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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第17話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:07:14

機動新世紀ガンダムXSEED   第十七話「単純な話です」

「しかしこうして改めて見ると壮観ですね。」
「まあ、外っ面だけ見てりゃあなあ……」
いつもはCICで索敵を担当しているジャッキー・トノムラが口にした一言にムウはあけっぴろげに思った事を言う。
地球連合軍第八艦隊-ハルバートン提督率いる大小数十にも及ぶ戦艦、駆逐艦で構成された艦隊がアークエンジェルに威容をもって接近していた。
「-百八十度回頭、減速、更に20%相対速度合わせ。」
「しっかしいいんですかね ? 旗艦のメネラオスの横っ面につけて。」
操縦桿を握っていたノイマンが冗談交じりの懸念をつい口にしてしまう。
「提督が艦をよくご覧になりたいんでしょうね。自らこちらへおいでになるという事だし。」
マリューは微笑みながら言う。
本当は直属の部下である自分達が呼びつけられる立場なのだが。
その時ナタルがさらっと一言言う。
「二人の傭兵、ストライクのパイロット、敵の捕虜の処遇に関しても考えてらっしゃるのでは ? 」
「そうね……」
その言葉にマリューは嘆息する。
合流直前のあの戦闘の後、具体的なこちらの損害内容が明らかになってきていた。
護衛艦三隻は主砲を含めた全砲門を等しく潰され、当分の間丸裸の状態だ。
加えて、ロー、そしてバーナードも機関部を切り離した為に自走するのが不能の状態になっており、曳航無しには進む事も叶わない。
アークエンジェルとて無傷ではなかった。
幾ら大型の火器とラミネート装甲という防御技術があるとはいえ、艦底部のCIWSとバリアントの一番を大きく損傷している。
戦闘中に六十四から七十二ブロックは緊急閉鎖され、艦内は今現在もその処置に追われている。
しかし、結果としてはここまで四隻は一隻も欠ける事無くやって来る事が出来た。
戦果にしても敵艦二隻を撃破、一隻を中破に近い小破、ジン九機撃墜、敵に奪取されたままのXナンバー機三機の内の二機を中破に追い込むなど、上官に報告すれば少しは感心してもらえそうな結果にもなった。
しかもそれをやり遂げたのはMA一機とMS二機。
そして乗っていた制式兵は唯一人で、あとは傭兵、そして民間人というそうそう信じられないものだった。
だが戦果に関しては少しばかり書き加える所がある。
ストライクの敵艦撃破に関してだ。
敵艦が転進を始めた時点で、既に敵が戦闘続行不能と判断し、撤退を試みていたというなら立派にそれは深追いである。
しかしマリューが撤退を指示するまで撤退命令は出ていなかった。
その撤退命令が出たのは敵艦二隻が屠られた後である。
フェイズシフトダウンした機体で戦闘を続けようとしたのは危険行為に当たるが……
さて、どうするか。

ジン改が格納庫に収容され、整備班と作業班がまたも満場の拍手と歓声で二人を迎える。
スタッフが次々と労いやからかいの言葉をかけてくる。
「お疲れさん !! よく頑張ったな !! 」
「あんな戦法でデュエルのビームライフルパクッた時はマジでたまげたぜ ! おまけにその後ジン四機も潰すとぁなあ ! すげえよ !! よくやった !! 」
「おいおい、今回はお土産、ナシかい ? まあ、今の所はチャラにすっぜ。」
二回目だと何か慣れた感じすら出てくるのが怖い。
その時一人のスタッフがある疑問を口にする。
「けどよォ、聞いた話じゃ後ろから飛んできたブリッツのランサーダート避けたり、ミラージュコロイドやってたのにその位置ハナッから分かってたみたいにブリッツの武器奪うみてえなピンポイント射撃やったり……
マードック曹長 ! その機体ってバックミラー付いてます ?! 」
「ああ ? んなモノ付いてる訳ないだろ ! 馬鹿言ってねえで作業に戻った、戻った !! 」
ゼロの損傷具合とにらめっこしていたマードックはぶっきらぼうにその質問に答える。
そうだった、とガロードは一つの事を思い出す。
ここにいるスタッフの誰一人として、最初自分達が尋問を受けた時にいなかったという事を。
ティファの力について知らないのも無理は無い。
皆が釈然としない表情のまま作業に戻る事となった。
その時ガロードの視界が不意にふっとブラックアウトする。
「ガロード !! 」
「……っとと。サンキュ、ティファ。」
ティファがさっと支えてくれたお陰で、地面と愛を交わす事にならなくて済んだが、足元が少しふらつく。
やはりさっき、デュエルのビームライフルをぶん捕る時にやらかした無茶が、今頃体に応えてきたのだろうか。
そして支えたティファも再び立ったガロードに縋るかたちでよりかかる。
「ティファ !!! ……ティファも大丈夫じゃなさそうだな。部屋まで送るから先に休んでなよ。」
「えっ ? じゃあガロードは ? 」
「俺は機体の修理とか改装とかやらなくちゃならねえからなあ……心配すんなって ! ちゃっちゃと終わらせて部屋に行くよ ! 」
「有り難う……でもお願い。無理はしないで。約束。」
ティファの表情を見ていた者達は一瞬思ってしまう。
そんな雨の日に外にいる捨て犬みたいな目をされたら、破った時のフォローが計り知れないな、と。
「わ、わあったよ……約束な。」
そうガロードが言うと、周りがニヤニヤと笑い出し、「守ってやれよ〜、破るなよ〜」と言わんばかりの表情を向ける。
二人の顔が真っ赤になるのは言うまでも無い。
「何見てんだよーッ !! 早く作業に戻れよーッ !!! 」
ガロードが怒鳴ると、スタッフは大笑いしながら蜂の子を散らす様にそれぞれの作業場に戻っていった。
その時、今度はジン改の方に向かっていたマードックが声をかけてきた。
「坊主 ! ちょっといいか ? 」
ガロードはティファに短く「じゃ、また後で ! 」と言うとジン改の方に向かった。

そこではマードックが難しい顔をして立っていた。
「整備のおっさん ! どうしたんだい ?! 」
にこやかな顔で来たガロードに向けられた提案は度肝を抜く物だった。
「……イージスばらしたくねえか ? 」
「何だって ?!! 」
一瞬冗談かと思われたが、かなり真剣な表情が冗談ではない事を示していた。
「お前さんイージスの変形機構が気にくわねえんだろ ? だがあいつのパーツはかなり使える物ばかりだって事はお前さんも知ってる。
おまけに相手はしょっちゅうXナンバーの機体を使ってる。真正面からまともにあいつらの相手をするにはこれしかねえんだ。」
ダイヤを削るにはダイヤを使うしかないとはよく言われている事だ。
先程は機転を利かせて勝ったが、今のジン改の武装では明らかに分が悪い。
「本当は元のまま使うのが一番なんだが……艦長達、かけあってくれねえかなあ ? 」
「艦長さんはまだしも、副長さんに言ったら殺されちまうぜ ? 」
当たり前と言えば当たり前だ。
やっと取り戻せた機体を旧型機の改造の為だけにばらすわけにはいかない。
今こちらに連絡艇で向かっている月艦隊の人間も同じ結論に行き着くだろう。
マードックは思わず溜め息を吐く。
「あれは良い機体なんだがなあ……」
せめてビームシールドだけでもどうにかならないか ?
「イージス使える奴他に誰もいないのかよ ? 人員が補給されたんだろ ? 」
「今来ている第八艦隊の連中のパイロットでも、みいんなヒヨッ子に違えねえさ。フルの力でまともに扱おうと思ったら、もう一人の坊主の様な奴がもう一人必要になってくる……」
もう一人の坊主とは無論キラの事だが、それがもう一人必要になるという事は、暗にコーディネーターの力を使わなければイージスは使い物にならない事を指していた。
「コーディネーターと戦ってんのに、コーディネーターの力を使わなきゃまともに動かせない機体作るって、連合軍って一体何なの ? ……はぁ。」
「そう言うなって……はぁ。」
ガロードのその言葉にマードックは苦りきった表情をする。
格納庫のジン改の前で二人はがっくり肩を落とした。
その時だった。
「あのっ…… ! そのイージスって奴に……乗せてもらえませんかっ ?!! 」
「「んあ ? あっ、あんたは !! 」」
二人は揃って大声を出す。
それは機体でどうのこうの悩んでいれば、到底考えられない人物だったからだ。

部屋の中でキラは泥の様に眠っていた。
格納庫のストライクがおかれている場所に入ったのと同時にキラは気を失った。
その後担架に乗せられ一応医務室に向かわされたが、テクスは部屋で眠っていれば直に目を覚ますと判断した。
大した怪我を負っていないというのがその判断が下された理由だが、勿論未だ医務室にいるアスランとかいった敵の捕虜と顔が合う所に置いておけないという理由もあった。
やっと目を覚ましたキラは側にあったデジタル時計に目をやる。
時刻は戦闘が終わったあの時からきっかり一時間を指していた。
と、同時にある事がキラの頭をもたげる。
あの時……戦闘中にアークエンジェルの一部が炎をあげたのを見たと同時に、頭の中が急に霧が晴れた様にクリアに感じられた。
それから先、副長の怒鳴り声が通信機から聞こえてくるまでの間の事は、自分でもよく分からなかった。
その事を思い返すと本当に自分がそれだけの事をしたのかどうか自分自身疑わしい感情を持ってしまう。
ランチャー装備でジン二機と戦艦二隻を撃破したなど。
しかし、これではっきりした事が一つだけある。
もう自分はそう易々とアスランのいるザフト、いやプラントにさえ行く事は出来ないかもしれないという事だ。
深く考えるまでも無い。
あの艦にもアスランの知っている人はいただろう。
それが討たれたと聞かされたなら、自分を憎さで絞め殺してしまうのではないか。
もう、友達などという肩書きは無いに等しい。
彼にとってキラは敵なのだから。

自分は引き返せない所まで来てしまった。
途中幾つか岐路は存在していただろう。ストライクに強奪して相手のほうに移るとか。
今の友人の存在がその行動のストッパーになっていた。
そして煮え切らない態度でずるずると戦った結果がこうだ。

自分の進む道と言うのは自分で決める物だ。-
テクス医師はそう言った。
同胞を、旧友に繋がる人間を血に染め上げるのが、今自分に与えられた定めなら……
弱気な心も、甘さも、優しさも全部捨て去って鬼神の如く戦うしかない。

「何なんだ ! あの改造ジンは ! 」
「落ち着けよ、イザーク。あんな動きされたんじゃ、同じ機体に乗ってたって俺だってああなるかもしれねえさ。」
「五月蝿いッ !! 」
イザークがロッカーに拳を叩きつけ激怒するのをディアッカが何とか諫めようと四苦八苦していた。
今回の戦闘はイザークに異常なまでに屈辱感を味わわせる物だった。
よりにもよってナチュラルが操縦する、こちらからかっぱらったであろうジンに戦闘不能に追い込まれるなど。
自分が赤を着ているのはエースパイロットだからだ。
見こまれるほどの腕を持っているから赤を着ているのだ。
実績を重ね、場数を踏み、実力を認められる為に必死になって戦場を駆けた。
あの戦闘が白を纏う為のワンステージの一つだったとしても、これはあまりにお粗末な結果と思える。
彼の中では改造ジンに対しての激しい対抗心が渦巻いていた。
一方ニコルはすこし離れた所からイザークの様子を眺めている。
確かに彼がそう思っても仕方ない事実だったと思えた。
あの戦闘でほぼ無事に離脱できたのはXナンバーのバスターと戦艦ガモフだけだ。
投入した九機のジンは全滅し、ガモフと同型艦のツィーグラーとマルピーギも撃沈した。
またデュエルは機体の損傷が激しいばかりか下半身を失い、ブリッツも武器のある両腕を失っている。
月艦隊の射程に入るまでの十分で足つきを沈める事が出来ればそれで良かった。
それが為しえるであろう戦力を投入していたのだから、いつの間にか討伐は絶対成功するだろうという青地図を無意識に彼らは描いていたのかもしれない。
だが事実は違った。
自分がミラージュコロイドを展開して、足つきの艦橋を潰すか、それが出来なかったら足を止めるか。
その判断を下そうかとしている時に、デュエルがあの改造ジンの攻撃で窮地に陥っているのが見えた。
Xナンバーの機体云々の前に、乗っているのが付き合いの長い仲間だったので、救助の方を優先しようとしたが特攻にも似た一撃で衝撃を受ける。
ならば、とブリッツの特性を利用した攻撃を仕掛けたものの、悉くかわされ逆に武装をはぎ取られてしまった。
ニコルの回想はそこで止まった。
何の策も無しに、ミラージュコロイドを展開したブリッツの位置を特定できる訳が無い。
にも拘らず、あの改造ジンはランサーダートもレーザー波砲も避けた。
自分の居場所やこちらの手の内を知っているとか言う段の話ではない。
なら何なのだ ? 連合はパイロットに超能力者でも乗せているとでも言うのか ?
あまりそういった三文小説も裸足で逃げ出す様な設定なぞ信じたくは無いが、こうなっては信じざるを得ないのか ?
だとすれば、身の毛もよだつ話だ。
ブリッツのミラージュコロイドが効かないのはおろか、下手をすればこちらが立案した作戦まで筒抜けという事になる筈だ。
「今度足つきを撃ちに行く時は、あの改造ジンに狙いを集中した方が良さそうですね。」
「「ああ ? 」」
イザークとディアッカは同時にニコルの方を向く。
当の本人はいつになく真剣な表情で言った。
「あまり信じたくはありませんけど……単純な話です。あの改造ジンには人の力を超えた何かを持ったパイロットが乗ってるかもしれないんですよ……」

「罰は無しですか ?! 」
G兵器とアークエンジェルをアラスカまで届けるという覚悟をマリュー、ナタル、ムウがハルバートンの言葉で再確認した後、キラの処分に対しての答えがそれだった。
ハルバートンの温情を効かせた判断にマリューは内心胸を撫で下ろす。
「先の戦闘における撤退命令は彼が敵戦艦を二隻撃破した時初めて下されたもの。それが理由だ。」
「しかし、敵が転進を始めた時点で、状況判断をして引くべきだったと私は思います !! 」
ナタルは苦言を呈している。
軍人の目線で意見し続ける彼女に彼は凍りつく様な目ではっきりと言った。
「君は彼がこの艦に乗った時点で既に兵士だったとそう言いたいのか ?! 目の前に死の恐怖が迫れば誰とて物事の判断を誤る事はある !
新兵なら有り得なくもないが、彼は元々民間人だ ! そんな人間に常に機械の様な正常な判断を下せと ? それは君の我が侭でしかない !! 」
「も、申し訳ございません ! 」
言われてナタルは縮み上がる。
付け加える形で彼は更に続けた。
「それでは彼にあまりに酷薄すぎる……」
その言葉を聞いてマリューは安心した。
そしてこの上官の部下になれて改めて嬉しいとも感じる。
しかし、気を抜く事は出来ない。
あのXナンバーはまた自分達を襲いに来るだろう。
マリューにはその時自分は彼にまたストライクに乗って戦ってくれと面と向かって言えるか自信がなかった。