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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第14話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:06:34

機動新世紀ガンダムXSEED 第十四話「最後まで頑張れたんだよ」

『イージスが鹵獲されたのですか ?! 』
画面の向こうでラウの言葉を聞いていたニコルは思わず大声を上げてしまう。
ヴェサリウスから臨時で入った連絡通信に、ザフトのローラシア級戦艦、ガモフで待機していたクルーゼ隊の面々は愕然とした。
報告している本人は仮面で表情こそ隠しているものの、下半分の顔からのぞく憤激の表情は隠せないでいた。
「ああ。こちらも機関区に大きな損傷を負い、火器は半数以上が潰され、内部の火事による影響も大きかった。
更に、ジンは全て潰され、私のシグーは調整中に相手のカタパルトデッキと格納庫を狙った重粒子砲の一発で、大きく破損していた。残ったスラスターと機関を最大にして、ここまで戻る事が出来たくらいだ。
イージスがフェイズシフトダウンした時点で我々に手段は無かった。残念だが結果としてそうなったのだ。」
ラウの口調はあくまで穏やかにしていたが、やはり言葉の端々に怒りが込められている。
画面の向こうで隊員の一人イザーク・ジュールが悔しさに顔を歪める。
また、壁に寄りかかっていたディアッカ・エルスマンは目を閉じ、面倒な事になったと言わんばかりに溜め息を吐く。
ニコルは自分の心に上がっていた危惧感を恐る恐る上官に言ってみる。
「では、……アスランはその『足つき』に捕虜として乗っている可能性があると言う事ですか ? 」
足つきとはアークエンジェルの通称である。
特徴的な艦の前方部が動物が脚をついた様に見えるからだ。
「可能性としてはな……或いは既に……」
その、既に……の先に言い含められている事を察知し、全員が戦慄させられる。
それを画面からも見て取ったラウは部下一人を、それもエリートの道を歩いてきた部下を失って直後とは思えない様な穏やかで落ち着き払った口調で全員を纏める。
「何れにせよ、足つきは絶対に墜とさなければならない標的となった。諸君らの奮戦に期待している。」
「「「了解ッ !!! 」」」
イザーク、ディアッカ、ニコルの三人が威勢よく返事をする。
それに満足した様な表情をして、ラウは一旦通信をきる。

同胞を奪われた際の戦意高揚意識は何にも勝る物だと思えてくる。
気持ちを切り替えて、足つき討伐の為の策を練るが、ある疑問が頭の中に出て来た。
足つきから出て来た改造されたジンの事である。
こちらを翻弄し、先程報告したヴェサリウスの被害の大方を作り出したのはその機体だ。
が、ラウにはどうしてもその機体に乗っているパイロットが普通のパイロットには思えなかった。
常に二手三手先を予見して攻撃する彼の全てその先、或いはその裏をかいていたからだ。
まるでこちらの攻撃を皆分かり切っている様な、少し考えれば不気味な動き。
相手があのムウ・ラ・フラガなら分からなくもない。
何度も戦場で命の遣り取りをやった事があるからこそ分かる、ぞわりと肌を伝う様な不快な感覚がするからだ。
尤も、原因はそれ以外の何かであるからだろうが……
しかし、あのジンからはそんな感じは少しもしなかった。
なら一体何なのだと、彼は小一時間考える事になってしまった。

ガロードがアークエンジェルに帰還すると格納庫はまるでお祭り騒ぎになった様な大騒ぎ振りだった。
無理も無い。ザフトに奪取された新型の一機が破損している所があるとはいえ、取り敢えず元の居場所に戻ってきたのだから。
先ず、格納庫に入ったジンのコクピットからガロードが出ると、作業スタッフが盛大な歓声で迎えた。
「無傷でとは言えねえが、よく取り戻してくれたなあ、イージス。それと、先遣隊の守備も上々だったぜ !! 」
マードックが胴間声をあげ、親指を上げる。
「すごいじゃねえか ! ホントにMS戦始めてなのかよ ?! 」
「傭兵やめて、こっちに来なよ ! いつでも準備はいいぜ ! 」
「これならアラスカまで安泰かねぇ……あ、大尉、冗談ッスよ。冗談。」
口々に祝いの言葉や激励が飛び交い、喧しいとさえ思ってしまうほどの大きな拍手も続いた。
それに対し、ガロードは落ち着いた表情で答える。
「ま、俺も必死だったけどさ。ティファも手伝ってくれたから……最後まで頑張れたんだよ。」
「ガロード……有り難う。」
ティファが顔を赤くして下を俯くのを見ると、周りから「おお〜っ !! 」と声が上がり、指笛まで鳴らす者まで出だした。
「見せ付けてくれるなあ〜っ ! このやろぉ !! 」
「か〜っ ! 俺も青春したいねえ !! 」
本当に好きな事を言ってくれる連中だ。だが、言われて悪い気はしない。
頭を掻いてから、ガロードは自分の胸にぽんっと拳を叩いて言った。
「また何かあったら、何時でも良いよ。この炎のMS乗り、ガロード・ラン様が駆けつけるからよっ !! 」
「言ったな〜 ? じゃあ、残りの三機もヨロシクゥって言っちまおうかねぇ〜 ? 」
「自分に様つけるんじゃねえよ。この〜っ !! 」
最後の一言を言った者がガロードの頭をわしゃわしゃと擦り、周りも大笑いした。
だが、そんな雰囲気は次の瞬間マードックの声であっという間に吹っ飛ぶ。
「ほ〜ら、お祭り騒ぎはその辺にしとけぇ。イージスのパイロットを引っ張り出さにゃならんからなあ ! 」

そうだった……と、その場に居る全員がハッとしてイージスの方を向く。
唯の鉄塊にしか見えない、そんな風に成り果てたイージスにはまだ敵のパイロットがいるのだ。
作業班、整備班共に複雑な気分が胸を過ぎる。
元々こちらの機体だったにも拘らず、短期間とはいえこちらの安全を脅かしたのだ。
動力系はやられてないと聞いていたから、今にもまた動き出して自分達を襲って来るのではないかとつい思ってしまう。
しかし、フェイズシフトは落ち、バッテリーもほぼ空、頭部と左腕は回収が待たれ、ビームライフルも無く、
スキュラも砲門が大破してその周りが真っ黒焦げな状態というのは、そんな考えをこれっぽっちも裏づけはしなかった。
ガロード、ティファはその様子をじっと見守る。
やがて、二人が始めてこの艦に乗り込んだ時の様に、銃を構えた警備兵が十人ほどイージスのコクピットを囲む。
電子機器の操作に明るい人間が、機体から出た電子コードの繋がれたパソコンをいじりつつ、「開けます。」と簡潔に言う。
装甲が拉げた部分でもあるのか、耳障りな音を出してコクピットが開いた。
そこにいたのはあのヘリオポリスでキラにナイフを向けた少年兵だった。
ただ、足が両方とも奇妙な方向に折れ曲がり、頭からは血が流れている。
直後に、頭上からの光を眩しいと思ったのか、彼は微かに呻きながら目を開ける。
その瞬間、少年の顔は憤怒の形相に変わるが、一斉に銃を突きつけられると、表情こそ崩さなかったが、
何も言わずにゆっくりと震える両手を上げた。
そこへ丁度キャスター付きの担架がやって来る。
メインで周りの人間に指示を出しているのはやはりテクスだ。
少年は小声で悪態を吐きながら大人しく担架に乗せられ、奥に連れられていく。
一足遅れて、ストライクが格納庫に入ってきた。
コクピットから飛び出す様にキラが出てくると、ガロード達の元へやって来て一言だけ訊く。
「アスランは ?! 」
「イージスのパイロットの事だろ ? あっちに運ばれてったけど……」
「有り難う御座います !! 」
皆まで聞かずにキラは医務室の方向に向けて走っていく。
二人の関連性を知らない、その場に居た誰かがぽつっと言った。
「そんなに可哀相なのかねえ、敵さんのパイロットが……」
その質問に答える者はそこにはいなかった。

「テクス先生 !! 」
医務室で容態を見た後で、手術が必要だと判断したテクスは、アスランを手術室に搬送する。
自分が入ろうとした時にキラに呼び止められた。
テクスもイージスのパイロットとキラの関係を知らない訳ではない。
食事時に、ガロード達とその事で話しているキラを見ていたからだ。
勿論、話している内容も自ずと聞こえてくる。
だから、訊いてくるだろう質問の中身も手に取る様に分かったので、診察の結果だけは言っておく。
「頭部に裂傷がある。縫う程ではないがな。どちらにせよ、2〜3日は絶対安静といったところだ。」

「そうですか……」
テクスは渋い顔をして手術室に入る。
キラはそこに一人だけ取り残される。体の中を強烈な虚脱感が襲った。
アスランは何度も自分を説得しようと、戦闘の度に通信を開いてこちらに話しかけてきた。
お前は俺達と一緒にいるべきだ。俺達は仲間なんだ。そっちにいるんじゃない。
居続けたら俺はお前を討たなきゃならなくなる。ナチュラルに利用されているお前を……
お前が何故地球軍にいる……っ !!!
アスランの言葉は常識的に見れば、ほぼ何の違和感も無い発言といえる。
だが、キラとて何も考えずにその声に従う事は出来なかった。
この船にも自分の友がいる。共に笑いあい、助け合う仲間が。
その彼等を分け隔てている、人種でも、民族でもない決定的な物。
例えばアスランとトールが同じ食卓に着き、一つの食物を笑いながら分け合う等という事は、十年経とうが二十年経とうが絶対に来はしない。
食卓に着いても両者の前にはそれぞれ銃があるだけだ。
要はどちらが速く銃を取り、相手に向かって撃つか。そして、卓を血に染めるのはどちらの物なのか。
今自分の眼前で起こっている事は正にその様な物だった。
今しばらくの戦いは終わり、皆無事で、守るべき物も守りきることが出来たにも拘らず、キラの心は一向に晴れなかった。

護衛艦とのランデブーにマリューは感無量だった。
道中一時はどうなるものかと思いもしたが、予想以上の戦果が打ち出されたのだ。喜ぶなという方が無理である。
だが、多少引っかかる事はある。
人員を送るにしてもヴェサリウス一隻に敗れてしまうような戦力しか本当にこちらに割いてこれなかったのか、と。
彼女とて上を信用していない訳ではない。
だが、今格納庫にはメビウスゼロとストライク、そしてジンのカスタム機と破損したイージスがあるだけで、護衛艦にいたメビウス隊は全滅している。
仮にも極秘開発中だった新造戦艦へ送るのだから、ムウ程とはいかなくてもそれぐらいやり手のパイロットをよこしてもおかしくないのだが。
とは言え、作戦は終了したのだ。考えてもそれは既に詮無い事である。
アークエンジェルに着いたシャトルからモントゴメリの艦長コープマンが降り、それに続いてジョージ・アルスター大西洋連邦事務次官が降りてくる。
一通りクルーの顔を見たコープマンはきびきびとした声で挨拶する。
「地球連合軍第八艦隊所属先遣隊、護衛艦モントゴメリ艦長コープマンだ。先ずはこちらの安全を確保して頂いた事に感謝する。」
「地球連合軍所属艦アークエンジェル、艦長のマリュー・ラミアスです。」
「副長、ナタル・バジルールであります。」
二人は一歩前に出てしっかりと応対する。
「月でXナンバーの機体の奪取と、ヘリオポリスの崩壊があったと聞いた時はどうなるものかと思っていたが、こうして合流出来て本当に嬉しい限りだ。
更にその奪取された内の一機を奪還できたとは……いや、本当に素晴らしい。あのジンの改造機に乗っていたのは一体誰だね ? 特進どころの話ではないぞ。
何しろ事務次官を守られたのだから、事によると叙勲も考えられるかもしれん。」
コープマンが周りを見回すが、誰も名乗り出る者はいない。
それに関して、マリューが恐る恐る返答する。
「それに関してなんですが、実はその働きをしたのは傭兵なのです。」
「何 ? 傭兵がかね ?! よく登用している余裕があったな。制式兵で無いところが惜しいところだが、どうだろう ? この機会にその人物を正式に登用しては…… ? 」
その言葉にマリューは思わずナタルに顔を合わせてしまう。
ナタルはあからさまに「私に訊かれても……」と言いそうな顔をする。
確かにマリュー達にとってもガロードの戦闘能力は魅力的な物だった。
だが、彼にはこれからどうするか傭兵故の選択の余地がある。
そして、ここでは触れられなかったがストライクに乗っているキラについても……
いや、キラの場合は元々民間人で、おまけにコーディネーターだ。
余計に扱いづらい。というか、降ろさざるを得ないだろう。
その時、アルスター事務次官が口を開く。
「私としては彼に残っていて貰いたい。行く行くは制式兵にしても良いとは思うが、今のところは彼自身の希望も訊いてみる価値は、十分にあると私は考える。どの機体に乗るかも含めてね。」
どの機体…… ? ああそうか。イージスもあるからか。
ぼんやりとマリューは思ってしまう。

その時後ろの方から、大きな声が聞こえてきた。
「報酬の方、まだ貰ってねえから今んトコ降りる気はねえよ。けど、俺はあのジンって奴に乗らせてもらうぜ。
あのイージスって奴、武器は結構強力なのもあるし、部品も回収してきたからまた乗る事は出来る様になると思うけど、な〜んかいけ好かねえんだよ。変形するところがさぁ。」
声の主は話題のガロードだった。
ナタルが「口のきき方に気をつけないか !! 」とぴしゃっと言うが、まあそうカタイ事言わないでとばかりに笑って応対する。
すると、事務次官がすーっとガロードの方に進み、手を取って言う。
「君か ?! あのジンのパイロットは ?! 有り難う。本当に有り難う…… !
私がここにいれるのも、娘とまた会えるようになったのも、私が乗ってきた艦、そしてアークエンジェルが無事でいられたのも、イージスが戻ってきたのも、一重に君の協力があったからだ。
心からのお礼を言わせて貰うよ。いや、本当に有り難う。」
「いやあ、そんな……照れるじゃねえかよ。……いや、照れます、えーっと、事務次官……殿。」
言い方を変えたのはナタルのきつい視線があったから。
今にも雷が落ちそうな気迫が、向けられている視線にありありと込められていた。
そんな場をとりなすかのように、コープマンが咳払い一つし、提案をする。
「まあ、こんな場で話を続けるのもなんですから、奥に行ってから詳しい話をしましょう。彼の進退に関してはそれからでもじっくり話せるでしょうから……」
「そうだな……ん ? 」
彼の提案に同意した事務次官はある点を見つめる。
そこには、今更ながらという感でフレイが奥から姿を現していた。
事務次官の顔がぱあっと明るくなり、フレイも一気に走って彼の元に近づく。
「フレイ !! 心配したぞ ! よく無事で…… !! 」
「パパ……パパーッ !! 」
次の瞬間にはもう二人はひしと抱き合っていた。
かなり長い間会えなかったのだろう、お互いにさめざめと涙を流して再会を喜び合っていた。
この一瞬の未来に自分が貢献出来た事に、ガロードは何とも言えない気持ちになる。
そして、側に来たティファが優しく微笑んで言う。
「未来は変わりました……私たちだけでなく、みんなの手で。」
「ああ、そうだな。これで、良かったんだよな…… ! 」
「はい…… !! 」
ティファが見た確定しない未来。その未来は鮮やかに切り開かれた。
二人だけでなく、皆の力で。