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X-Seed_Cross ASTRAY_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 22:48:27

第01話 『厄介な拾い物』

「周りに戦闘の跡が無いのは不自然だな」
黒い長髪の青年-名はカナード・パルスと言う-は、腕を組みながら先ほど回収された物体を見上げつぶやいた。
回収された物体は所々が欠如し、残骸と化したMS。しかしその周囲には戦闘の跡どころか、欠如した部分すら無い
「動力も完全に停止していて、戦場から逃げてきたと考えても無理があります」
さらに不自然さを駄目押しするかのように、カナードの隣に立つ女性は淡々と告げた。
そんな状態の機体が、艦のレーダーに引っかからずに範囲内まで来る事ができるわけが無い。
たとえ先ほどの光にやられたと考えても無理がある。何せその光は先ほど艦のブリッジを刺し、通り過ぎたのだ。
クルーどころか計器にすら被害は皆無。
「ミラージュコロイドを使った可能性はゼロ。となればやはりワープでもしてきたと考えるべきか?」
馬鹿馬鹿しい、といったような口調でカナードは言う。そんな技術、この世界に存在しないのだ。
「…パルス特務兵。最近アニメでも見ましたか?」
ワープ、などという非現時的な言葉を彼が使うのは珍しいことだ、少しだけ茶化すように女性は言った。
しかしそれは小さな後悔へとつながる。
「見たことがあるとでも思うか?」
質問を質問でカナードは返す。察しろ、とでも言いたげに。その顔は限りなく無表情に近いものだった。
はっとしたように女性は言葉の意味に気づき、口を開こうとするがカナードは続ける。
「ともかく。そんなことはありえない、と言いたいところだが…」
そうとでも仮定しない限り説明が付かない。それが不愉快だ、と。そんな表情を作る彼を見て、女性は少し苦笑する。

「メリオル。ハイペリオンの準備をしておけ」
急に名を呼ばれ、女性は苦笑をいつもの事務的な表情へと戻した。
「直接調べに出るのですか?」
「ああ、どうせ元々機体のテストのために来たんだ。ちょうどいいだろう」
「分かりました。あの二人とこのMSについてはどうしますか?」
「そのまま調査続行だ」
「ガルシア司令への報告は?」
その一言にカナードは、口元を少しだけニヤリと歪め、あっさり答えた。
「必要ない」
本来ならば許されないことだが、事実を知る艦の人間が全て黙秘し、
証拠を消し去ってしまえば、面倒で厄介な拾い物の報告をしなくても問題は無いのだ。

「そりゃあ、色んなところに行ってみたいっては言ったけどさぁ…」
薄暗い部屋でガロード・ランはうんざりするかのようにぼやいた。
新しい生活が始まる、と胸いっぱいに期待を膨らませていた矢先に、新連邦の艦でもなければ宇宙革命軍の艦でもない、
正体不明の艦に大破したダブルエックスとティファ・アディールと共に回収され、尋問を受けるハメになったのだ。

「俺達どうなるんだろうな」
「不安なの?」
隣の椅子に座るティファがガロードに話しかける。
強烈な光が走ったと思ったら、目の前に自分達を迎えに来てくれたフリーデンもいない。
フリーデンがいなければ目の前にあったはずの月も見えない。
明らかに異常な事態と、聞いたこと無い単語だらけの質問が出てきた先ほどの尋問のせいか、ガロードに普段の元気はない。
ティファと離れ離れにされなかっただけ御の字だ。
「ティファは不安じゃないのか?こんなことになってさ」
「ガロードが、一緒だから」
ティファはやさしく微笑みながら言った。その言葉にガロードは勇気付けられながらも、
嬉しくて恥ずかしかったのか頭をポリポリと描きながら赤くなるしかなかった。

(そういえばダブルエックスはどうなってるんだ)
不意にガロードはこの艦のどこかにあるはずの、相棒のことを考えた。
フロスト兄弟が持ち出したサテライト・ランチャーとの一騎打ちをしたダブルエックスは、
もはや起動不可能なほどまでに大破した。
しかし、もしツインサテライト・キャノンのデータが無事であり、そのデータがこの艦の人間に知れたら…。
最悪の場合それを利用し、これに勝るとも劣らない兵器が作られてしまう可能性がある。
そうすればかつて自分に未来を託して散った男との約束が果たせなくなってしまう。
そして自分達の未来をも、消し去られてしまうかもしれない。

最悪この手で相棒を葬り去る覚悟を、ガロードは決めた。
過ちは繰り返されてはならない。

【NEXT EPISODE:狂気の断片】