、ユウナはシンの方を振り向いた。

「ありがとうシン君。君のおかげだよ。でも…」

トダカを条件付であるが、引き入れることに成功したユウナがなおも続ける。

「僕は君に1つ、謝らなければならないことがある」
「え?」
「今、カーペンタリアのザフト軍がオーブに侵攻するべく準備をしているそうだ。
 ラクス・クラインが、僕の辞任やらダブルエックスの破棄やら、カガリを連れたザフト軍を受け入れろだなんて要求してきてね。
 即刻つっぱねたから、おそらくあと1,2週間で戦闘が始まるだろう…
 彼女の要求はオーブに対する侵略以外の何物でもない。オーブの理念は、他国の侵略を許さない。
 僕も君が憎んだウズミ様と同じ決断をすることになってしまった…本当にすまない…」

シンに、家族を失った時の怒り、カガリに奇麗事はアスハのお家芸だと罵ったときの怒りが蘇る。
シンが戦う理由は、キラへの復讐と、身勝手な都合を理不尽に押し付ける者から罪のない人々を守るためである。
身勝手な都合を押し付けるという意味では、かつてのウズミも同じであり、それと同じことをするのではシンには、ユウナのやっていることも、身勝手な都合の押し付けであることに変わりはない。

「じゃああんたも結局は理念、理念って奇麗事で関係ない人達が傷付いてもいいってのかよ!?」

「国民の避難はもう始めている。あと数日で完了するはずだ。かつての君達のような民間人の犠牲を出しはしない。
 戦力にしても、カーペンタリアの戦力は侮れないが、今のオーブには、他の国と違って力を温存していたオーブ軍、ウィッツ、ロアビィ両氏や彼らが連れてきたザフトの精鋭部隊、そして君もよく知るガロードとダブルエックスがある。
 決してザフトの部隊を退けられないような戦力ではないと僕は思っている、いや守りきれると確信している。
 それに、僕達はウズミ様と違って、ここで力尽きることは許されないんだ」

ユウナは、自分がした決断は自分が忌むべきものと考えていたウズミと同じものだと分かっていた。
だが、その決断をするにあたっては、ウズミとは全く異なり、相応の対応策を講じたつもりであり、自分が死んで物事が解決するなどとは考えていない。むしろ、連合各国が疲弊している今、表立った行動は理念の縛りがあることからできないが、これまでのように傍観に徹することはできず、プラントが攻めて来るからとはいえ、戦う決意を固めていた。

「ディオキアで言ってたことは変わってないってことか?守りきれると思ってんのか」
「ああ、もちろんだ。そのために準備はしてきた。せっかくだから君もトダカと僕の行動を見張っておいてくれ。
 戦闘がどうなるかは君も気になるだろう?司令室に特等席を用意しておくよ」
「そうか…わかったよ」

シンの口からは虚ろな返事が漏れ出していた。
本当であれば自分も戦いたかったが、今のところは戦力としては見られていないことは明らかである。
そして、自分でも、戦える状態にあるとは考えることはできないことはわかっている。
戦いたい、という気持ちだけが先走っている状態にあるといえよう。自分と同様に死闘の末に深い傷を負った愛機が蘇ったのと異なり、
自分の体が未だに回復しきっていないことに、無力感を覚えずにはいられなかった。

その頃、イザークとディアッカはエターナルの格納庫の一画に来ていた。
彼らは、自分たちがラクス軍についたことで、デュランダルを討つことに多大な寄与をしたとして、最新鋭機の授与がされることになり、また、ヤキン・ドゥーエの後、緑服に格下げになっていたディアッカは、黒服へと昇進していた。
そして彼らは、その最新鋭機の授与のために、ダコスタに連れられ、エターナルに来ていたのである。

「ラクス様からあなた方に贈られることになった機体はこちらです」

ダコスタが指差す先には、グレーの色をした2機のMSの姿がある。その色からフェイズシフト装甲タイプのMSであることがわかる。
そして、その機体の姿は、彼らもよく知った機体とほぼ同一のものであった。

「グゥレイト!まさかこいつとは思わなかったぜ」
「こ、この機体は…!?」

2人から思わず驚きの声が上がっていた。

「はい、ジャスティスとフリーダムです。といっても、ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの運用データを基に最終調整を行なって完成させたジャスティス、フリーダムの量産試作機ですけど。
 さすがにストライクフリーダム、インフィニットジャスティスほどの性能はありませんが、『試作機』のお約束通り、最新鋭のデータと技術を使ってますからオリジナルのジャスティス、フリーダムよりも性能は遥かに上です」
「ほ、本当にラクス様がこれを俺達に授けてくださるというのか!?」
「ええ、あなた方のさらなる働きに期待されておられます。それでは私はこのへんで」

その場から離れていくダコスタに目もくれず、イザークはジャスティスとフリーダムを見上げていた。

「イザーク、よかったな。今度こそフリーダムに乗れるじゃないか」
「・・・・・・・」
「おいおい、感無量で言葉なしかよ。さっそく乗ってみようぜ」

ディアッカがイザークに祝いの言葉を掛けて、ジャスティスの方へと向かっていく。
だが、それを遮ったのは他ならぬイザークの声であった。

「ディアッカァ!一体、いつ、誰がフリーダムなんぞに乗ると言った!?」
「おいおい、どういうことだよ、そりゃ。元々、フリーダムにはお前が乗るはずだったんだろ?」
「それは昔の話だ。それに…お前に接近戦用のジャスティスを乗りこなせるとは思えん。
 ジャスティスはあいつの機体だったんだ。ならあいつのようにジャスティスを使えるのは俺くらいだろうが!」

ディアッカの言うとおり、元々、フリーダムはイザークが搭乗する予定だったと言われている。
ラクス・クラインがフリーダムを奪取してキラに与えてしまったため、結局、イザークがフリーダムに乗ることはなかったが、イザークにとってフリーダムという機体は特別の想いを寄せていた。
にもかかわらず、イザークがジャスティスに乗ることを選んだのは、メサイア防衛戦でウィッツ達を足止めができたにとどまり、アスランの手助けに向かうことができず、彼が討たれるのを防げなかったことへの後悔の念と、彼への申し訳なさがあったからである。
つまり、イザークは、アスランの分まで、かつてアスランが乗ってその名を轟かせたジャスティスに乗ることで彼の分まで戦うことを決意していたのであった。

「なんだよ、今日は随分と素直じゃないか。じゃあフリーダムは俺が乗っていいんだな?」
「ふん、好きにしろ。俺は砲撃戦は好かん!」

この日、この後プラントの共同墓地に2人の姿があったことは言うまでもない。