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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第40話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:59:52

第40話「神にでもなったつもりか!」

ユウナによる電波ジャックが行なわれた直後、当然ながら大きな混乱に見舞われていた。

ラクス・クラインは反論を行なおうとしたのだが、それはバルトフェルドによって強制的に止められていた。
その理由は、彼女に反論させたとしても、実際に攻め込まれたオーブ、デュランダルを英雄視する地球各国の反感や怒りの火にガソリンを注いでプラントとそれ以外の国の関係をさらに悪化させるだけでなく、国内で息を潜めているデュランダル派をも刺激することになりかねないため、プラントを乗っ取ってから間がなく政治基盤が安定しているとは到底考え難いラクス・クライン政権にとって大きなダメージになりかねないとバルトフェルドが判断したためである。

「バルトフェルド隊長、なぜ止めたのですか?あれでは私達が間違っているかのような印象を与えてしまいます」
「ラクス、実際に僕達がオーブを攻め込んだことは事実だ。今はその直後だし、世界全体が感情的になっている。
 言い返したところであれがセイランの罠という可能性だってあるんだ。冷静になれ」
「私は冷静です。私達はカガリさんのために、世界の平和のためにやむにやまれず軍を出したのです。
 それを、あのような物言いを放って置いたのでは世界はやはりデュランダルこそが正しいものなのだという誤った認識を持ってしまいます」
 「自分だけが唯一正しいというような考えは控えろ。それではナチュラルや地球の反感を買うだけだ。
 それこそセイランの思う壺じゃないのか?」
「私達がセイランのやり方などに合わせる必要はありません。
 カガリさんのため、世界のために、セイランを排除することを私達は決めました。
 次になすべきはそれをやり通すことです。バルトフェルド隊長はセイランを排するための次の策を早く考えてください」
「無茶を言うな、そんな体力は今のザフトには残っていない。
 自分に従わない者全てを力で殲滅すれば済むという問題ではないだろう?
 それに、オーブは今回の報復にプラントにサテライトキャノンを打ち込むことだってできたんだぞ。
 これからは動くにしてもさらに慎重にならなければプラントが潰されるぞ」
「今の世界はデュランダルとセイランに操られているのです。セイランをこのままにしてはおけません」
「…わかった。では考えておくが、すぐというわけにはいかない。アルザッヘルを落としたキラ達を戻して休ませなければならんからな」
「わかりました、それでは次の作戦もお願いしますわ」
「ああ…」

バルトフェルドは疲労を顔に浮かべながら部屋を出て行った。
そして彼らの応酬を見ていた男が事態をさらに悪化させていくことになる。

「プラント側はこれ以上動かないようです」
「ふう…」

電波ジャックを終え、プラント側の動きがないことから少し息をついたユウナの声が響く。

「花を何度でも吹き飛ばすか…」
「なんか俺達が初めて会ったときのこと思い出すな、シン」
「…そういえばそうだったな」

オノゴロの慰霊碑でシンとガロード、そしてキラが初めて出会ったとき、
海水を被った花を見た3人はそれぞれ異なることを口にした。

ガロードは、再び海水を被らないようにすべきだと述べ、シンは、どうせ植えてもまた人は吹き飛ばすと言い、キラは、それでも花を植えると言ったのである。
ガロードとシンの言葉の裏には別の意味が含まれており、
ガロードの発言の趣旨は、彼がカトックから託された言葉である過ちを繰り返させないというもの、シンのそれは、失われたものはもう戻ってこないのだということ、を示していた。
そして今回のユウナの言葉には、平和というものは断じて誰かが1人で決めたり、押し付けるものではない、というものであった。

「このまま奴らの思い通りにはさせねえ、あのラクスって野郎にオーブを潰させてたまるかよ」
「ああ、あのピンク色の勝手にさせてこの国の人間を傷つけさせる訳にはいかないしな。
 それにあのクソ野郎と戦ってれば必ず奴が…キラ・ヤマトが出てくる」
(それにオーブには父さん母さんやマユとの大事な思い出の場所もあるしな)
「これは頼もしい。君たち同様、僕もこれからは今まで以上に厳しい戦いの中に身を置くことになったが、君達の期待を裏切るようなことはしないつもりだ」
「ほう、随分と大きく出たな、この若僧めが」

思わぬところから聞こえてきた声にその場にいた全員が声の主に視線を向けた。

「父上、どうなされたのですか?」
「あのような大それたことを言ってのけたバカ息子の顔を見に来ただけだ」
「これはこれは…凶悪極まりない極悪テロリストに正面から戦いを挑んだ英雄の後継者に酷いじゃないですか?」
「ふん、よくもまあそんなことをぬけぬけと言えたものだな。あんな盗人の小娘が国など治められるものか。
 このまま無視を続けていればあんな世間知らずの青臭いガキの玩具になった国などいずれ自滅するわ」
「…父上、わかっておいでなのでしょう、ロード・ジブリールが死亡したことの意味を。下手な猿芝居はやめましょう。
 閣議の承認もコープランド大統領への報告も済んでいます。それに、ここにいる彼らには我々の真意を伝えておかないと、ラクス・クラインの前に僕達がサテライトキャノンで吹き飛ばされますよ?」
「なあユウナさん、どういうことだよ、そりゃ?」
「どうせ政治家連中のいつもの化かしあいだろ」
「じゃあ一体どんな化かしあいなんだよ?」
「いや、それは…」

キョトンとしているガロードがシンに尋ねるがシンも言葉に詰まっていた。

「ガロードには以前少し言ったかもしれないけど…」

ラクス・クラインがデュランダルを討ったことによってスカンジナビアを除く
地球上の国のほとんどではラクス・クラインへの批判・批難の声が爆発的に高まっていた。
元々エイプリルフールクライシス当時の議長として地球中の恨みを買っていたシーゲル・クラインの娘であるラクス・クラインが、ロゴスを倒して地球上の国を解放したギルバート・デュランダルを、突然の武装蜂起によって殺害した、という事実はクラインへの潜在的反感と相まって、ラクス・クラインへの猛烈な批難・批判を生み出していたのである。

ただこの反ラクス主義とも言うべき世論の流れは、些細なことから反コーディネーター主義というブルーコスモスの思想に極めて近いものへと変貌する危険を内在するものでもあったのである。
そして今回、ブルーコスモスの親玉的存在であったジブリールがラクス・クラインによって殺害されたことにより、地球上の過激派ブルーコスモスが、現在地球を覆っているラクス・クラインへの敵意を巧みにコーディネーターへの敵意にすり替えることによって、デュランダルが実現しようとしたナチュラルとコーディネーターの融和が達成できなくなるおそれがあったのである。

再び地球・プラントに分かれて戦争を始めたのでは本当に人類が滅びてしまうおそれがあることを実際に一度滅んだ世界から来たガロードやジャミルと接したことから強く危惧していたユウナは、ブルーコスモスが具体的な行動に移る前に、ナチュラル・コーディネーター共通の、人類共通の敵がいる。
それは、傲慢にも己を絶対視して自らの目的を武力でしか達成しようとしないラクス・クラインなのだと、一度明確に世界に示しておく必要があると考えていた。
そして、コーディネーターであるデュランダルがロゴスを倒したことから、コーディネーターによる一方的な統治に世界が移行するのではないかという懸念も少なからず存在していたため、オーブの理念の範囲を超えることはできないが、ナチュラルの国家の集まりである連合各国が疲弊している今、デュランダルによっておそらく意図的に選ばれた自分がラクス・クラインと戦わなければならないのだと考えていたのである。

これらのことを考えていために、ラクス・クラインが全世界に向けて声明を出す機会を利用したのであった。

「…ということなんだ。これで納得してくれたかな?」

「…世界って難しいよな。一歩間違えればすぐ戦争になっちまう」
「そうだね。だけど、僕はラクス・クラインを倒せばひとまずの平和は来ると確信している。
 この世界は2回も大きな戦争をこの3年でしてきたんだ、世界の国々はもう限界に近い。
 同じ人間どうし、ナチュラルとコーディネーターという枠組みにこだわっている場合じゃないんだよ、もう」
「同じ人間か…そういやシンにも似たようなこと言われたっけ…」

ガロードは少し自分がこの世界に来た意味を理解し始めていた。
ガロードとティファ、そして仲間達と、ニュータイプという概念。
だが、ティファもジャミルも、人工ニュータイプのカリスも人間であることには変わりはない。
つまり、ガロードは1つの答えに辿り着きつつあったのである。

「そういやユウナさん、この後、俺達はどうするんだ?」

思い出したようにシンがユウナに尋ねる。

「僕は来週の定例会見で袋叩きさ」
「あんたの都合なんて聞いてないっス」
「反省文1000枚書かせるよ?」

反省文という言葉にシンがビクリと反応した。
アスランと衝突したとき、ステラを連合に返したときにタリアに、山のように書かされた反省文の記憶が蘇ったのである。

「…すいませんでした。自分達はこの後どこで戦うのでありますか?」
「準備が出来次第、君達には宇宙に出てもらうことになる。連合宇宙軍が大きな痛手を負った今、衛星軌道の守りを早急に固める必要があるからね。それにカーペンタリアもすぐには動けないだろうし」

(奴との決戦は宇宙か…)

ユウナの言葉に思わず心の中でシンは呟いていた。

「ふう…」
自分の仕事部屋に戻ってきたバルトフェルドはユウナと同じように大きく息をついた。
今、彼が置かれているのはかなり微妙な立場である。
確かに彼はプラントの中でも要職といえる役職にあることは間違いないのだが、彼の意見が通るかと言えばあまり通るとはいえない。

「失礼します」

そして彼の下にラクス・クラインに極めて忠実なしもべがやってきた。

「どうしたダコスタ君、そんな厳しい顔をして」

しかし、マーティン・ダコスタの顔はあまり冷静そうな顔をしているようには決して見えなかった。

「隊長は甘いです!あんな演説を許していいんですか!?それにラクス様に失礼じゃないですか!僕達は一刻も早くカーペンタリアと月の部隊を再編成してオーブに下ろしてセイランを潰しましょう!」
「ふざけたことを言うな。そんなことをしたら今度こそサテライトキャノンで吹き飛ばされるのがオチだぞ」
「それなら分散させて降ろせばいいじゃないですか!あんな兵器を連射なんてできませんよ。
 いざとなったらネオジェネシスで…」
「いい加減にしろ!そんなことをしたら連合に核を使ってくださいと言っているのと同じだろうが!
 それにあのラクスがネオジェネシスのことを知っても首を縦に振るわけがない!
 サテライトキャノンやダブルエックスについてだって、オーブから情報がほとんど入ってこないんだ。
 オーブ国内や軍内部で徹底的にクライン派が排除されてしまたんだからな!」
「ですからラクス様のためにはなんとかしてオーブを…」
「お前もラクスも相手を滅ぼす以外のことを考えろ!神にでもなったつもりか!」

バルトフェルドとダコスタ、彼らの関係はかつての大戦から続いてきた理想的にも見られる上司と部下の関係だと周囲からは考えられているが、今、彼らの根本的な思想の違いが2人の関係に大きな影響を与えていた。
バルトフェルドが当時の新造戦艦エターナルに就任したとき、生粋のクライン派軍人であるダコスタの誘いを受けて三隻同盟に加わることを選んだが、それは相手を殲滅するまで戦いを続け、報復合戦の下に殺し合いを続けるという構図を何とかして止めたかった、という想いがあった。
それ故に、ラクスの、自分に従わない者は殲滅されて当然だ、とも見える考え方に疑問を抱き始めていたのだが、他方で今まで自分がラクスに手を貸してきたのも事実であり、それを考えると、ある程度自分を殺さざるを得なかった。
そのため彼は今は、プラントの要職にある人間として、プラントの利益を考えて行動することにしていた。

他方、ダコスタはクライン派の中でもラクス・クラインの利益を何よりも最優先して考えるいわゆるラクス信者と呼ばれる人間に分類される人間であり、
彼にとってはバルトフェルドの行動に納得のいかない日々が続いていた。

つまり、中長期的に「プラント」の利益を考えるバルトフェルドと、ラクスの利益を考えるダコスタ、ここに来て意見の喰い違いが生じてきていた。

「なら隊長はこのままセイランをのさばらせておいていいんですか?
 ラクス様のためにも早く次の作戦を考えないと!」
「いい加減ラクスと同じことばかり言うな、今はオーブに攻め込むよりも国内の安定と、物資の確保をすることの方が先だ!
 市民を餓えさせるつもりか!?今の僕達はラクスのことばかり考えている訳にはいかないんだぞ!」
「…わかりました」

当然ながら、内心ではダコスタは納得していなかった。
しかし、彼が本来得意としているのは具体的な作戦の立案ではなく、その人脈の広さと交渉術等、所謂裏方としての仕事であり、自分でラクスのために作戦を立てることができない以上、これ以上バルトフェルドに食い下がることができなかったのである。

「ふう」
(反吐が出るね、まったく)

記者会見の時間を前に、ユウナは、プラント国内向けに発信されたプロパガンダ放送を録画した映像を眺めていた。

「スーパードラグーンを駆使した一斉射撃により、多数の目標を同時に撃墜するストライクフリーダム。
 しかも精密射撃によりコックピットへの直撃を避け、行動力のみを奪っている。
 『命の奪い合い』という戦場の理を超越したその行動はあたかも人の邪心のみを切り裂く魔法物語上の剣のようだと、この世界の戦場に新たな聖剣伝説を生んだ。そして、そのストライクフリーダムを駆る『聖騎士』キラ・ヤマトは、前大戦でラクス様に命を助けられて以降、フリーダムに乗って偉大な歌姫ラクス様が願われる平和のために戦ってきた騎士であり、常にラクス様の最も近くでラクス様を支えてきた人間である。
 彼はこれからも終生ラクス様に最も忠実なナイトとしてプラントのため、
 そしてラクス様のためにその聖なる剣を振るっていくに違いない」

「連合との戦争が激化する中で、プラントの自由と守り、正義を実現するために作られたフリーダムそしてジャスティス。
 世界の破滅を企んだデュランダルから世界を守るため、ラクス様の手によって2振りの剣は蘇った。
 蘇ったジャスティスを駆るのは、ラクス様のために、世界のために戦うという、亡き親友アスラン・ザラの遺志を継いだエザリア・ジュール元最高評議会議員の息子、『白髪鬼』イザーク・ジュール。
 彼はラクス様のためにその力を戦場で遺憾なく発揮し、常にラクス様の、そしてフリーダムを駆るのは同じくタッド・エルスマンの息子、『黒炒飯』ディアッカ・エルスマン。
 仲間のために気さくに手料理を振舞う彼は多くの部下からの厚い信頼を得ているのである」

(炒飯って何だよ、炒飯って)

定例会見の時間が来たのを確認して、ため息をつきながら会見場へと向かっていった。

会見で主たる論点になったのは実質的なプラントへの宣戦布告に近い電波ジャックの是非、ユウナが親和的態度を取るデュランダルが唱えたデスティニープランへの見解の如何、今後のオーブの方針、特に外交面におけるものであった。

「あのような形で意見表明をしたことについてはいかに考えているんですか?」
「あれは我が国の断固たる意思をすみやかにするためのものです。
 これについては閣議の承認を受けた上で、オーブの理念に基づく正当な意見表明だったと考えております。
 ラクス・クラインはアスハ代表を拉致し、デュランダル議長を殺害した卑劣極まりない犯罪者であり、そのようなテロリストの演説を遮ったことに大きな問題があるとは考えておりません。
 我が国は、地球の各国と同じく、今のプラントはテロリスト達に不法に占拠されている状態だと扱う立場を変えるつもりはありません。
 そして、私達の方針はご存知の通り、地球の各国の支持も受けております」

「では連合各国と、自称プラント政府と対決するということでしょうか?」
「オーブは他国を侵略しない、という理念を持っておりますので、プラントに攻め込むようなことはしません。
 ですが、アスハ代表の拉致は我が国の主権を侵害するもの以外の何物でもなく、アスハ代表の解放を強く要求していくことは変わりありません」

「デュランダル議長の提案されたデスティニープランについては?
 セイラン代表代行はデュランダル氏を支持されているようですが、デスティニープランを否定したラクス・クライン氏に対してどのような主張をなさるつもりですか?」」
「まずデュランダル議長が唱えたのはあくまで法案にすぎません。職業の貴賤などの問題があることも否定できません。
 しかし、これからどのような形で、どのような内容にするのかについて、全く議論がされる前にラクス・クラインは無知と独特の歪んだ思考による判断に基づき、卑劣なテロリズムによってこれを打ち壊したものといえます。
 それにデスティニープランは国際企業の集まりと言う側面をも有していたロゴス崩壊に伴う世界的経済不安を見越した職業安定政策という性格を持っていたことも否定できません」

「形、内容というと?」
「まず、デスティニープランという制度を導入することを強制するか否かという問題があります。これはいわば入り口の問題です。
 次に、導入つまり遺伝子による適職審査をするとして、その職への就職を強制するのか否かという問題があります」

「では仮に強制するのだとしたらどうですか?」
「仮にですよ、仮に。仮に強制するのだとしたら問題外です。職業選択の自由を侵害するものになるおそれがありますし、一定の職業への就職を制度として強制した国は滅びるのだということは歴史が示すものだといえましょう。
 しかし、仮に強制しようにも、あくまでデスティニープランは政治部門の主張したものにすぎません。
 強制した後に司法府がいかなる判断をするのかは、政治部門が口を出す問題ではありません。
 政治がいくら口を出したとしても近代国家であれば司法権の独立がある以上、強制が司法に覆される可能性もあり、どちらにしてもラクス・クラインの行なった行為は否定されなければならないでしょう。
 それに強制することは、私は不可能だと思います」

「どういうことですか?」
「そもそも、遺伝子でどこまで具体的に適職判断をするかがはっきりしない以上、突っ込んだ判断はできませんが、職業というのはその時代の社会構造に大きく左右されるものだといえます。
 そして昔ならともかく、現在はある企業グループが複数の、様々な事業を展開し、そのグループ企業の間で人材交流が行なわれているだけでなく、ある企業が別の企業を買収して事業の範囲を広げるなどして、ある職業と別の職業の境界線が曖昧になっています。こうした構造が社会に存在している以上、それに逆行するような制度を強制することができるとは考えられません。
 別の例を出せば、ある人間が料理人に適していると判断されたとして、その料理する食材を調達しようとしたが、他から調達できなかった場合、自ら食材を栽培・飼育することは許されなくなるのでしょうか?
 これは農業や畜産業の仕事になると思いますが、適職と判断された職業を実際に遂行するために必要不可欠な別の職業に分類されうる職業に手を付けることを禁じられたのでは、そもそも就職を強制された職業を遂行できなくなってしまうのではないでしょうか?」

「とすればサイドビジネスなどもできなくなるのではないか、ということですか?」
「その通りだと思います。また、ある時代になかった職業が、時代の経過とともに生まれることがあると思います。
 例えば今でこそ、プログラマーやアニメーター、テレビ局の構成員などは当然のように存在していますが、そのような職業が社会に定着するたった100年前には存在していなかったとはずでしょう?
 つまり、何が言いたいのかというと、大げさに言えば、ある職業への就職を強制できることが可能だと考えること自体が、社会構造に対する無知を自ら曝け出しているのではないでしょうか、ということです」

「セイラン氏のデスティニープランに対する意見はわかりました。
 ですが、一応正式に最高評議会議長に就任したラクス・クライン議長とプラントを一切認めないというのは適切なのでしょうか?
 またラクス・クライン議長からの要求を一切聞き入れないことが本当に適切なのでしょうか?」

ユウナは、彼にとって多少耳障りな質問をした記者に目を向ける。
その記者は、オーブ国内では唯一、ラクス・クラインを支持するモーニングサンタイムズの記者、ミリアリア・ハウであった。

「ラクス・クラインが卑劣な犯罪者であり、テロリスト以外の何者でもない、というオーブのスタンスは何度も説明致しました。
 また、仮にラクス・クラインの要求をある国の正当な要求だったのだとしても、それがオーブの利益と反する場合には、国益同士のぶつかり合いがそこに生じることになるのだと思いますが、国同士の利益がぶつかるという外交の場面でまず行なわれるべきは、双方の国家の代表を通じての交渉や駆け引きだと思います。
 戦争という事態を招く武力行使は外交における手段の1つでしょうが、自国の要求が聞き入れられないからといって突然、武力行使するような存在こそ、絶対的な間違えを体現する存在だと思います。
 旧時代に悪の枢軸と呼ばれた国でさえ、巧みに交渉や駆け引きを行なっていたというのに…
 先ほど申しましたように、ラクス・クラインは卑劣なテロリストに過ぎず、その要求などを受け入れるのが、一主権国家としてなすべきことであるとは考えられません。それに…」

「それに、何ですか?」

「ラクス・クラインは君達のようにどうして言葉で言ってこないんでしょうかね?
 確か君はかつての三隻同盟に参加してラクス・クラインの近くで仲間として戦っていたそうではないですか?
 それに確か、ザフトの『黒炒飯』という男と親密だったとも聞く。
 きちんとまずは話し合ったり、交渉をするべきなのではないですか、と伝えておいてくれませんか?
 あ、失礼、これはプライバシーの侵害ですね。申し訳ない」

「………」
「そろそろ時間ですので失礼」

そう言って、ユウナは会見場を後にした。

一方、自室で自分の下に上がってきた書類に目を通していたダコスタは、ある報告書に目を止めた。
それは、月軌道に放置されていた、レクイエムというジブリールが用意していた兵器に使われる予定だったという廃棄コロニーが発見されたということであった。

「もう、こんなものをどう処分しろって言うんだよ…月に落ちたり、
 ユニウスセブンみたいにテロリストにどうかされたら大変じゃないか…落ちる…メテオ…そうだ、この手があったか!」

そう言ってダコスタは急いで金で動く傭兵や、自分が信頼できる過激派のクライン派に連絡を取り始めた。

「正規に動けないなら別の方法があるじゃないか!」

彼が考え付いたのは、廃棄コロニーを、金で動く傭兵や、身元を隠せるクライン派の手で、廃棄コロニーまたはその破片をオーブに落とすというものであった。
あくまで「テロリスト」がやったということならば、プラントの仕業ということができず、人員や物資の融通は、現在プラントの主要なポストを押さえているラクス信者達を使えば、記録上の数字をいくらでも改竄して物資を回せるのである。
こうしてダコスタが独断で仕掛けるコロニー落とし作戦の準備が着々と進められていくことになったのであった。