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Z-Seed_942_第03話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 13:01:49

第03話『衝突の果てに』

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ざわざわ……ざわざわ……

成績表が張り出された掲示板に、学生たちが群がっている。
私は人混みというものが苦手な故、自室にて新しいMSの設計に精を出していた。
此方の世界ではバッテリー駆動の機体が主流なので、
一石を投じるような革新的アイディアを打ち出し、是非とも出世したいものである。

「パプティマス様ッ!」
「何か?」

私を慕う女学生、通称『パプティマシズム(パプティマス様至上主義)』
の一員が息を切らして自室にやって来たのだ。

「MS、筆記部門では全てトップでした!」
「ご苦労様」

軽く抱擁を交すと、女学生は頬を赤らめさせた。
骨の髄まで私を信仰させるには、必要なことだった。
ここにいる生徒たちの掌握は、後々の地盤作りの礎となろう。

「ただ……体力系の席次は……」
「私は老兵だからな。仕方無い」
「そんなこと……」

女性を落とすには、自嘲が最上である。
ただし、度が過ぎると冷笑を受けるハメになるので気を付けねばならん。

諸君ら、メモっとけ。

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「二番、二番、二番!」

人だかりが失せた頃、私は自らの目で成績確認に赴くと、掲示板とにらめっこをしている黒髪の小僧が目に映った。

「励むんだな」
「……!!」

快感、高揚、優越――エンドルフィンが全身を駆け巡るのを実感した。
ふはははは!私は根に持つタイプなのだよ!

「くっ……」

いたたまれなくなったのか、小僧は走ってその場を去っていった。

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人間は文字に弱い。
何故なら、確固たる現実がそこに宿るからだ。
男子学生の一部も『パプティマシズム』に入信するようになった。
私の強大さに膝を折ったのだ。

しかし、さらに反発する集団もあった。
シン・アスカを筆頭とする『A.P.T.S(アンチパプティマシズム)』の発足である。

「『アプトス』の連中がトイレに立て篭ったぞ!」
「ちょ……漏れ……うわぁぁぁ!」

日増しに悪辣になっていく敵方の行動――
私の政治手腕を使う時が来たのだ。
権力争いで後れを取るなど、パプティマス=シロッコにはあってはならないのだ。

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「一対一だが、異論は無いな」
「ふんっ!その澄ました顔を歪めさせてやる!」
『やれやれ!紫野郎をぶっ潰せ!』
『パプティマス様〜負けないでぇ!』

外野が煩い。
『課外実習』という名目でシュミレーターの開放を嘆願し、ここに両リーダーの一騎討ちが実現したのだ。
この場をセッティングするために私は口八丁手八丁を駆使し、教官は『快く』私の嘆願を受け入れてくれたのだ。

『ボウズたちを引っ張ってやってくれ』

とまで言われた程だ。閑話休題。

操縦レバーを握り絞め、モニターを睨む。

「ふふふ……」
『お、おい。シロッコが不適もとい不敵な笑みを!』

ざわざわ……

「勝てると思うなよ、小僧ォォ!」

貴様はコックピットに乗った時点で負けているのだよォォ!

――中略――

「ま、負けた……」

黒髪の小僧が地べたに這いつくばって、涙を流していた。
内容は圧倒的だったのだ。
いい様だ!……いかんいかん。

「いい勝負だった。これからも切磋琢磨し合おう」

小僧に手を差し出し、これ以上無い程の笑顔を見せる。
小僧、期待を裏切るなよ?

「うるさい!」

小僧は私の手を振り払い、脱兎の如く去って行った。
ふふふ、予想通り。

『何だよシン……』
『期待外れだよ……』
『しかも何あれ……』

『アプトス』の俗物どもに失望感が広がっていた。
チャンスである。

「君たちもやってみるかね?」
「いや……俺は……」
「勝敗など関係ない。さぁ」

なかば強引に対戦をし、私はある程度手を抜いて勝ち続けた。
圧勝は敵に絶望を与えかねないからだ。
さらに敗者には改善点と改善法をこと細かく、論理的に告げた。
自分の率直な意見が通じないという、先の失敗から学んだ結果だった。

『すげぇよ……器が違う……』
『敵に塩送るなんてレベルじゃねぇぞ!』

敵側から私への賛辞が出るようになる。
ここで一言!

「困った時は何時でも来たまえ」

決まった……。

こうして、アプトスは崩壊した。アプトスの構成員を飲み込み、パプティマシズムは一気にその勢力を拡大したのだ。
まだ一つ、やるべきことは残っていたが。