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Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第13話『憤り』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:32:37

暫しの休養を終えたミネルバは、一路、ジブラルタル基地へと赴くことになった

「アスラン、あの子達はどう?」
「最初は付いていくのがやっとでしたが、
最終的には軽々とメニューをこなせるようになりましたよ」

ブリッジではタリアとアスランが訓練状況について話していた

「鍛えがいがあったわね」
「ええ、三人とも『赤』だけあって、センスはいいようです
……ところで」

満足気に語ったアスランは一転して表情を厳かにし、
タリアもそれに釣られた

「カミーユ・ビダンは大丈夫なのでしょうか?」
「……大丈夫だと思うわ」
「……しかし……」

アスランは納得行かないようである
それもそのはず、茫然自失のカミーユが劇的に回復したとはいえ、
精神を患ったという事実を抱える兵士を再び戦場に出していいものかとアスランは考えたのだ

「……以前は……いえ、何でもないわ」
「……?」
「とにかく、彼は大丈夫。私が保証するわ」
タリアは仕事に戻り、居場所を無くしたアスランはブリッジを出た
アスランの頭には歯切れ悪いタリアの言葉が何時までも引っ掛かっていた

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機動戦士ZガンダムDESTINY
第13話『憤り』

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「コンディションレッド発令!パイロットは機体に搭乗して下さい!」
けたたましい警報と共に、スクランブルエッグのように混沌とする中をレイは走り抜けた

「こんなところで……」

カーペンタリア基地を出てからそれほど経たないうちの敵襲である
やっとの思いでパイロットルームにたどり着くと、そこにはアスランとカミーユの姿があった

「カミーユさん。戦闘指揮は俺でいいのですか?」
「ええ。俺は元々、戦術は不慣れなんです
それと敬語は結構ですよ」

パイロットスーツに着替えながらその会話を耳にしていたレイは
、カミーユの言葉に驚愕した
カミーユの指揮の的確さはミネルバで誰もが認める所であったからだ
もちろんフェイスであるアスランを立てる意味も有るのだろうが、
それを『戦術は不慣れ』と言わしめる理由とするには少し弱い

「(やはり……彼は……)」

確信とまではいかないが、今までの疑惑という地点は過ぎ去った

「(……彼は俺達と同じ力を持っている……)」

自分の微少な能力では足元にも及ばないが……と付け足して、レイは考えるのを止めた
今は戦闘に集中しようと思ったのだ

パイロットたちは各々の機体に乗り込み、出撃準備をしていた

『ウィンダムおよそ30とカオスを確認しました!』

メイリンからの通達に戦慄が走る
これだけの部隊を差し向けるとは思ってもみなかったからだ
とはいえ、カーペンタリアを落とすには戦力不足であり、敵の意図は読めない

『シンと俺で制空権を取る!ルナマリアは水中で敵を遊撃!敵艦への攻撃も視野に入れとけ!
レイはミネルバの護衛!カミーユは……』
『Zは変形しないと飛べませんよ』
『よし、じゃあレイと共に護衛を。状況によって臨機応変に動いてくれて構わない』
『了解』

――アスランの指示に従って出撃して行くパイロットたち――
シンのインパルスはトリガーを引き、ウィンダムの一団を牽制すると、それらは散開して行った
少しはぐれた一機に対して接近戦をかける――!

それに対応したウィンダムはサーベルを引き抜いて降り下ろした

「遅い!」

インパルスを急降下させ、海面間近で制動をかけた後に隙だらけのウィンダムを撃ち抜く
――インパルスの動きに淀みは無かった

爆発していくウィンダムを見て、シンは喜色を浮かべた

「やった!」
『油断するな!』

分断したウィンダムたちがインパルスを落とさんと接近しいたのだ
しかし、間に入ったセイバーのプラズマ収束砲によって再び分断されてしまう

「……あっ、すみません!」
『そっちにウィンダムがいったぞ!』

謝罪の言葉に耳を貸さず、ミネルバに通信を入れた
分断された半分は見切りを付けてミネルバに向かったのだ
残りの半分は此方を向いている
――そしてもう一機

『新顔ォ!見せてみろ、力を!』

スティング・オークレのカオスであった

『シン!カオスは俺がやる!』
「了解!」

シンはウィンダムの一団へ、アスランはカオスへと飛び出して行く

『喰らえ!』

先制したのはカオス。変形したまま兵装ポッドからランチャーとビームを発射した

「温い!!」

アスランはセイバーをMA形態に変形させ、それらを回避するために急上昇した
それに対応したカオスも上昇し、セイバーの後方に付けた

『簡単に後ろを取らせるとは、死にてぇみたいだなぁ!』

スティングは勝利を確信し、腹部ビーム砲のトリガーに手をかけた

――その時だった

『なにぃ!』

セイバーがバーニアを吹かすのを止め、急制動をかけたのだ
反応が遅れたカオスはそのまま前進してしまう

「まさかこんな古い手に引っ掛かるとは……
軽率な奴……!」

ドゥゥ!ドゥゥ!

『うぉぁあぁ!!』

セイバーから放たれるビームの雨に撃たれたカオスは落下して行く
致命傷は避けたのか、エンジンの誘爆はなく、コックピットも損傷した様子もなかった
カオスは近くにいたウィンダムに回収されると、そのまま帰投していった

「シン!無事か!?」

思考を切り替えて、仲間の安否を確認した

『無事ですけどね!!数が多いんですよ!!』

シンからの怒鳴り声で随分と苦戦しているのを察したアスランは、そのまま援護へと赴いた

一方、ミネルバでは――

『落ちろぉぉ!』

カミーユが獅子奮迅の働きをしていた
手近なウィンダムにバーニアを吹かせて接近し、足場代わりにして噴射剤を温存させる
そしてバランスを崩させた敵に大火力であるハイパーメガランチャーを撃ち込む
さらに、その推進力を利用して次の敵に向かって行くという離れ技をしていたのだ

「なんて戦い方だ……」

まるで彗星の様に敵から敵へと移って行くZを見て、レイは驚嘆していた
――みるみるうちに海の藻屑と化して行くウィンダム――

『レイ!俺はこのままルナマリアの援護に出る!ミネルバを頼むぞ!』
「了解」

あらかたの敵を片付けたZは、ウェイブライダーに変形して戦場を突き抜けて行く――
その時、レイにある感情が、押し殺していた感情が湧き出てしまった

「……俺は……所詮、偽物なのか……?」

――劣等感――
同じ能力を持ちながら、鬼人のような活躍をしたラウ
同じような能力を持ちながら、地球皇帝のような活躍をするカミーユ
では自分は何なのか?ミネルバに乗ってから大した活躍も出来ていない
今の戦闘も、カミーユの活躍によって切り抜けたに過ぎない

「……止めよう……」

レイは考えるのをやめた。これ以上考えたくもなかった
そして彼は気が付いていない。その劣等感が、シンの成長にも影響されていたことを

その時、ルナマリアは困惑していた
なぜなら、敵を遊撃しているうちに、秘密裏に建造されていた連合の基地を発見してしまったからだ

「どうしよう……」

殲滅か、指示を待つか
答えは一つだった

「隊長!敵の基地を発見しました!」

アスランへの通信回線を開いた

『何だって!?こんなところにか!?』

カーペンタリアの鼻先なのだから驚くのも無理はない

「ええ、造りかけのようですが……」
『……よし……偵察してみてくれ
こっちは殆んど片付いたからな』
「了解!」

指示通り、基地へと偵察に向かう
きっと、ここの防衛のためにあれだけの部隊を裂いたのだろうと考えた
接近して様子を伺うと、ルナマリアはとてつもないものを見てしまった

「こんなことって……!!」

近隣で行われていた戦闘に恐れ逃げ惑う捕虜と思しき労働者たち――
そして彼等を逃がすまいとアサルトライフルで殲滅する連合兵の姿があったのだ

ふとルナマリアの頭に先の強奪に荷担したアウルの顔が浮かんだ
彼は生きるためにあのようなことをしたと言っていた
それは誰も責められることではないのだろうか
そして目の前で虐殺を受けている人々もそうなのではないのだろうか
こんなことまでされる謂われは無いのではないか

「ええぇぇい!!」

ルナマリアは我慢出来なかった
躍り出て手当たりしだいに基地を破壊することで連合兵達の目をこちらに向けさせ、逃亡者を援護した
ああ、きっと軍法会議ものだなと何処か醒めた考えも残っていたが、
荒れ狂う憤りの方が強かった

『ルナマリア!』

カミーユの声だ

『憎しみで戦っちゃいけない!』

それは違う

『……憎い訳じゃ……憎い訳じゃないんですよぉぉぉ!!』

戦争の不条理が心を締め付け、いつの間にかルナマリアは涙していた
MS戦では気付くことはなく、十代の少女には耐えがたい現実がそこにはあった
そしてユニウスセブン落下騒ぎの時、面倒だと言っていた自分がどれほど恐ろしいことを言っていたのか、
今になって気が付いた

パシィィ!
乾いた音がMSデッキに響いた
ルナマリアはアスランによる修正を受けたのだ
――ミネルバは何とか襲撃をやりすごし、パイロットたちは既に帰投していた――

蹲るルナマリアと、体を震わせるアスラン。しかし、殴られた方より、
殴った方が痛々しい顔付きをしていた。本来、彼はフェミニストなのだ

「ルナマリア……少し頭を冷やせ。上層部へは上手く言っておいてやる」

ルナマリアはアスランの言葉をうつ向きながら聞いた

「……戦争って何ですか……?」

ルナマリアはそのまま呟いた
それを聞いたアスランは顔をしかめた

「……俺にも分からない
俺は哲学者じゃないからな」

アスランの表情はどこか寂しげだった
前大戦から追い求めている問題の一つであったが、まだその答えは出ていない

「私達……人殺しじゃないんですか……!?」

語勢を強めて問い続けるルナマリアを見ると、アスランにはその姿が友人――キラ・ヤマトとだぶって見えた
彼も戦争に苦悩していた
――ルナマリアの言いたいことは痛い程に解る。しかし、この言葉を容認する訳にはいかない
周りには他の兵もいて、士気を下げるようなことは避けたい――
アスランは考えをまとめて、ルナマリアに近寄った

「そんな口が利けるとは、まだ修正が足らないようだな」

アスランは手に持っていたヘルメットのバイザーを近くに置いてあったレンチで叩き割ると、
その破片を握りこんだ

「さぁ、立て。今度は拳が飛ぶぞ。歯を食いしばれ」

バキッ!
ルナマリアを立たせて、手加減しつつも頬を殴りつけた
ルナマリアは尻餅をつき、頬を押さえて涙目になっていた
こちらの問いに答えもせず殴るなんて野蛮だと言わんばかりにアスランを睨みつけた
――その拳には血が滴っていた
自分の頬を確かめたが、血はついていない
あれはアスランの血潮なのだ
きっとあの血は、答えることの出来なかった自分への戒めなのだろう
なんて無器用な人なんだと思うと、アスランへの憤りは消え失せていた
しかし、戦争への憤りは消えていなかった