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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第04話

Last-modified: 2008-05-25 (日) 08:54:50

世界が再び二分化して争いが始まった事を受けて、オーブでもこれに対応するべく首長会議
が開かれていた。カガリはオーブの理念――他国の侵略を許さず、他国を侵略せず、他国の
争いに介入せず――の精神に則り、あくまで中立の立場を貫こうとした。
しかし、そんな事もお構いなしと言わんばかりに大西洋連合から同盟の申し入れが入り込ん
でくる。
それに反発するカガリであったが、彼女以外の者はそれに応じようと言う気運になっていた。

 

「だめだ!大西洋連合との同盟は組めない!」
「ですがカガリ様、このままではまたオーブを焼くことになりかねませんぞ?」
「くっ……しかし、それではオーブの理念に反することになる!」

 

カガリにとってオーブの理念は故・父ウズミから受け継いだ大切な形見みたいなものだったの
だろう。それを放棄する事は彼女には考えられなかった。

 

「……代表はオーブの理念と国民の生命、どっちが大事なんです?」
「……!?」

 

頑なに大西洋連合との同盟を拒もうとするカガリに突込みが入る。
ユウナ=ロマ=セイランである。
その見た目は長身の痩せ型で身に纏ったスーツが良く似合っていた。癖のある淡い紫の髪は
後ろで束ねられていて、その顔は自信に満ちている。
一目見た印象からはやや軽薄そうな印象をうけるが、彼はオーブ五大氏族の一つ、セイラン
家の長男であり、カガリの許婚でもあった。
そんな彼がカガリを責めるように問い詰める。

 

「今、彼らと同盟を組まなければ、彼らは力づくにでもオーブを抑えようとしてきますよ?そうな
れば当然侵略を許さないオーブの理念によってこの国は再び戦場となる……二年前と同じ轍
を踏むことになります。代表はそれで宜しいのですか?」
「……いい訳が無い。だが、それではオーブの理念はどうなる!?お父様が守ってきたものを
私に捨てろと言うのか!?」

 

カガリが顔を紅潮させてユウナに怒鳴る。
そんなカガリを鬱陶しく思ったのか、ユウナは溜息混じりに言葉を返す。

 

「ふぅ……いいですか代表?貴方にとって国民の生命と国の理念、秤に掛けた場合どちらの
方が重いのですか?」
「そ……それは……国民の生命に決まっている……」
「なら、決まりでしょう。大西洋連合とは同盟を結ぶと言うことで」

 

ユウナがカガリから視線を外し、他の会議出席者に向き直る。
そんな様子にカガリは慌てて"待った"を掛けた。

 

「ま、待て!だからと言って理念を捨てることなど私には出来ない!
もっと話し合って他の道を……」
「いい加減にしてください代表。これ以上は時間が待ってくれません。彼らが攻めて来てからで
は遅いのですよ?……この国は貴方の玩具ではないのです」
「くっ……ぅ……!」

 

ユウナの言葉にカガリは言い返すことが出来ない。
未だ政治家として未熟な彼女は余りにも理想を抱きすぎていた。大きな理想を抱いていても、
それを実現させる実力を彼女は持っていなかったのだ。
そんなカガリを嘲笑うかのようなユウナの言葉に、カガリは歯噛みして悔しがる。
そして、会議は大西洋連合との同盟を組むと言う形で閉会となった。
カガリは同盟の締結を止められなかった自分の無力さに憤りながら会議室を出る。
すると、そこで待ち伏せしていたユウナがカガリに話しかけてきた。

 

「ごめんよ、カガリ?あの場はきつい事を言うしかなかったんだよ」
「……別に気にしていない」
「怒らせちゃったみたいだね?けど、カガリももう少し時勢を見極める目を身に付けたほうが
いい。理念、理念……革命家辺りならそんなのも許せられるけど、カガリは政治家で国の
代表なんだ。こんな事では正直困るんだよ」
「……悪かったな、言いたいことはそれだけか?なら、私は気分が悪い、一人にさせてくれ」

 

そう言うとカガリは明らかに不機嫌な態度をとってさっさと自室に戻っていった。

 

「ほんと、困るんだけどねぇ……」

 

ユウナは肩を竦め、その後姿を呆れた様子で見送った。

 
 

「オーブが大西洋連合と同盟を結んだって……!?それじゃあ!?」
「あぁ、正式にはまだ決まってないが、オーブは我々の敵になった」
「えっ?それじゃあオーブの理念とかってのどうなったのよ?」

 

オーブと大西洋連合が同盟を結ぶらしいとの報を受けてミネルバのクルーは皆動揺していた。
特にシンはカガリへの憎しみもあってか、感情を抑えることが出来ない。

 

「アイツ…!口では理念だの平和だの言っといて立場が危うくなったらこれかよ!」
「どうしたんだ?」

 

そこへ通りがかったカミーユが怪訝そうに話に割り込んできた。

 

「あっ、カミーユさん。いえ、シンが癇癪起こしてるだけですから……」

 

そうルナマリアが説明する。

 

「オーブと大西洋連合が同盟を結ぶらしいのです。シンはオーブを憎んでいますから、それで
愚痴っているのです」

 

レイが付け足すようにルナマリアに続く。

 

「憎しみって……何故だ?ここは彼の故郷だって誰かに聞いたんだが……
この間話してた"あの時"っていうのと関係あるのか?」
「あの……それは……」
「俺の家族はあの国に殺されたんだ!」
「えっ……?」

 

はぐらかそうとしたルナマリアの言葉を切って、シンが語り始める。

 

「二年前の戦争の時、中立だったあの国はオーブの理念を守る為だとか抜かして国を戦場に
したんだ!好き放題に暴れまわる奴らのせいで俺の家族は流れ弾に巻き込まれて
死んだ……!あの国は、理念を守るために俺の家族を殺したんだ!
あんたに分かるかこの気持ちが!?国の勝手で家族を奪われた俺の気持ちが!?」
「……」

 

激情に任せてしゃべり倒すシンにカミーユは何も応えない。
真剣なシンの表情を見つめて何か考えているようであった。

 

「奴らは理念は守っても人の生命は守らない奴らなんだ!その上今度は核を使った連合と手を
組み、俺達の敵に回ったんだ!癇癪の一つも起こしたくなる!」
「……そう言う事か……どこに居ても上の連中の勝手で普通の人が迷惑を受けるんだな……」
「……あんたにそんな事分かるのかよ?」
「俺だって自分の世界じゃ戦争やってたんだ。似たような経験は何度かある」
「平気な顔してよくもそんな事が言える!」
「いつまでも被害者面して文句ばかり言ってるよりはマシだろう?」
「なんだと!?」

 

カミーユの挑発的な言葉にシンが掴みかかろうと歩を進める。
それに危険を感じたのか、ルナマリアが二人の間に割って入る。

 

「ちょっ、カミーユさん……シンも……」
「そうやって周囲に気を遣わせてる奴が戦場で生き残れるとは思えないな」

 

険悪な雰囲気の中、ルナマリアに抑えられているシンを尻目にカミーユは吐き捨てるように
そう言ってラウンジを出て行った。
それを見てシンは壁に拳を打ち付ける。

 

「あいつ……自分がお荷物だって事分かってるのかよ!」
「全く……何なのよあの人?」
「……」

 

ラウンジに残った三人の間に気まずい空気が流れた……

 
 

オーブが大西洋連合と同盟を結ぶことにより、ミネルバは半ば強制的にオーブを出ることに
なった。
一応の修理と補給は終わっていたが、なんとも後味の悪い出航のために、クルーの士気は
下がっていた。

 

しかし、気落ちしているミネルバを待ち受けていたのは連合の艦隊であった。
そして後方にはオーブ軍が陣取り、ミネルバがオーブ領海を出ると同時に威嚇射撃をしてくる。
ミネルバを戻ってこさせないようにさせるためである。
最早ミネルバは眼前の敵を倒すしか道が残されていなかった。

 

「前方の連合艦隊より敵MS隊接近!」
「くっ、MS隊の発進準備は出来ているわね!?艦砲射撃後順次MS発進、レイとルナマリアは
ミネルバの守りに付かせて!」

 

バートの報告にタリアが命令を下す。苦しい状況である事は承知していた。
続いてアーサーが指令を仰ぐ。

 

「後方のオーブはどうするんですか!?」
「仕掛けてこない様なら相手にしなくていいわ!」
「了解です!艦砲射撃一斉射、照準は取らなくていい……撃ぇー!」
「続いてMS隊発進!レイ機とルナマリア機はミネルバの甲板にて援護!
インパルスはフォースシルエットにて散開した敵部隊を遊撃!」

 

アーサーの号令の後、タリアがメイリンにパイロット達への指令を伝える。
それを受け、メイリンが伝達する。

 

『MS隊は出撃後、レイとお姉ちゃんは甲板でミネルバの援護、シンは散開した敵を順次撃破
して!』
「了解!シン=アスカ、コアスプレンダー行きます!」
「指令確認…レイ=ザ=バレル機、出るぞ!」
「ルナマリア=ホーク、ザク行くわよ!」

 

ミネルバからの艦砲射撃が敵部隊を狙い通り散開させる。
そして出撃したレイとルナマリアのザクはミネルバの守りに付き、シンのインパルスが散った敵
を順次撃破していく。

 
 

対する大西洋連合側も、ミネルバが戦闘を開始したのを確認していた。

 

「奴らもMSを出してきたか……相手が新型艦という事はもしかしたらあれが積まれているのか
も知れん。例のMAを用意させろ」
「はっ」
「……ふん、それにしても敵もなかなかやるようだな。単艦なのによくやる……
流石はザフトの新造艦と言ったところか」

 

大西洋連合艦隊の司令も顎に手を当ててミネルバの戦闘力に感嘆する。

 

「しかし、数ではこちらの方が遥かに上です」
「その通りだ軍曹。ザフト製のGと思われるMSを敵艦から引き離せ!艦を孤立させるんだ!」
「了解、先行している第一、第二群隊を敵艦に向かわせ、後続の部隊で敵Gを足止めさせます」

 
 

次から次へと襲い来るウインダムの群れ。いくらインパルスが高性能とは言え数的不利は明
らかであった。
敵に埋もれるようにしてシンは目に付いた敵MSをビームライフルで片っ端から落としていく。

 

「くそっ、こいつらうじゃうじゃと!」

 

何体もいるウインダムをシンは捌ききれない。尚も増え続ける敵に、シンは徐々にミネルバを
離されていってしまう。
そしてそれを見計らったように一部のウインダムがミネルバに向かう。

 

「あいつら……!」

 

その様子に慌てたシンがミネルバに通信を繋ぐ。

 

『ミネルバ、敵の一部がそちらに向かった!』
「艦長!」
「レイとルナマリアにやらせなさい。それとシンを呼び戻して!全く、突っ込みすぎよ!」
「了解!シン、聞こえる?ミネルバの防衛に戻って!」
『そんなこと言ったってこの数じゃ……!』

 

シンの周りには既にウインダムによる包囲網が出来上がっていて、それを相手にするだけで
精一杯の状態であった。まんまと敵の策に嵌ってしまったのである。
そして、ミネルバの甲板の上では抜けてきたダガーLの群れを相手に苦戦するレイと
ルナマリアの姿があった。

 

「もうっ、シンは何やってるのよ!?甲板の上から射撃じゃ、この数相手にきついわよ!」
『シン……敵に乗せられたようだな……』
「冷静にそんなこと言ってる場合じゃないわよ!このままじゃジリ貧でしょうが!」

 

一瞬レイの方に気を取られたルナマリアの背後からダガーLが襲い掛かる。

 

『馬鹿っ……!』
「……っ!?」

 

しかしすぐにそれに気付いたレイがビームライフルでウインダムを撃墜する。

 

『口を動かす前に手を動かせ!死にたいのか!?』
「わ、分かってるわよぉ!」

 

レイに注意され、半ばやけくそ気味にルナマリアは襲い来る敵MSを迎撃し始めた。

 
 

「くっ……何やってんだ!このままじゃいずれ沈められるぞ!?」

 

敵の攻撃に苦戦する状況を見ていたカミーユはミネルバのブリッジへと向かう。
少し前のカミーユなら、こんな時には了承も得ずにすぐに飛び出していたのだが、軍と言う性質
が彼の気性を変えていたのかもしれない。
それはカミーユの無意識の部分に、皮肉にも毛嫌いしていた軍人の証明として刻み込まれて
しまっていた。

 

「ここで沈んで堪るかよ!」

 

カミーユはブリッジへと急ぐ。

 

その頃ブリッジでもタリアがこの戦況を打開するべく決断を下そうとしていた。
そこに息を弾ませてカミーユがブリッジへ入ってくる。

 

「タリア艦長!」
「……!?あなた、ここはブリッジクルー以外立ち入り禁止よ、すぐに出て行きなさい!」
「僕をΖで出してください!」

 

突然のカミーユの申し出に、タリアは目を丸くして驚く。

 

「正気で言ってるの!?出せるわけ無いじゃない!」
「このまま沈むつもりですか、あなたは!?」
「このままでいるつもりはないわ。
……アーサー、タンホイザー起動!メイリン、シンをミネルバの射線軸から下がらせて!
一気に敵艦を焼き払ってここを突破します!」
「ぇっ、あっ……」
「りょ、了解です!」

 

タリアの命令にアーサーが固まる。
一方のメイリンはインパルスに通信を繋げて退避を勧告している。
それでもカミーユは食い下がる。何故か嫌な予感がしたからだ。

 

「タリア艦長!」
「君は黙ってなさい!……アーサー!」
「はっ、はいっ!」
「目標は敵艦隊!」
「了解!各員に通達、タンホイザー起動!照準合わせ!目標は敵艦隊、チャージ開始!」

 

ミネルバの艦首の下から陽電子砲の砲身が浮き上がる。それは一撃でこの戦局を変え得る兵器であった。

 

「ミネルバがタンホイザーを使う……!?」
「こ、これで何とかなりそうね……!」

 

苦戦を続けるレイとルナマリアにとって、それは救いとも言える光景であった。

 
 

一方の大西洋連合艦でもミネルバから巨大な砲身が浮かび上がってきたのを確認していた。索敵が報告する。

 

「司令!敵艦から何やら巨大な砲身が浮かび上がってきました!」
「そうか、どうやら私の勘が当ったようだな……。よし、ザムザザーを出せ!」

 

連合の旗艦空母より巨大な三人乗りMAが出撃する。そして、それは艦隊の前でミネルバを正面に見据え、待機する。

 

「敵艦正面、我が艦隊の前に固定完了しました」
「ザムザザー機関安定、システム・オールグリーン。陽電子リフレクター展開準備完了です」
「よし、陽電子リフレクター展開!敵殲滅兵器をここで食い止めるぞ!」
「「はっ!」」

 

ザムザザーと呼ばれた巨大MAが光のシールドを展開する。その様子は、戦闘を続けるシンやミネルバの面々にも確認されていた。

 

「何だあれ……?メイリン!」
『シン、ミネルバの射線上から離れて!ミネルバはタンホイザーを使うわ!』
「タンホイザー!?りょ、了解!」

 

メイリンからの通信を聞き、シンは慌ててインパルスをミネルバの正面から離脱させる。その様子をミネルバも確認していた。

 

「インパルス、ミネルバの射線上より外れていきます!」
「艦長、敵艦隊前方に大型MAです!」
「タンホイザー、チャージ80%!発射可能です!」
「な、何をするんだ!?」

 

次々と報告が飛び交い、カミーユは異様なブリッジの雰囲気に呑まれる。

 

「MAごと敵艦隊を焼き払います!……タンホイザー撃ぇー!」
「了解、タンホイザー撃ぇー!」

 

ミネルバの切り札とも言える大きな砲身から太く紅い光が放たれる。
その光は射線上の敵MS部隊を巻き込み、爆発の閃光が鮮やかにその光を彩る。

 

「ぅぐっ……!」

 

ニュータイプ能力が過剰に肥大化したカミーユに、散ったパイロット達の意思が伝わってくる。
その意思の重さにカミーユは思わず呻いた。
ところが、まだ続くと思われたその不快感が急に途切れる。
タンホイザーの紅い光がある一点で弾かれたのである。

 

「なっ!?」
「タンホイザーが敵MAによって無効化されました!」
「タンホイザーを弾くなんて……」

 

陽電子砲をザムザザーに弾かれ、ミネルバのブリッジに動揺が走る。

 

「回避急いで!敵が来るわよ!」

 

一度放たれたタンホイザーは連射が出来ない。砲身の冷却が必要だし、エネルギーの再充填
に時間が掛かるからだ。
だからこそこの一撃で仕留められなかったミネルバクルーのショックは大きい。
それは甲板の上で戦いながらその様子を見ていたレイとルナマリアも同様であった。

 

「そ、そんな……タンホイザーが効かないなんて……」
『ルナ、気をしっかりと持て!敵はまだきてるんだぞ!』

 

押し黙ったブリッジの空気の中、そんな雰囲気を感じてか、カミーユは声を張る。

 

「僕を出して下さい!あと一機前線に出れれば戦局も変わる筈です!」

 

そんなカミーユにタリアが呆れたように言い返す。しつこいカミーユを少し鬱陶しく感じていた。
彼女はカミーユを信じていないのである。

 

「出来ないと言ってるでしょう!私はまだあなたを信用したわけではないわ!
獅子心中の虫に落とされるなんて御免よ!」
「少しでも違和感を感じたら撃ってくれて構いません!こんな所でノコノコと死にたく無いんで
すよ!」
「言ってくれるわね……!」

 

カミーユの言い草に引っ掛かる事があったが、しかし必死なカミーユの表情に何だかタリアは
少しだけ信じてみようと思えた。

 

「タリア艦長!」
「……分かりました、出撃を許可します。
その代わり自分の言った事はしっかり覚えておきなさい」
「はい、有難うございます!」

 

一言礼を言い、カミーユはMSデッキに向かう。
近くでやり取りを見ていたアーサーは不安げな表情を浮かべた。

 

「MSデッキに連絡、カミーユのMSを用意させて!」
「い、いいんですか艦長!?」

 

頼りなく訊ねてくるアーサーにタリアは苦虫を噛み潰したような表情で語る。本当は彼女とて
カミーユをMSで出したくは無かった。
しかし、切り札であるタンホイザーを防がれてしまった今、彼に出てもらうしか他に方法が無
いのも事実なのだ。それしか頼る方法が無い事がタリアは悔しかったのだ。

 

「どの道このままではいずれ沈むわ……彼に賭けるしかないのよ」
「しかし……」
「わかってるわ。彼が裏切る可能性は否定出来ないもの。
だからアーサー、照準の一つは常に彼を捉えていて」
「わかりました、そういう事ですか……」
「そうよ」

 

納得したのか、アーサーは晴れやかな表情を浮かべる。それに対してタリアは冷徹な声で
それに応えた。可能性として裏切りがある限り、気を緩める事は許されないのだ。

 
 

カミーユがMSデッキに着くと、既にΖガンダムの準備が整っていた。
慌しい雰囲気の中カミーユは急いでΖガンダムの方へ向かう。
コックピットに入り込み、起動の操作をしているとマッドが話しかけてきた。

 

「おい、お前が出るのか!?」
「えぇ」
「出た瞬間こっちを向くなんて勘弁だぜ!」
「そんな事しませんよ」
「ほんとかね、こいつは?……そのMS、空飛べないんだろ?どう戦うんだよ?」
「飛べなくても可変機にはやり様があります。……閉めますよ」

 

そう言うとカミーユは確認もせずにΖガンダムのコックピットハッチを閉める。
そしてすぐさまカタパルトの上に乗せ、ミネルバのハッチが開くのを待つ。

 

「ハッチ開放遅いですよ!出る前に沈むなんて御免ですからね!」

 

そう怒鳴るカミーユの声に反応してか、ミネルバのハッチがゆっくりと開かれていく。

 

「まだ俺は死ぬわけにはいかないんだ……Ζガンダム出るぞ!」

 

発進の掛け声と共にカミーユは勢いよく飛び出す。そして、滑らかに姿勢制御を行いつつすぐ
さまウェイブライダー形態へとスムーズに変形させ、そのまま前線へと飛び立っていった。
それを見送ったマッドにヴィーノが話しかけてくる。

 

「何だよあの人、MSに乗った途端に威張っちゃってさ!
戦争がしたいだけなんじゃないんスかねぇ親方!」
「さぁな……確かに出撃の手際はこ慣れた様子だったがな、何とも言えん。
俺はまだアイツの事よく知らねぇからなぁ……」
「俺も全然知らねッスけど」
「んなこたぁ分かってるっつーの!ほら何サボってんだ、手ぇ動かせ手ぇ!
今ミネルバはピンチなんだよ!分かってんのか、こぉの半人前がぁ!」
「うわっ何スか!?親方危ないッス!」

 

呑気に話すヴィーノを鬱陶しく思ったマッドが鉄パイプを振り回して配置に戻させる。

 

「えっ!?あのMS……まさかカミーユさんを出したの!?」
「……」

 

未だ襲い来るウインダムを迎撃する中、飛び出していったΖガンダムを確認したルナマリアは
素っ頓狂な声を上げ、レイは静かにそれを見送った。