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X-Seed_双星の軌跡_第00話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 16:50:25

第00話『プロローグ』

 漆黒の宇宙に、無数の光が瞬く。
 新連邦軍と宇宙革命軍、両軍とも最高司令官を欠いたままなし崩しに再開された戦闘は、
既に統制を失い無意味な破壊の連鎖と化していた。
 そんな虚空の戦場を見つめる一つ――否、二つの影があった。
 甲殻類を思わせるMAの背に六枚の翼を広げたMSが跨乗し、MAにマウントされた長大
な砲身を構えている。機動兵器でありながらそれはどことなく歪で、異形な機体だった。
 NRX-0013-CBガンダムヴァサーゴチェストブレイクとNRX-0015-HCガンダムアシュタロン
ハーミットクラブ。新連邦軍総司令部直属の特務戦隊を率いる、シャギア・フロストとオルバ・
フロストの愛機である。
 いや、もはやその肩書きは正しくない。戦場の混乱に乗じてまんまと月のマイクロウェーブ
送信施設を奪取したフロスト兄弟は、先ほどその絶大な力で新連邦軍総司令官フィクス・ブ
ラッドマンを、宇宙革命軍総統ザイデル・ラッソもろとも宇宙の塵としたのだから。
「さあやろう兄さん、僕たちの時代の幕開けだ」
 アシュタロンに乗る弟オルバの声に、ヴァサーゴのコクピットのシャギアは頷く。
「マイクロウェーブ照射」
 月面に設置された巨大なパラボラアンテナが作動する。放出されたマイクロウェーブは、ヴ
ァサーゴ背面に装備されたリフレクター兼用のアクティブバインダーが受信。
 莫大なエネルギーがヴァサーゴを介してアシュタロンのサテライトランチャーへと流れ込む
感覚に、シャギアはしばし酔った。
 だがその時、照星の向こうに一体のMSが姿を現した。
「あれは、ダブルエックス」
 呻き声を上げるオルバ。
 GX-9901-DXガンダムダブルエックス。幾度となく死闘を繰り広げた宿敵、ガロード・ランの
愛機。
 すでに二門の砲身と六枚の大型リフレクター、両手両足のラジエータープレートを展開し、
ツインサテライトキャノンの発射体勢に入っている。
 ――過ちは、繰り返させない!!
 少年の、強い意思を込めた真っ直ぐな目を、確かに兄弟は幻視した。
 続いて、さらに信じがたい事態が起こる。送信システムがマイクロウェーブの照射先を、ヴ
ァサーゴからダブルエックスに変更したのだ。
「馬鹿な! 送信システムはこちらの手中にあるはず!」
 驚愕に、シャギアは叫ぶ。
「兄さん!」
 切迫したオルバの声が、シャギアを一瞬の自失から引き戻した。
 そうとも、ここで終わってなるものか! ようやく世界を、我ら兄弟に跪かせる時が来たという
のに!
「ダブルエックスを撃つ!」
「でも、チャージが――」
「構わん!!」
 オルバの言葉を遮り、シャギアはトリガーを引く。ほぼ同時に、ダブルエックスもツインサテラ
イトキャノンを撃った。
 圧倒的で莫大で破滅的なエネルギーの瀑布が二つ、正面から激突する。押し合い、せめぎ
合い、喰らい合い――その決着を、フロスト兄弟は見届ける事ができなかった。
 衝突したエネルギーの余波が、ヴァサーゴとアシュタロンを砕いていく。最後に二人が見たの
は、同じく大破しながらも、自分たちとは全く逆の方向へと吹き飛ばされるダブルエックスだった。
 全てが、白熱する閃光に包まれていった。
 AW(アフターウォー)15年、新連邦と宇宙革命軍の間に勃発した第八次宇宙戦争は、月周
辺宙域での短いが熾烈な戦闘の後、両軍の最高司令官の死亡をもって終結した。
 半年後、新連邦政府停戦推進委員会代表のジャミル・ニートと、クラウド9臨時政府和平協議
会代表のランスロー・ダーウェルによって、停戦協定が結ばれる。
 いまだ各地で燻り続ける戦火の火種を抱えつつも、世界は融和と再建に向けて長く困難な一
歩を踏み出す。
 だがその歴史に、シャギア・フロストとオルバ・フロストの名前が現れる事は、二度と無かった。