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Zion-Seed_515_第03話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:11:13

 1月15日から16日にかけて行われた戦いは、その戦場の名を取り『世界樹戦役』と呼ばれる。

 この戦いの報告を受けたジオン公国総帥ギレン・ザビは、開戦前からの計画を即座に変更する。コロニー落しの失敗を受けて、
国連プラント理事国らの実質的な降伏から、国連構成国の切り崩しに切り替えたのである。

 元来、プラント理事国、すなわち太平洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国の3ヶ国は強大な軍事力を背景に、他国を押さえ、
スペースコロニー、およびプラントからの搾取を行ってきた。
 そして、これらの権益から排除されていた非プラント理事国らは、ジオン、プラントの独立運動の高まりを契機に、水面下での交渉を行っていた。
中でもジオンよりの赤道連合と、プラントよりの南アメリカ合衆国の動きは、ジオンの独立宣言の頃から急激に加速し、
これらの対応に苦慮したプラント理事国は、間接的な軍事的圧力を持って答えている。
 結果、ますます非プラント理事国と、ジオン、プラントが関係を深めていくといった悪循環であった。

 この外交ラインを通じて、ギレン総帥は非プラント理事国に働きかけると共に、1月17日、世界樹での華々しい戦果を武器に
全地球規模でプロパガンダを行っている。

「我々優秀なるジオン国民の前には、数では優勢な国連軍も、烏合の衆に過ぎない!」

 という趣旨の演説は、ジオンにあっては士気を高め、国連、特にプラント理事国にあっては意気を消沈させた。

 翌18日には、赤道連合からジオン公国との休戦が、国連評議会の議題に上ることになる。当然これを拒むプラント理事国であったが、
さらに翌日には汎ムスリム会議が、20日にはプラント理事国を除く7ヶ国(オーブは国連未加盟)すべてがジオンとの休戦に賛成する。
 拒否権を持ってこれを否決したプラント理事国ではあったが、アルテミスでの艦隊再建は遅々として進まず、それぞれの国内でも
講和を望む動きすら出始めていた。

 1月21日。ついにプラント理事国が折れ、国連はジオン公国との休戦を決定する。
 この背景には、ジオンが再度、コロニー落しの為にソロモンに艦隊を集結させていた事と、大規模な地球降下作戦が秘密裏にリークされ、
その目標がユーラシア連邦領オデッサ、大西洋連邦領キャルフォルニア・ベースなどである事が判明したからである。

 同日、月の中立都市コペルニクス市を通じて、国連はジオン政府に休戦条約締結の申し入れを行うことになった。

 1月28日。永久中立地帯である南極大陸にて国連の各国代表団とジオン代表団が顔をあわせた。

 一方、プラントでは評議会が荒れに荒れていた。
 プラントがジオンとの同盟を蹴って、中立を宣言したのはジオンの敗北を見通しての事であった。

「これはどういうことだ!? いかにジオンのMSがコーディネーターによるものとは言え、ここまでとは想定していないぞ!」
「フン! 理事国も数はあれど所詮はナチュラルという事だ。だが、こんなことならば、ジオンとの同盟もう少し考慮しておくべきだったか?」

 人口こそプラントの10倍近いが、工業力そのものはプラントの倍程度、地球に比べれば20分の1である。
 また、人口の殆どがナチュラルであり、緒戦こそ少数のコーディネーターの活躍があり勝利できたが、その後は所詮ナチュラルが
大多数を占めるジオンが、国連の物量に押され敗北するというのが、すべての評議員の見解であった。
 そして、消耗した国連に対し、独立を承認させるのがプラントの描いていた青写真であった。

 ところが、予想に反して結果はジオンの圧勝である。
 最初の混乱が過ぎると、一部評議員は、ジオンとの同盟を蹴った事を後悔していたが、大半は少数のコーディネーターしか擁していない
ジオンが国連に勝利した事に、改めて自分達の優秀性を認識していた。
 すなわち、ジオンごときにできた事が、プラントにできないはずが無いという認識である。

「ですが、今回の事は我らコーディネーターの力を、改めてナチュラルに見せ付けた形になります。今後のことを考えれば
ジオンの勝利は、我らにとっても有益となりしましょう」
「ええ、この機を逃すものでもありません。南極での講和会議、ジオンと協調姿勢をとれば理事国も譲歩せざるを得ないと思いますが?」
「そうだな、カバーナ議員。では君を全権大使に任じる。南極での交渉は君に一任する、頼んだぞ」
「お任せください、議長」

 また、敢えて武力でもって独立を果たさずとも、ジオンの独立に便乗してそれを成そうと、プラント評議会議長シーゲル・クラインは
南極での会議に、数名の評議員をプラント代表団として参加させた。
 ジオンがプラントの独立を援護してくれるという、勝手な思い込みが事態を楽観しさせていた。
 よもや、ジオンが自分達を裏切り者として切り捨てているとは、思ってもいなかったのである。

 1月28日から始まった南極講和会議は、事前にある程度の合意がなされていたため、大きく荒れることもなく進んでいた。
 非プラント理事国とジオン公国との条約は、独立自治権の承認と、各種交易における条約が主であった為、恙無く進む。
 対して、プラント理事国との条約は、上記に加え軍縮条約が含まれる為、ぎりぎりまで粘ろうとする理事国とジオンとの駆け引きで、
会議が少しばかり長引く事になった。

 ジオンがここで勝利を背景に強引に迫らなかったのは、開戦からここまでの勝利が、実際には薄氷の上のものだった事を
誰よりも知っていたからである。
 表面上は、非プラント理事国に配慮しているように見せかけていた為、これに気付くものはいなかったが。

 1月31日。南極条約締結。

 以下の事が、ジオン公国と国連十ヶ国との間に締結された。

 ・ジオン公国の独立自治権の承認

 ・NBC兵器の使用、大質量兵器の禁止

 ・L2の艦隊駐留基地、月面基地郡、L4の資源衛星「新星」のジオン公国への割譲

 ・L1、L4の艦隊駐留基地の所属国への返還

 ・ジオンの同宙域からの軍備の撤退

 ・プラント理事国は戦費賠償金30億アースダラーの支払い

 ・軍備縮小会議の開催

 ・捕虜の交換、資産凍結解除など

 ここにジオン独立戦争、後に4週間戦争とも呼ばれるこの戦いは幕を閉じた。
 プラントは講和会議に参加したものの、何一つプラントとかかわりの無い会議内容に歯噛みしていた。

 当初の予定であった、ジオンと歩調を組んでの独立は、ジオン代表団からの冷笑で返された。
 自ら血を流さず、自分達の勝利に便乗しようなどと、ジオンにとって虫が良すぎる話だ。

「いや、あの時は驚いたよ。プラントのお偉いさんが近づいてきてウチの代表に言うわけさ、「此度の勝利、おめでとうございます。
今後もジオン、プラント両国の繁栄の為、共に手を取って歩みましょう」って。驚いて固まっちまったもん。隣にいたマ少佐の
呆けた顔なんて二度と見れないだろうしな……え? 笑えたかって? ……吹くの堪えんのがきつかったよ」

 これは代表団の護衛任務で会議に参加した、とある武官のコメントである。
 しかも、この講和会議の前にプラント側は、ジオンに対し何一つ協議を行っていない。まさに身一つでこの会議に乗り込んだのである。
プラント代表団が何を持って、ジオンがプラントと手を組むと確信していたのかは、まったくもって謎であった。

 ジオンに袖にされたプラントは、単独でのプラント理事国との交渉に望むが、当然上手くいくわけが無い。
 その上、これ以上の損失を出す気の無い理事国は、プラントからの搾取で、対ジオン戦での損失を埋めようとしていた。
 また、プラントよりの非プラント理事国でも、事前交渉なし来られても困りものである。
 大洋州連合ら、いくつかの国家とはそれなりの交渉の窓口を得られるものの、それは即座に独立につながるものではなかった。

 何一つ得られない会議に、プラント代表団は条約調印を待たずに30日、会議を退席。だがそれを気にする国家は一つとして
なかったのである。

 31日の南極条約締結と同時に、プラントはプラント理事国との対立を加速させていく事になる。