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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第5話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:04:54

外に出ると大方ガロードやラスティが予想していた通り、町は破壊され、黒煙があちこちから上がっている。
どこかに無傷の、或いは多少損傷があっても稼動可能なMSはない物かとガロードはあちこちを見回すが、近場にあるのはどれもMSの形をしたスクラップばっかりだ。
何処にも使えるMSが無い事にじれったくなったガロードは、少々乱暴にラスティに訊ねる。
「なあラスティさんよお。このコロニーにはさっきみたいに使えるMSがあるから襲いに来たんだろ ? 他にああいった奴置いてあるトコ、聴いてないの ? 」
それを聞いたラスティは苦々しげにガロードに向かって吐きすてる。
「お前な、ヘリオポリスは中立の立場を取っていたコロニーって事も知らねえのか ? MSの常時配備なんかされてる訳ねえだろ !! 」
「じゃあ、何でさっき見たようなMSがあるんだよ ? 」
そうガロードが言うとラスティは一瞬戸惑った表情をする
これは自分達の隊に極秘に与えられた指令だが、ずっと自分の後ろの首筋に当てられている銃の事を考えると無視は出来なかった。
「俺達はな、ここの建造主のオーブが連合軍の為に新型MSを密かに建造しているっていう情報を掴んだ。そのMSを奪取する為に送られたんだよ。事前に知らされていた5機の内1機を俺が奪取する筈だった。残りは恐らく仲間が奪ってっただろうな。」
それを聞いたガロードはあさっての方角を向いてうーんと唸ったが、直ぐに元に戻る。
「……あっちには俺がここまで来るのに使ったプロトジンって言うやつがある。この世界のMSは全然操縦出来ねえから、バーニアとかしかロクに使えねえけど……お前それ操縦出来るか ? 」
それを聞いたラスティはやれやれといった様に嘆息する。
「あんな物が戦闘に使えるか ! あっても訓練用の代物ばかりなのに正気か ?! 」
「訓練用の代物しかねえのなら、そこらのスクラップから奪えばいいじゃねえか。マシンガンでもビームソードでも何でも ! 」
「うば……本気で言ってんのか ? 奪うってそんな禿鷹の真似みたいな事……」
相当過激な発言だったのか、ラスティはしばし呆然とする。
しかし当のガロードはけろっとした顔で続ける。
「おうよ。訓練用の代物だからって馬鹿正直にそいつに付いてきてる物使っても、生き残れねえじゃねえか。それにそれしか使っちゃいけないってルールはねえだろ ? 」
ラスティは言い返す事が出来ずに黙ってしまう。
それはそれで正論かもしれないが、それではかなり場当たり的な戦闘を求められる事になってしまう。
少なくともザフトの戦闘方法ではない。
そこまで考えた時、ラスティの視界が一瞬ぶれる。
「ラスティさん ! 」
ティファが心配そうにラスティの顔を覗きこむ。
先程の銃撃戦での傷が相当体に応えている様だった。
体は数分おきに小刻みな痙攣を繰り返し、顔は真っ青に青ざめている。
「うるせえってんだろ、この……ナチュラルが。俺が本気になったら、お前なんか速攻でくびって……」
そこまで言ってラスティはその場にへたりこむ。もうティファに乱暴な接し方も出来なくなっていた。
相手がナチュラルなのに去勢すらも張れないなんて……。
しかし、こんな所で民間人とはいえナチュラルと共に野垂れ死ぬ等自分が考えていた軍人としての人生の幕引き方ではない。
ラスティは意を決し、ガロードに訊ねる。
「そのプロトジンが置いてある所までどれ位ある ? 」
「ここから1kmも離れてない所にある。だけど、MSの操縦云々の前にあんたの体のほうが心配だ。どこか手当てできる所か、それが無理ならメディカルパックの一つか二つでも見つけないと……」
「俺の体の事はいい ! コーディネーターの体がナチュラルに心配されるほど、柔に出来てるかよ……。それとも何か ? この状況でMSの操縦が出来る人間がそうそういないから俺に死なれちゃ困るってか ? 一人でMSの操縦もロクに出来ないナチュラルが……」
ガンッ !!!
ラスティのヘルメットを掠め、ガロードが一発地面に向かって銃を撃った。
瞬間ラスティの表情が硬直する。
ティファがびくっと反応し、ガロードを心配そうに見る。
「いい加減にしろよ。俺はあんたをMS操縦するだけの機械の様に見ちゃいねえよ。あんたを助けてえから、さっきの事を言ったんだよ。それをさっきからナチュラル、ナチュラルって……ティファが真剣に接してんのに、どうしてそんなひねた物の言い方しか出来ないんだよ !! 」
ガロードは、地面に向けていた銃口をラスティの首に再びあてがいながら、怒鳴りつけた。
格納庫にいた時から相当頭にきていたのか、声もかなり殺伐としたものになっている。
ラスティは氷の様に冷めた視線でガロードを見つめながら言う。
「よせよ。いちいち反応するなんてよ。ホントに俺を助けたいなんて思ってるんなら、こんな所で言い争いなんてやってる場合なんかじゃないんじゃないのか ? 」
ガロードはそれを聞いて、黙ってラスティの肩に再び腕を通す。
それを見ていたティファもおずおずと反対の肩を持つ。
その二人の真剣な表情を見たラスティは思う。
ほんの少しではあるが、ナチュラルへの態度を母親と同じ位に考え直した方がいいんじゃないかと。
気が付くと、自分の体の何処にも銃口は突きつけられていない。
さっきまでマジで撃つつもりな雰囲気だったのに。おまけに自分が逃げるという事を考えていないのか ?
「おい、……もう銃は向けないのか ? 」
ラスティが気弱に笑って問いかける。ガロードがそれに答える様に軽く笑う。
「助けるって言ったのに、ずーっとそんな脅しだけかけてたら、信用されねえだろ ? 」
「ははっ、ちげえねえ……」
元よりラスティにはもう二人を倒して銃を奪いその場から一目散に逃げるという体力は残っていない。
おまけに逃げたところで仲間ときちんと合流できるか怪しいものでもあった。
その時だった。ふとラスティの視界にある物が入ってくる。
「ちょっと待て ! 」
「何だ ? 何かあったのか ? 」
ラスティが見た物。それはキーがささったままになっている放置されたエレカだった。
恐らく突然の騒動で直ぐにでも戻るつもりだったのだろうか。
あれなら直ぐにそのプロトジンとやらが置いてある所まで行く事が出来る。
「あのエレカを使えば、結構早くそこに着くかもな。」

『ミゲル・アイマンよりエマージェンシー ! 機体を失ったようです ! 』
ザフトのナスカ級戦艦ヴェサリウスに入ってきた通信はクルーを驚かせるに値する内容だった。
ナチュラルが相手になっていることもあってか、殆ど抵抗らしい抵抗も無く今の今までかなりすんなりと新型機の強奪は上手くいっていた。
しかし、先程入った通信によると、ミゲルが被弾する前にはオロールも被弾しているらしかった。
それが示す答えは一つ。
奪い損なった残り一つのMSはそこまで強力だという事である。
一人の男がジンの発展型MSシグーの中にいる。
顔の上半分を奇妙なマスクで覆い、波打つ金髪と引き締まった体つきは、マスクだけでも強烈な印象を与える男の像をさらに強烈にしていた。
彼の名はラウ・ル・クルーゼ。彼こそがヘリオポリスで開発されていた新型MS奪取を行っていた部隊の長だ。
クルーゼはその知らせを聞き、直ぐにヴェサリウスの艦橋に通信を入れる。
「私が出たら一旦MSを呼び戻しD装備をさせろ。」
ヴェサリウスの艦長フレデリック・アデスは、上官のその指示に驚かされる。
「D装備ですか ? 」
D装備というのは要塞攻略専用の最重装備だ。
中立国の作ったヘリオポリスを破壊するとでもいうのだろうか。
そんな事をすれば軍部は勿論の事、最高評議会だって黙ってはいないだろう。
しかし、ラウはそんな事等何処吹く風のように涼しげな口元を浮かべ、愛機を発進させる。
シグーは宇宙空間に飛び出した後、真っ先にある方向を向く。
そこにはヘリオポリスに帰投しようとしていた連合軍のMAメビウス・ゼロが一機。
それが180度こちらに向かって回頭し、こちらに急速接近したのを見てラウはひとりごちる。
「私がお前を感じる様に、お前も私を感じるのか ? 不幸な宿縁だな、ムウ・ラ・フラガ……」
二機の距離は段々と狭まる。
先にシグーの方から牽制の一撃が放つ。
ゼロは鮮やかにそれを回避し、すれ違いざまに再び急旋回し敵の背後を取る。
更に有線式のガンバレルを展開し、四方から狙うがそれは難なく回避される。
「お前はいつでも邪魔だな、ムウ・ラ・フラガ ! 最も、お前にも私がご同様かな ?! 」
彼はゼロに乗っているのが始めから誰か不思議と感覚的に分かっていた。
自機のスラスターをフル稼働させ、ガンバレルをライフルで狙う。
が、その光条は非常に際どい所を通って虚空へ消える。
ガンバレルも敵機をかなりピンポイントで狙っているものの、間一髪のところでかわされてしまう。
お互いに一歩も引かずに交戦していたが、ラウは本体に撃つと見せかけてヘリオポリスの方向に転進する。
宇宙港を通り過ぎ、コロニーのセンターシャフトに入った彼は、追って来るゼロを見て不適に笑む。
「私と何処までやりあえるか……施設に気をとられずに出来るか ?! 」
コロニーの背骨とも言えるセンターシャフト内の施設を遮蔽物に使い、ゼロに向かってライフルを向ける。
相手もガンバレルをこちらに向けて照準を合わせているようだったが、なかなか撃ってこない。
ムウがコロニーを傷つける事を恐れているからだと感じ取った彼は、内心失笑してしまう。
地球軍の新型兵器を建造、もっと言えば密造に近かったが、そんな事を平然とやっている中立国のコロニーなぞ……いや、最早中立と呼ぶのも不似合いだ。
相手はそんなコロニーを守ろうとしている。
更に感覚を研ぎ澄ませ、ガンバレルを次々に撃ち落した。
ガンバレルを失い、残ったのが本体中央に備え付けられているリニアガンだけになったのを確認したラウは、コロニーのセンターシャフトにライフルを向け躊躇い無く撃つ。
穿たれた穴にするりと機体を通した後、特に黒煙が激しく昇っている所に情報のあった新型の内一機のMSが的の如く突っ立っているのを見て攻撃を開始しようとした彼は、別の方向を見て口元を不審感で歪ませる。
そこには新米兵の練習用ジンと、それに係留されている情報にない、ましてやザフト軍の物でもないMSが転がっていた。
練習用のジンはほぼ無傷だが、もう一つの謎のMSは大破状態だった。
普通ならなんて事は無いことだが、自然と勘が告げる。
それと同時に部下達の出撃前にアデスに言った一文が思い起こされる。
―ここで見過ごさば、その対価、いずれ我等の命で支払わねばなくなる。―
自身でその言葉をもう一度噛み締める事となるとは……
だが、重要性からいえば今自分の前にある的にも等しき新型の機体だ。
と、後ろからゼロが射撃を再開してくる。
しかし、ガンバレルを失ったそれは大きな脅威ではない。
仮にもザフトの中で白服を纏っている自分が……
数回の射撃で遂にシグーの射撃がゼロの機体を貫く。
完全に撃墜する事は出来なかったが、今はこれでも十分だ。
ラウは機体を急速に地上に向けて降下させていった。

ガロードはエレカを猛スピードで操縦しながら、直情的な行動に陥ってしまいがちな自分の頭をフルに使って現状を整理していた。
自分は本当に自分達と似て非なる世界にやって来てしまったのだ。
今後自分達はどうすればいいのか。その答えは既にガロードの中で出ていた。
ティファと共に生き残る !
それだけがガロードの最大の行動指針だった。
そしてティファは後ろでたどたどしい手つきだったがラスティの手当てをしている。
エレカの中には確かに医療キットがあり、最低限の止血をするには良かったが、出血が結構な量に達していたラスティの治療をするには不十分だった。
そのラスティはヘルメットもパイロットスーツの上半分も脱いでかなりラフな格好になっていた。
顔色は先程から回復はしていなかったが、意識はしっかりしている様でティファの応急処置にいろいろと言っていた。
ただ多かった口数はめっきり減り、乱暴な口振りもなりを潜めていた。
そうこうしている間にエレカがプロトジンの前に辿り着く。
ガロードが念の為に後ろを見ると、幸運な事にダブルエックスは係留されたままだった。
あれだけの騒ぎ、そしてここが宇宙空間との出入り口に程近い事もあってか周囲にはひとっこ一人いなくなったのが幸いしたようだった。
ガロードがコクピットの中を色々と確認した後、再びエレカに戻ってきた。
ティファがエレカからラスティを担ごうとしているのを見たガロードはすかさず助ける。
「MS操縦できそうか ? 」
「なんとかな。それで、俺にザフトに対して戦えと、そう言いたいのか ? 」
「あんたにそんな酷な事は言わねえよ。それに、俺だって極力戦闘は避けたい。ここから出る事を最優先で動いてくれりゃいいよ。」
そう言いながら、ガロードは先にティファをプロトジンのコクピットに乗せ、その後でラスティと共にコクピットに乗る。
ハッチが閉まると、コクピット内部はいやに締め付けられた空気になる。
無理も無い。通常一人乗りのMSに3人も詰めて入っているのだから。
ラスティはMSの電源を入れ、ゆっくりとジンを立たせる。
そこまでやってガロードにある事を聞いた。
「後ろに係留しているMSもか ? 」
「ああ、あれだけは絶対にどっかに放ったらかしなんて事にしないでくれねえかな ? 」
お荷物付きか……ラスティは軽く溜め息を吐く。
「分かった…… ! 」
ガロードはニィッと笑って、ティファの手を握る。
「ガロード……」
心配そうに見るティファを安心させる様にガロードは語りかける。
「ティファ、大丈夫だ。何にも心配する事はない。宇宙(そら)に帰るのさ。」
「はい。…… !! あうぅっ !! 」
それまで何事も無かったティファの体に異変が生じた。
ガロードは気が気ではない。
「どうしたんだ、ティファ ?! 」
ティファが外傷以外でこんなに苦しむのはたった一つ。何かを感じ取ったからだ。
それもこんな感じ方をする時は大抵ロクでもない、つまり自分達をどうこうしようとする連中が近づいている時だ。
苦しげな表情をするティファは荒い息をしながら、ガロードに語りかける。
「……とても……とても恐ろしい悪意が……来ます。」
そう言ってティファはモニターのある一点を指す。
そこには、先程キラという少年が乗ったと思われるMSがシグーに襲われかけていた。