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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第14話

Last-modified: 2008-05-25 (日) 09:34:48

「よし、開けるぞ……」

 

地表に落とされたハイネのグフを回収できたはいいが、フリーダムにやられた破損箇所や
地面に叩きつけられた時の衝撃でボロボロになっていた。
あちこちがショートしているらしく、ハイネの無事を確認する事が出来ない。
MSデッキで開かなくなってしまったコックピットハッチを無理やりこじ開ける。

 

「ぬぐっ……固い……!おい、誰か手伝え!」

 

マッドが歪んだハッチの隙間に指を差し込み、力いっぱい引っ張ったが予想以上に
固かった。他の整備士達が何人かそれに加わり、やっと開ける事が出来た。

 

「ハイネは大丈夫なんですか!?」

 

近くでパイロット達が見守る中、アスランがマッドに訊ねる。

 

「……すぐに先生を呼んでくれ」
「……!」
「早く医者を呼べ!手遅れになっちまうかも知れんぞ!」

 

それを聞いたルナマリアがすぐさま医務室へ向かう。

 

「隊長さんを引きずり出すぞ、もっかい手を貸せ」

 

騒々しくなるMSデッキの中、シンはその様子を沈痛な面持ちで観ている事しか出来なかっ
た。ハイネの負傷は、彼の言う事も聞かずに無謀にもフリーダムに仕掛けた自分のせいだと
思っていた。

 

ハイネが運び込まれてから数時間経った頃、医務室から医者が出てくる。
ドアの前で待っていたアスランたちは皆不安そうな顔をしている。

 

「あの…ハイネの容態は……?」

 

医者が眼鏡を指で上げて口を開く。

 

「大丈夫だ、安心したまえ。命には別状は無い。意識ももう回復しているよ」
「そ、そうですか!」
「ただ、数箇所骨折をしていてね、完治するまでは戦闘は出来ん」
「あ……」
「まぁ、彼の自然治癒能力ならそう長い事は掛からないとは思うが……」
「あの、中に入ってよろしいでしょうか?」
「構わんが他の患者も居る、安静にしてやってくれよ」
「はい、もちろんです」

 

医務室の扉を開ける。

 

「ん…?おぉ!皆で来てくれたのか、嬉しいじゃない」

 

其処にはベッドに横たわり、いつものように軽口を叩くハイネが居た。
しかし、その体には所々に包帯が巻かれていて、顔にも細かいあざができていて痛々しい。

 

「すまないな、皆…初陣でいきなりこんなことになっちまって……」
「そんなことないさ。死ななかっただけでも儲けものだ」

 

アスランは申し訳なさそうにするハイネに慰めの言葉をかける。

 

「ハイネ隊長…申し訳ありません、俺のせいで……」

 

シンがハイネの横に来て深々と頭を下げる。 

 

「気にするなよシン。お前にも事情があったんだろ?
…ってゆーかその他人行儀な言い方、止めろって」
「でも俺…しっかりと謝りたいんです。本当に申し訳ありませんでした!」

 

シンはもう一度ハイネに対して頭を下げる。

 

「そうか…なら、あれやるか……。カミーユ、俺は手がこんなんで、あれが出来ないから
代わりにお前がやってくれよ」

 

ハイネがシーツの中から包帯でぐるぐる巻きになった腕を見せる。

 

「あれって…まさか!?」
「そう、そのまさか」
「けど……」
「ここで問題だ。俺の制服の襟についているバッジは何のバッジでしょう?」
「……!」
「回答時間は十秒、答えられなかった場合は夕飯は抜きです」

 

ニヤニヤするハイネの顔を見て、カミーユは内心卑怯な、と思った。
馬鹿らしい位簡単な誘導。しかし、疲れきった体に夕飯抜きは辛かった。

 

「…5…4…3…2…」
「フェ、フェイス……」
「ピンポンピンポンご名答〜!だから、はい、やって」

 

カミーユは開いた口が塞がらなかった。
しかし、隊長でありフェイスであるハイネの言う事は聞かなければならない。
職権濫用じゃないの、と思いながらもカミーユはシンの肩に左手を置いた。
ハイネの"あれ"に気付いたアスランは必死に笑いを堪えている。
その様子を隣でルナマリアが不思議そうに眺めていた。

 

「シン…これから俺がする事はハイネの命令だからやる事だからな?俺を恨むなよ…」
「は?……グハッ!?」

 

訳も分からずにシンはカミーユに殴られてふっ飛ばされる。床に倒れた音が思った以上に
響き、ドアの外で待っていた医者の耳にも聞こえてくる。
何事かと慌てて医務室に入ると、すぐ其処に涙目でキョトンとしているシンが床に座っていた。

 

「これ…は……?」

 

混乱する医者は医務室の中を見回す。
ルナマリアは目を丸くしている。レイも顔に驚きの色を浮かべている。
珍しいのは、アスランが腹を押さえ、片腕を壁に突き、堪えきれずにクックックと笑っている事
だった。
ベッドの上のハイネはニコニコした顔で複雑な顔をしたカミーユとハイタッチをしていた。
ハイネが男前の顔をしてシンを指差して一言告げる。

 

「修・正!」
「なっ…なっ…」

 

ハイネがカミーユに彼の世界の話を聞いた時、一番食い付いたのがこの"修正"の件であっ
た。アスランが若干引いていたのとは逆にハイネはその話を嬉々として聞いていたのだ。
どうやらハイネは修正が気に入ったらしく、何かある度にやろうと画策していたのである。
未だポカンとした表情のシン。

 

「これでチャラにしてやるよ。お前も気が済んだろ?」
「アハッ…クッ…クフッ……」

 

余程この状況が気に入ったのか、アスランの笑い声が段々大きくなってくる。
当然シンにもその声が聞こえてくる。

 

「なっ…何笑ってんだアスラン!あんたに笑われる筋合いは無いだろう!」
「プフッ!わ、悪いな、シン…でっ…でも……アハハ…!」

 

シンに対する日頃の鬱憤が溜まっていたのだろう。どうやら笑いのツボに入ったらしく、
アスランはその後も暫くは笑い続けていた。

 

「ぷっ!シン、かぁっこいい〜!」
「ふっ、いい顔になったじゃないかシン」
「ルナとレイまで……!」

 

シンが一人おどけた様な格好をしているのを二人が茶化す。それに対してシンはむすっとした
顔をする。

 

「その頬の腫れは名誉の負傷ですか〜?」
「ブッ!アッハハハハハハハ…は、腹が…腹が痛い…ハーハハハハハハ!」
「そんな訳はないだろう。それを言うならインパルスに言ってやれ。あいつの方が頑張ってた
ぞ」
「あっ、そ〜か〜!そうだよね〜?」
「ルナ…レイ、それにアスラン……!」

 

シンの顔が痙攣を起こしたようにひくつき、全身を震わせる。
彼の怒りは頂点に達した。

 

「お前等全員其処に直れ!お前らも修正してやる!」

 

おもむろに立ち上がると、シンはアスランたちへ突撃の態勢をとった。

 

「やばっ、逃げなきゃ!さっ、アスランも!」
「お、俺もか!?」
「当然でしょ!逃げないと真っ先にアスランを狙いますよ〜?」
「おっと、くわばらくわばら」
「レイ、あんたはあっちに逃げなさいよ。分散してシンを撒くわよ!」
「了解した。では俺は先に行かせて貰うぞ」
「OK、気を付けてね!」

 

突っ込んでくるシンをヒラリとかわし、三人は蜘蛛の子を散らすように医務室から出て行った。
逆を突かれたシンはバランスを崩して転びそうになったが、すぐさま態勢を立て直して三人を
追っていった。

 

「全く、医務室では静かにしろと言ってあった筈なんだがね……」

 

医者は呆れたように文句を口にする。

 

「すいませんね、騒がしい部下達で」
「何を言うのかねハイネ君。原因を作ったのは君だろうに……」
「それは違いますよセンセ。殴ったのはこいつですもん」

 

ハイネに指差されたカミーユは腰が砕けそうになるのを何とか堪える。

 

「な、何言ってんだ!自分は出来ないから代わりに殴れって言ったのはハイネだろう!?
勝手に俺のせいにするなんて……!」
「静かにしなさいと言っているでしょう」
「あっ、すみません……」
「俺は殴れなんて言ってないぜ?俺の言葉を勝手に修正だと解釈したお前が一番責任がある
んだからな」
「そんな屁理屈…ハイネが俺に頼む"あれ"って言ったら修正しか無いじゃないか!」
「ま、そうなんだがな?いや、まさか本当に殴るとは思わなかったからな。
…けど、おかげで面白い物が見れたぜ」
「あんたって人は……」

 

カミーユは頭を抱える。
先程まで虫の息だったくせに、ここまでバイタリティのある人だとはカミーユは思わなかった。

 

一方、シンから逃げるルナマリアは久しぶりに心が充実していた。これまで衝突の
絶えなかったパイロット達が、初めてと言って良い程和気藹々としていたからだ。
この原因がハイネによる物である事を、ルナマリアは知っていた。

 

「待てよそこの二人ぃ!俺の修正パンチをおとなしく受けろぉ!」
「ほら、アスラン早く!シンに追いつかれちゃいますよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!さっき笑いすぎたせいで…は…腹が……」

 

シンが真っ赤な顔をして二人を追いかけてくる。そうはいきませんとばかりにアスランの手を
引いて逃げるルナマリア。
今はこの楽しい一時を精一杯楽しもうとルナマリアは思った……

 

「戦闘があった後だと言うのに元気な事だな」

 

その頃、レイは自室で水を飲んでいた。