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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第15話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:06:51

機動新世紀ガンダムXSEED 第十五話「許せ、キラ」

補充要員が追加されたアークエンジェルは今度こそ意気揚々と出航できる。
ここまで来るのにどれだけかかった事かとクルー達は嬉しさ半分疲れ半分だった。
だがそれに伴い、当然だが艦を降りる者も出る。
ヘリオポリスからの避難民がその代表だった。
これまで死線をかい潜らされる様な場所に晒してしまい皆は済まない気持ちで一杯だったが、逆に彼等からは感謝をされた。
アークエンジェルに拾われる事無く宇宙を漂う事になっていたら、それこそ洒落では済まない事態になっていたからである。
月艦隊と合流した後、避難民をシャトルに乗せて地球に降下させる案が出された後、その報せは今までブリッジを支えたあの学生達にももたらされた。
但し、フレイに関しては父親と共に月に行く事になっていた。
事務次官の方はプトレマイオス基地の視察にでも行くのだろう。
そしてフレイの行く先は恐らくコペルニクスにある中立都市あたりだと噂された。
あそこなら連合もザフトもお互い手出しは出来ないからである。
一通りの事を聞いたキラは困惑していた。
このまま真っ直ぐにシャトルに乗って地球に降下するか ?
それともフレイと同じ様に月へと向かうか ?
それともこのままアークエンジェルに残って同胞達を討ち続けるのか ?
一人悩んでいると、自分でも気にしていない内に医務室の前に来ていた。
テクスからアスランの手術は成功したと聞かされていた。しかし意識はまだ戻っていないと言う。
入るか、どうするか。
迷っていると目の前の扉が開き、幾つかのカルテを持ったテクスと鉢合わせてしまった。
直ぐにキラが何をしたいのか見抜いた彼は、部屋を出て行く前にさらりと言う。
「お前さんが彼と話したい気持ちも分かるが、自分の進む道と言うのは自分で決める物だ。
他人からああした方が良い、こうした方が良いと言われて唯々諾々となっているようでは、誰かさんに操られている事を自覚しないままに、自滅する道を一直線に進んでしまう事になる。
まあ、状況が状況だから答えを出すのはそれなりに時間がかかるとは思うが、自分の言葉で自分の意思をはっきり言える様になった時、自身の真の力に気付くだろう。
……少なくとも私はそんな人間を一人知っているからな。」

自分は知っている。自分の道を突っ走って新しい明日を見つけた人間の自分の意思を示した言葉を。

俺は……俺は、ティファを助けたいんだ ! 好きになっちゃったんだから当ったり前だろ !? -
それを思い出し図らずも苦笑してしまう。確かに聞いて格好いいものではない。
寧ろ大声で口にすればこっぱずかしいものだ。
だがそれを言った少年……ガロード・ランが閉じていたティファ・アディールの心を開き、果ては戦争を止め、新しい時代を自分達に指し示したのである。
逆にこの少年、キラ・ヤマトの心は柱時計の振り子の様に定まっていない。
ガロードが良い先生になるかもしれんな……あいつが先生というのも笑ってしまうところだが。
その場から立ち去ろうという時、後ろから声がかかる。
「先生 ! あの、有り難う御座います。」
「私は、何も礼を言われる事はしていないよ。それと、面会時間は次に私が戻ってくる時までだ。」
テクスはその場を後にする。
思い悩んでいたキラは意を決し、医務室の中に入った。
当然の事ながら医薬品やアルコールのツンとした臭い以外何もしてこない。
左側では、赤い髪のザフト兵が眠っていた。
容態は結構良くなって来ているらしく、包帯もかなり取れ時々寝返りも打っている。
そして右側にはかつてよく見た友人の顔があった。
友人と言うのでさえおこがましいと思えてきた。
自分は今、その友人の両手を縛った人間の側に立っているのだから。
「アスラン……」
名前を言ってみるが返事が無い。
やはりまだ麻酔が取れていなくて、はっきり目が覚めていないのだ。
そう思ってキラが医務室を出て行こうとすると、不意に懐かしい声がかかった。
「俺は起きているぞ、キラ……」

それはまるで背中に銃を突き付けられたかのような感覚だった。
その声で呼ばれるのを期待していたのに消えない恐怖感。
恐る恐る首を九十度回すと、アスランがとんでもない形相で睨みつけていた。
死神だって裸足で逃げ出すと保証書を付けても良い位だ。
それから低い声でキラを問い詰めた。
「何故俺と共に来ない ?! お前は俺達と同じコーディネーターだろう !! 俺達に銃を向ける道理なんかないはずだ ! いや、あってたまるか !! 」
その言葉の一つ一つが痛く感じられた。
そしてアスランはある意味言ってはいけない言葉を口にしてしまう。
「お前本気で俺を殺したいのか ? そんなに平気な顔で俺の仲間を討ちたいのか ?!! 俺が知らないだけでそんなに殺し合いが好きなのか、お前は ?!! 」
「違うッ !! 」
つい怒鳴ってしまったキラはしまったという風にその場で固まる。
だが相手は言葉の追撃をやめない。
「何が違うんだ !! お前がヘリオポリスで討ったジン……あれに俺のアカデミーの頃からの友人が乗っていたんだぞ !!
その後も初めて人を討った事無い人間じゃないみたいに、葛藤も、躊躇いも無しにのうのうとまた戦場へ出て……そう思われても仕方ない事をやってるじゃないかっ !! 」
「それは……それは……そうしなきゃ友達が助けられなかったから !! 」
「友達、友達って、そんなに新しいナチュラルの友達が好きか ?! お前はその友達の為なら何でも出来るのか ?! 旧友なんか蔑ろにするって事は、結局俺を討つ事に繋がるじゃないかっ !!
それでまた新しい友人が出来たら今の友人を討つのか、お前はっ ?!! 」
最早キラは一言も言えなくなっていた。
何がアスランをここまで変えたのか、正直分からない位だった。
だが彼は、分からないお前が悪いとばかりに睨み続ける。
何も言えなくなったキラはふらふらと医務室を出た。
ひとしきり静かになった医務室で、アスランは絞り出すような声で一人呟いた。
「お前がそちらの陣営につくというのなら、お前を突き放すしかいない……例え非情な言葉をもってしても……母を殺したナチュラルにつくのなら……許せ、キラ……」

「色々あったけど、あと少しだね。」
サイはほっとした面持ちで言う。
「僕達も下ろしてもらえるのかな、地球に。」
それにカズイが不安そうに質問した。
事務次官達が決めた避難民の扱いはとっくに知られているだけに、サイは不審そうにカズイに訊き返した。
「だってほら、ラミアス大尉が言ってたじゃん。『然るべき所と連絡が取れるまでは』とかなんとか……」
「ああ……だから、月艦隊がその『然るべき所』とかじゃないの ? きっと降ろして貰えるよ。」
その言葉にカズイは納得したかのように頷いたが、やはり不安そうに続ける。
「でも、キラはどうなるんだろう ? 」
それはサイも引っかかっていた。
現状でストライクを動かせるのがキラだけに、連合軍があっさり手放すかどうか分からない。
分からなかったが、カズイを安心させる為に根拠無い一言を言う。
「大丈夫だよ。キラは……俺達と一緒に来るって。さ、そろそろ部屋に戻ろう。」
そう言ってサイとカズイは食堂を出て、自分達の部屋に向かう。
彼らが去って数分後、今度はそのキラが食堂にやってくる。
そして近くのテーブルに突っ伏し、涙を流す。
……僕はアスランを殺したくない。
と言って、今更ザフトの方に与してヘリオポリスの友人達を討ちたくない。
自分の境遇も含めて、嫌になる事ばかりだった。
考えてしまうのは憚られたが、どうして血のバレンタインが起きた時アスランの側に居なかったのかと思ってしまう。
それなら少しは同胞意識でも生まれただろうに……

「どうしたんだよ ? キラ。」
そこへやって来たのはドリンクを持ったガロードだった。
袖と頬を涙で濡らしたキラに出会うとは思っていなかったのか、ギョッとした雰囲気でその本人を見る。
「……泣いてたのか ? 」
ゆっくり頷く本人を見てガロードは事情を聞く。
さっき起きた事を一つ一つ思い出して話すのも辛かったが。
一通り聞いたガロードはドリンクを二口三口飲んで溜め息を吐く。
「そっか……お前も辛えんだな……」
それを聞いたキラは「うん」と言ったきり何も言えなくなってしまう。
「で、お前はどうしたいんだよ ? 」
キラは、えっ ? という感じでガロードを見た。
言っている事がテクスと似通っているからだ。顔見知りだからという事もあるだろうが……
ガロードは更に続ける。
「自分の頭で考えてさ、思ったように進むのよ ! お前はどうしてぇんだ ? 」
キラはそれから黙りこくってしまう。
未だどうすれば良いのか分からない。自分の頭で考えたが。
そんなキラを横目で見ていたガロードは一言だけ言ってその場を後にした。
「ティファを守り抜いて、平和なところで暮らす。それが、今俺が傭兵やってる理由だ。」

それから更に四日後。
アークエンジェルは護衛艦三隻と共に、月艦隊の到着を待つ事になった。
メビウス部隊が全てやられてしまい、頼みの綱がゼロ、ストライク、ジンカスタム機、そして突貫工事で修復の終わったイージスの四機だけではあまりにも心許なかったからだ。
特にイージスに関しては、ガロードがジンの方に乗ると主張している為、パイロットを探さなくてはならなかったが、適正のある者なぞほぼ0に近い。
立候補した者もいたが、機体性能を100%使い切る事が出来ずに上官から駄目出しをされていた。
だが敵はそんなに悠長に待ってはいなかった。
よりにもよって、折角遠路遥々やって来た月艦隊と合流出来る事になったこの日の、この時間にザフトが攻めてきたのだ。
ブリッジに入っていたミリアリアは更に絶望的な連絡を入れる。
「敵はローラシア級三 ! ジン……き、九 ! デュエル、バスター、ブリッツ ! 」
その報告にさっきまでこちらに来ていたコープマン、事務次官両名と会談していたマリュー達はその事実に慄然とする。
間違いない。イージスを奪還された報復か、或いは月艦隊も含めてこちらの力を全て潰す気なのか…… ?!
敵艦がこちらに近づくまでにコープマンは自艦に戻ってもらったが、事務次官はこのアークエンジェルにいる。
理由は見え透いていたが、わざわざ追及する間もなかった。
マリューは艦長席に座って深呼吸一つした後、命令を下す。
「ストライク、ゼロ、ジンに発進用意をさせて !! 」