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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第23話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:08:27

ガロードははっと目を覚ます。
ここは何処だろう ?
自分の体はベッドの上にあり、手足は四隅に拘束用のベルトできっちりと固定されている状態だ。
連合軍のパイロットスーツを着ていてこの待遇なら、ここはザフトの基地か連合軍に反旗を翻している組織の本部だろうと容易に想像はついた。
尤も今そのパイロットスーツは着ておらず、いつもの格好になってはいたが。
辺りを見回すと真っ白な壁に真っ白なタイル張りの床しか目に付かない。
天井から射す様な蛍光灯の光は、見ていて正直目と頭が痛くなってくる。
人が生活している雰囲気が感じられない程の殺風景な部屋でガロードは大気圏降下の時以降の事を順を追って思い出す。
そうだ、自分はジンに乗っていて、イージスのシールドを前に構えながら大気圏に突入して、機体が損傷しながら海面に衝突しちまうって時にシステムが次々に死んでいって……
そこまで考えた時重大な事を思い出す。
ティファは……彼女は何処にいるのだろう ? 酷い目に遭っていないだろうか ?
そう思うと、いてもたってもいられなくなりガロードは体を必死にがたがたと動かす。
が、ベルトは全く緩む気配すら見せず、床に固定されているベッドはギシギシと揺れるだけだった。
パイロットスーツの時でも身に付けていた万能道具は全て引っぺがされたのかいやに身軽に感じる。
散々やっても状況は好転する訳でもないので、いい加減じれったくなったがこんな所でぼやぼやしている間は無い。
無駄な努力かとも思われてもいい。
とにかくティファを助けに行かなければ !!
ガロードがそう思っていたその時、部屋の扉がゆっくりと開き自分とおない年くらいの少年が入ってきた。

ガロードが目を覚ます数分前、一機の戦闘機がジブラルタル基地に近づきつつあった。
その機体の接近に基地は動きが慌しくなるになる。
それはザフトには登録どころか存在すらしていない代物だったからだ。
そんな戦闘機スタイルの機体がロールアウトされたという報告も無い。
しかし後続も無しに単機でジブラルタルの様な巨大な基地にのこのこ来るとは、相手が連合軍の人間なら殆ど自殺行為だ。
とはいえここは連合を成している国家の一つ、ユーラシア連邦が近くにあるので偵察や牽制の意味合いがあるなら油断も隙も無い。
直ぐに警報が発令され、管制塔からその機体に向け通信が入る。
『そこの未確認機体 !! そちらはザフト軍ジブラルタル基地の領空を侵犯している !! 直ちに転進せよ !! 転進しない場合攻撃意志のあるものとして迎撃する !! 繰り返す……』
何時でも迎撃出来るようMSの発進準備が整っていく緊迫した状況の中で、戦闘機の側から返信が帰ってきた。
「こちらはザフト軍クルーゼ隊所属認識番号二八五〇〇二、アスラン・ザラだ。現在事情あって連合軍の機体に乗っている。大至急基地責任者へ繋いでくれ !! 」
身元照会で問い合わせの間、焦る気持ちを抑えつつ待っていると、通信機から確認した、着陸を許可するとの連絡が入る。
それを聞いた彼は突進するかのように着陸態勢に入り、やがて滑走路に機体を走らせ、止まらせる。
機体が完全に止まったのを確認した後、アスランは感慨深い気持ちで目を閉じる。
やっと自分はいるべき場所に戻って来れたのだと。
自分は怪我をしているが戦えないという訳ではない。直ぐに治療してもらえば何とかなるだろう。
そんな事を思いつつキャノピーを開け、外に出ようとすると周りの様子に面食らってしまう。
数人の兵士がこちらに向けて銃口を向けているからだ。
いかに認識番号や声紋照合が本部で一致したとはいえ、実際にその本人なのかそうでないか裏が取れなければ安心してはいけないらしい。
相変わらずの厳重警戒だが、アスランは図らずも父から教えられた事を思ってしまう。そういう姿勢でいてこそザフトなのだと。
その時遠くから久しぶりに聞こえる声があった。
「アスラーンッ !! 貴様一体何処で何をしていた ?!! 」
同じクルーゼ隊に所属しているイザークがエレカに乗ってこちらに来ていた。
側には運転しながら、イザークに呆れ顔を向けているディアッカもいる。
その声と言葉に兵士達はアスランに向けていた銃口を下げ、二人の為に道を開ける。
ディアッカがエレカを止めると同時に、仏頂面のイザークがコクピットから降りたアスランの元に駆け寄る。
その表情にアスランは辟易した表情で応対した。
「ナチュラルの船に乗せられていただけだよ。そこから出て来ただけさ。……イージスは取り返せなかったけどな……」
取り返すというのも自分で言っておきながらなかなか笑えてくる表現だ。
元は向こうがこちらを討つ為に作った物をこっちが奪ったというのに。
その言葉を聞いてイザークは相手が負傷している事も忘れて、襟首を掴みながら乱暴に揺さぶる。
「だからこの機体で帰ってきたというのか ?! 」
「ああそうだよ……」
アスランはイザークの言葉を適当に受け流しつつ、ふらふらした足取りでエレカまで行き、座席に身を任せるかのようにどさりと座り込む。
後から乗ったイザークは後部座席に血が付いているのを見てぶっきらぼうに言う。
「後で貴様の冒険譚でも何でも聞いてやる !! 怪我の治療で後回しになりそうだがな !! 今はそこで寝ていろ !! 」
それが彼なりの気づかいの形だと気づくのに大分かかってしまう。
こいつは相変わらず素直じゃない奴だなと改めて思わされた。

そしてアスランは連合軍の船に乗って知り得たもう一つの事実を口にする。
「ナチュラルの船に乗っていて分かった事がある。……ラスティは捕虜になって生きている。」
「「ええっ ?!! 」」
次の瞬間前方の二人の声がかぶり、エレカもぐゎらと大きく左右に揺れた。
当然の反応だ。彼もアスランと同じ様に今の所MIA扱いになっているのだから。
そこでディアッカがアスランに一つ質問をぶつける。
「でもよ、それならどうしてお前と一緒に逃げなかったんだ ? 」
その質問に対しアスランは苦りきった表情をする。
思い出すのも忌々しいあの部屋から出る最後の瞬間に放たれたラスティの一言。
―俺はこの船でちぃとばかし探し物があるんでな。
あの時どれほど何も見つかりはしないと怒鳴ってやりたかったか……
「あいつは捕虜で居続ける事を選んだよ。ナチュラルの連中がさぞかし上手く丸めこんだんだろうな。あいつもあいつだよ。手も無く騙されてさ……」
「そうだったのか……」
ディアッカはやっとその一言だけを言う。
アスランは連合の機体を奪取した時から、仲間が手の中から次々に落ちていく様だった。
同じ隊に配属されたマシュー、オロール、ミゲル。そして生きているとはいえラスティさえも……
もうここに残っている面々しかいない。そう思った時、ある事に気づく。
イザークとディアッカがここにいるのなら同じ様に来ているであろうもう一人はどうしたのかと。
「なあ、ニコルはどうしたんだ ? 」
エレカが走り出すと同時に二人に向けられた質問は、ディアッカの方が答えた。
「俺達がここに来る少し前に近くの海でMSが発見されたっていう報せがあって、今はそこで回収されたMSパイロットに会いに行ってる。……お前がよく知ってる足つきに配備されてた特殊改造ジンのな。」
「何だって ?!! 」
それを聞いたアスランは驚いてしまう。
低軌道の会戦であのジンがこの近辺に落着しているだろうというのは容易に想像がついたが、このジブラルタル基地に収容されているとは……
それと同時に言いしれ様の無い感情が自身の中に渦巻いてくる。
ちらとしか知り得なかったが、あの二人のパイロットに関してはザフトレッドとして自分の持っていた矜持をズタズタにしただけでなく、自身を敵軍の捕虜にするという屈辱的な経験をさせたのだから八つ裂きの候補としてはキラの次に挙がっている。
何かの理由にかこつけてこの基地でさっさと消す事は出来ないか…… ?
「まあ、俺は止めといた方がいいぜって言ったんだけどな。仮にも敵兵だし。」
アスランの思い等全く知らない様にディアッカはニコルの行動が浅慮甚だしいとばかりにふふんと鼻で笑う。
格納庫に入ったエレカは軍施設への通用口の前で停止する。
それと同時にアスランはひらりとエレカから降り、そして脱兎の如く施設内に入っていく。
後ろからイザークが治療はどうするんだとか何か言っていたが、最早今の彼には何も聞こえて来ない。
会う人間に対し、手当たり次第にそのパイロットがいる場所を訊く。
その結果パイロットは男女で二人おり、少年の方が自分の今いる場所から程近いという事でその方向へ向かった。
逸る気持ちを必死で抑え、その部屋のドアの前に立つと先程のディアッカの言葉からある疑問が浮かんだ。
何故ニコルは自分達を何度も窮地に陥らせた敵兵と話がしたいと思ったのだろう ?
窮地に陥らせる事の出来た理由を訊くのなら頷けるが。
そう思いつつドアの前に立ち、インターフォンに向けて話しかける。
「ニコル。いるのなら入るぞ。」
目の前のドアがその問いに応えるかのごとくスライドする。

2〜3歩中に入ってから室内を見ると、その中には寝台に横になっている少年に穏やかな表情で話しかけているニコルの姿があった。
そして、部屋に入ってきた人間が誰かというのをちらと見やった彼は、思わず椅子を勢い良く後ろに倒してしまう。
「ア、アスラン !!! あなた……どうしたんですか ?! 」
部屋の入り口へ振り向いた彼は改めて驚かされた。
MIA扱いになっていた人間が自分の前にひょっこり現れたのだから。
「あんたは……イージスのパイロットじゃねえか !! どうしてここに……まさか、アークエンジェルから脱走してきたって言うのかよ !!! 」
事情を知っているパイロットの少年―確かガロードとかいったか―も、アスランを見て驚かされた。
話しの内容を聞いてみようかという気も起きぬまま、アスランはその場ですぐに腰のホルスターからオートマチックを抜いて構えた後静かに言う。
「そこをどけ、ニコル。そのパイロットに俺達を苦しめた落とし前をつけさせてやる。」
その言葉でアスランがガロードの命を狙っていると分かるニコルはアスランの方に駆け寄る。
「止めてください ! 幾ら敵兵でも今捕虜ならその扱いはきちんとすべきです ! 身柄を引き渡す前に問答無用で射殺なんて条約違反ですよ !! 」
彼とて失った仲間の事を思えば悔しさが出てくる。
だが彼の性格上、今アスランがしようとしている事は絶対にしない。
だから相手の素性を穏やかな姿勢で訊こうとしていたが、それは死んだと思っていた戦友がいきなり表れあっさりと無しにした。
ニコルの言葉を全く意に介していない様にアスランは同じ姿勢のまま、更に険しく冷徹な声で続ける。
「こいつは正確には連合軍の兵じゃなくて、奴らに加担している傭兵だ。正規の軍人で無い者を射殺しようが、上への理由はどうとでも言える。
レッドの俺達、ましてやこいつらと少しでも同じ空間にいた俺の言い分くらいなら通してもらえるはずだ !! 」
そんな無茶苦茶なとニコルは言いかけたが、彼の目を見て言葉を失ってしまう。
その目は仲間を奪われた事による憎悪で輝いていたおり、表情も終始動かす事がなかったからだ。
本気だ。アスランは本気でガロードという少年を射殺しようとしているのだ。
単なる示威行為でも何でもなく、条約無視を知った上で。
その当の本人は同僚の内心に全く気を使う事無く、更に数歩前に出て銃のセーフティを外す。
「俺からすればお前はまだ甘いんだよ、ニコル……何故こいつをさっさと殺しておかなかった ? 尋問でも何でもやって素性を聞き出せば良いものを。」
その言葉と苛立たしげな口調はニコルを慄然とさせた。
やがて彼は今も逃げようと必死になっているガロードの直ぐ横にまでやって来て、こめかみに銃を突きつけた。
「お前も、もう諦めた方がいいと思うが…… ? 」
「うるせえ !! 俺はティファを助けに行かなきゃなんねえんだ。こんな所で時間喰ってるわけにはいかねえんだよっ !! 」
その横暴な言葉にアスランはトリガーに自分の指をかける。
「ナチュラルのくせに無駄な虚勢だとは思うが……一応、驚いておこうか。それはそうと非常に残念だ。お前は白馬の王子になる事が出来ずにここで斃れるんだからな。だが安心しろ。
別室にいる愛しのプリンセスも直ぐに身を緋色に染めてお前の元へ馳せ参じるだろう。あの世で無能なナチュラル同士幸せに暮らすがいい……」
「この野朗ッ !!! ティファに手を出すなァッッ !!! 」
アスランが並べ立てた言葉はガロードの怒りを爆発させるに十分な言葉だった。
状況が状況ならガロードはアスランをたこ殴りにしている所だ。
一刻も早くベッドから抜け出そうと更に身を捩じらせるが、全く効果は無い。
アスランは両の口端をふっと上げ、一片の憐憫さも無い冷徹な声で言う。
「何も出来ない事に絶望するんだな……さようなら……最大限の憐れみをもってお前を葬るよ……」
最後の瞬間が宣告されてもガロードは諦めたくなかった。
こんな所で死んでたまるか……ティファを死なせるもんか……っ !!!!
その時だった。
突然ドアが開き、その方向から銃弾が放たれた。
銃弾はアスランの拳銃を吹き飛ばし部屋の隅に追いやる。
銃弾を放った黒服の青年将校ははっきりとした口調でアスランに向かって言う。
「絶望は愚者の出す結論です。」
その場に居た三人はその方向を見る。
中でも一番驚いているのはガロードだった。
「お……お前……ええっっ ?!! 」
「御久し振りです。ガロード。」
青年将校は極めてにこやかに挨拶をする。
それが視界に入っていないのか、ガロードは相変わらず陸に上がった魚の様に口をパクパクとさせている。
何せその青年将校は、自分の元いた世界で剣を交えつつ解り合い、最後は共闘してくれる事になった頼もしい友なのだから。
アスランは衝撃で震える手を抑えつつやっと一言口にする。
「カリス……ノーティラス副司令殿……」