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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第19話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:07:35

機動新世紀ガンダムXSEED 第十九話「先に行って待ってて。」

「足つきを艦隊ごと潰すのにしては随分な精鋭が集まったものだな。」
ヴェサリウスの艦橋でラウは一人誰にも聞こえる事無く現在の状況を皮肉る。
足つきの追撃を本部から許されたのは、突貫工事で修復を終えたヴェサリウスとガモフだけだった。
それも搭載が許された機体は前回の追撃より少なく、ジンとXナンバーそれぞれ三機のみである。
先遣隊との一戦だけで無く、その後の追撃でツィーグラーとマルピーギが足つきに撃破された事を鑑み、彼は高速艦の増援、或いはガモフと同じローラシア級戦艦かそれ以下のクラスの追加派遣を打信した。
が、相手からはこちらの正気を疑うかのような怒鳴り声しか聞こえて来なかった。
軍本部が言うには去年の春先にあったオペレーション・ウロボロスの影響がまだ後を引いているのにそこまで割ける艦も人員も無いとの事。
要するにジン三機は殆どお情けでついて来たと言っても過言ではない。
また、部下達も増援を強く言ってきた。
理由に関しては、イザークが熱く言ってきたアスラン・ザラの敵討ちの事もあるだろうが、ニコルが言ってきた別の理由に関しては彼自身も納得するポイントがあった。
足つきに配備されている改造ジンをMS総出で撃墜するべきだと言ってきたのだ。
あのジンが持つ独特の不気味さは最早ラウだけが感じるものでは無くなっている。
二人が共通して感じていたのは相手の異常なまでの先見性。
相手が何の武器を使うのか、何処に向けて撃つか、数秒後に何処にいるのか。
それがまるでちょっとした預言者の如く、あの改造ジンには知られているのである。
そのせいでこちらの戦力がかなり削がれているのは事実だった。
彼自身が考え付いた撃墜方法は一つしかない。
各個MSで撃墜しようとするよりも大勢でかかり、相手にどの機体から撃墜した方が良いかの判断を狂わせる。
そうすれば、どの機体から攻撃を始めた方が良いかまごついている間に、あっという間に武装を駄目にされ、撃墜されるだろうという物だった。
しかし……もしこの作戦すらも筒抜けになっていれば、身も蓋も無いが。
そんな風に思ってしまう自分につい笑いがこみ上がって来る。
筒抜けになっていたとしても、あと十五分でその連中に出くわすという避けられない事実。
そんな短時間で何が出来る……せいぜい足掻いているといい。
彼は座席から立ち上がりエレベーターの方に向かいつつ言う。
「アデス。三分後に全MS発進とガモフに打信しろ。その際に全員の目標物の再確認を怠るなよ ? 」
「はっ !! 」
目標物の再確認等妙な指令を出すものだ。現時点の戦略上の大きな目標物はあの足つきだろうに……
アデスの表情はそう語っていた。
それを見たラウは彼に見えないところで、仮面の下に歪んだ笑みを浮かべていた。
今何を真の脅威と見定める事も出来ない愚鈍な者はいつか、今から撃つハルバートンの様に退場させられざるを得なくなる……
遠くない先、彼も消えるな……と言わんばかりに。

総員第一戦闘配備の通信が聞こえてから、キラはパイロット用ロッカールームで黙々と着替え続けていた。
ガロードはまだ来ていない。殆どいつも一緒にいるティファという少女もだ。
ふと、先程の展望デッキでテクスと交わした自分の言葉の一つ々々が思い起こされる。
こうするしか道はなかった。
逃げ出して安穏とした生活を平然とした顔でまた始めるなぞ到底今の自分には出来はしない。
何より自分に仲間を討たれて怒り心頭のアスランとあんな状態で。
だがこれは自分の決めた道だ。
戦って、戦って、戦い抜いて自分自身は勿論みんなを守りきる。
そう決意をしてそこを出ようとすると、開いた扉から思いもかけない人間と顔を合わせる。
「フレイ…… ??! 」
「キラ…… ! 」
彼女は弾かれた様に後ろに飛ぶ。
しかし、直ぐに彼女は逆に彼を殆ど突き飛ばしかねない勢いで、ロッカールームの中に入る。
「どうしたの ? こんな所で ?! みんなはシャトルで地球に降りて、君は月に行くんじゃなかったの ? 」
「みんなは……シャトルには乗らないわ。ここに残るって。私も志願したの。パパが月に向かって出発した後に……」
その言葉にキラは目を見開く。
残る ?! それはつまり彼らがブリッジに入って戦い続けると言う事じゃないか、と。
それにフレイまで !? 艦長とかはともかくとして、彼女の父親とかはどうしたと言うのだろうか ?
あの人の事だから、目に入れても痛くないほど可愛がっている自分の娘を、早々簡単に軍に身を投じさせるなんてとても思えない。
必死になって止めようとするか、大声で口喧嘩の一つでもしそうだ。
大体先遣隊は既に修復が終わっていて、2〜3時間ほど前にここを離れていたので、話はその時辺りになるが。
キラの中にストライクに乗って戦い続ける自分の選択は、間違っていなかったという微かな安堵感が生まれるが、それは同時にもう一つの感情を生んだ。
そうなったら尚更自分が墜とされる訳にはいかないという重い責任感だった。
涙で潤む目をキラに向けフレイは続ける。
「キラこそ……シャトルで地球に降りるんじゃなかったの ?!! 」
その言葉にキラは下を俯くが、はっきりした口調で言い始める。
「僕は降りないよ。みんなが戦うって言ってるのに、自分だけ逃げるなんて僕には出来ない。
それにアスランにも、もう敵だって思われちゃったから……仕方ないよ。」
そこでキラは言葉をいったん切り、前にいるフレイを見つめてしまう。
「君こそどうしてここに ? 」
その言葉に彼女は答えようとはせず、端のロッカーから横に向かって順に何かを探し始めた。
こんな所での探し物は相場がついている。キラは直ぐに気づいた。
だが、口を開いたのはフレイの方が先だった。

「赤い奴に乗るのは……私。私なの。……許可は出たわ。」
先程キラに言った事は事実だが、これだけは真っ赤な嘘だ。
艦長達もそれに関しては首を縦に振っていない。
MS操縦技術の困難さを、数回に渡る出撃でよく知っているキラには到底信じられない事だった。
「そんなっ !! 君には無理だよ ! 何で君が…… !! 」
その言葉を歯牙にもかけない様に、彼女はパイロットスーツを探し続ける。
「私……ずっと逃げてばかりだった。何か出来る事があるのに自分からやろうともしないで、みんなから守られたり、心配かけさせたりで……何もしなかった。」
フレイは探し出した所から五番目のロッカーより、パイロットスーツを見つけ出す。
サイズはキラの物と同じで、男性兵士用の物だった為キラより合わない気がしたが無いよりマシである。
「でも、ガロードと一緒にいるあのティファって子は、私と同じ年でも私より頑張ってるし、みんなの役に立とうとしてるの !! ガロードと一緒にジンに乗って必死に助けようともしてるじゃない。
それ見てたら……私、恥ずかしくなるのよ。私はみんなの為に何もして無いって……」
フレイの声は絞り出した様な涙声になっていく。
彼女がティファの存在に今の自分の姿を重ねてしまうのには、サイの存在があったからだ。
サイとフレイの両者は親同士が決めた婚約者という事実がある。
故にお互いに慕い合う気持ちは分かるし、ガロードとティファの境遇を重ね合わせて見ていた時もあった。
だから、尚の事この非常時にサイだけが頑張って、自分が何もしないと言う事を自分自身が許さなかったのである。
「だけど ! 君はシミュレーター一回もやった事ないし、OSだって……」
「ガロードと同じ事言わないでッ !! 」
そのぎらぎらとした目つきの凄さと獣のような叫びに、キラはその場にびくっと立ち竦んでしまう。
これ以上何か意見でもしたら、平手打ちの一発でも飛んできそうだった。
フレイはふらふらと彼の方に行き、ロッカールームから出す。
「フレイ…… !! 」
「先に行って待ってて。着替えるから。」
彼女は、途中で開けたら殴るわよと言わんばかりの目つきをしながらドアを閉め、鍵をかける。
取り残されたキラはしばし呆然としていた。
引っ叩かれるのを覚悟で彼女を止めた方が良いかと思い悩んだが、何かを振り切る様に格納庫へ向かった。
その二人の会話を陰で聞いていた者がいるとも知らず。

ジン三機とデュエル、バスター、ブリッツがそれぞれヴェサリウスとガモフから発進する。
それに対応すべく、第八艦隊からもメビウス隊が発進した。
戦力差で考えるならメビウスとジンがほぼ10 : 1かそれ以上の差がある。
直ぐに両者は交戦状態に入るが、幾らMAが数あるとはいえMSに敵う訳がない。
ジン三機が密集状態でやってくるメビウスが放つミサイルを次々と撃ち落していき、バズーカで反撃する。
またその戦線をかいくぐって来るXナンバーの方も手加減は一切無かった。
砲撃に特化されたバスターは両肩に装着していたミサイルポッドを使って近、中距離の敵を、ランチャーとライフルを中央でドッキングさせた高エネルギー収束火線ライフルを使って遠距離にある敵戦艦を撃ち落していく。
ブリッツはミラージュコロイドを適宜目くらましに使用し、連合軍の艦の近くに突然現れてグレイプニールを艦橋に向け放って撃破した後、また別の艦に向かう。
デュエルは鎧の様に機体全体を覆う追加兵装のアサルトシュラウドを装備した状態で、ジンが屠り損ねたメビウスの始末をつけながら、他の二機と連携してレールガンとミサイルポッドを交互に使用し連合軍の戦艦を撃つ。
ブリッツが新たに駆逐艦一隻を屠ったその時だった。
『なあ、少しおかしくねえか ? 』
「どうしました ? ディアッカ。」
いきなりディアッカが他の二人に対し通信を入れてきたのを、ニコルが対応する。
『足つきからあの改造ジン出て来ねえんだけどさ、なんかあったのか ? 』
言われてみれば……
艦隊中央付近にいる足つきには動きが見られない。
出撃前にXナンバーの三人とジン三機のパイロットにはある通達。
それは足つきから特徴的なカラーリングのされたジンが出てきたら、MAの類は全て無視して総がかりでそれを撃てという物であった。
前回の追撃で連合軍として、あれだけの活躍をした機体を放っておけないというのが表向きの理由だったが、実際の狙いが違うというのを知っているのはラウとニコルだけだった。
発進直前の奇妙な通達にディアッカと、ジンのパイロット達は首を傾げる。
彼らは一様に、一機を集中的に狙うのは戦略上正しくないと思うが……といった表情をしていた。
だがそう思っても仕方ない。
彼らはあの改造ジンの力を自分自身で感じた事は無いのだから。
また足つきが動かないという疑問はイザークの一言でたちまち吹き飛んだ。
『足つきは連中に守られながら万全の準備で地球に降りるつもりだ。戦力は全て温存したままでな !! 相当の腰抜けしか乗ってないんだろう !! 』
相手を完全に馬鹿にしきった口調で、声も話し合いは終わりだと言わんばかりのものだった。
戦闘を開始してから十分。
当初の予定のようにスムーズにとまでは行かなかったが、ザフト側はじりじりと連合の戦力を削ぎ落としつつあった。

「おい ! 何で俺は発進待機なんだよ ?! 第八艦隊ったって、あの三機相手じゃヤバイぞ !! ってまあ、俺一機出たとこで、大して変わらねえだろうけどさあ……」
「フラガ大尉……本艦への出撃指示はまだありません ! 引き続き待機してください ! 」
格納庫でムウは焦れた様にブリッジに向かって繋ぐ。
戦闘が始まって十二分。彼の耳に人伝いに入ってきたのはセレウコス等二隻が撃沈されたという報せだった。

何とか出撃出来ないものかと訊いてみるも返事はノーだった。
第八艦隊と合流する前に修理を急がせただけにゼロの状態は万全で、それだけに味方の機体や艦が次々と撃破されていくのを、ただ指をくわえて見つめているしかない現状にムウはイライラしていた。
整備班、作業班も同じ様な雰囲気だった。
暫くしてブリッジから新たな一報がもたらされた。
それはこの戦闘の最中にアークエンジェルは時を移さず地球への降下を開始するという物だった。
「降りる ? この状況でか ?!! 」
「俺に怒鳴ったってしゃあねえでしょう ? まあ、このまんまズルズルよりゃいいんじゃねえんですか ? 」
「だがなあ……」
「―ザフト艦とジンは振り切れても、あの三機が問題ですよね。」
「それは俺達に任せとけって ! この艦はぜってーに無事に地球に降ろしてみせるさ。」
二人の会話に割り込んできた聞きなれた声に、ムウとマードックはぎょっとして振り返った。
「坊主達 !! 」
パイロットスーツを着込んだキラとガロード、そしてティファがいつもと変わらない様子でやって来る。
唖然とする二人を横目に、三人はそれぞれの機体に向かう。
「あれだけ調整したからジンの調子は万全だろ ? いつでも出れるようにコクピットで待っとくぜ !! 」
「僕もストライクで待機します。まだ第一戦闘配備ですよね ? 」
キラはコクピットに真っ直ぐ向かおうとするのを見送りながらムウは小さく呟く。
「あまり若い頃から戦場とか戦争なんかに浮かされちまうと、あとの人生キツイぜ……」
いつもの飄々とした調子はどこへやらで、寂しげな響きがその一言にはあった。
自分の人生を重ね合わせている様な雰囲気。
その時格納庫にもう一つの影がゆらりと入って来る。
その姿にガロードとマードックはまたかと思い、ムウはキラの一件に続いて二度も驚かされ、逆にキラとティファは落ち着いた表情でそれを見ていた。