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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第08話

Last-modified: 2008-05-25 (日) 09:11:20

「ぐっ……!」

 

MSデッキに鈍い音が響き渡る。
ミネルバへ帰還したシンに待っていたのはアスランによる"修正"であった。
周りのクルーもその様子に押し黙っている。

 

「なぜ殴られたかわかっているな、シン?」
「……」
「中途半端とは言え、敵意の無い者に対しての一方的な攻撃、更には隊長である俺の命令
の無視。立派な軍規違反だ」
「俺は……俺は正しい事をしたんだ……!」
「何?」
「あそこで囚われていた人達は強制的に働かされていたんだ!俺はそれを助けようとした
だけだ!」
「自分の言い分を正当化しようとするな!」
「……っ!?」
「お前が何を考えていようが、お前のやった事は許されない事だ!軍人であるならば物事の
判断をもっと区別しろ!」
「あんたなんか……あんたなんか全然役に立ってなかったじゃないか!口では偉そうな事を
言って……」

 

言いかけたシンの言葉を遮る様に、また鈍い音がMSデッキに木霊する。
今度殴ったのはカミーユだった。

 

「現状を把握しろ、シン。子供の理屈で戦争されたら堪らないんだよ」
「何すんだあんた!あんたなんかに殴られる云われは無いだろ!」
「分かってないから殴ったんだ。これは修正だ」
「修正だと……!」

 

シンの右頬が赤く腫れる。口の中が切れたらしく、血の味がした。

 

「けッ……!怪しいあんたに言われてもなぁ!」

 

血を吐き捨てて言う。

 

「この中じゃあんたが一番信用が無いんだぜ!それでよくも殴れたもんだな!」
「そんな事関係あるか?違反を起こしたから殴られているんだぞ、お前は」
「違反だと……!」
「そうだ。勝手な行動は艦を沈める事にも繋がる。一人の勝手でみんなが迷惑する事にな
る。それはお前の傲慢だ」
「あんた、俺の正義感は大事だって言ってたじゃないか!?」
「見込み違いだった。自分のした事も認識できない奴の正義感なんて無い方がマシだ」
「なんだと……!じゃあ、あんた達はあそこの人達の事なんかどうでもいいって言うのか
よ!?俺達は軍人だから命令が無きゃ知ったこっちゃ無いって、そう言うのかよ!?」

 

それを聞いたアスランは堪忍袋の緒が切れたようにシンを一喝する。

 

「いい加減にしないか!戦争はヒーローごっこじゃないんだぞ!」
「……!」

 

一喝されたシンはその場を飛び出した。
それを見届けた他のクルーもやっかみを受ける前にそれぞれ散っていく。

 

「シンの奴め……!」
「落ち着け、アスラン。その内何とかなる」
「……」
「今はまだこれでいいんだ。戦っていく内にシンにも分かる時が来る」

 

慰めるカミーユの言葉にもアスランは眉間に皺を寄せるばかりで難しい表情をしている。
アスランほどの人物であれば、これ位でへこむ様な事は無いはずである。

 

「…何をそんなに神経質になっているんだ?」
「……確かにあいつの言う通りでもあるんだ……」
「えっ?」
「今回の戦闘、ブランクを感じていたとは言え、俺は大した成果も挙げてない。
……そんな奴に説教されれば反発だってしたくなるよな……」
「苛立ちの理由はそれか」
「……」
「フェイスなんだろ?隊長なんだろ?しっかりしてもらわなきゃこっちも困る。
……シンの前ではそんな顔出さないでくれよ?余計に付け上がる」
「……」

 

アスランは力ない表情のまま戻っていった。
その様子を心配したルナマリアが後を追いかけて行った。

 
 

ミネルバはスエズ支援の為、マハムール基地へと到達する。そこで次の作戦内容が説明
される。地球戦略の上で、ガルナハン基地周辺における優位性を確立する為にその先に
ある火力発電プラントを押さえたいという内容だった。
現地の部隊から送られてきた映像には巨大な砲塔と、それを守る大型MAが映されていた。
陽電子砲台のローエングリンと、以前接触したザムザザーと同じ様なシールドを持つMAであ
る。その長大な射程距離と、隙の無い防御は難攻不落と言っていいもので、更にそこの地形
が細長い谷間になっている事が余計に攻略を難しくさせていた。
現地部隊も何度か攻略を試みたものの、殆どの攻撃はMAのシールドに阻まれ、ローエング
リンによる砲撃が何も出来ないままの撤退を繰り返す結果となっていた。
ここを突破しない限りこの地方でのザフトの優位は無い。
そこで白羽の矢が立ったのがミネルバであった。
今回は連合に対するレジスタンスとの共同戦線になるという。詳しい作戦説明は現地にて、
合流した後に行うと言う事で、その日のブリーフィングは終了した。

 

ブリーフィングが終わった後、カミーユは一人でミネルバの甲板に出ていた。
いくらカミーユがザフトになったといえど、このミネルバに於いてカミーユは異邦人である。
何となく自分に居場所を感じられず、黄昏ていた。

 

「こんな所で何湿気た面してやがる?」

 

不意に投げかけられた言葉に、カミーユははっとする。
声のした方向に目を向けると、そこには煙草を銜えたマッドがいた。

 

「ミネルバの空気にまだ慣れないか?」
「いえ……そんなことは……」
「隠すこたぁねぇよ。お前さんの表情を見てりゃあそんな事くれぇ解かる」
「……話ならシンにした方がいいですよ。彼の方が僕よりもよっぽど問題ですから」
「アイツは……なぁ?人の話聞かねぇからよぉ」
「言えてますね」

 

二人で笑い、マッドは煙草の煙を大きく吐き出す。
気を取り直してマッドが続ける。

 

「まぁ、可愛げのない美人艦長にうだつの上がらない隊長、会話も殆どしない同僚とエースは
自信過剰のお子様ときたもんだ。そんな中に飛び込んだとなっちゃあ、お前さんの気が滅入
るのもよく分かるって話だ」
「僕が今の事告げ口すれば怒られますよ」
「おっと、口が滑ったな……聞かなかった事にしてくれ。
俺にとっちゃあ戦争より減俸の方が怖いからな」

 

マッドは冗談っぽくそう言って笑う。カミーユもつられて少し笑う。

 

「だがよ、お前さんも自分から進んでこの艦に乗り込んだんだ。もう少し打ち解けなきゃ本当
に孤立しちまうぞ?戦争っていう命張った状況にこのミネルバは立たされているんだ。
…人との繋がりは大事にしたい物だろ」
「分かってますよ。ただ、きっかけが掴めないんです。
…前いた艦じゃ大人が多かったですから……」
「大人の振りして青春を満喫できなかったってか?
今からでも遅かねぇんじゃねぇか?まだ若いんだしよ」
「そんなんじゃないんです。……死んでしまった人の事を考えてたんです……」
「死んじまった人の事、か……忘れたくは無ぇよなぁ……」
「……」
「だが、引きずりっぱなしじゃあ先には進めねぇぜ?居なくなっちまった人の事を忘れないの
も大切だが、お前さんはこの世界で生き延びて自分の世界に帰らなくちゃいけねぇ。そんな
時一人ぼっちだったら、寂しいじゃねぇか」
「……分かる……気がします……でも、何でそんな事僕に……?」
「何となく、な?人生の先輩としてアドバイス出来る事があるんじゃねぇかなって思ってさ」
「あなたも馴染めなかったんですか?」
「……ま、若ぇ奴等が多いからな、この艦は。
…とりあえず頑張ってはみてくれよ?俺に言えるのはこんな事ぐらいしか無ぇからよ」

 

そうカミーユに告げるとマッドは銜えていた煙草を揉み消した。

 

「一服も終わりだ。じゃあよ、俺は仕事に戻らぁ」

 

マッドは背を向けて肩越しに右手をひらひらさせて甲板を出て行った。
そこに入れ違いになるようにシンが甲板にやってくる。その右頬には湿布が貼られている。

 

「何、話してたんです?」

 

訝しげにカミーユにシンは訊ねる。どこか信用を置けない、そんな声色だった。

 

「……」

 

シンの問いかけにカミーユは応えない。シンはそんなカミーユの態度に鼻を鳴らす。

 

「そういえば、あんたとこうして二人の状況になるのはオーブ出た後以来でしたね?」
「そうだな」
「俺はあんたを絶対に認めないですからね。怪しすぎる」
「……シン、少し話をしないか?」
「いいですよ。あんたが何を考えているか、今度こそ聞かせてもらいましょうか?あの時は
上手くはぐらかされて逃げられちゃいましたからね……!」

 

明らかに敵意の籠もった口調でシンはカミーユに食い掛かる。
しかし、そんなシンに対してもカミーユは冷静になろうと我慢する。

 

「シン、お前は戦争で家族を亡くしたって前に話してたよな?」
「そうですけど、それがどうかしたんです?」
「いや……俺ももう家族は居ないからな……
…お前の気持ちも少しは分かる気がするんだ……」
「それはここがあんたの居た世界とは違う世界だからでしょう?帰れば家族が居るくせに、
白々しい事を言わないで欲しいですね」
「俺の世界にも家族は居ないんだ。……お前と同じで目の前で殺された」
「……!」

 

カミーユの両親は既に居ない。軍の衝突に巻き込まれて、彼の目の前で無残にも散って
いったのだ。

 

「俺の父も母も仕事ばっかで、家庭の事なんて碌に顧て無くてさ……それでも死んで
しまった時は悲しかったよ」
「……」
「だから、お前が戦争を憎む気持ちが人一倍強いのは解かるんだ」
「その割にはインド洋の時は随分厳しくされましたけど?」
「いくら戦争を憎んでいたって、やっていい事と悪い事の区別がある。あの基地の人達を助け
たかったんなら威嚇するだけでよかったんだ。殺す必要までは無かった。
…区別出来ない戦い方では勝利は出来ても戦争を終わらせる事はできない」
「俺がまだヒヨッ子だって言うんですか?残念ながら俺はこの艦のエースですよ。あんたや
アスランなんかよりも何倍も成果を挙げている」
「人殺しを自慢にするつもりか?」
「誰がそんな事を言った!?俺は戦果の話をしてるんだ!」
「そうだよな?戦果を挙げる為なら無抵抗の人間でも平気でお前は殺せるんだもんな?」
「あんた、俺をおちょくってるのか!?いい加減にしろ!」

 

ここまで話して、カミーユは自分が少しヒートアップしている事に気付く。

 

「……すまない、言い過ぎたな……けど、戦争にだってルールがある。あまり人として外れた
戦い方をしていると戦いに取り込まれるぞ」
「言われなくたって……!」

 

ここまで話してカミーユは、駄目だな、と思った。先程マッドに言われた通りにしてみようと
思ったが、シン相手ではどうしても意見の衝突になってしまう。彼は昔のカミーユに似ている
所があるからだ。
そんな所がまるで自分を見ているようで、カミーユにとって気恥ずかしいのだ。
これ以上は余計に話がややこしくなる、と踏んだカミーユはこれで話を終わらせる為にその
場を離れた。
日が殆ど沈んで、宵闇が辺りを包む中、残されたシンは拳を握り締めていた。

 
 

日も沈んで辺りがすっかり暗くなった頃、MSデッキに一人の影があった。セイバーの
コックピットでシミュレーターを起動させて訓練をしているアスラン=ザラであった。
自らの不甲斐無い実力を、少しでも現役であった頃に戻そうとしているのである。
カミーユの神業とも云える戦闘を目の当たりにして受けた刺激の結果であった。

 

「くそっ!実戦じゃなきゃ駄目か……!」

 

映像の中での戦闘は確かにリアルに体感する事も出来るが、実戦でのみ感じる重力移動や
衝撃なんかは感じられない。更に言えば"空気"が違うのだ。
それが無ければ訓練した技術も実践で役に立たない場合が多い。
アスランはその事に焦っていた。

 

「アスランさーん!何なさってるんですかー!?」

 

下の方からルナマリアの声が聞こえてきた。
ずっとセイバーのコックピットに篭りっきりだったアスランは、取り合えず一旦シミュレーターを
止め、外に出る。

 

「何か用か?」
「いえ、用って程じゃないんですけど……こちらにいらっしゃるって聞いたものですから……」
「悪いけど用が無いなら構わないでくれないか?今、手が離せないんだ」
「シミュレーター訓練していらっしゃるんですよね?それならいいものがあるんですけど……」
「いいもの……?何だ?」
「まぁ、取り合えず降りてきてくださいよ。参考になるかと思ってある人の戦闘データを借りて
きたんです」
「誰の?」
「観てからのお楽しみです。早く降りてきてくださいよー?」

 

ルナマリアに急かされるようにセイバーから降ろされるアスラン。
MSデッキの隅にあるコンピューターを起動し、ディスクを挿し込む。
そしてディスプレイにデータが映し出された。

 

「これは……カミーユの……?」
「はい、そうです。あの人、まだ一回も被弾して無いみたいなんですよね。
だから、アスランさんに何かヒントになるものがあればと思って……」
「被弾数ゼロ……回避率100%か……撃墜数12、命中率も60%近くを弾き出している……
…彼は本当にナチュラルなのか?」
「この艦の検査では100%ナチュラルであると出たみたいですよ。あたしもこれを見るまでは
信じていましたけど……このデータを見る限りその検査結果を疑ってしまいます」
「常識では有り得ない何かがカミーユにはあると言うのか……?」
「映像の方、出しますね」

 

ルナマリアが戦闘中にカメラが捉えた映像に画面を切り替える。

 

「……」
「……あのぉ、どうですか?」
「……」
「アスランさん?」
「……君はこれを観て何も感じないのか?」
「へ?」
「よく見てみろ、この動き、次に何が来るか分かってなければ出来ない動きだ。操縦技術も
さることながら、後ろからの攻撃にも完璧に対応している」
「言われてみれば確かに……
でも、警告音とかで判断して適当に避けてるんじゃないですか?」
「それだけで回避率100%を証明する根拠になるか?」
「ぅ……」

 

アスランはまだ気付いていないが、カミーユは警告音がなる一瞬前に回避行動を取り始めて
いる。余りにも僅かなタイムラグであるが故に、二人とも全く気付かないのだ。

 

「ほら、あの人のMS、全面モニターになってるじゃないですか?それで見えていたんじゃない
ですかね?」
「カミーユの目は後ろにもあるのか?」
「ぇ……いや……」 
「驚異的だな……カミーユの勘は……」
「勘……ですか……?」
「そうだ。そうでなければ説明がつかない。……信じたくは無いが……」
「でも、アスランさんもこの位は出来ますよね?」
「馬鹿を言うな。これ程にまで相手のやる事為す事を全て見通した戦いは出来ない」
「そ、そうなんですか……!?」
「おう、お前等、何二人で見てるんだ?」

 

コンピューターのモニターに釘付けになっていた二人の背後から声が掛かる。
豪快な声の主はマッドだった。

 

「あっ、マッドさん……あの、カミーユさんのデータを借りてきて見てるんです」
「ほぉ……で、感想は?」
「並みのコーディネイターとは比べ物にならないですね。正直、こんなの見せられたら自信を
無くしますよ」

 

若干疲れた顔でアスランが応える。

 

「そんなにか?」
「ええ。戦闘勘が凄いんです。何もかもお見通し、みたいな……」
「ふぅん、お前さんでも勝てないのか?」
「今の俺では勝てる気がしないですね……」
「そりゃあたいしたもんだ。ヤキンのフリーダムと、どっちが強ぇかな?」
「えっ?」
「お前さんなら知ってるんだろ?奴の実力は」
「さあ……あいつも強いですからね……どちらが勝つかなんて比べられないですよ」

 

フリーダム……圧倒的な性能で前大戦を終結に導いたMSである。
殲滅戦が主目的のMSであり、その扱いの難しさから乗り手を選ぶマシンであった。
そのMSのパイロット、キラ=ヤマトはその類稀なる操縦センスによって、正に癸韻噺討屬
相応しい地位を確立させていた。

 

「あいつの強さは操縦の早さが特徴ですからね……カミーユの強さとはまた別物ですよ」
「なら、カミーユの強さをどう見る?」
「これだけのデータでは不足していますが、敢えて言うなら……戦いを読む強さですかね?」
「なんだそりゃ?それは艦長の仕事だろうが?」
「それとは又別物です。カミーユの場合、敵の動きを読んだ上で対応しているんです」
「だから、それが艦長の仕事と何が違うんだ?」
「考えたくは無いですが、カミーユは相手の考えてる事が分かってしまうような気がするん
です。それも、かなり正確に……」

 

モニターを見つめたまま、アスランは二人に聞こえないような音で歯軋りをした。
こんな常識を逸した現実を突きつけられ、歯痒い気持ちになっていた。
胸の奥で何かが沸々と沸き上がる感覚がする。

 

「ちょ、ちょっとアスランさん!あの人がエスパーだとでも言うんですか!?」
「そうだぞ、アスラン。そんな馬鹿な話があるわけが無い」

 

アスランの見解に二人が口をそろえて抗議する。
ニュータイプの概念の無い彼等には当然の反応だが、突然アスランは目を見開いて二人に
向き直る。

 

「俺だって認めたくは無い!でも、そうとでも考えなければこの動きは説明がつかないんだ!
…なら、認めるしか無いじゃないか!」
「ア、アスランさん……?」
「……」

 

急に激昂するアスランに、二人は唖然とする。瞬間、ハッとしたアスランは深く息をつく。

 

「すまない……少し風に当たってくる……」

 

そう言い残し、アスランはMSデッキを出て行った。
それを追いかけようとルナマリアも出て行こうとしたが、マッドがルナマリアの肩に手を置き、
それを止めた。

 

「一人にしてやりな。これは誰かがどうにか出来る問題じゃねぇ」
「でも……」
「アイツのプライドの問題だ。奴は自分の存在意義に疑問を持ち始めている」
「そんな事無いですよ!アスランさんは立派な隊長です!」
「本人がそう思ってないんだ。お前さんがいくらそう言っても逆にアイツを追い詰めるぜ?」
「どういう事ですか、それ!あたしは本当に……!」
「それが返ってアイツのプライドを傷つけるって言ってんだよ、俺は。
実力を発揮出来ない上に、化け物の様な新顔のパイロットが既にこの艦にいたんだ。それで
お前さんのような慰め方をされたんじゃ、裸の王様かただのピエロだぜ」
「そんなの…やってみなければ分からないじゃないですか!」
「じゃあお前さん、何て声掛けるつもりなんだ?」
「そ…それは……」
「ほれ見ろ、中途半端な情けが一番へこむんだぜ?」

 

マッドの突っ込みにルナマリアは表情を落とす。アスランに気に入られる事ばかりを考えて
いて、肝心の彼自身の事を蔑ろにしていた事に気付く。

 

「そんな……アスランさんの手助けになると思ってあのデータを借りてきたのに……それが
返って逆効果だったなんて……」
「そいつぁ、残念だったな。だが、これを乗り越えてもらわなきゃこの艦が沈む。
……それと、あと一人……」
「……?」
「シンの坊主にも成長してもらわなきゃな……」
「シンが!?」
「何もそんなに驚く事ぁねぇだろうがよ?あいつも立派なエースだぜ、実力だけならな」
「あの子が?」
「そうさ。ああ見えて中々大したものだよ、あいつは。見所がある。
お前さんはしっかりシンを見ておくんだな。きっと化けるぜ!」

 

マッドの話を聞いたルナマリアはマッドを軽蔑するかのような目で見つめた。

 

「ふん、疑うんなら構わねぇが、後で後悔しても知らねぇぞ!」

 

吐き捨てるようにそう言ってマッドはその場から離れていく。
残されたルナマリアは今の言葉を冗談にしか受け取っていなかった。
しかし、この時のマッドの言葉は後々現実のものとなる。
ルナマリアが想像する以上に速く、シンは大人への階段を駆け上っていく……