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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第4話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:48:52

第4話「どうか私たちに力を貸して欲しい」

ツインサテライトキャノンがユニウスセブンを消し去った映像は全世界に一斉に配信された。
しかし、その詳細を記録した映像は存在せず、人々の間に行き届いた情報は、ユニウスセブンがツインサテライトキャノンにより消し去られる映像と、そのツインサテライトキャノンがオーブより発射されたという事実、そしてフリーデンの守護神、炎のMS乗りガロード・ランという男の存在であった。

世界中のマスコミは論評、推論、非難から出鱈目なでっち上げまで様々な情報を流し続けた。
オーブの決戦兵器とそのパイロット、異星人の蝶技術を応用したスーパーロボット、第六文明人の遺産と噂のスーパーコーディネーター、オーブ警察の恋する刑事などなど挙げればキリがない。

そのような情報を聞いて最も驚いていた人間の1人が、静かな高級別荘地で年代物のワインを口にしているこの男、ブルーコスモスの母体となった軍需産業複合体を統べる者、ロード・ジブリールであった。
彼は、その強大な力を持つ組織の中心人物であり、今回世界に流れている情報の1フレーズから大きな恐怖を感じていた。

フリーデンの守護神、「炎のMS乗り」ガロード・ラン

ということは、ユニウスセブンを消し去った兵器を使っている男は「MS」のパイロットであり、その兵器とはMSであると考えるのが妥当であろう、彼はそう考えていた。
ユニウスセブンを一撃で消し去る兵器、というだけでも十分である。
にも関わらず、その兵器はMSに搭載されている、というのだ。
もしMSであれば、それ即ち、操縦による移動が可能なのであり、数に物を言わせた物量戦を仕掛けても、その兵器には「死角」はほとんどないことになる。
なにせ、向こうは動くことによって死角を容易に消し去ることができるのだ。

「ウナトめ…あのようなものを隠していたとは…」
膝上の猫が危険を感じ、さっとジブリールから離れる。ジブリールは立ち上がり、新たなワインを手に取ろうとしたとき、彼のPCにメールが届く。
「オーブはしばらくは後回しにせざるを得んな。まずはあの宇宙の砂時計を1つ残らず叩き落してくれる…」

連合がプラントに対して、ユニウスセブン落下を企んだ犯人の引渡し、ザフトの解体、現政権の即時引退、自治権放棄等の無理難題をふっかけたのはこの後すぐであった。

その日、カガリはユウナに連れられ、オノゴロの基地に停泊しているフリーデンへ来ていた。
ユウナに言われたように、アスランを随行させず、護衛はユウナ付きのSP数名だけを伴ってのお忍び訪問である。
そして慣れた足取りでフリーデンのブリッジに案内される。
ブリッジにいたジャミル、サラ、トニヤ、シンゴ、テクスがカガリと挨拶を済ませ終わったころ、バタバタとした足音と共にガロードがやってくる。

「いや〜悪ぃ、悪ぃ、すっかり寝坊しちまったぜ」
瞬間、サラの目がまさにハゲタカの鋭さを備え、ガロードを殺さんとばかりの視線で睨み付ける。
まさに雷が落ちる直前の空気を察したユウナが口を挟んでカガリを紹介する。
「ガロード、紹介するよ。こちらが我がオーブの代表、カガリ・ユラ・アスハだ。 そして僕のハニーでもある」
悪乗りして肩を抱くユウナの手を払いカガリが
「今紹介があったが、オーブ首長国代表、カガリ・ユラ・アスハだ。 この度は非常に世話になった。地球に生きる人間の1人として心から礼を述べたい」
と口を開き、手を差し伸べる。
「ガロード・ランだ。よろしく」
カガリはガロードを力強いと感じた。
自分とほとんど代わらない年齢の少年にすぎないはずなのに、その目、いや体全体からは自分やアスラン達にはない、力強い生命力を感じさせると思った。
「成るほど、あの通信から聞こえてきたのと同じ声だな、炎のMS乗りさん。
 もしよければお前達の話を聞かせてくれないか?聞かれ飽きたかもしれないが頼むよ」

「そうか…お前達の世界はまさにユニウスセブンが落ちた後のような世界だったんだな」
話を聞き終えたカガリが口を開く。
宇宙軍のコロニー落とし作戦、それを迎え撃つ地球軍。
地球と宇宙とで争いあった先にあった世界は、力がものをいう弱肉強食の、荒廃しきった世界。
その中で生き抜き、戦い抜いてきたフリーデンの乗組員達。
そして託された力、ガンダムダブルエックス。

作り話にしては出来過ぎである。彼らの言っていることはおそらく本当なのだろう、そうカガリは思った。
だが、彼女の心に最も強い衝撃を与えたのは、手にした強大すぎる力、使い方次第では正に神にも悪魔にもなれるほどの力を、かつての過ちを繰り返させないためにあえて使うことを決意したガロードの選択であった。

「カガリ、彼らの話を聞いてもなお強大な力そのものを否定するのかい?」
父、ウズミが護ろうとした理念、理念を護ろうとして失われた多くの命、それを護るために必要なもの…・・・
強大すぎる力は誤りなのか、それとも力はただ力なのか…・・・
そこへ今まで沈黙していたジャミルが重い口を開く。
「アスハ代表。失礼かもしれないが、この世界はまるで我々の世界が滅びる前のような状態なのだと思えてなりません。
 私は…我々がいた世界を崩壊させた引鉄を引いた男としては・・・・・
 あの悪夢が目の前で再現されるのを2度と見たくはないのです」
これを聞いたカガリの腹は決まった。
「フリーデンの皆さん、どうか私たちに力を貸して欲しい。
 私はこの国を再び焼き尽くすようなことはしたくないんだ」
「私たちでよければ」
ジャミルが手を差し出し、それをカガリが握り締める。
力強い握手だった。
そしてその横ではユウナがガロードと堅い握手をしていた。
「ガロード、もし僕達が過ちを犯し、君たちの世界のように、世界を崩壊させようとしたならば、 そのときは、迷わず僕の背中を撃ってくれ。それをする権利が君にはある」
「へへっ、安心しろよ。その前にぶん殴って止めてやるからよ」
「ありがとう。僕達の世界にとって、君達は希望の星だ」

その晩、屋敷に戻ったユウナは父ウナト・エマ・セイランと対峙していた。
「父上、僕は連合との同盟締結の白紙撤回を明日の閣議で議題にします」
それを聞いたウナトは、微動だにせずユウナをまっすぐに見ていた。
世界の表も裏も、酸いも甘いも知りつくした、自分より格段上にいる政治家から発せられるプレッシャーに必死に耐えながらユウナは父の言葉を待つ。

「ダブルエックスか?」
「はい」
「だがあれ一機でどうにかなる保障はないぞ」
「体を張ってそれをどうにかするのが我々の仕事です。カガリがいれば国民世論も味方につきます。
 それにまもなく連合はプラントに総攻撃をかけ、疲弊するでしょううまく立ち回れば十分勝算はあります」

「…お前は何をしたいのだ?」
「僕の手でオーブの理念を護り抜くこと、そして、キラ・ヤマト、アスラン・ザラに勝つことです。
 かつてウズミ様は最高のコーディネーター達を使っても理念を護り切るどころか国を滅ぼしてしまった。
 そして、彼らは僕らセイラン家を毛嫌いして仲間だったカガリに色々言っているのかもしれません。
 しかし、カガリに僕を認めさせ、それと同時に、かつて彼らの力で護りきれなかったこの国を 僕とダブルエックス…いやガロード・ラン達で護りきったときが、僕が彼らに勝ったときだと思っています」
「お前は一生その身を、政治、しかも統治者の立場からの政治という世界で最も熾烈な戦場の1つの中に置き続ける覚悟はあるのか?」
ウナトが、ユウナの空いたグラスにウィスキーをなみなみと注ぐ。
それに対し、ユウナはグラスを手にして一気に口の中へと流し込み、グラスを置くと同時に言った。
「貴方の息子として生まれた日から覚悟はしております」

それを聞いたウナトはおもむろに部屋の窓を開け、夜空を見上げる。
「根回しは済ませておく。この親不幸者めが」
サングラスの中にある彼の目からは一筋の涙がこぼれていた。

翌日、連合との同盟の白紙撤回が閣議決定され、その発表は後日、戦没者慰霊の式典の中で行なわれることとなった。

他方で、式典が行なわれる予定となった慰霊碑がある海岸では
ある運命の出会いがなされていたのだった。