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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第42話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 14:00:27

第42話「ティファ・アディールって1人の女の子を守りたいんだ」

廃棄コロニーの迎撃に成功したガロード達は補給のために一旦オーブに戻ってきて、
そのままいつものようにユウナの執務室に足を運んでいた。

「ご苦労だったね。だけど君達のおかげで地上の人間に死人は出なかったのも確かだ。どうもありがとう」
「いや、俺達はあんなモンが落ちたらどうなるのかって知ってるしよ…でも胸糞悪ぃったらねーぜ」
「結局、プラント側の正式発表は、『正体不明のテロリスト』の仕業だそうだ。
 ミラージュコロイドや廃棄コロニーを2基も調達してる時点で大体の正体…
それなりにザフト内部に影響力を持ってる人間の仕業だってことは誰にだってわかるんだけどね。
 まあラクス・クラインとその側用人は正体がはっきりしてるテロリストで、
 その他のラクス信者が正体不明のテロリストだなんて言う人もいるけどさ」
「これからどうなるんだろうな…結局あいつらのやってることは自分の言ってることに従わない
 奴らはほとんど問答無用で武力行使だしよ…」
「彼女は政治家ではないからね。政治家の娘ではあっても、政治家として備えなければならないものの多くが彼女には欠如している。
 青臭い理想論や独善的なべき論を信者に用意させた強大過ぎる力で押し付けて回った上で、自分の存在を誇示してるだけさ」

ため息交じりに言葉を紡ぐユウナが言い終えるのを待っていたかのようにシンが口を挟む。

「でもその力が半端ないんでしょ?」
「…その通りだね」
「あいつらの行動がキチガイじみていて、他の国や人達が到底受け入れられるもんじゃないことはわかりますけど、
 ほっとくと関係ない人達を平然と巻き込む手段に出てきますよね、今回みたいに」
「何が言いたいんだい、シン?」
「あんたが間違っちゃいないことは俺だってわかりますよ。だから俺もオーブのパイロットとして戦うことにしたし。
 でもいずれまたあいつらは今回みたいなことをしでかすんじゃないのかな、って思いまして。
 まあだからといって別にいい案がある訳ではないですけど」
「…いや、君の言ってることは間違ってはいないよ。むしろ地球上の政治家の多くは似たようなことを言ってきたしね」

ガロード達が執務室を立ち去り日が沈んだ頃、ユウナは1人で考え込んでいた。

デュランダルによってナチュラルとコーディネーターの間にある溝は確実に埋まりつつあった。
また、地球に駐留しているデュランダル派のザフト兵の真摯的な姿勢によって、地球上にいるコーディネーターと
ナチュラルとの融和は実際問題としてほとんど実現したに等しい状態になっていた。
だが、地球上にいるコーディネーターも、プラントとの全くの無関係という人間は多くはなく、ラクス政権の支持不支持は一先ず置いておくとして、多くのコーディネーターは、プラントと地球上の国家との和平を望んでいることは確かであった。
しかし、今、全世界では、オペレーションフラワーだけでなく、コロニー落とし未遂によるラクス・クラインへの猛反発が、反コーディネーター、正確に言えば反プラント感情へと徐々に姿を変えつつあったのである。

ユウナがまずすべきことはオーブという国を守ること、そして、彼がガロード達と出会ったときに誓ったオーブの理念を守りながら、オーブという国、究極的には国民を守るということである。
さらに今は、亡きデュランダルに託されたナチュラルとコーディネーターの融和を実現することも、彼にとっては実現しなくてはならないことであった。
さらに付け加えれば、ユウナがそれを実現するためには、ラクス・クラインを倒す他に途はない。

ラクス・クラインが自らの正義を振り回して一切の妥協も、対話も行なわず、ただ服従のみを強いる人間であることはこれまでの数々の言動から既に議論するまでもなく明らかである。
そうである以上、こちらが服従する以外に、その武力侵攻を止めさせる手段は存在しなかったし、ラクス・クラインの武力侵攻が続く限り、いや、ラクス・クラインが存在する限り、地球上では着実に反プラント感情が高まり続けることも明らかであった。

地球上の国家がラクス・クラインが治めるプラントを受け入れる理由は、力で無理矢理支配される他はないのである。

しかし、だからといってプラントを攻め落とすほどの戦力はないし、ユウナが最初に守ると誓った、他国を侵略しないというオーブの理念に反することにもなる。
理念に縛られて国民を危険にさらすことは愚かであるが、理念を捨ててプラントに攻め込んでもオーブの国民に対してラクス・クラインが何をしてくるかも想像がつかない以上、武力を行使するして「プラント」に攻め込むことは得策ではないと思えていたのである。

「…もうこれしかない、か」

そう呟くと、ユウナはジョゼフ・コープランドに連絡を入れ、父ウナトの部屋へと向かっていった。

「お前が私の所にわざわざやってくるということはまた何か企んでいるのか?」

ウナトにとっては、自分の息子がいつの間にか遠くに行ってしまったような感覚に時折襲われていたが、同時に、少し前まではどことなく頼りなかった息子が、世界の中の中心人物になるまでに至ったことに1人の親として無上の喜びを覚えていた。

「僕の身柄と引換えにカガリを引渡させます」
「あの桃夜叉がそんなことを聞くのか?」
「『彼』を使います。それにダブルエックスは大型の破壊兵器と異なり、譲渡したとでも、処分したとでも言えますが、僕の身柄を引渡す、と『彼』が言えばラクス・クラインもすぐにはNOといえないでしょう。
 カガリがオーブに戻れば一先ず、あの女がオーブにとやかく因縁をつけることはできなくなります。
 同時に、ラクス・クラインをプラント外におびき出してその隙に地球に亡命していた非ラクス派の政治家にプラントに戻ってもらい、国内の反ラクス派と協力してプラントを取り戻す手筈は整っています」
「だが我が国にとって肝心の、カガリあやつらの操り人形になったらどうするのだ」
「いえ、カガリは単純な子ですが、愚かではありません。ガロード達のおかげもあってか、
 人の話をきちんと聞くようにもなりましたし、父上や他の閣僚達がフォローしてくれるでしょう?」
「…ここに座れ、ユウナ」

ウナトは自室の椅子にユウナを座らせると、秘蔵の酒を書棚の奥から取り出してきた。

「父上、それは…」
「親にとって最大の喜びは子にあてにされるということだ。お前は思う通りにやれ。
 お前はワシの息子だ、自分の息子のことくらいはわかっているつもりだ。後始末は私がつけておいてやる」
「…あとはよろしくお願いします」
「しっかりとあのお転婆を取り戻すのだぞ」
「はい…」

翌日、市街の外れにある国立の孤児院の入り口に黒塗りの車があった。
そして入り口に止まった車の下に水色の髪の少年がやって来て、後ろの窓を開けさせたユウナが顔を出した。

「あ?なんだあんたらは?」
「いやちょっと知り合いの顔を見にね。レドニル・キサカ氏はいるかな?」
「キサカ…あぁ、ランボーのオッサンね、ちょっと待っててくれ」

そう言って孤児院の方へと向かっていくと、中から黄緑色の髪の少年が出て来た。

「なあ、ランボーのオッサン知らね?なんか客らしいんだけど」
「あのオッサンなら中にいるぜ」
「オッケー、サンキュー!」

そしてしばらくすると、孤児院の中から、肉体を逞しい筋肉で包み、やや日焼けした肌をした、首から動物の刺繍がされているエプロンを掛けた男が出てきた。

「やあしばらくだね。その格好、随分と似合ってるねえ」
「何の用ですか、セイラン代表代行」

当然ながらキサカの顔は渋いものであった。
なぜオーブ陸軍1佐という地位にあった彼が孤児院の保父をしているかというと、キラがカガリを拉致したことで
それ以降の国内の機密情報が、キサカ、国内クライン派を通じて、キラ・ヤマトやラクス・クラインに流されてしまう危険性を、ユウナを始めとするオーブ首脳陣が危惧したためである。
ただ、本来であればスパイ容疑で拘束することも考えられたのだが、それはオーブ軍内部のアスハ派との摩擦が懸念されたために、このような場所へ配置されていたのであった。

「ちょっと一緒に来てくれるかな?折り入って君に話がある」

レドニル・キサカがユウナの使者としてプラントに発ったのはその数日後のことであった。

これは、レドニル・キサカがカガリ・ユラ・アスハを幼い頃から面倒を見てきた人間であり、仮にマーチン・ダコスタやドム・トルーパーのパイロット3人をラクス原理主義者と呼ぶのであれば、レドニル・キサカはアスハ原理主義者、カガリ原理主義者とも言うべき存在であることが大きかった。

ユウナが持ちかけた話の内容は、自分の身柄と引換えにカガリの引渡しを求めるために「首脳会談」を求める、というものであった。

求める内容がカガリ自身の奪回というものであれば、カガリに対して忠誠を誓っているキサカにしてみれば、カガリをオーブに連れ戻す絶好のチャンスであり、ユウナの話は悪い話ではなかったし、また、キサカ自身もこれ以上、ラクス・クラインの武力侵攻が続いたのでは、カガリが治めるオーブすら滅びかねないといえることも、ユウナの話に乗ることを決意させた理由の1つとなった。

数日後、キサカによってもたらされた首脳会談の提案はラクス・クライン、キラ・ヤマトらに伝えられていた。

「ラクス、どうするの?この提案ならセイランからカガリにオーブを取り返してあげられるけど…」
「ですがオーブにはまだダブルエックスがあります。それにこのようなことを持ちかけてきたセイランが何を企んでいるのかもわかりません」
「じゃあこの話は…」
「もちろん受けるぞ」
「バルトフェルド隊長!?」
「バルトフェルドさん!?」

異議を挟んだバルトフェルドに批判めいた視線が2人から向けられる。
しかし、バルトフェルドにも考えがあってのことであった。

「ラクス、君は僕に言ったな、次の作戦を考えろ、と」
「ええ、確かに申し上げましたが?」
「はっきり言う。この話を受けて、隙を見てユウナ・ロマ・セイランを討て」

突然の言葉に、さすがのラクスも目を丸くしていた。
まさかこのような言葉が来るとは夢にも思っていなかったのである。

「どういうことかお聞かせ願えますか、バルトフェルド隊長?」
「ダコスタ君が色々と頑張りすぎちゃったおかげでもうプラントには、かろうじてあと一戦できるほどの戦力しか残っていない。
 それなら大将首を取るしかない。大将首を取るには大将を引っ張り出すのが一番だ。
 このままダラダラと戦争を続けたらいずれ連合から核ミサイルが飛んでくる。
 プラントが生き残るためには、セイランを討ってカガリが戻ったオーブと手を結んで、君を正式な議長だと認めてもらってプラントの国力を早急に回復させるしかないんだ」
「バルトフェルド隊長、私は世界を滅ぼさないためにやむを得ず戦っているだけです。戦争などをしているのではありません」
「戦争をしているかどうかは周りが決めることさ。君が地球でどれだけ嫌われているのか知らない訳ではないだろう?」
「それはセイランとデュランダルに地球が騙されているだけです。それがわからないのですか?」
「君の目的を達成するためには、まずはセイランを討つことが必要だし、
 数にものを言わせて攻め込んだってダコスタ君が落とそうとしたコロニーと同じ末路になる」

しばらく沈黙がその場を支配した。

ラクスにとって腹心の1人であったダコスタの暴走は、彼女にとっても意外なものであったが、だからと言って、自分が世界を守るのだという決意が微塵も揺らいではいなかった。
そして、自分が世界を守るためにはセイランを倒さなければならないことも確定している。
だとすれば、バルトフェルドの提案した手段は、いいとは思えないが、悪いものとも思えなかった。

暗殺、という形に近くなるが、この話を持ちかけてきたのがそもそもセイランなのであり、そして何よりも、世界のものである自分が世界を守るためにセイランを倒さなければならないのであるから、バルトフェルドの提案は彼女にとっては渡りに船であったと言っても過言ではなかった。

「そうですわね、それではカガリさんには餌になってしまうようで悪いですが、セイランを討って戦いを終わらせましょう」

真っ直ぐ前を向いて瞳に強い意志を宿したラクスの言葉に、キラは強く頷き、ガッツポーズをしていた。

結局、場所については、オーブや特にプラント本国で行なったのではサテライトキャノンでプラントのコロニーが撃たれることを懸念したバルトフェルドの提案オーブ・プラントのどちらにも属さない、月のコペルニクスで行なわれることになり、オーブにもその報が伝えられた。

「…という訳だ。君達、クサナギ隊、アークエンジェル隊には僕の護衛として月に来てもらう。
 僕は我が国の代表を何としても取り戻す。諸君もオーブのために力を貸して欲しい。以上」

モルゲンレーテのドッグ内で、ユウナによる両艦のクルーを集めての激励が行なわれていた。
各クルーはそれぞれの想いを胸に秘め、出撃前の最後の一時を過ごすべく一旦散りじりになっていく。
そんな中で、話を終えたユウナがガロード達の下にやって来た。

「ガロード、シン、あとキャプテンジャミル、話をしたいんだけど顔を貸してくれないか?」

そう言ってユウナはガロード達をアークエンジェルの一室へと連れて来た。

「率直に言うよ。今回の首脳会談で奴らはきっと僕の命を狙ってくるはずだ。
 なんといっても僕は、あの連中にとっては目障りだろうし、カガリと交換にして生かしておいてもオーブ国内には僕が生きている、というだけで影響があることは否定できない。
 だから…だから、僕が倒れたときは、何としてもカガリを奪還して、ラクス・クラインとキラ・ヤマトを討ってくれ」

「おい、もしかして今回の狙いってまさか…」
「ユウナさん、あんた、死ぬ気か」

「シン君、君は言ったね、これ以上ラクス・クラインを大きく動かすと、本当に多くの関係のない人達が命を落としてしまうかもしれない。それにそれだけじゃない。
 デュランダル議長によってナチュラルとコーディネーターの融和は地球上では実現に近付いているけど、他方で徐々にラクス・クラインへの反発が反プラント感情に変化しつつある。
 このままいったら連合がプラントのコーディネーターを切り捨てて、また核ミサイルを撃ち込むおそれだってある。
 こんなことを言うのはおこがましいけど、反ラクス・クラインの急先鋒の1人の僕が殺された、となったら、その流れは一気に加速するおそれすらある。
 だけど、これ以上、ラクス・クラインに地球に攻め込ませる理由を与える訳にもいかないんだよ」

少し沈黙の後、ガロードが口を開いた。

「いや、そいつは頷けねえよ」
「ガロード!?」
「…これ以上、ラクス・クラインを好きにさせたらせっかくおさまった地球と宇宙の戦争がまた始まっちまう。
 そうなっちまったらこの世界も滅んじまう。それはわかってるつもりだけど…
 でもユウナさんを死なせるつもりはねえ。あいつらが仕掛けてくるんだったら
 この炎のMS乗り、ガロード・ラン様がキッチリ返り討ちにしてやるぜ」

拳を突き出して気合が入っていることを体で示すガロードを見て、ジャミルが静かに微笑みながら口を開いた。

「ガロードという男はこういう人間です。お分かりでなかったのですか?」
「…いえ、忘れていただけです。シン君、君はどうだい?」
「俺はあいつらを倒すために戦ってるんです。これ以上、関係ない人達を傷つけさせないためにも、父さん母さん、マユ、ステラ、レイの敵を討つためにもね」

「…ありがとう…僕はいい仲間にめぐり合えたよ、本当に…」

オーブ、プラントの両軍が月への出発の準備に勤しんでいる頃、ルナマリアは、日課であるアスランの墓参りで意外な人物と出会っていた。

「バルトフェルド…さん?」
「やあ、久しぶりだねルナマリア。ザフトをやめたと聞いていたが元気だったかい?」
「ええ、何とか元気に生きてます…それよりどうしてここに?」
「大切な人の墓があるのは僕も同じさ。君みたいに毎日来ることはできないけどね」

そう言ってバルトフェルドは、東洋風の顔立ちをした女性のことを思い出していた。

「それより家族はどうなんだい?妹さんは僕達のせいで怪我をした、と聞いたよ?」
「…うちの家族は妹含めてラクス様こそが救世主だって言ってますから…
 私がアスランさんとザフトを抜けたこともほめられちゃいましたよ…不思議ですよね」

重苦しく息を吐きながら遠い目をしたルナマリアが、アスランの墓に花を添える。

「順調なのかい?」
「…色々とよくご存知なんですね。家族にだって言ってないのに…」
「ま、情報集めも仕事だからさ…」
「ラクス様達には黙っていていただけませんか?
 アスランさん、あんなにキラ様を信じて、信じて、信じ続けてアークエンジェルで孤立しちゃって…
 なのにあの人達がここに来てくれたのはお葬式の時に少し来たときだけですもの…アスランさん、可哀想ですよ…
 なんだかまるで利用されるだけ利用されて、それではいおしまいってみたいで…
 だからこの子にはあの人達とは関係のないところで静かに生きていって欲しいんです…」
「そうか…わかったよ。でもどうやって暮らしていくんだい?」
「しばらくは手厚い社会保障のおかげで暮らしていけますよ。あと、メイリンのことお願いしますね、エターナルに配属になって、『ラクス様の下で働ける』って言ってとっても喜んでましたから」
「ああ、僕はミネルバの艦長になったからそれはエターナルの艦長に伝えておこう。だから君も体調には気をつけたまえよ」
「ええ」

帰路についたバルトフェルドは紅く染まった夕暮れの街並みを見ながら考えていた。

(こうやってプラントで人々は生きている、こんな穏やかな暮らしが落ち着いてできる日はくるのかねえ…)

出発の日の前の晩、シンはオノゴロの慰霊碑の前に来ていた。
ここに来て思い出すのは、あの日、フリーダムによって家族の亡き骸を目にすることになった時のことばかりであるが、ここが今のシン・アスカという人間の出発点となっているため、キラ・ヤマトを倒して家族だけでなく、ステラ、レイなどの仲間達の無念を晴らすという決意を最終決戦の前に再確認するためにも、シンはこの場所に来ていた。

(マユ…父さん、母さん…俺、ザフトの次はオーブの軍人になったよ。もしかして節操ないのかな?
 でも、絶対に倒さなきゃならない奴がいるんだ、罪もない人達を守るためにも…
 だからさ…俺に力を、ほんの少しでも力を貸してくれよ…)

シンは、心の中で家族に問いかけて、戦うための決意を新たにしていた。
自分が選んだ復讐者としてそして人々の運命を斬り開くための道、キラ・ヤマトを倒すための最後の戦いが、始まろうとしているのであった。

ザッ

ふと聞こえてきた物音にシンは慰霊碑の陰に人の気配がするのを感じ取った。
(誰だ?)

シンが自身の警戒レベルを上げて慰霊碑の陰に意識を集中させていると、やがて話し声が聞こえてきた。

「ティファ…俺さ、この世界に来て、シンやレイ、ユウナさん達と会ってわかったんだ。
 ニュータイプだって1人の人間で、ただ特別な力があるだけなんだってさ。
 ニュータイプは人の革新とかそんなんじゃないんだ。みんなそれぞれ1人の人間なんだよ」

ガロードは自分のいた世界で、ニュータイプと言われる人間の保護のためにフリーデンに乗り込んだ。
その意味では彼の旅は、「ニュータイプ」という概念と共に歩んだ旅路であるといえる。
しかし、彼は、CE世界で、ナチュラルとコーディネーターという対立軸、そしてクローン人間だと告白したレイの姿を目の当たりにして、さらにそれらが手を取り合うことが一旦は出来たことを見てきた。
そして理解したのである。それぞれに違う個性があり、違う考え方があることを、それでも全員が1人の人間に過ぎないのだと言うことも…

「ガロード…」
「だから俺は、ティファを守って見せるぜ、ニュータイプだとかそうじゃないとかじゃなくて、一人の人間として、ティファ・アディールって1人の女の子を守りたいんだ」
「…ありがとう、ガロード」

そう言うとティファ顔を赤らめて、ガロードの肩にもたれかかった。

(おい、なんなんだ、何がおきてやがんだよ!?
 ってかお前ら特別な力があんなら俺に気付けよ!
 あれ?なんか何かの接触音聞こえなかったか!?お前らは一体なんなんだあぁぁぁ!!!?)

結局、その日の晩、シンはあまり眠れず、軽い寝不足になったとかならないのか。
ちなみに全く別の原因で眠れず、普段以上に存在感が薄くなった男がいたとかいないとか。