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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第4話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:04:43

ガロードが次に目を開けた時には、彼はもうコロニーの中にいた。
無事何事も無くという訳ではなかったが、これで第一関門は突破である。
とは言え、ティファを見つけるという本題がまだ終わっていない。
MSを使い外部マイクを使えば効率は良いだろうが、このMSで探しに出るのは流石に先程の事があるから不味い。
何よりこちらの世界のMSを扱いきれていない。
ガロードはハッチ開放ボタンを押し、外に出る。
ヘルメットを取り、目の前には確かにスペースコロニーの景色、つまり頭上に大地と街が広がっていた。
そして後ろを振り返ると、自分が吹き飛ばされたと思しき宇宙港が黒煙を上げている。
幸いにして、大規模な空気漏れは起こっていないらしく、特段大きな気流の流れは認められない。
少なくとも脱出に可及的な早さは求められてはいない。
が、出来るだけ早くティファを見つけ出し、ここから脱出しなければ状況はより悪い方に転び始めるだろう。
身軽にMSを降りたガロードはあちこちを見渡す。
探すという動作を始めようにもコロニーの端から端までざっと30kmはあるだろうか。しかも、探す部分は自分のいる居住区だけではない。
それにあの宇宙港にいる人間達が敵だといった人間達がここに攻め込みつつあるのだ。
早くどうにかしなくては !
その時だった。突然ガロードの頭の中にティファの声が響いてくる。
「ガロード……聞こえる ? ガロード……」
「ティファ ! 聞こえるのか ?! 今、助けに行くからその場を動かないでいてくれよっ ! 所で、ティファは今一体何処にいるんだ ? こう広くて建物も多いんじゃ……」
すると、ティファはその質問に落ち着き払った声で返答する。
「ガロードの目の前の建物に居ます。大丈夫……私が、導くわ。」
「……よし、分かった ! 」
ガロードは返事を言い切る前に走り始めていた。
が、ティファが示した目の前の建物はMSの攻撃を受け、もうもうと煙を上げていた。
ティファの言っている事が信じられない訳ではないが、そこに突っ込む事は色々と物騒極まりない。
それに……非常に嫌な予感がしている。
あのフロスト兄弟との正面対決の直後から訳の分からない事態が連続して起こっているのだ。
これ以上自分がどうにも出来ない事態に首を突っ込みたくはなかったが、相手がティファなら…… !
「やるしか、ねぇのか ?!」
一瞬迷った後、再びガロードは走り出す。
ここで止まる訳にはいかない。大事な、どんな物より大事な存在を失う訳にはいかない !
建物は「寄るな」とばかりに次々と火柱を吹き上げるも、その勢いはガロードの想いの勢いには勝らなかった。
再びティファの声が聞こえてくるようになる。
「先ずは、真っ直ぐ進んでください。」

キラ・ヤマトは戦争とは無関係の存在の筈だった。
自身でもそう自覚していた。明日になっても、工業カレッジのキャンパスで授業を受けながら、休みには友達と笑いあっている。
そんな日がずっと続く物だと信じきっていた。
だが、今眼前で続いている光景に彼はそんな日常はあっさりと崩壊したと思わざるを得なかった。
今彼は見知らぬ金髪の少女の手を引きつつ、脱出ルートを探っている。
日頃から出入りをしているカトウと言う名の教授の所で出会った少女を。
先程の轟音がした直後、彼女は教授のラボから弾かれるように外に飛び出し、余計に危険なモルゲンレーテの工場区に入り込んでいた。
確かめたい事がある ! と言って。
一体何を確かめるのか分からないが、放っておけば命を落としかねない。
暫く走っていると、キャットウォークのある開けた場所に出る。
見た所格納庫の様な所だが、構っている暇は無い。
二人がシェルターの方向に行こうとした時、目の前を弾丸が横切る。
下では銃撃戦が始まっている様だった。気をつけて進まなければ流れ弾に当たってしまう。
と、向こうから一人の少女がつかつかと歩いてくる。
キラは変に思った。この緊急時に退避シェルターの方向から誰か来るなど。
少女は自分達に向かって急ぐ事も無く、銃撃に怯える訳でも無く、何か強い意思を持っている様にこちらにやって来た。
「あそこのシェルターはもう一杯です。この先の左にもう一つシェルターがありますが、それももう無理です。ここに居ましょう。」
こんな過激な銃撃戦をやっている所が退避シェルターよりも安全だとでも言うのだろうか ?
思わずキラは訊いてしまう。
「ここの方が安全て……どうしてそう思えるの ? 」
その質問に彼女は臆する事も無くはっきりと自分の意見を言った。
「私を導く人が来ます。そして貴方がたも。」
導く人 ? その発言にキラは訝る。しかし、少女の瞳は揺るぎ無い何かに支えられている様にしっかりしていた。
その言葉の真意を考えていたキラの耳に突き刺さる様な叫び声が聞こえる。
「お父様の……裏切り者ッ !! 」
キラと共に来ていた少女がキャットウォークの手擦りにしがみついて叫んだのだ。
かなり大きい声だったのか、格納庫内で反響する。
と、階下の格納庫から光る物を見てとったキラは、尚も手擦りの近くに居る少女を引き離そうと身を出す。
が、そのキラよりも早くシェルターから来た少女が、金髪の少女を自分達が来た方向に突き飛ばした。
その二人のいた所を銃弾がヒュッと音を立てて通り過ぎる。
いてもたってもいられず、キラはシェルターから来た少女に向かって叫ぶ。
「やっぱりここから離れよう ! こんな所にいたんじゃ……」
その時である。自分達が現れた方向からまた一人誰かがやってきたのである。
「ティファーっ ! 何処にいるんだーっ ! いたら返事してくれーっ ! 」
片手に小振りな制式銃を持ち、辺りを見回している少年は誰かを探しているようだった。
「ガロード !! 」
その声に引き付けられる様にシェルターの少女は向かって行った。
それまで不安げだった少年の顔はその少女の顔を見ると急に明るくなった。
「ティファ ! ホントにティファなのか ?! 良かったァーッ ! 」
ガロードと呼ばれた少年は一目散にティファと呼んだ少女に向かって行き、ひしと抱き締める。
それはさながら、かなり長い間会えなかった恋人同士が劇的な再会を喜んでいる様な光景だった。
これが夜中のドラマのワンシーンならぴったりだろう。
だが、二人の置かれた状況はそんな物とは激しく不釣合いな物だった。
「私も、ガロードに会えてとても嬉しい。ガロードが来るのをあの人達と一緒にずっと待っていました。……ここは危険だから、あの人達と一緒に避難しましょう。」
「分かった。えーと、お前ら ! 」
お前らの指すのが自分達だとキラは気付く。
いつまでもお前ら扱いは嫌なのでキラは一応自分の名前を名乗っておく。
「キラです。キラ・ヤマトといいます。」
「わ、私の名はカガリ・ユ……」
キラに触発された少女が自分も名前を名乗ろうとした時、階下から特段大きい声が聞こえてきた。
「ハマナ、ブライアン、早く ! X-105、303を起動させるんだ ! 」
その場に居た四人は揃って階下にある格納庫の方を覗き込む。
そこでは作業服姿の女性が数人の仲間と共にノーマルスーツに身を包んだザフトの兵隊と銃撃戦を行っていた。
女性とその仲間は横たわっているMSを守ろうと必死になってはいたが、傍から見ていた四人が見ても作業服の女性の方が不利になっている事は分かった。
特にキラはその理由がよく分かる。
あらゆる面に於いてナチュラルに勝っているコーディネーターで編成されたザフト軍とまともに戦って勝てるわけが無い。と、
「後ろですっ ! 」
咄嗟に叫んだティファの声が下まで響く。
作業服姿の女性改め軍人らしき女性はその場で振り向き彼女に接近していたザフト兵の一人を打ち倒す。
女性はティファとその周りにいる者達を見て「子供 ?! 」と驚きの表情をみせる。
ふと、ティファがガロードに向かって話しかけた。
「ガロード……」
「どうした ? ティファ」
「ここから直接下まで降りられますか ? 」
その言葉にガロードはギョッとする。
ここから下と言っても高さにして5〜6mはある。どうやって行けばいいものか。
その時、ガロードの頭に解決法が一つ思いつく。
自分が先に降り、後で降りるティファを自身がキャッチするやり方である。
「俺が先に降りる。ティファは俺が必ず受け止めるから、後で降りてくれないか ? 」
「分かりました。」
ガロードはキャットウォークの手擦りを乗り越え飛び降りる体勢になる。
ここまで来たら引き返せない。
「行くぜっ ! うぉぉっっ !! 」
瞬く間にガロードの体は宙を舞う。
そして両足で立とうとして、ものの見事に失敗した。
立つ事には立てたが、足にかかった負担が強烈極まりなく、そのまま後ろにごろりと転げてしまったのである。
「痛えええっっ !!! 」
思わず叫んでしまうガロードだったが、次の瞬間には震える足を立たせティファの為に両腕を出していた。
「へへっ、さあティファ、降りてきてもいいぜ ! 」
「はいっ !! 」
ティファは両目を瞑り、キャットウォークから身を躍らせる。
ガロードは位置を微妙に調整し、見事にティファをお姫さま抱えの状態でキャッチした。
目を開けたティファは頬を染め、優しく言う。
「ガロードなら出来ると、信じていました。」
「そ、そっか ? サンキュ、ティファ。」
つられてガロードの頬も軽く赤くなる。
そんな雰囲気をとてつもない勢いで崩しにかかる先ほどの女性の声。
「そこの二人 ! 何をしてるの ! 早く逃げなさい ! 」
「言われなくても…… ? 」
ガロードは目の前にあるMSに向かいつつも、それに目が奪われる。
それは二門の砲門と特徴的なパネルが無いのを除けばダブルエックスと形状が良く似ていた。
MSはMSでもこれもやはりガンダムなのだろうか。
そこに先ほどの少年も駆けつける。
しかし、彼と一緒にいた筈の少女の姿が見えない。
「おい、さっきの女の子はどうしたんだ ?! 」
「シェルターの方に行かせた ! 女の子なら何とかしてもらえないかと思って ! 大丈夫、ちゃんとシェルターに入ったって見たから ! 」
キラはそうガロードに説明をした。
銃撃戦は苛烈さを増しつつあったが、この場にそぐわない四人の子供達を見て、女性の隣にいた男が一瞬気をとられる。
「何故、こんな所に子供が ?! ぐああっ !! 」
「ハマナっ ! 」
ハマナと呼ばれた男は敵の銃弾によってその場に倒れ、二度と女性の声に反応する事は無かった。
その一連の出来事を見ていたガロードは撃ってきた方向に向け、同じ様に銃を向けていた女性より速く二発撃つ。
「ぐあっ !! 」
撃たれたザフト兵はガロード達の2〜3m程手前で倒れる。
しかし、ガロードが撃った弾はザフト兵の右の肩と右足の付け根に当たったらしく、まだ息はあった。
「ラスティ ! くそぉっ !! 」
こちらに近づいてくるもう一人のザフト兵が銃を向けるが弾詰まりでも起こしたのか、直ぐに銃を捨てナイフを持ってこちらに向かってくる。
ガロードは最初に打ち倒したザフト兵の元により、銃を奪おうとしていた。
その時だった。
不意に敵の方の動きが止まったのである。
「キラ…… ? 」
敵兵の口から出たのは、自分達にさっき名のった少年の名その物だった。
そして、その少年の方も呆けた様にある名前を言う。
「アスラン…… ? 」
その流れの意味する所がいまいち分からず、ガロードが訊く。
「おい、どういう事だよ ? 何で敵さんが、キラ、お前の名前を知って……うわわっ !!! 」
言いかけてガロードはティファを抱いたまま、先程狙撃したザフト兵と共にMSを乗せているトレーラーの上に足を滑らせた為滑り落ちてしまう。
直後に銃声が起き、程なくしてMSが動き出した。
「危ねぇっっ !! 」
ガロードは右手にティファ、左手にぐったりとしたザフト兵を抱え、その場から飛び降りる。
間も無く、後ろのMSも目に灯が灯り、ゆっくりと動き出す。
厄介な事にならない前にガロードは抱いていたティファをその場に下ろし、その場から二人で逃げようとした。
しかし、3〜4歩進んで後ろを振り返る。
考えてみれば、自分はこの世界のMSの動かし方を全くといって良いほど知らない。
ここまで来れたのも、色々と幸運が積み重なってきた物に違いない物だ。
おまけに、暫定的に敵とは言え完全に討ちきれず、戦場にごろりと放ったらかしにしているのも良い感じはしない。
ガロードとティファはザフト兵に近寄る。先に口を開いたのは、ティファの方だった。
「大丈夫ですか ? 私が後で手当てしますから……」
ティファは相手の気持ちを思い、相手のヘルメットを取ってから手を差し伸べ、なるべく優しくアプローチする。
だがザフト兵は動く左手でティファの手を思いっきり払いのけ、ヘルメット越しに鬼気迫る勢いで睨みつける。
「うるせえんだよっ、このナチュラルが !! 俺に触ろうとするんじゃねぇよっ ! 」
その言動にガロードの頭に一気に血が昇った。
しかし、後の事もあるので爆発寸前の怒りをやっとの事で押さえつけ、先程その彼から奪った銃をヘルメットのバイザー越しに当てて言った。
「おい、お前MSの操縦は出来るのか ? 」
すると、ザフト兵は顔を一瞬強張らせたが、直ぐに薄ら笑いをしてそれに答える。
「ハァ ? 出来るに決まってんだろうが。お前等鈍重なナチュラルとは俺達は出来が違うからな。って言うか、MSの操縦はなコーディネーターにしか出来ねえんだよ。このご時勢で、んな事も知らねぇのか ? バァーカ ! 」
やっぱこんな奴助けたのが間違いだったか ?
ガロードがトリガーの指に込める力が強くなる。
だが、仮にもティファがいる手前、そんなシーンは見せたくない。
いつまでもさっきのキラと名乗った少年の様にお前呼ばわりするのも疲れるので、取り敢えず相手の名前を訊く。
「お前……名前は ? 」
「黙れ。ナチュラルに名乗る名前が俺等にあるかよ。少し頭冷やせよ。」
「まじめに答えろよ。本気で撃つぞ ? 」
「チィッ !! ……ラスティ……ラスティ・マッケンジー。これで良いかよ ! 」
すると、ガロードはニヤッと悪戯っ子っぽく笑って、
「上出来だぜ !! 」
ラスティの怪我をした方の肩を持つ。
ティファは今さっきの事も無かったかのように相変わらず心配そうな顔をしたままガロードとは反対の肩を持つ。
銃は相変わらず突きつけられたままだったが。
「ケッ、胸糞悪いぜ。ザフトレッドの俺がこんな掠り傷でナチュラルに助けてもらうなんてよ。」
しかし、銃弾を受けた右肩の傷によってパイロットスーツの右腕の部分をじっとりと血で濡らされ、同時に右足の付け根から踝の辺りまで太く一筋の濃く赤い線が入っていた事は受けた傷は掠り傷等ではない事を示すのに十分だった。
「命あるだけマシだと考えられねえのかよ ? 」
「そんなの、いつでも死ぬ覚悟のある軍人に言うセリフかどうか考えて言えよな。」
ラスティは自嘲気味に軽々しく言う。
が、それはティファによってあっさりと否定される。
「お願いです。例え貴方が軍人でも、そんな悲しい考え方をしないで下さい。貴方が敵でも今私達の目の前で貴方が死んだら私は……とても悲しい。貴方を形作っている命はこの世界にたった一つしかない……代わりは無い……かけがえの無い物です。ラスティさん、私は貴方を助けたい。……他人(ひと)を助けたいと思う感情を持ってはいけないのでしょうか ? 」
それを聞いてラスティは目を少し大きくさせるが、直ぐに不貞腐れた様な顔になる。
「お前はそうかもしれねぇけどよ……こいつは自分が操縦できないMSを俺にさせようとしてんだぜ。おまけに……ナチュラルが偉そうに哲学語ってんじゃねえよ。」
それを聞いてティファは悲しげな顔をする。
だが、ラスティは先程とは違う笑みを浮かべ続けた。
「けど、軍人になってから初めて言われたぜ。……軍人じゃないナチュラルに目の前で死なれたら悲しいなんてな。お前、変なナチュラルだな……。」
それを聞いたティファはクスリと笑う。
「貴方は……本当は優しい人……貴方のお母さんと同じ……」
「オイオイ、俺がお袋みたいにナチュラルに優しいって……」
そこまで言ってラスティは違和感を覚える。
血のバレンタイン以降のコーディネーターにしては少数派の自分の母のある事を。
「ちょっと待て。お前、俺のお袋に会った事は……」
「ありません。」
「じゃあ、何で俺のお袋がナチュラルに対して穏健派だって事を知ってる ?! 」
ティファは答えようとしたが、その前にガロードが大声を出した。
「見ろ ! 出口だ ! ……っと、それよりお前、操縦できるMSは ?! 」
「全般……とだけ答えておくよ。ジンでもシグーでも何でもな。」
ラスティはザフトレッドという事もあって、MSは取り敢えず全機種の操縦は出来る。
だが、ラスティの意識はティファの方に向きっ放しだった。
何故このナチュラルは母の事を…… ?
父と違ってどんな表舞台に出る事等無い母が信条としている事を…… ?
手を伸ばせばそのまま引きずり込まれてしまいそうな深く何処までも青い大きな瞳は何も彼には語って来なかった。
「よし、行くぜ ! 」
一呼吸入れた後、ガロードは勢い良く外に出た。