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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第12話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:06:13

機動新世紀ガンダムXSEED    第十二話「ティファには笑ってて欲しい」

目が覚めると少し暗い感じの天井がそこにある。
長い事眠っていた感じがするのは気のせいでは無く事実。
ふと横を見ると、白衣の男が何か古典文学らしき本を読んでいる。
そこまで見て、自分に何が起きたのか漸く頭の中で整理できてきた。
ああそうだ。ザフトレッドという事でアカデミーを卒業した自分は特別な任務を背負って出撃した。
連合軍が極秘開発していた新型MSを奪取するという特殊任務。
任命された時はヴェサリウスの廊下や自室でかなり舞い上がっていた。
緊張しがちな同期の友人……ニコルだったなあと、ふと思い出す。
そんな彼を冗談で笑かすのは隊の中では彼の一つの役目になっていた。
たまにイザークとアスランの諍いをディアッカと一緒になって宥めたり賺したりする事もあったが。
それが、ほんの少しドジを踏んだせいで、今は敵の船に乗っている。
捕虜として味方に引き渡されても、本国に帰ればレッドは剥奪されてグリーンに降格される上にエリートコースからは完全に外れる事になる。
父親は何と言うだろうか。
生きて帰ってきてくれて嬉しい等とは、恐らく口が裂けても言わないだろう。
寧ろザフトに入ったくせに、一人もナチュラルを屠れなかったのかと文句を言った後で、見限られるだろう。
母親は泣いて喜ぶかもしれないが。

「お目覚めかな ? 」
白衣の男ことテクスが、ラスティに話しかけてくる。
麻酔がまだ残っているのか、意識も体の動きもはっきりしない。
頭だけはほんの少しだけ彼の方に向ける事が出来た。
「俺は、どのくらい眠っていたんだ ? お医者さんよ ? 」
「そうだな、丁度十日は眠っていた事になるかな ? あまり無理はしない方がいい。
出血が酷かったから輸血はしたが、私の推測が正しければ今でもまだ君は、軽い貧血状態に陥っている筈だ。今はじっくり休むといい。
艦長も君に関しての処分は君がもう少し回復してからだと言ってきたからな。」
それは当たっていた。体の方はともかく、頭がこうまでフラフラするのは血が足りないからだと思えた。
「まあ、唯一の救いは弾が貫通していた事だ。」
補足気味にテクスが言ったのもラスティには薄ぼんやりとしか聞こえなかった。
「俺は……ずっとナチュラルはゴキブリだって思っていた。」
突然始まったモノローグにテクスは耳を傾ける。
ガロードやティファが助けて欲しいといったこの青年が一体どういう人物なのか気になるところでもあったからだが。
「見たら直ぐに銃を構えて、狙って、撃つ。そうすれば良いと思ってた。
軍人も民間人も纏めて……馬鹿で鈍間な奴等なんだから、自分達より劣っているからそうしてもいいと思ってた。
相手もそう思ってるからだとも言われた。けど、初陣でそれは違うって事を思い知らされるなんて思ってもいなかった。
あんたの知り合いの、それも俺らから見れば一番弱そうなナチュラルにな。」
そこまで言うと、テクスは一応「あの少女の事か ? 」と訊く。
「ああ、そうだよ。何か妙ちきりんな力を持ってる以外は唯のナチュラルっぽいのに、何でだろうな ? 」
それを聞いたテクスは再び読書に戻る。
「私は、彼女が君のナチュラルに対しての認識を変える事が出来たのは、君の言うその妙ちきりんな力だけではないと私は思うがね。」
「じゃあ、あんたはどう思う ? 」
「それは君自身が見つける事だ。それが分かった時、君はナチュラルが踏み潰すだけの存在ではなくて一体何なのか、本当に分かる筈だ。」
「あ、そう。まあ、しっかり肝に銘じておくよ。」
質問に対し、その答えは人に聞く物でなくて自分で見つけ出すものだとテクスは答える。
その答えが見つかるのはいつになるだろうかという思いに耽りながら、ラスティは再びまどろみの中に落ちて行った。

疲れる。非常に疲れる。
何故この船に乗ってからこんなに疲れることが多くなったのだろう。
アークエンジェルの自分達に割り当てられた個室にあるベッドで横になっていたティファはふとそう思ってしまう。
色々な境遇の人が乗っているから、感じ取ってしまう事も多いのだろうか ?
しかし、彼女は元の世界でD.O.M.Eと出会って言われた事を思い出す。
今も、自分の力を認めているかい ? と。
あの時、自分は認めている、しかし普通の人として生きたいと答えた。
その時は自信があった。大丈夫、きっと出来る。ガロードと一緒なら、と。
だが、それは結構難しい事だと知らされた。
誰かの思念、二、三ヶ月先であろう未来。
それは否応無しに彼女の心に伝えられ、即座に体にも影響を与えてしまう。
他人に悟られない様彼女も努力はしたが、伝えられる内容に驚いてしまうのはどうしようも出来なかった。
その時、部屋の扉が開いた。
「あー、疲れたあ。結構地道な作業だかんなあ。」
ハンガーから戻ったガロード。
黙り込み、沈んだ表情のティファがベッドで横になっているのを見てすかさず声をかけてきた。
「ティファ ? どうしたんだよ ? 具合でも悪いのか ? 」
少し静かな間があった後、何でもないと言いかけて、目が潤む。
ガロードに向けた気丈な笑顔もいっぺんに崩れ、大きな目からぽろぽろと涙がこぼれる。
心の中にある最後の堤が完全に崩壊したティファは、ベッドから身を起こしガロードにぎゅっと抱きつく。
声を押し殺したように泣くティファは途切れ途切れに言う。
「ガロード、私……私もう、人の心を……」
その後はもう声にもならない音が口から出てくるだけだった。
いきなり抱きついてきたティファに驚きながらも、ガロードはぎこちない手つきで優しく抱き返す。
「ティファ……ごめんな、辛い思いばかりさせちまって。でも、もう我慢しなくていいよ。」
「えっ ? 」
「たまには、その……ティファの方からも、今みたいに俺の事頼ってきても……」
上手く言えない。人の心を感じ取った事がないから。
こんな時に上手くフォロー出来ない自分がもどかしかった。
言葉に詰まるガロードにティファが優しく言う。
「有り難う、ガロード。あなたの気持ちは……私に伝わったから……」
そう言ってティファは涙とその流れた筋を手でふき取り、笑顔を見せる。
ガロードに素直に頼ったり、甘えたりする事。
きっと自分はそうしたかったのだ。それなのに、ずっと一人で抱え込んでしまって……
まるで前にガロードが自分の事を見ていなかった時の様に。
ティファの晴れた顔を見てやっと落ち着いた気持ちになるガロードは追加する様に言う。
「あっ、それとさ、余程の事じゃねえ限り、あまり色々と考えるのは止した方がいいぜ。
俺、ティファには笑ってて欲しい。」
「……うん ! 」
二人の間にたちまち元気が戻って来る。
そして二人は共通のヴィジョンを思い浮かべていた。
自分達の世界で共に新しい明日を歩み続ける自分達を。
その為にD.O.M.Eは自分達に未来を託していったのだから……

それから、三日後。
ガロードがやっているシミュレーター訓練に付き合っていたヘリオポリス組はその結果にただただ驚かされていた。
OS等の補正や、注意書きがあちこちに貼られているとはいえ、初めてMSの操縦桿を握ってから二週間ほどで宙間訓練での撃墜スコアが二桁台に入っていたからだ。
一応の訓練を終えると、周りから歓声が上がる。
「すっごいなぁ、撃墜スコア二桁台なんて !! 」
「俺も訓練したらそれ位出来るようになるかなあ ?! 」
サイやトールが無邪鬼に言う。
それを後ろからムウやマードックが「調子に乗るな」と言わんばかりに軽く小突く。
しかし、二人もガロードの機体に関しての順応性は目を見張る物だと素直に思えた。
並みの連合軍兵士だってここまで出来るかと訊かれたら、正直二人とも言葉に詰まってしまう。
それだけガロードが天性とも言えるMS操縦の技術を持っている事になるのだろうか ?
シミュレーターから降りた彼はなんて事ない様に結構済ました顔をしているが。
そこにブリッジから一つの明るいニュースが飛び込んできた。
連合軍第八艦隊の先遣隊が合流と補充要員の派遣を申し出てきたのだ。
これは願ってもない朗報だった。
今まで寄せ集めの人材で、誰かに頼る事も出来ず、極力戦闘を回避し続けてきた、はっきり言えば逃げ続けるしかなかった彼等に、光明が射したのと同じだったからだ。
そしてそれはもう一つの知らせをヘリオポリス組にもたらした。
それは先遣隊を編成している戦艦の内一つにフレイの父が乗っていると言う事だった。
彼女はそれを嬉々とした表情で聞いていた。
勿論、その知らせは彼らと一緒にいたガロード達の耳にも入る。
ガロードは肩の重い物が一気に滑り落ちて行く様な感じに包まれた。
少なくとも、これで傭兵稼業から離れられるかなと思ってしまった。
しかし、またしてもその隣にいたティファは何かを感じ取ってしまう。
だがそれは、今までの様に定まったような物ではない。
そういった感じは幾つか今までにあった。
ティファがガロードと無理矢理引き離されてしまった時がその好例と言える。
それをD.O.M.Eはガロードが悉く未来を変えたと言い切った。
今度もそうなるなら……

「総員、第一戦闘配備 ! 繰り返す ! 総員、第一戦闘配備 ! 」
突然に艦内放送が入った。
事情が飲み込めないガロード達は周りの者達に訊く。
「一体どうしたんだよ ?! 」
「敵の戦艦が攻めてきたんだよ ! それもヘリオポリスでこっちの新型を奪取したチームを連れてきてな !! 」
それを聞いたガロードはハンガーに急ごうとする。
その時、同じ様にハンガーに向かおうとしていたキラがフレイに呼び止められているのを見た。
「キラ !! 戦闘配備ってどういう事 ? ねえ、パパの船は ?!! 大丈夫よね ? パパの船やられたりしないわよねっ ?! ねっ ?!! 」
キラはいまいち状況が飲み込めていないのか、焦り気味の答えを口にする。
「大丈夫だよ、フレイ。僕も……ガロードも出るから……」
そう言ってキラの顔がこちらに向けられる。
ガロードは顔こそ笑っていたが、内心「無責任だなあ〜」と思わざるを得なかった。
実際自分もこの世界のMSを駆って戦いに出るのは今回が初めてだ。
だが、ここまで来て泣き言は許されない。
「行くぜ、キラ !! 」
「うん !! 」
二人は共にその場を後にする。
着替えを済ませ、格納庫に入るとマードックから檄が飛んだ。
「遅いぞ ! 坊主共 !! 大尉はもう出たし、嬢ちゃんはとっくに来てるぜ !! 」
ここで言う嬢ちゃんは紛れも無くティファの事だ。
ガロードはジンの側で立っている彼女に通信機越しに話しかける。
「分かって……たの ? 」
「うん……でも、今回は分からない。私は……ガロードが未来を変えると信じてるわ。だから、……敢えて言わなかったの。」
それを聞くとガロードはにぃっ、と笑って、
「それで良いんだよ ! そんでもって未来を変える。いい方にな !! 」
「うん !! 」
暫く二人で見つめあった後、同時にコクピットに乗り込む。
密着とまではいかないが、スペースを限りなく削っても結構二人は引っ付いた状態になった。
コクピットハッチが閉まると同時に電源が、そしてブリッジから通信が入る。
「敵はナスカ級にジン三機、それとイージスがいるわ ! 気をつけて ! 」
ミリアリアが状況を教えてくれる。
イージスというのは奪取された新型のコードネームの一つだとマリュー達から教えられていたからなんとなくは分かったが。
続いてサイからも通信が入る。
「キラ、ガロード、先遣隊にはフレイのお父さんが乗っているんだ ! 頼む ! 」
ガロードの手に一層力が入る。それなら一層こっちが負けるわけにはいかない !!
機体がカタパルトに乗り、発進準備が整った。
「ガロード・ラン、ジン、出るぜっ !! 」
急激なGが二人を襲い、直後に無重力が二人を包む。
「よおしっ ! 行くぜ、ティファ !! 」
「ええ ! 」
二人は光が明滅するポイントに勢いよく向かって行った。