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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第24話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:38:29

第二十四話「姿を見せた敵」

対フリーダムの研究をしていたシン達はラウンジに向かっていた。艦内放送でクルーはラウンジに召集されたからだ。
ラウンジに辿り着くと、既にそこはクルーで一杯で、皆の視線は大画面のモニターに集中していた。もうすぐギルバート=デュランダルによる政見放送が始まるらしいのだ
 
「シン…何が始まる?」
「シッ、ステラ静かにして」
「始まるぞ」
 
何事かと訊ねるステラを嗜めると、レイが合図する。モニターの画面が乱れたかと思うと、直ぐに正常に戻った。そして、そこにはギルバート=デュランダルが映し出される。
 
『全世界の皆様、プラント最高評議会議長のギルバート=デュランダルであります。テレビを御覧の皆様には突然の無礼をお詫び申し上げたい。しかし、私はどうしても皆様にお伝えせねばならぬ事があるのです』
 
「レイ、議長は何の為にこんな事を……?」
「聞いていれば分かる」
 
『こちらの映像を御覧になって下さい。これは連合が行った破壊活動を我が軍の兵士が撮影した記録映像であります』
 
「デストロイ……!?」
 
モニターにはベルリンでの戦いの様子が映し出されていた。
デストロイと戦うインパルスとΖガンダム…しかし、其処にはなぜかフリーダムの姿は映されていなかった。
 
『これ程の破壊行為が何故必要だったのでしょう?我々プラントは彼らと戦争状態にあります
が、彼らは自らの優位を確立する為に一般市民を巻き添えにして街を次々と壊滅させたのです!勿論我々もそれを食い止める為に応戦致しましたが、力が及びませんでした……。
しかし、問題はそれだけではないのです!』
 
映像が切り替わり、再びデュランダルが映る。
 
『彼等がなぜここまで出来るのか、それは彼等の背後にそれを支える組織が存在するからです!』
 
何処かに存在する場所で、その男は片手に持ったワインを震わせていた。
目の前には大量のモニター群、それらに全てデュランダルが映されている。

『その組織は物資を地球軍に融通し、己の利益の為だけに愚かな戦争を長引かせていたのです!』
 
男は画面に映るデュランダルを見て立ち上がった。
膝に抱いていた猫が滑る様に飛び降りる。
 
『彼らはかつてのブルーコスモスを母体とした組織…名を"ロゴス"と言います』
 
画面にロゴスのメンバーの顔写真が映し出される。
その中には男の写真も含まれていた。
 
『この戦争は、彼等ロゴスによって引き起こされたのです!彼等が居る限り、この戦争は終わりません』
 
「な…何を言うか!?……おのれぇ…ギルバート=デュランダルめ……!」
 
その男、ロゴスの盟主ロード=ジブリールは闇に隠れた自らの組織を表に公表された事に怒りを顕わにしていた。
同時に複数のモニターから他のメンバーが不安そうにジブリールを頼ってくる。
デュランダルの言葉に浮かべていた焦りの表情を隠し、努めて冷静な振りをする。
 
「…大丈夫ですよ、まだ負けたわけではありませんからな。こちらにはまだ切り札もあります。 心配は必要ありません」
 
メンバーを落ち着かせて通信を切ったが、放送を続けるデュランダルに対してジブリールは厳しい視線を投げかける。
 
(このままでは済まさんぞ……!)
 
ジブリールは唇を噛み締め、演説を続けるデュランダルを尻目にその部屋を後にした……
 
 
『…………そして、戦争を終わらせる為に、今こそロゴスを討つべきです!我々プラントは、ロゴスを打倒し、戦争を終わらせる事を宣言します!』
 
ミネルバのラウンジでは拍手が巻き起こる。開戦してからこのかた、鍔迫り合いの様な戦闘しか繰り返されていなかったからだ。
それがここに来てついに戦争の終結の目処が立つ。兵士達の士気は向上していた。

「カミーユ、議長は本気だな」
「ああ…しかし、それだけで終わるとは思えない。自らのエゴで戦争を食い物にしている連中はロゴスって奴等だけじゃ無い筈だ」
「では、お前はどうすれば戦争が終わると思う?お前の言うエゴ剥き出しの奴等を全て滅ぼすか?」
「そんなつもりじゃない……」
「なら、お前は誰となら戦いたい?誰を討つ事が正義と信じる?」
「…ハイネ、本当に倒さなきゃいけないのは地球の重さと大きさを想像できない人達だと思うんだ。それは人の想いを無視する人間がすることで、人を家畜にする……そんな連中がステラのような存在を生み出しているんだ……」
「そうかもしれないがな…その地球の重さと大きさを想像できない人をどうやって見分ける? お前の言うことも分かるが、議長の言うことも一つの道だ。お前は今はザフトで、そのMSのパイロットなんだぞ?理想も結構だが、責任は果たしてくれよ」
「…分かってる」
 
煮え切らないカミーユをハイネが諭すように話しかけた。
 
「レイ……」
「シン、議長の言うことは正しい。お前は議長の言うとおりにすればいい。そして、お前が戦争を終わらせるんだ」
「俺が……」
 
シンはレイの言葉に勇気付けられる気がした。
レイのデュランダルに対する忠誠心は本物である。その言葉がシンを鼓舞する。
 
デュランダルの演説も終わり、ラウンジから人が散っていく中、タリアがシンに声を掛けてきた。
 
「シン、ちょっといいかしら?」
「か、艦長?…何でしょうか?」
「ええ……ここではなんだし、艦長室へ来なさい」
「は、はぁ……」
 
タリアと共に艦長室へ向かうシンにステラが付いて来る。
 
「あなたはいいのよ、私はシンに話があるんだから」
「ステラもシンと行く!」
「あ、あの…艦長、駄目ですかね?」
「……あんまり甘やかす物では無くってよ?今回は認めるけど、これからはそうはいかないわ」
「あ、ありがとうございます!」
 
呆れたようにタリアは渋々許可する。正直ステラのこの馴れ馴れしさは好きになれないが、それでシンがやる気を出してくれるのなら仕方ないか、と思い我慢する。
三人は艦長室にやって来た。
 
「それで、話って何です?」
「その子の事よ」
「えっ……!?」

(まさか、ステラを本国の研究所送りにするって話なのか……!?)
 
艦長からステラの事で話があるという事は、余程重要な話なのだろう。きっと何か嫌な事を言われるに違いない…シンはそう思った。
 
「艦長、俺は絶対に反対ですからね!」
「それじゃ困るのよ。私も責任者としての立場があるわけだし」
「そんな事言われても俺は納得しません!」
「あなた、上司に向かってよくもそんな事が言えるわね?」
「だって、そんなのあんまりじゃないですか!?今更ステラと離れるなんて……!」
「……」
「俺はステラと離れたく無いんです!」
 
敢然と言い切るシンにタリアは頭を抱えて溜息をつく。
どう見ても唯の子供にしか見えなかった。
 
「はぁ……あなたのスケベっぷりにも困った物ね…ラッキースケベ君?そんなに一緒に居たいのかしら?」
「スケベって……!?俺はステラを研究所送りにしたくないだけですっ!」
 
シンの言葉にタリアは目を丸くした。
 
(な…何を言ってるのかしら、この子……?)
 
よく分からないシンの言い分にタリアはキョトンとしていたが、直ぐにその意味を理解する。
ステラは側でシンを不思議そうに眺めていた。
 
「それは誤解よ。私はこの子の部屋割りの事を言っているのよ?」
「は……!?」
「年頃の男女が一緒の部屋で昼夜を共にするのは問題でしょ?そもそもレイと一緒の部屋の貴方がこのまま過ごせるわけ無いでしょ?この子に言ってもどうせ聞きやしないんだし、あなたからステラを説得してもらおうと思っていたのよ」
「あ…俺はてっきり前に言ってたステラの研究所送りの事だと思って……」
「全く、私がその事でどれだけ苦労したと思っているの?冗談じゃないわよ!」
 
タリアは思い出したように声を荒げる。
 
「そもそも貴方が無茶するから私が苦労する羽目になる!そこの所を分かってるの!?」
(やばい…艦長の目が据わってる……!)
 
タリアは以前のステラ移送と返還の件で、シンの知らない所で本国と色々交渉していたのだ。
最終的にデュランダルの判断で移送は取り止めになり、無断で返還した事も不問に処されたが、その際にデュランダルに付け込まれる隙を与えてしまった事をタリアは後悔していた。
そうなってしまった事はタリアの失敗である。それがタリアを苛つかせていた。

「これから先もステラと居たいのなら、そこの所はしっかりなさい!いいわね!」
「は、はいっ!了解です、失礼しますっ!」
 
触らぬ神に崇り無し…タリアの機嫌がこれ以上悪くなる前にシンは慌てて敬礼をし、逃げるように艦長室を退室した。
 
「…っとにあのガキんちょは!」
 
相当苛付いているのか、タリアはデスクを蹴り上げ、悪態をつく。シンののろ気た顔が癇に障ったのだろう。
 
「…あの子の査定、下げてやろうかしら……?」
 
理不尽な減俸をしてやろうと、タリアは目を光らせる。しかし、直ぐに思い直して首を横に振る。
 
「はぁ〜……、問題児ばかりだと、苦労するわね……」
 
今度は諦めたように溜息をつく。そして、そのままデスクに突っ伏して目を閉じてしまう。
 
(でも……)
 
ステラの件での不問が許されたとき、デュランダルはタリアに対して個人的な条件を提示してきた。その条件が不可解で、タリアを不安にさせる。
 
(呼んだら必ず来いって、どういう意味かしら……?)
 
心の声とは裏腹に、タリアの頭の中ではその意味するところは何となく理解していた。
恐らくは過去の出来事の清算……デュランダルを傷つけてしまった事に対する自分へのあて
つけであろう事は揺ぎ無い事実だった。
しかし、今更そんな事を言い出してきたデュランダルに対する疑問は当然のように浮かんでくる。
 
(あの人も子供なのかしらね……)
 
先程のシンを思い出し、タリアは頭の中を白くさせる。
疲れる事をこれ以上考えたく無かった。
 
その頃タリアから逃げ延びた二人は通路を歩いていた。
シンはステラに部屋割りの説得をする。
 
「ステラ、俺と部屋を分けなくちゃいけなくなったんだ」
「ステラ、シンと一緒がいい」
「寝る時以外は一緒に居れるからさ、な?」
「寝る時も一緒がいい!」
「困ったな……」

シンは頭を掻いて困った顔をする。確かに、ステラはシンにとって妹の様な存在ではあるが、一緒の部屋で過ごすのは問題がある。
タリアも懸念している通り、これはミネルバ内の風紀の問題であった。
 
「どうしようか……?」
「どうしたの、シン?」
 
シンが悩んでいると、メイリンが通りかかった。
 
「メイリン…?それがさ……」
 
シンはメイリンに事情を説明する。
 
「……そっか、そりゃ問題だよね…シンってスケベなんでしょ?」
 
メイリンの衝撃発言にシンは顔を赤くして慌てて手を振る。傍から見ればかなり挙動不審な動きだった。

「ス…だっ…って、違うって!誰だよそんな事言いふらしてるの!?」
「皆知ってたわよ、言わなかっただけで」
「はぁ…!?なんだそれ!?じゃあどうして今更になって皆俺の事スケベって…」
「その子連れて出て来た時、何かえっちぃ格好してたって評判だったのよ?だから皆それで確信持ったんじゃないかなぁ?」
「じょ、冗談じゃない!あれはコックピットが狭かったからああなっただけで…!」
「シン、スケベ」
 
ステラが横から割り込むように声を出す。
 
「……!」
「…だって。ステラ本人が言ってるんだから」
「ス、ステラ…俺の事そんな風に見ていたのか……」
 
シンはガックリうな垂れて肩を落とす。ステラにそう思われていた事が余程ショックだったのだろう。しかし、当の本人は…
 
「スケベって…何?」
「「……」」
 
ステラは意味がよく分かって居なかった。その天然振りに二人は言葉を失う。
 
「メイリン…こんなとこで何話してるの…?」
「あ、お姉ちゃん……」

そこへ通りかかったルナマリアが話しかけてきた。その表情は以前のような活気に満ちた顔ではなく、良く眠れていないのか若干やつれていた。一気に空気が重くなる。
 
「いや、それがね…?」
 
メイリンは気を遣う様に言葉を選ぼうとしている。しかし、それを遮るようにルナマリアが先に口を開いた。
 
「あ、そうそう。あたし、あの部屋から出ることにしたから…」
「えっ!?」
「アスランが居なくなって部屋余ってるでしょ?だから其処に移ろうかと思っているの」
「あ……」
 
メイリンは言葉が見つからない。ルナマリアの言う事を黙って聞いているしか出来なかった。
 
「だからその子をメイリンの部屋に住まわせればいいじゃない…あたしは一人になりたいから」
(お姉ちゃん…聞いてたんじゃない……)
 
メイリンは苦い表情を浮かべて困惑している。
それを気にしてないかのようにルナマリアは地に足付かない足取りでフラフラと歩き出した。
 
「待てよルナ。余裕無いのは分かるけど、もう少しメイリンに優しくしてやれよ」
 
それを制止するかのようにシンがルナマリアに言葉を投げかける。その声に反応してか、ルナマリアは歩みを止めた。
 
「あんたに言われたくないわよ…!その子が助かって幸せ一杯のあんたにはあたしの気持ちが分からないでしょう?」
「そりゃあ…否定できないけどさ……でもそれでメイリンに冷たく当たるってのは違わないか? メイリン、ルナのこと凄く心配してるんだぞ?」
「……」
 
シンの言葉にルナマリアは沈黙する。後姿の為、その表情はうかがい知る事は出来ない。
 
「いいの、シン…今は……」
 
メイリンの声にならない声を聞いて居た堪れなくなったのか、ルナマリアは早足でその場を去って行った。

残された三人に気まずい空気が立ち込める。
 
「シン…気持ちは有難いけど、今のお姉ちゃんにあんな事言うのは酷いよ……」
「…けど、やっぱり違うと思うんだ。俺だってアスランがああなってしまった事はショックだったから、ルナが相当傷ついてるのは分かってる。でもそれを理由にして八つ当たり紛いの事するのってどうかと思うんだ」
「そうかな…あれで気が晴れるならそのままにしてやった方があたしはいいと思うけど……」
「それじゃ駄目なんだよ。誰かを憎む気持ちだけじゃ気晴らしにもなれやしないんだ。先にも進めやしない…その事が俺にも少しずつ分かってきたんだ。 俺もちょっと前まではルナと同じ様な気持ちだったからさ……。 本音を言えばオーブを許す事は出来ないけど…そんな事よりも、もっと大事な目的が見つかりそうなんだ」
 
シンの決意にも似た話にメイリンは感心する。
表情を見て、今までのシンに対する評価が変わったような気がした。
 
「シン…何だか変わったね?前までの荒っぽいだけのシンが嘘みたい。成長したよ」
「別にそんなんじゃないけどさ、戦っていく中でそう感じれるようになっただけかも……」
「頑張ってる証拠じゃない?」
「何かさ、ステラみたいな事があってから考えが少し変わった気がするんだ」
 
シンはステラを見て微笑む。気付いたステラも返すように微笑んだ。
 
「そっか…シンもそうやって苦しい中で頑張ってるんだね。…あたしも負けてらんない!」
「メイリン……?」
「ステラの事、あたしに任せて!そんでもって絶対お姉ちゃんを元気にして見せるんだから!」
「あ…ありがと……」
 
いきなりテンションの上がるメイリンにシンは少し圧倒された。
メイリンは力こぶしを作るポーズで気合が漲った表情をしている。
 
「ステラ、寝る時になったらあたしの部屋においで、ベッドの用意しておくから」
「シンも一緒の方がいい…」
「それだとシン、ステラのせいで艦長に怒られちゃうよ?」
「う……わかった…でも、起きてる時はシンと一緒」
「うん!」
 
ステラを説得する事に成功する。
メイリンは成果に満足そうにしながら通路を闊歩していった。
 
 

それまでの連戦続きが嘘だったかのような静かな時間。
デュランダルの演説、ルナマリアの異変、そして戦えないΖガンダム……問題はあれど、今はまだミネルバは平和と呼べる空間を形成していた。
しかし、その直後に新たな司令が下る。
それは今や因縁になりつつあるアークエンジェルの討伐命令、通称"エンジェルダウン"への作戦参加要請だった。
ステラの件でデュランダルに対する借りが出来ていたタリアはその命令には逆らえない。
アークエンジェルと戦うメインの戦力はミネルバのみ。それまでの誘導は他の部隊が手伝ってくれるとは言え、ほぼ単艦による最強の相手との戦いが幕を上げようとしていた……