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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第6話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:05:05

「あれは……クルーゼ隊長のシグーじゃないか ! 」
先に口を開いたのはラスティだった。
と、同時にラスティの頭は現状の好転的な打開の為に必死になる。
こいつらの言う通り、武装を撃墜された味方の機体から漁りながら、宇宙港から馬鹿正直に宇宙空間へ逃れるか。
それとも……どうにかしてクルーゼ隊長に現状を伝え、母艦に戻るか。
しかし、後者を選んだ場合自分の命という決定的カードを握っているのは、銃を持っている少年の方だ。
迂闊な行動を取れば、MSの操縦云々の前に次の瞬間には自分の後ろ首に銃口が突きつけられているだろう。
だが少女も含め、例え民間人でもナチュラルである二人がザフト艦に入る事になれば、手厚い歓迎が御待ちかねという事になっているだろう。
歯止めとしてのコルシカ条約があるが、同僚達が生真面目にそれを守る保障が100%有るとは限らない。
アカデミーで条約についての授業で自分と同じ艦に乗り込む同僚が言った言葉をラスティは忘れる事が出来ない。
―軍人だろうが民間人だろうが、ナチュラルの捕虜なんかいらねぇよ。殺るにしたって、目の前にいるのはゴキブリだって思えばいいのさ、ラスティ。人間がゴキブリに情けをかけようとするか ? 反射的に殺虫剤を構えないように出来るか ? はっきり言えば、目の前にいる人間がナチュラルだって確認できたら、銃を構えて、狙って、引いて、撃つ。簡単だぜ。どれだけそいつが命乞いしようとな。―
それを聞いて「違えねぇ、ハハハ」と大笑いしていた者達。
間違いない。上手く丸め込めたとしてもこの二人はヴェサリウスで一週間ももたないだろう。
ちょっと前のラスティなら死んでもあまり悪い気はしなかった。
が、今は違う。
自分にMSを操縦させ、銃まで向けていた少年の方はまだわだかまりはあるが、その少年にティファと呼ばれた少女に関しては、死んではマズいどころか、僅かだが死なせたくないという感情すら沸きつつあった。
ラスティは決意する。禿鷹扱いされようが自分は勿論の事、この二人も生かしてここから出てみせると。
手始めに何か使える武器は残されていないか周囲を捜索すると、ジンの通常装備の一つ、MMI-M8A3 76ミリ重突撃銃がモニターに映る。
どれだけ弾が残されているかは分からないが、丸腰よりかは幾分マシだ。
これで重斬刀があれば通常のジンの装備とそれほど変わらないだろう。
しかしあまり贅沢は言ってられない。
これでここから退避するのに必要最小限の武装であるのならば、ゴチャゴチャと持ち過ぎてバッテリーを余計に喰うのは御免被りたかったからだ。
弾数がそれなりに残っている事を確認したラスティは宇宙港に向けて転進した。
が、非常に間の悪いことに自分達の100~200m程後方の鉱山の岩盤が崩れ落ち、中から見た事の無い形状をした白亜の戦艦が現れる。
大きさにして軽く400mは越しているか。
プロトジンはその戦艦の底部に、軒下に隠れる猫の様に隠れる。
突然現れた戦艦がジンを攻撃し始めたのを見て、ラスティは頭を抱えたくなった。
敵の、つまりは連合軍の新造戦艦まであったとは…… !
その新造戦艦がコロニーのセンターシャフトを盾にして戦うジンの相手までし始めたから堪った物ではない。
たちまち地面が不気味な音を立てる。
崩壊へのカウントダウンは既に始まっているようだ。
戦艦に狙いを付けられたらそれだけで命取りになる。何故なら、身軽で機動性のある制式のジンに比べて、こちらにはお荷物が付いているからである。
我慢できなくなり、ラスティは少年の方を向く。
「おい、……あー、お前名前は ?! 」
「ガロード、ガロード・ランだ。」
「よしガロード、お荷物はどうしても切り離したら不味いのか ?! 」
「駄目なんだ。さっきも言ったけどあいつは絶対に放ったらかしになんか出来ないんだ。」
その返答を聞いたラスティはフウッと一息吐いて、バーニアのレバーを握る手に力を入れる。
「荒い操縦になるけどよ、しっかり捕まってろよ、二人ともっ !! 」
そう叫び、ラスティはバーニアのスイッチを入れ、次に搭載されているバッテリーを極力バーニアの方に回すようにOSの設定を一部書き換える。
瞬間、強力なGがコクピットの三人を襲う。
どんどんとガロードが吹き飛ばされてきた場所に向かうプロトジンだが、それを新造戦艦が見逃す訳が無い。
回頭式の砲台と船尾のミサイルが自分達に向かって火を噴く。
「へっ、プロトジンでもこのザフトレッドの俺が操縦してんだぞ ! 易々と落とされる訳ぁねえだろぉっ !! 」
そう言いながらもラスティは必死になって回避行動を続ける。
2〜3回の集中砲火の後、プロトジンはやっとの事で宇宙港の縁に辿り着く。
アカデミーでもこんな状況のシミュレーションプログラムやった事ねえよと呟きつつラスティは機体各部のチェックを行う。
バーニアを最大限吹かす事にバッテリーを回していたので、メイン電力は30%程しか残っておらず、稼働時間はもってあと30〜45分といったところだろうか。
機体に関しては、特に目立った損傷は確認されなかったが、細かいレベルの傷がOSによって知らされる。
恐らくはガロードが最初にヘリオポリス内部に入った時に受けた傷だろう。
その時コロニー全体を揺さぶる大きな振動があった。
何事かと思いメインカメラをヘリオポリス内部に向ける。
見ると、ヘリオポリスの壁面にMS一機は楽々と通れそうな大穴が開いている。
何が起きたかと思い機体を動かすと、大型のビーム砲か何かを抱えた新型がそこにあった。
クルーゼ隊長が今回のミッションを早めようとした訳だ。あんなビーム砲はザフトでもまだMSに持たせてはいない。
ラスティは一人納得する。
「おい、お前等大丈夫か ? 」
後ろを振り向くと、ガロードは固まった様にそこにいた。
ティファという少女はガロードにしっかりと抱きついている。
見せ付けられた様な得体の知れない感覚がラスティの心に吹き上がった。
「お、俺は大丈夫だぜ。」
「私も……大丈夫です。怪我はありません。」
取り繕うように二人の口から安全だという報告が入る。
あまり気にしないでおこうと思い、機体を宇宙への連絡口の辺りまで移す。
そこまで行った時にガロードが一つの提案をした。
「なあ、少しでもバッテリーの充電した方が良くないか ? それともっと本格的な医療キットってやつと水と携帯用の食料とかも探してみても悪くねえと思うんだ。」
バッテリーの件は頷けるにしても、医療キットや食料は後からでもどうにかなるとラスティは思っていただけに小声で前を向きつつ「ここから早いトコ出るのはどうしたんだよ……」と言おうとした。
が、ティファがその意見に、まるで結果が見えているかのように様に答える。
「大丈夫です。……ほんの少しですが時間はあります。」
「へ、へえ……そう……」
ラスティが妙な間を取って感心する。
まただ。この女の子はどうしてこっちの考えてる事や、ちょっと先の分からない事とか、面識の無い人間の周囲の事とか分かるんだ ?
それは、ニュータイプという概念を持たないC.E世界の人間には理解しがたい事だった。
尤も、そのガロード達がいたA.Wの世界ではその概念も月にあるD.O.M.Eという存在によって否定され、ニュータイプという言葉すらも消滅したが。
ガロードの提案に応え、ラスティは管制室の方に機体を近づける。
安全を確認した後ハッチが開かれ、ガロードが外に飛び出す。
MSのあちこちの部分を伝って下に降りたのを確認したラスティはガロードに呼びかける。
「センターシャフトを盾にして戦ってる連中がいるから、このコロニーはそうそう長く持たない ! 何を持ってくるにしても手短にな ! 」
「分かった ! 」
ガロードはそう言って管制室の中に姿を消す。
しかし姿を消したその直後から背後で巨大な爆発音や地震の様な振動が再び起こり始める。
先程鉱山から出てきた連合の新造戦艦を確認したヴェサリウスの連中が追撃でもし始めたのだろうか ?
堪らずラスティは隣にいるティファに訊ねる。
「なあ、あんたに関してモルゲンレーテの工場区から出る時からずっと引っかかっている事があるんだが、訊いてもいいか ? 」
「何故……知らない事を知っているか……予測のつかない事が正確に分かるのか……ですね。」
今度ばかりはラスティも完全に開いた口が塞がらなかった。
ある程度質問の内容を考えたら予測は立てられるが、こうまですらすらと言われるとラスティの中である一つの結論が出る。
「もしかして……超能力者 ? 」
「そう、思っていただいても構いません。でも……」
そこでティファは一旦言葉を切り、しっかりとした目でラスティを見つめ、続けてこうきっぱりと言い切る。
「私は貴方が想像していらっしゃる様な特別な人間などではありません。私は一人の人間です。普通の人間です。どうかそれを分かってください。」
自分に向けられる丸く大きいラピスブルーの目を見たラスティは直感的に何かを感じ取る。
この少女ことティファが今まで何をどう見て、どんな経験をしてきたのか。
今しがたの言葉を考えれば、かなり辛い経験をしてきたようだが……
ラスティはもうそれ以上その事に触れないでおこうと思った。
聞き返すなんて事をやってしまえば、思い出したくも無い『何か』を思い起こさせてしまう。
自分はそこまで野暮な人間ではない。

暫く待っていると、ガロードが両手に様々な物を抱えて帰ってきた。
施設に人がいなくなっても残されている物というのは結構多い。
しかし、バッテリーに関してはどうにもならなかったらしい。
再びガロードがコクピットに乗り込んだ時、再び大きな振動が襲う。
だが、それは今までの物とは大きく違っていた。
段々と大きくなっていき、施設全体どころか遠目で見ればヘリオポリス全体が大きく軋み始める。
軋むで済んでいればまだマシだ。シャフトが次々に分解していき、自分達がほんの少し前まで立っていた地面は構造体に沿って崩れていく。
更に、回転による遠心力の為内部の空気や瓦礫が構造体の切れ目に沿って宇宙空間へ吸い出されて行く。
その光景をモニターで見たラスティが背中に氷水を浴びせられた様な感覚に襲われたのと、ティファが叫んだのは殆ど同時だった。
「逃げて !!! 」
「 ! 言われなくとも !! 」
エンジンがフルスロットル状態になり、プロトジンは宇宙港の外に向かう。
自分達の目の前に落ちてくる瓦礫をラスティはライフルで次々に打ち抜いていく。
もう残っているバッテリーの量なぞ気にも留めたくなかった。
手探りに近い状態で出口に向かって進んでいる感はしたが早くここから出なくては !!
だが、そんな時によりにもよって十字路に出てしまう。
奇襲の為にコロニーの裏口的な道は知らされていたが、正規の道なぞヘリオポリスに来たのが今回初めてのラスティに分かるはずもなかった。
その時だった。
「このまま真っ直ぐ進んでください。」
「何ィ ?! 」
ティファの指示にラスティは一瞬気をとられる。
しかし、直ぐにガロードが畳みかける様にはっきりと言う。
「ティファを信じてくれ !! このまま真っ直ぐだ !! 」
その声にはしっかりとした自信があった。ラスティはレバーを前に倒し前進する。
その後も三叉路、丁字路が幾つも続いたが、ティファの言葉に従うと不思議と大きな障害に当たらずに済んだ。
外に向かってMSを操縦しながら、ラスティはいよいよティファの力について関心を持ち始める。
これは唯の超能力なんて言葉で片付けられる出来事ではない。
やがて、目の前に長方形型のMS出入り口が見えてくる。
「掴まってろよぉっっ !! 」
ラスティが絶叫して、折れん限りにレバーを前に倒し、焼けつかん限りにバーニアを吹かす。
ガロードはティファをしっかりと抱き寄せ、ティファもそれに応える形で抱き返す。
プロトジンが出入り口を出るのと、ヘリオポリスが全体的な崩壊を迎えたのはほぼ同時だった。

シグーから降りたラウは損傷した機体にチェックを入れる技官を無視して、艦橋に向かう。
その間ずっと頭を離れなかったのは、情報のあった新型以外に目にした見慣れぬMS。
やはり追っておくべきだったか、あの新型が収容された連合軍の新造戦艦と同じ様に。
しかし、独特の勘が告げてくる。
かなり先になるが、また戦場でまみえる事になるだろう、と。
そしてヴェサリウスの廊下で誰にも聞こえる事無くひとりごちる。
「カードは切られた。後は誰が役を作るか、だな。」