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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第46話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 14:02:06

第45話「俺、もう少しだけ歩いていくよ」・後編(最終話)

ストライクフリーダムは背中のウイングからスーパードラグーンを射出してデスティニーに向けて放つ。
射出されたドラグーンはデスティニーの周囲に展開してビームを浴びせようと迫っていくが、シンもキラのペースに乗せられるつもりはなく、ビームシールドを展開しながら機体を左右に振ってドラグーンを振り切ろうとする。

(ジャミルさんに言われた通りにやればいい、ドラグーンも単なる動いている物体に過ぎないんだ、それに!)
「動きが直線的なんだよ!」

シンはまずデスティニーの下にもぐりこもうとしたドラグーンの軌道を見切り、ビームライフルを撃つ。
そして放たれたビームの先に移動してきたドラグーンが撃ち落される。

「よし!」

続いてデスティニーは右上、左、真上にビームを放って移動してくるドラグーンを撃ち落とす。
シンがドラグーンを使ったMSと戦闘するのは初めてではあるものの、レイが乗っていたレジェンドにはストライクフリーダムとの戦闘データが残されていたし、フリーデンにはかつてガロードがカリスとの戦いのために使った対ビットシミュレーターがあった上、オペレーションフラワーのドム戦後にジャミルとの特訓を行なっていたことに加えて、そして、ヘブンズベース攻防戦で戦ったネオ・ロアノークが駆るラスヴェートのビットMSと戦ったシンにとっては、本来的な空間認識能力者ではないキラが操るドラグーンの動きはさほど脅威ではなかった。

だが、4つ目のドラグーンを撃ち落した直後、ビームライフルを狙ったドラグーンのビームによってライフルを失ってしまう。
しかし、咄嗟に右肩に装着されたフラッシュエッジを引き抜いてドラグーンへ向かい投げつけ、5つ目のドラグーンを叩き落とす。
そして同時に左肩のフラッシュエッジの出力を上げてサーベル状に固定し、残りのドラグーンを斬り落とした。

「…6つ!…7つ…ラスト!どうだ、これでドラグーンは全部叩き落したぞ?」
「ドラグーンがそんな簡単に!?」
「あんたはレイに手の内を見せ過ぎたんだ、俺は仲間達の想いも背負って戦ってる。
 あんたやラクス・クラインみたいな傲慢な奴から世界と人々を守ってくれ、って想いをな!」
「僕達だって世界を、平和を守るために戦ってるんだ!」
「ラクス・クラインに従わない奴全てを潰すなんて平和を守るとは言わねえんだよ!」

デスティニーがフラッシュエッジでストライクフリーダムに斬りかかり、ストライクフリーダムのビームサーベルと鍔迫り合いが起こる。

既に両機体ともビームライフル、高エネルギービーム砲、ドラグーン等ほとんどの飛び道具を失っており、残された武装は、デスティニーガンダムはフラッシュエッジとパルマフィオキーナ、ストライクフリーダムは腹部高エネルギービーム砲カリドゥスにビームサーベルのみであり、取り回しの悪いカリドゥスを考慮から除けば実質的には接近戦でカタをつけるしかなかったのである。

その頃、ウィッツとイザークの戦いに決着がつこうとしていた。

「おいイザーク!お前の大事なピンク色はもういねえ!さっさと投降しやがれ!」
「五月蝿い!まだ俺と貴様の決着はついていないだろうが!」
「じゃあてめえ、どうあっても決着をつけるつもりか!?」
「当たり前だ!逃げる気かこのキョシヌケがぁぁぁぁ!」

イザークの言った「腰抜け」という言葉にウィッツが敏感に反応する。
ただでさえ、デュランダルの命を救われたイザークの造反を快くは思っていなかった上、「腰抜け」という言葉は普段から喧嘩っぱやいウィッツには聞き流せないものであったし、ウィッツから見ればイザークは「裏切り者」「恩知らず」である。

「上等だ!覚悟しやがれこのオカッパ野郎!そんな鶏ガンダムでエアマスターに勝てると思うなよ!」

そう言うとウィッツはエアマスターバーストをファイターモードに変形させて一旦ジャスティスと距離を置く。
そして機首をジャスティスに向けるとバスターライフルを発射しながら一気に速度を上げて突っ込んでいった。
それに対してイザークもビームサーベル、ビームシールドを構えてエアマスターバーストに斬りかかるが、両機体が交差する直前にエアマスターバーストは機体を縦に傾けた。
横薙ぎにする形で繰り出された斬撃はエアマスターバーストの右腕右足に当たる部分を斬りおとすが、機体の右の部分を斬り落とされる直前に機体を変形させ、機体をジャスティスの方を向けさせる。
そして残った左手に持つバスターライフルでジャスティスの背中をかなりの近距離から撃ち抜き、コックピットの中を焼き尽くした。

「だから言っただろうが…てめえの刃じゃ俺は斬れねえ、ってな」

凄まじいGに耐え、機体の半分近くを失って阿修羅のような表情を浮かべたウィッツがそういい終えると、主を失ったジャスティスは力なく動きを止めた。

「クソ、こりゃ帰ったらキッドに何言われるかわかったもんじゃねえな…」

「どうしてお前らは自分達以外の人間を平気で傷つけようとできるんだ!」
「平気なんかじゃない!でもラクスのためには仕方なかったんだ!」

ストライクフリーダムの振り下ろしたサーベルがデスティニーガンダムの右のアンテナを切り落とす。

「一体なんでそんなにラクス・クラインに拘る!」
「彼女は僕に優しくしてくれたんだ!」
「そんな理屈でお前は人を殺すのか!?」

フラッシュエッジの斬撃をフェイントにして、デスティニーは左腕でストライクフリーダムの右腕を掴もうとするが、ストライクフリーダムは、それを膝を落として回避する。
だが、デスティニーはそのまま手を伸ばしてストライクフリーダムの翼を鷲掴みにし、パルマフィオキーナで吹き飛ばした。
他方でストライクフリーダムはその密着状態をチャンスとして腹部からカリドゥスを放つ。
デスティニーは咄嗟に機体を上昇させてそれをかわそうとしたのだが、左脚が吹き飛ばされてしまった。

「平和を願ってたラクスの言うことが間違ってるはずないだろ!それなのにラクスを討とうとするなんて許せないじゃないか!」
「あのピンク野郎は平和なんて求めちゃいないし、世界はそこに生きてる人みんなのもんだ!」
「だけど!君の言うこともわかるけど…みんなが好き勝手にしたらおかしくなるからラクスが立ったんだ!」
「ならMSなんて持ち出すんじゃねえ!」
「デュランダルが世界を滅ぼそうとしたんじゃないか!」
「そんなことあのピンクが言ってる身勝手な妄想だ!」
「違う!」
「ならそれを世界と議論してみろ!」

デスティニーがストライクフリーダムの顔面を殴りつけて後方に吹っ飛ばすが、ストライクフリーダムも吹き飛ぶ前に右足を蹴り上げてデスティニーのコックピットに大きな衝撃を与えた。

「なんでお前らがいつも力ばっかり振り回すのかは知らないがなあ…
 関係ない人達まで巻き込もうとするてめえらのやり方は絶対に許せないんだよ!!」

ストライクフリーダムの左腕のビームサーベルが振り抜かれてデスティニーの首を刎ねるが、デスティニーも右腕のパルマフィオキーナでその振り抜いた左腕を握りつぶした。

一方、ディアッカとロアビィは廃棄された戦艦の中に隠れていた。
既にラクス・クラインは死亡し、ラクス軍の敗色の色は濃厚となっていたため、
ディアッカは、ウィッツとの決着を望むイザークの邪魔をしないようにできればそれで構わなかった。
いささか個人的な恨みがなかったわけでもなかったが、それは命を懸けるほどのことでもなかった。
そのため、イザークとウィッツの決着がつくまでロアビィとここで、平たく言えばサボっていたのである。

「どうやらウィッツの勝ちみたいだねえ…どうすんの、これから?」
「そうっすねえ…」
「お前さんの顔が売れてなけりゃうちのクルーに勧誘してもよかったんだけど、黒炒飯はないでしょ、さすがに」
「いやあカッコいい名前付けたらすぐやられちまうって昔馴染みが夢枕に立った気がしたんですよ。
 ま、素性隠して傭兵やるか炒飯作って暮らしますわ。」
「そうか…ま、元気でな。どっかであったらまた炒飯食わしてくれよ?」
「ええ」

そう言って少なくとも敵としては戦いたくないと思いながら、残弾の少ないレオパルドデストロイに乗ってロアビィは戦場へと戻っていった。

「ラクスは迷ってた僕を導いてくれた!」
「そうやって奴に敵と言われた奴を忠実に殺してたんだろ!」
「ラクスも殺したくないって思ってたからコックピットは狙ってない!」
「ダルマにされた奴の末路から目を背けてるだけだろうが!」
「だけどラクスは!」
「少しは自分で考えろ!」

フラッシュエッジをストライクフリーダムはビームサーベルで受け止めると2撃目が来る前にカリドゥスをデスティニーに放つ。
片腕しか残っていないとはいえ、ストライクフリーダムの性能は高く、キラ・ヤマトのパイロットとしての能力は凄まじいものがあったため、シンは決定打を与えることができずにいた。
さらに、カリドゥスのような高エネルギーのビームを何度も至近距離で受け止めていたためにデスティニーのビームシールドは限界に近付いていた。

「このままじゃまずいな…これ以上はもたないぞ…」

シンが肩で息をしながら呟く。
キラ・ヤマトはここで絶対に倒さなければならない相手であり、片腕を吹き飛ばしたのはよかったが、それ以降はほとんど同じことの繰り返しになってしまい、むしろ自分が押されている。
しかし、追い詰められつつある状況にあることを認識したとき、自分がキラに言った言葉からシンはジャミルに言われた言葉を思い出した。

「己の機体で何が可能なのかは自分で考えろ」

そこでシンは改めてデスティニーガンダムに残された武装をチェックする。

(俺も今まで戦い方を考えてなかったな…)

心の中で自分を少し嘲け笑い、シンは右腕にしたフラッシュエッジを左腰の辺りで構えさせた。

「いつまでも戦ってちゃいけないから僕達はそれを終わらせようとしたんだ!」
「それを言い出したのもあのピンクだろ!戦争を起こしたのはお前らだ!」
「世界をこのままにしておけないんだ!」
「お前らがやってることは単なる人殺しだ!要求を聞かない相手を力で捻じ伏せる、それだけだ!」

デスティニーがフラッシュエッジを振り抜き、ストライクフリーダムがビームサーベルを振り下ろし、フラッシュエッジの刃とビームサーベルの刃がぶつかり合う…直前にフラッシュエッジの刃が短くなった。
ストライクフリーダムのビームサーベルの刃を遮るものが消えてデスティニーガンダムの右肩、翼、足を切り裂くが、瞬時にシンはフラッシュエッジの出力を上げてビームサーベルの刃を再び形成して、そのままフラッシュエッジを振り抜いてストライクフリーダムの脇から上を斬り裂いた。
咄嗟にキラはストライクフリーダムのカリドゥスを再び発射しようとするが、デスティニーガンダムは、斬り裂いた断面からコックピット目がけてフラッシュエッジを上から突き刺し、急速にそこから離脱した。

そしてそのとき、キラ・ヤマトの時間が止まった。

キラが目を開くと、そこには見たことのない景色が広がっている。

「キラ…キラ!」
「誰…なの?」

どこからか自分を呼ぶ声が聞こえてきて、辺りを見回す。
すると目の前が光に包まれて、その中から、かつて自分が傷つけてしまった相手、守ろうとしたのに守りきれなかった赤い髪の女性が姿を現した。

「フレ…イ…?」

キラの問い掛けにフレイと呼ばれた少女は優しい微笑を浮かべてキラの頬に手を伸ばした。

「やっと私の声が届いたのね…」
「え…?」
「ずっと呼びかけてたのよ?」
「本当に?」
「ええ、キラには聞こえなかったみたいだけど…」
「そう…なんだ…でもどうしてフレイがここに?僕は戦わないと…」

そう言ってキラがフレイの手を離そうとしたとき、フレイはキラの頭に手を回して優しくその頭をなでた。

「もういいの…もうあなたは十分に戦ったわ…」
「でも僕は…」
「私が死んで、あなたが傷ついて…もう戦わなくたってよかったのよ」
「だけどラクスが…」
「でもあのままどこかで隠れて暮らしていくことだってできたはずよ」
「じゃあ僕がしてきたのは…」
「全部背負いこまなくてもいいの…キラが戦わなくてもよかったの…」
「本当に?もう僕は戦わなくてもいいの?」
「そうよ…ただ静かに…ゆっくりと…」

オーブで謎のMS部隊に襲われてからキラは再びフリーダムに乗って戦ってきた。
そしてカガリを連れ去り、ディオキア基地を襲撃してシャトルを奪い、デュランダルを倒したが、それをしようとしたとき、彼の傍には常にラクス・クラインがいた。
フレイを目の前で失って傷付いたキラの傍に居続けたのはラクス・クラインであったが、軍人でも政治家でもない彼を戦いに導き、フリーダムを渡し、さらにストライクフリーダムを授けたのもラクス・クラインであったことをキラは今になって気付くことができた。

「…ありがとう…フレイ…」

フラッシュエッジの突き刺さったストライクフリーダムは、発射しようとしたカリドゥスのエネルギーと相まって大きな爆発を起こして世界から姿を消したのだった。

一方、ガロードはメサイアのネオ・ジェネシスの前に到着していた。

原因はわからないがこのCE世界に飛ばされてきてから彼は、目の前で過ちを繰り返させないため、CE世界に自分達のいた世界と同じような結末を辿らせないために戦ってきた。

この世界ではナチュラル、コーディネーターと呼ばれる人たちが、かつての自分達の世界と同じように地球と宇宙に別れて戦っていたが、その中でガロードも得られるものがあった。
ナチュラル、コーディネーターそして誰かのクローン、空間認識能力…
ガロードが新たに出合った仲間達の存在は、それらが、そしてニュータイプと呼ばれる人間も、結局は同じ人間なのであり、同時に人間以上でも以下でもないことをガロードに教えたのである。

人類の革新たるニュータイプ、という概念が先走りしていたとも言える彼らの世界ではこの結論に辿り着くのが困難だったかも知れない。
CE世界にやってきた意味があるとすれば、この結論を知るためだったのだろう、ガロードはそう考えていた。

そして目の前には、今正にネオ・ジェネシスが地球を焼き尽くそうとしており、このまま世界を滅ぼす訳にはいかなかった。

「過ちは繰り返させない!いっけえええええええ!!!!」

そう言ってガロードはダブルエックスのツインサテライトキャノンを構えさせ、引鉄を引いた。
巨大な2門の砲塔から放たれた光はそのまま発射寸前のネオ・ジェネシス、メサイアを呑み込み、さらに巨大な光が宇宙を、地球全土を覆いつくした。

「ふう…」

コペルニクス宙域での決戦から2ヶ月後、カガリは自分の執務室で山のように積まれた書類との格闘を終えて一息ついていた。

ネオ・ジェネシスが消滅した直後、デュランダル派の政治家と市民によって最高評議会が占拠され、即刻ラクス・クラインは解任されて、デュランダルの側近の中の1人が議長に納まり、コペルニクス宙域で戦闘を継続していたラクス軍に停戦を呼びかけた。

最高評議会の占拠が速やかに行なうことができた理由はプラントに一斉にエターナル撃沈の映像が流されて市内が混乱状態に陥ったのと、
その情報と映像をバルトフェルドが国内に潜伏していたデュランダル派にリークしたからである。

彼にとってはキラがネオ・ジェネシスを使用したことは想定外のことであったが、バルトフェルドはラクス・クライン、キラ・ヤマトの死亡、メサイアの消滅を伝えて、自身も残った軍に停戦を呼びかけた。

それに従わなかったラクス信者もいたが、それらは連合宇宙軍とザフト地上軍の戦力を引き連れて現れた後に、歌って踊れるスーパーフェイスと呼ばれるハイネ・ヴェステンフルス達とオーブ軍によって殲滅され、オーブ軍とラクス軍の戦闘は終了した。

その後、ラクス軍・ラクス政権の主要な人物やクライン派の人間はその立場に応じた処罰・処分を受けることになる。
イザーク・ジュールは撃墜が確認できているため死亡、ディアッカ・エルスマンも消息がつかめずMIA認定されアンドリュー・バルトフェルドはその処罰を決める裁判が続いている最中であった。
というのも、バルトフェルドは密かにラクス軍・ラクス政権の情報を自ら、潜伏中にデュランダル派に流しており、そこを弁護人が争っていたからである。
バルトフェルド自身はラクス政権が続いても、倒れてもまずはプラントが生き延びることを考えていたため、彼なりに手を打とうとしていたのであった。
実際にラクス・クラインにコペルニクスまで出向かせようとしたのはバルトフェルド自身であり、ユウナ・ロマ・セイランを殺害しようとしたのと同時にラクス・クラインも討たせて世界の中で孤立していたプラントをどうにかしようとしていたのではないか、という点で裁判は長期化の様相を示していた。

国際的には、プラント政府が、
「ラクス・クラインが行うような暴力主義的方法による解決は絶対に否定されなければならない。
 プラントは彼女が平和の歌姫だ、などという妄想をやめて現実を直視すべきだ」
という声明を発表したこと、オノゴロ停戦条約の約定内容の遂行を監視する役目を持つオーブの代表であり、ラクス・クラインに長らく拉致監禁されていたカガリ・ユラ・アスハが、(事前の根回しに幾分かウナト・エマ・セイラン達が動いたことは言うまでもないが)ナチュラルとコーディネーターの融和を実現するために命を賭したギルバート・デュランダル、ユウナ・ロマ・セイランの目指した路線を継続すべきだとの見解を示したことで、地球・プラント間に大きな衝突が起こることはなかった。

プラントでも地下に潜伏したラクス派によるテロが起こることもあったが、プラント世論を大きく動かす材料にはならなかった。
むしろ、プラントに住む多くのコーディネーターが黙示のうちに禁忌事項としていたラクス・クラインへの批判が公然と行なわれ始めるきっかけにもなり、プラントの市民の意識改革につながっていった。

「失礼します」
「入れ」

カガリの執務室に入ってきたのはトダカとキサカであった。

「どうだ、見つかったか?」
「いえ、まだ何らの手掛かりも見つかっておりません。記録映像を見ても、本当に消えうせたとしか評しようがありません。
 クサナギにいた者達も光とともに消えた、としか申し上げようがありません」
「…そうか。じゃああの機体はどうだ?」
「あの機体の撃墜は確認されておりませんし、ストライクフリーダムを撃墜して、ネオ・ジェネシスが消滅したまでは確認できているのですが…」
「そうか…」
「私も彼を知っていますので全力で探しているのですが…」
「それは私も同じだよ。あいつのおかげで私の世界が少し変わったんだ」

(お前はどこに行ったんだ、シン?)

カガリはそう思いながら窓から見える夜空の満月を見上げた。

時間は少し遡る

ダブルエックス、ネオ・ジェネシスの放った光に覆われていたのは、宇宙を漂っていたデスティニーガンダムとシンも同じであった。

(やったよ…父さん…母さん…ステラ…レイ…マユ…でもお兄ちゃん、少し疲れちゃったよ…そっちにいってもいいかな?)

オノゴロで家族を失ってからほとんどずっとキラ・ヤマトという存在と戦ってきたに等しいシンは
極限まで張り詰めていた心の糸が切れてしまっていた。

(でも今お兄ちゃんが来てもお話する話題ないな〜)
(何ぃ!?)

聞き覚えはあるが絶対に、断じて最愛の妹のものではない少し低い声にシンは目を開ける。
するとシンも見たことのない場所でどこかに流されていたのであるが、彼の目の前に現れたのは紛れもなく彼の戦友レイ・ザ・バレルであった。

「久しぶりだね、お兄ちゃん♪」
「マユの真似はやめろ…ってレイがいるってことはここはあの世か!?」
「厳密に言うと違う。まあ細かいことは気にするな。俺は気にしてない」
「いや、少しは気にしろよ」

少し懐かしいやりとりにシンは昔を懐かしんでいたが、レイは続けて口を開く。

「単刀直入に言おう、お前はまだこっちに来るな」
「ど、どういうことだよ!?」
「お前はまだ生きているんだ、それに俺とは違ってテロメアもたっぷり残っているだろう?」
「テロメアってそんなもんだったか?」
「生きられるのなら最後の瞬間まで生にしがみつけ、望んでもそれができない者がどれだけいると思っているんだ」

レイの言葉にシンは黙り込んでしまう。自分の家族やステラ、戦争に巻き込まれた関係のない人達、覚悟の暇もなく望まずして命落とした人間は数多くいることをシン自身がよくわかっていたからである。
そしてレイが続けて言う。

「それに…」
「それに?」
「お前は散々ガロード達の世話になったのにその借りをこのまま死んで踏み倒すのか?」
「いやでも借りって言ってもどうやって返すんだよ」
「ガロードは俺達の世界を、そこに生きている人達の未来を救ってくれたんだ。今度はお前がガロードを手助けしてやれ」
「え?」

レイはキョトンとしているシンの肩を突き飛ばして、来た方向とは別の方向へシンの体は流されていく。

「何すんだよ!?」
「カツラを用意しておいてやるから髪が全部抜けたらこっちに来い」
「若くして禿げたらどうすんだよ!」

シンは抗議も虚しくそのまま流されていくが、なんとかもがいてレイの方へと戻っていく。
レイは無表情で手を振っているが、その後ろから自分が守ると約束した少女、ステラが姿を現わす。

「ステラ!?」
「シン、ステラを助けようとしてくれてありがとう。だから今度はステラ、シン、助ける」

そう言ってステラも笑顔を浮かべて舞い戻ってろうとするシンを突き飛ばした。

「ステラァァ!?」

再びシンは流されていくが、やがてレイの後ろから今度は最愛の妹、マユが現れた。

「お兄ちゃん、違う世界のお話たくさん聞かせてね♪」

血まみれになってもぎ取れていた手はキレイにくっついていて、シンが最も好きだった無邪気な笑顔をマユは向けていた。

「そっか…じゃあ、お兄ちゃん、もうちょっと出かけてこようかな!」
「うん、行ってらっしゃい♪」
「ああ、行ってくるよ…」
そういい終えるとシンの意識は再び闇へと落ちていった。

ツインサテライトキャノンとネオジェネシス消滅の光に包まれたガロードが意識を取り戻すと、そこには荒れ果てた大地が広がっている。
そしてよく見ると新連邦軍の量産型MSバリエントの残骸が幾らか散らばっているのを見て、ガロードは、ここが自分たちの世界で、CE世界に来る直前にいた場所なのだと気付いた。
さらに周りを見渡せば、フリーデン、エアマスターバースト、GXディバイダー、レオパルドデストロイの姿もある。

だが、ガロードにはCE世界のことを幻であるとは思わなかった。
ダブルエックスにはGファルコンが装着されていたし、ここは地上なのに自身はノーマルスーツを着ていたからである。
そして、何よりの理由が、フェイズシフトは落ちて灰色のボディをしていて、さらに胴体と左腕しか残っていないものの、見覚えのある機体が目の前にあったからである。

するとコックピットが開き、中から知った顔の男が出てきた。
ガロードもダブルエックスのコックピットを開けると聞き慣れた声が聞こえてきた。

「おーい、今度は俺が手ぇ貸してやるよ。俺のいた世界ばっかり救われたままなのは気持ち悪いからな」
「どーゆー風の吹き回しだよ、そりゃ?」

そう言うガロードの顔は無邪気に笑っていた。それを見てシンも笑いを浮かべて言い返す。

「レイの奴が借りを返して来いってよ!」
「じゃあとりあえずフリーデンに来いよ!」
「わかった!」

そう言ってシンはAW世界の荒れ果てた大地を踏みしめてフリーデンへと歩いていきながらつぶやいた。

「俺、もう少しだけ歩いていくよ」


最終話「俺、もう少しだけ歩いていくよ」
おわり
                    完