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Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第10話『覚醒』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:32:07

(注)第10話は2つあります。こちらは白歴史(再構成)です。

――地球連合がプラントへ核攻撃を行った――
そのニュースは瞬く間にミネルバ中に広がった
ある者はこれからのことを憂い、
また、ある者はナチュラルに対して嫌悪感を覚えた

情勢が情勢なだけに、ミネルバがこれ以上オーブに止まることは出来ない
いつ中立を反故にされ、後ろから撃たれるのか分かったものではないからだ

「本格的に戦争になるな……」
「くっ……」

レイの言葉に、シンは歯噛みする

なぜこうも簡単に争いが起きるのか、反省を出来ないのかと
シンは人の愚かさを身をもって実感した
しかし、つい最近までどっぷりと憎悪に漬かっていた自分を思い起こすと、
それも仕方の無いことなのかもしれないと納得してしまう

それが一層苛立ちを加速させた

「カミーユさん……教えてくれ……
どうすれば、あんたが見せたものを、皆に見せられるんだ……」

その答えは返るはずもなかった

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機動戦士ZガンダムDESTINY
第10話『覚醒』 

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『コンディションレッド発令!パイロットは直ぐに出撃準備をして下さい!』

シンは駆け足で更衣室へと向かう
先程、耳にした情報によると連合軍艦隊が待ち伏せしていたらしい

「アスハめ!俺たちを売りやがって!」

ついつい口汚くなってしまう
つくづく自分はオーブに縁が無いと軽く自嘲する

「いや……駄目だ……憎しみに囚われるな……」

これでは何も学んでないじゃないかと自分を諌めた

「おぉい!坊主!」

パイロットスーツに着替え、MSデッキに着くと古参メカマンが手を振りながらシンに声を掛けてきた

「なんですか!?」

急ぎ足のまま受け答える

「無理だと思ったら直ぐ帰ってこい!」
「了解です!!」

OS調整を体感しないままの実戦――
危険極まりないが、やるしかない

専用カタパルトに駆け込み、コアスプレンダーに飛び乗った

「……やってやるさ!」

自らを鼓舞し、レバーを握った
その手は少し震えていた

「メイリン!装備はフォースを!発進まだか!?」

震えを騙すかのように通信を開いた

『進路がまだ確保出来てません!』
「何だって!?」
『待ち伏せを受けたため、カタパルトの軌道上に敵が居座っていて……
まず艦砲で敵を分散させます!』
「……」

メイリンの言葉尻から、圧倒的な戦力差を悟った
敵を分散させたからといって、ドッキング中に横槍が入る状況は変わらない

《頭を使え》
「……えっ?」

――囁くような誰かの声――
天啓のようにあるアイディアが閃く

「……メイリン!」
『はい?』
「俺にいい考えがある」

「よぉし、カタパルトと艦砲は常に警戒しておけよ!」
『『『了解!』』』

ウィンダム隊の面々が口々に上官命令に返答した

『隊長!量産機が出てきます!』
「捨ておけ!所詮砲台に過ぎん!
狙いは飛行MSだ!」

飛行MSが無ければ、守勢一辺倒になる筈だという判断だ
赤と白のザクが、歩行出撃をし、カタパルトデッキの真上に陣取り、
ウィンダム隊はミネルバに攻撃を仕掛ける
無論、先述した命令は忠実に守りながらである

その時だった

『中央カタパルト開きます!』

一人のパイロットの報告に全員が固唾を飲む

『来た!!』
『射線を集中させろ!』

飛び出してくるMSのパーツ群を追い掛けながら、隊総出でビームの雨を降らせる
少し手こずるものの、MSのパーツ群を撃墜するのに成功した

『やった!』

各々歓喜を上げるパイロットたち

『……?いや、待て!』

その中で異変に気付く者がいた

『『『アッー!!』』』

その声で全員がその異変に気付く

『なぜMSがドッキングしている!?』
『さっきのはブラフだったんだ!』

隊総出での駆逐作業が裏目に出て、本命のドッキングを見逃してしまう結果になってしまった

――シンの『いい考え』とは――

「メイリン、よく聞け!
先ず一回目のパーツを飛ばして敵の目を引くんだ
敵がそれに釣られたら、直ぐに二回目のパーツを射出してくれ」
『そんな子供騙し……』

呆れ果てるメイリン

「集中放火さえ食らわなければいいんだ!後は何とかする!」

少しでも誤魔化せればいい――
そう思ったシンだったが、敵は物の見事に嵌ってくれたのだ

『小癪な真似を!!』

襲いかかってくるウィンダムに、バーニアを吹かせながらライフルで応戦するインパルス
――まだマニュアル操作は完璧に会得していなかったので、攻撃はOS制御に頼っていた

「ぐっ……Gがきつい……」

リミッター制御を取り去った急加速により、吐気が襲いかかる

「けど……ゴム弾の方がきつかったぞぉぉ!!」

もし、あの苦痛を知らなかったら今頃オチていたかもしれないと
シンはあながちあの無謀は無駄ではなかったと感じた

次々と海の藻屑になって行くウィンダム――

『は、速い!』
『あのパイロットは化け物か!?』

無茶苦茶な機動を見せるインパルスに、ウィンダムのパイロットたちは畏怖し始めていた

「落ちろ落ちろ落ちろぉぉ!!」

吐気を押し殺す結果として、鬼のような形相になっているシンは次々とウィンダムを落としていく
――操作ミスも見られない

『シン!タンホイザーで敵の数を減らすわ!
射線から待避して!』
『了解!!』

インパルスが安全圏に待避したのを確認し、
ミネルバは最大火力のタンホイザーの照準を合わせた

「照準、敵艦隊!撃ぇぇぇ!!」

タリアの掛け声と共に赤い高エネルギー体が唸りを上げた

「何だ……あれは……」

虎の子の陽電子砲――だが、それはある地点で塞き止められてしまった光景を見ていたシンは寒気を感じた
MA――ザムザザーが陽電子砲を止めたのだ

「くそっ!!」

バーニアのレバーを押し上げ、MAに接近する
あれを落とさねばミネルバはジリ貧であると判断したからだ

攻撃し、防御する

しかし、ライフルもサーベルも寄せ付けぬリフレクターはシンに焦りを生じさせた

「どうすりゃいいんだよ!」

そして失策が発生した
「しまった!」

バーニアを吹かす量を間違え、インパルスはコントロールを失って海に一直線に向かって行く
このスピードで叩きつけられれば、只では済まない
――水は一定速度を越えるとコンクリートと化すのだ
フェイズシフトによって機体は無事だろうが、中のシンの命は保証されない

「(格好悪いな……俺……)」

急激なGのせいで薄れ行く意識の中で、シンは自虐的になった

「(自爆で死ぬんだもんな……)」

――目を閉じてしまおう
楽になれる
どうせ自分には無理だったんだ

《それでいいのか?》

――声――

いや、そんな筈はない
冗談じゃない

「こんなことで……死んでたまるかぁぁ!!」

シンの中で何かが弾け飛んだ

――明瞭になる思考――

コンソールのマニュアル切り替えのスイッチを押し、一気にバーニアを吹かす――!
綱渡りのような姿勢制御――ミスは死に等しい

《お前なら出来る》

鳴り止まない声が勇気をくれた

『あの体勢から持ち直しただと!?』

切りもみ落下から生還したインパルスを見て、
驚嘆するザムザザーのパイロットたち
だが、直ぐに思考を切り替え、弾幕を張り始めた

《後ろを取るんだ》

声に従って機体を動かす
Gに構ってはいられない
弾幕をかすらせもせず接近してくるインパルスの動きに、ザムザザーのパイロットたちは恐怖した

『何故当たらん!!』

目前まで接近してきたインパルスに対応し、
弾幕を見限って、クローで応戦する

――降り下ろされるクロー

『消えた!?』

否。急上昇したのだ
クローの慣性でザムザザーの正面は海面に向いた

「背中を見せたな!!」

インパルスのライフルがザムザザーを貫き、光を発しながら爆発していく

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そこからはシンの独壇場だった
ソードシルエットで戦艦を屠る姿に恐れをなしたのか、
連合艦隊は総崩れになって撤退して行く

「これ以上は……無駄な憎しみを増やすだけだ……」

追撃はせずミネルバに帰還し、シンは疲れた体を自室のベッドに預けた

「……また……助けられちゃったな……」

そしてシンは眠った。その表情は、穏やかであった