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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第7話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:05:16

プロトジンは崩壊したヘリオポリスから脱出出来はしたものの、その後襲ってきた衝撃の為姿勢制御が上手くいっていなかった。
だがラスティとて伊達にザフトレッドを着ていない訳ではない。
何とかしようとし、アカデミーで学んだ全てのスキルをぶつける。
と、同時に現状把握と突破口を探す。
バッテリーの内蔵量は先程のヘリオポリス脱出に使ったので殆ど残っていない。
だが、崩壊の際に生じたエネルギーを慣性性質の物に変換して、サイレントランの様にすれば例え低速状態でもL5のプラント群に近づくくらい出来はしないか ?
いや、そこに辿り着く前に地球の重力圏とデブリベルトの網をどう掻い潜るかがポイントになる。
地球にはザフトの基地もあるが、連合の基地も勿論ある。と言うか、そちらの方が主体だ。
上手くザフトの勢力圏或いは基地の近くに降下できれば問題無いが、正反対の状況なら折角助かった命が無駄になる。
しかもそれはシグー並みの機体で、きちんと事前準備を行った時の事であって、この機体で大気圏突入など自殺行為にも等しい。
デブリベルトには資材等も確かに有るが、ファクトリーどころかまともな工具もない中では機体のチューンも出来はしない。
第一ヘリオポリス崩壊の報は連合、ザフト両軍に行き渡っているだろう。
元々中立コロニーだったが故に両軍には関係の無い、あってもかなり薄い物だから、好んで今のL3に行こうとする者なぞ、せいぜいジャンク屋ぐらいが関の山か。
反対側の方向にあるL4に関しては、宇宙史の授業で「メンデル」という名の廃棄コロニーがある事と、連合のこぢんまりとしたコロニーがある事しか知っていない。ヘリオポリス並みに見ず知らずの土地だ。
とすると、目標方向としてはやはりL5しかないのか……
しかし、問題は地球の重力圏とデブリベルト、そしてそこまでバッテリーや自分達の命が持つかどうかというところだ。
何より距離が引っかかる。自分が今いるL3からL5まで辿り着けるだろうか ?
やっとの事で姿勢制御が出来た時にガロードが口を開く。
「ラスティ、俺達何処に向かってるんだ ? 」
「L5のプラント群……俺達コーディネーターの故郷だな。しかし、今の状態でそこまで行けるかどうか……」
「ぷらんと ? ああ、コーディネーターがたくさん住んでるトコだろ ? 」
そこまで単純な物じゃないが、大方正解だよ……と、小声でラスティは呟く。
その直後ガロードから声がかかる。
「遺伝子弄ってない自然に生まれた俺達がそこに行って大丈夫なのか ? 」
「聞いた話でしかないが、プラントにいる人間全員が全員コーディネーターという訳でもないそうだ。俺もなるべく善処する。とにかくそこに着かない事には始まらない。」
そう言ってラスティはレバーを握り直そうとして……出来なかった。
手や足に力が上手く入らずに、視界が二重三重になってくる。
L5を目標にしていたが、即座に結論は変更される。
資材が無かろうがなんだろうが、あそこに向かうしかないのか ?
コーディネーターにとっては悲劇の出発点となったユニウスセブンへ……
そんな時、ガロードは前方にある物体を確認する。
「おい、見ろよ、あれ ! あれって…… ? 」
ラスティは虚ろになった目をモニターに向ける。
そこには先程ヘリオポリスで見かけたのと同じ白亜の戦艦が自分達と同じ航行方法でどこかに向かっていた。

同じ頃、アルテミスに向けて敵の追撃を避ける為、サイレントランをしていたアークエンジェルも接近しつつある物体に気付く。
熱源の大きさからブリッジクルーはそれがMSかMAである事は分かったが、いかんせん情報が少なすぎる。
「通信は出来ないの ? 」
艦長の席に座る地球軍の将校、マリュー・ラミアスはCICに座る、ミリアリア・ハウに問いかける。
「電波状況が悪くて、こちらからはっきりと伝わるかどうかは……相手側からも何の通信もありません。」
艦長席に座るマリューは深く考える。
先程新型のMSを奪取した敵のザフト軍が襲っては来たが、まただろうか ?
かなり酷い混戦状態となって、最後はエール装備のこちらのストライクがザフトを撤退させるのに成功したが、そうそう直ぐに装備しなおして向かって来るものだろうか ?
もしそうだとしたら……あまり想像をしたくなかった。
戦力は確かにある。ムウ・ラ・フラガ大尉の操縦するメビウスゼロと自分達連合軍が確保できた新型MSストライク一機。
それを思い出す度に頭を抱えたくなってしまう。
八ヶ月もの労苦をかけ自分達の力に出来たのは開発されていた五機中その一機のみだった。
五機を搬出しようとしていたあの時にザフトの襲撃など無ければ、自分達は本来いる仲間達ともう少し意気揚々として宇宙空間に出られたのだが。
更にこの艦の正規クルーはその襲撃の際に艦長含め大半が死んでいるので、副長になる筈だった自分は殆ど有無を言わされずにここに座っているに過ぎない。
極めつけなのが、その当のストライクを操縦しているのが成り行きで自分と出会った唯の民間人の少年なのだ。
いや、唯のという言葉は相応しくない。
彼は連合軍の新兵が鈍重に動かすのがやっとのMSを、自分の前であっさりとOSを書き換えてまるで自分の物の様に扱ったコーディネーターなのだから。
彼がコーディネーターだと見破ったのはムウだったが、それにしても連合軍が開発したMSのOS最適化をコーディネーターがやるなぞ笑い話にもなり得ない。
ゼロの方はいつでも出撃する事は出来るが、ストライクの方はやはりパイロットへの負担が肉体的にも精神的にも大きいのか、キラと名乗った少年は部屋で泥のように眠っている。
それに、今情報の収集を頼んだミリアリアという少女も、やはりヘリオポリスで一人の学生として生活していたそうだが、機密を見られたという事で今はアークエンジェルのCICになっている。
敵は多くの人間の人生を狂わせた。ここにいるべきでない人間がいて、いるはずの人間がいない。
マリューの心の内奥に非常に鬱陶しい感情が吹き上がっていた。
「光学映像、出ます ! 」
ミリアリアが言うと、艦橋のモニターにその接近しつつある何かが映し出される。
そこには、機体のあちこちが傷ついたジンが何かを曳航しながら宇宙空間に漂っていた。
いや、軍関係者なら分かる。これは戦場に出ているジンとは若干外観が違うのだ。
時々絞り出した様にバーニアが吹かされる以外は死んだ様な雰囲気を出している。
しかしそのジンは間違いなくこちらに近づきつつある。
明らかに先程交戦したザフト軍の部隊とは違う雰囲気だったが、どうするか。
「艦長、どうしますか ? 」
自分の下側から自分の元の任を継いだナタル・バジルールが自分の判断を聞いてくる。
相手の機体がジンである以上味方ではない。
だが、所持しているライフルを撃ってくる気配も無い。
こちらが油断した瞬間に撃つのかと思われたが、それでも撃ってこない。
と、判断を決めあぐねていると、ジンの側から結構大きめの声で通信が入ってきた。
「こちらはザフト軍所属のパイロット、ラスティ・マッケンジー。連合軍の新造戦艦に告ぐ。ヘリオポリスから脱出した避難民二名を連れている。ついては、そちらへの緊急着艦を申請したい。」
やや間が有ってから、マリューは通話機を手に神妙な面持ちで対応する。
「こちらは連合軍所属艦、アークエンジェル。そちらの報告に虚偽が有る場合、警告無しで迎撃しますが……」
するとジンのライフルが宇宙空間へ放り投げられ、続けようとする声は割れんばかりの大声で遮られた。
「こっちは特殊工作部隊でも、奇襲部隊でもないッ !! 俺自身も武装していない ! 民間人が乗っているのは紛れも無い事実だ !! こちらの通信用モニターがイカレて、映像を送れないから信じていないんだろうが、丸腰の奴にバズーカ砲向けるのがそっちの正義か !! 」
あまりの気迫にブリッジクルーは数瞬の間おし黙ってしまう。
収容するべきか、看過するべきか。
こちらに連絡を入れてくるという事は、民間人がもし乗っているとしたら、その民間人はナチュラルという事を指している。
自軍の母艦に連れ帰ってもお荷物になるだけだからだ。
それを考慮に入れてもまだ解せない事がある。
自分達がザフト艦と交戦し終わってまだ15分から20分位しか立ってない。
普通ならば少し距離があるとは言えザフト艦の方に向かう筈である。わざわざこちらに通信を繋いでくる理由は何だろうか ?
訝りながらもマリューは通話機を握りなおし、ジンに通信を繋ぐ。
「分かりました。但し、こちらが連合の艦という事ですから、それなりの対応をさせてもらいます。いいわね ? 」
すると、相手から安堵の溜め息が漏れ、話し方も幾分穏やかになる。
「それで良いんだ。それで……」
途端に通信がぷっつりと途切れる。
暫しの間静かになった後、ジンがこちらにバーニアを吹かしてやって来る。
その様はザフト兵が操縦した上でしっかり飛んでいると言うよりは、かなりふらふらとしていた。
その様子に何がしか感じるものがあったマリューは直ぐに、整備班に緊急連絡が入れる。
「整備班 ! 緊急着艦用ネット用意 ! 」

右舷カタパルトデッキは騒然としていた。
無理も無い。敵であるザフトの機体がブリッジに緊急着艦要請をしてきた上に、まだこちらの準備も整っていない内に吶喊するかの如く近づいてきたのだから。
ハッチが開けられると、ジンが何の制動をかける事も無く突っ込むかのように入って来る
しかもその突っ込み方でさえ、カタパルトのあちこちに機体を激しく当てながらだ。
直後カタパルトハッチが閉まったのが確認され、気圧、空気共に艦内の他の場所と同じになった後、続々と銃を持った兵士が入ってきた。
ややあって、コクピットハッチが開いたが、そこにあった光景を見てその場に居た一同は驚きを隠しきれなかった。
中には確かに民間人らしき少年と少女の二人、そして赤色がメインのパイロットスーツを着たザフト兵がぐったりした状態で座っていたからだ。
その様子をある人物が居住ブロックから出てきてその様子を見ていた。
そしてコクピットから出てきた者達を見て感嘆の息を漏らす。
だがそれは下で驚いている者達とは明らかに異質の驚き方だった。
その人物は期待に逸る気持ちを抑えながら、階下に向かう。
少年と少女はそれぞれザフト兵の肩を持ち、かなり無理な姿勢でコクピットハッチから降りてくる。
銃を掲げた兵を見て少年、ガロードは叫ぶ。
「こいつがここまで俺達を運んでくれたんだ。銃を下ろしてくれ ! 」
それを聞いた兵士達は戸惑いながらもゆっくりと銃を下ろす。
ついで少女、ことティファの方も
「この人は怪我をしています。大丈夫です……この人にあなた方に力を振るったりはしません。」
と、続ける。
しかし、連合の兵士達は互いに顔を見合わせてしまう。
彼等の保護対象は明らかに民間人だと分かる二人だけで良いのだ。
自分達にいずれ銃を突きつける人間が瀕死の重症を負っていて、その死を看過したとしても重大な責任を問われる事はなさそうだ。
彼等の顔の表情は一目でそう語っていた。
ガロードが思わず「助けてやってくれよ ! 」と叫びそうになったその時だった。
「その患者は私が診よう。私は医者だからな。患者が誰であれ死の危機に瀕していればその危機を看過する事は出来ん。」
その声にガロードは反射的に声のした方向を見る。
忘れる事が出来ない、かつての大切な仲間。
「テクス !! テクスじゃねえか ! 何でこんな所に…… ? 」
テクスと呼ばれた医者はガロードの元へやって来て、密かに耳打ちをする。
「ガロード、ティファ、また会えて嬉しいが、今は私と共に来てくれないか ? ここで後ろの人達が分からない内容の話をする訳にもいかんからな。」
そう言ってテクスは連合の兵士達に担架を持ってくる様に言い、ガロードたちに一緒に来る様に目で合図をする。
辺りがひとしきり騒がしくなった事に気付いたラスティは目を覚まし、微かに笑って途切れ途切れに言う。
「俺は……捕虜になるのか……こういう時の身の振り方は……アカデミーでもあまり……詳しく教えてくれなかったからな。」
それに答える様にテクスは何気なくラスティに向けてそっと言った。
「それは君の自由だ。教わっていないから知らない、分からないというのは詭弁に過ぎない。だが今からでも学べる事というのは多分にある。次に自分がそういった状況に陥った時同じ失敗を繰り返さない様にな。」
それを聞いたラスティは「そうか……」とだけ呟き気を失う。
やがて、キャスター付きの担架がやってきてラスティはそれに乗せられた。
全員がほぼ呆然と一連の出来事を起こした者達を見送る中、誰もついて来ていないことを確認したテクスは医務室へ向かう廊下でガロードに話しかける。
「さて、先ずそちらの状況から訊きたいが、良いかね ? 」