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Zion-Seed_515_第04話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:11:23

 1月31日の南極条約締結とともに、地球圏のミリタリーバランスは大きく変動する事になる。

 C.E.51年のL2独立宣言以来、拡張を続けてきた国連平和維持宇宙軍は、ジオン独立戦争において主力艦340隻のうち
90%以上の318隻を消失、プラント理事国の力の象徴といえた宇宙艦隊は、ジオンのMSによって粉砕され、彼らこそが
新たな力の象徴として宇宙に君臨する事になる。

 また、対外交渉失敗の連続により国際的に孤立しつつあるプラントであったが、伊達に新人類を名乗っているわけではなく、
人口僅か4000万ほどであるにも拘らず、3億を超えるジオンに迫る国力を保有し、彼らの軍組織『ザフト』はジオン軍と同じく
MS(プラント評議会はジオンのMSは自分達のものを模倣したものだと信じていた)を主力とする機動艦隊を備えていた。

 一方、地球上では大西洋連邦の太平洋艦隊がハワイ諸島と共に消滅したほかは、プラント理事国の地上軍に大きな被害はなく、
プラント理事国は軍縮条約の範囲内で、宇宙軍の再建にとりかかっていた。

「で、実際どうだった? コロニー落しってもっかいできたんか?」
「いや、無理だった。特にMSの稼働率がやばかった。3割切ってたもん」

「うは……上はもう一会戦ぐらいできるとか言ってたけど?」
「そりゃ、こっちは初期戦力の3割でも、あっちは1割切ってるもん。やりゃ勝てたよ、コロニー落しは無理だけど」

「で、そのやばい稼働率の原因は?」
「直接は部品不足。大元は独立前の経済封鎖中の軍拡。物資不足で開戦半年遅れてりゃ、マジ餓死者出てたぜ」

「ゲッ、マジか? 知らんかった……」
「そりゃ、そっちは最優先で物資回してたもん。これで負けたら祟ってやるところだった」

「……ほんと、勝って良かった」
「ああ、奇跡だ」

「…………は〜」
「…………は〜」

 戦勝に沸くジオン国民であったが、その前途には問題が山積みであった。
 4週間戦争では問題にならなかったが、公国軍のザビ家私兵化による各派閥間の争いが、戦後の軍縮を機に暴発しつつあった。
 また、根本的に国力の違うプラント理事国への対応にも苦慮していた。
 新しい兵器・戦術で得た勝利は、相手がその兵器、もしくはそれに対応する戦術を採用した時点で、国力の違いから次の敗北は避け得ない。
 なんとしてもプラント理事国に鎖をつける必要があったのである。

 華々しい戦勝パレードの裏で、慌しく動くジオン政庁の住人達は、2月5日に驚くべく報告を聞く事になる。

 プラントではジオン独立の影響を受け、プラント市民達が大きな気勢を上げていた。
 この状況下で、南極講和会議での交渉失敗など公表したら首が飛びかねないプラント評議員達は、なんとか次の一手を打つべく奔走していた。
 パトリック・ザラ国防委員長を筆頭に、ジオンと同じように独立戦争を仕掛けるべきと主張する主流派と、軍事力を背景に交渉でもって
自治の拡大を目指すべきとの現実派が、喧々錚々と議論を続けていた。

 幸いにして不穏なプラント情勢に対応すべく、国連が交渉を呼びかけてきたため、現実派の主導で2月5日に月面コペルニクス市で
会議が開催される事になる。

 プラント理事国は予想外の敗戦に、各国指導部は自分達の地位を保つ為、不眠不休でこれに挑む事になる。
 特に市民の声が強い大西洋連邦では、とりあえず「リメンバー・ユルドラシル!」を掛け声に、なんとか市民の目を逸らさせる事に成功する。
 ジオンへの復仇に燃える市民を利用し、一応軍縮条約の範囲内での宇宙軍再建に励むプラント理事国らであったが、今度は足元のプラントで
火が燻りつつあった。
 現状ではアメを与える以外の手段を持ち得ない理事国らは、プラントに自治権拡大の餌を与える事でジオンへの番犬にするつもりであった。
 もちろん、ブルーコスモスの盟主様は大反対であらせられたが……。

 交渉の日時は2月5日。場所は月面中立都市コペルニクス。議題はプラントの自治権拡大であった。

 C.E.70年、2月5日。プラントの自治拡大についての、プラントと理事国の交渉は爆炎によって始まる前から幕を閉じる。
 爆弾テロにより、会議に参加する予定の地球側理事国の代表者と、国際連合総長を含む国際連合首脳陣が軒並み死亡したのである。
 逆に、プラント代表のシーゲル・クライン議長他数名の評議員は、シャトルの故障により到着が遅れていたため難を逃れている。

 この爆弾テロをブルーコスモスは、プラントの工作と断定。激しく非難すると共に、機能の麻痺した国際連合に変わる新たなる組織の
編成に勤しんだ。
 プラント理事国と南アフリカ統一機構が、ブルーコスモスの主導で結成した新たなる国際組織、その名は地球連合といった。

 この反プラント色の強い地球連合は、2月11日、ただちにプラントに対し最後通牒となる制裁決議案を可決。
 3日後までに返答が無い場合は、宣戦を布告する事を通達した。
 決議案の内容は、爆弾テロの首謀者の引渡しと、評議会の解散、そしてザフトの解体が盛り込まれていたため、プラントがこれを受け入れる事は
組織としてのプラントの死を意味していた。
 無論、地球連合もプラントがこれを受け入れる事が無いのは熟知していたため、2月12日、アルテミスよりドゥーリットルを旗艦とした
プラント奇襲艦隊が秘密裏に発進する。

 2月14日、日付が変わると同時に、プラント奇襲艦隊がプラントへの攻撃を敢行する。

 ザフト本国防衛隊の防衛網の穴をつき、プラント本国の奥深くに進入したサザーラント大佐率いるプラント奇襲艦隊は、ブルーコスモス系将兵で
構成されているためか、先の4週間戦争以上の戦意で持ってプラント攻撃を行っていた。
 このとき実はプラント内部から、防衛隊の配置が意図的に漏洩されており、以後も地球連合はこのラインからの情報を有効活用している。

「ミラージュコロイド、か。悪くない性能だ」
「大佐! プラントが一基崩壊します! ヒャッホー!!」
「狙いは細かくつけるな、大まかに打っても当たる! ともかく弾をばら撒け!」
「了解! 青き清浄なる世界の為に!!」
「「「「「「青き清浄なる世界の為に!!」」」」」」

 泡を食った本国防衛隊が駆けつけたときには、十数基のプラントが激しい損傷を被っていた。なかでも艦隊からの攻撃が偶然集中していた
ユニウスセブンは完全に崩壊していた。
 怒りに燃える一部のザフト兵士が、遁走していく奇襲艦隊への追撃を行うが、司令部がプラントの被害のあまりの大きさに動揺し指示の一貫性を欠いたため、
大部分が生存者への救出に向い、追撃そのものは中途半端に終わった。

 サザーラント大佐は率いる奇襲艦隊艦艇の半数を失うものの、無事、旗艦ドゥーリットルと共にアルテミスに帰還している。

 この地球連合軍の奇襲攻撃により、プラント市民は83万742人の死者と、100万人以上の負傷者を出す事になる。この攻撃は所謂聖バレンタインデーに
起こったため、後にプラントでは血のバレンタイン事件と呼ばれる事となる。

 2月18日、プラントで血のバレンタインの犠牲者を弔う為の国葬が行われる。
 クライン議長はこの時に、プラントの独立宣言と地球連合への徹底交戦を明言している。
 また、地球連合封じ込めを狙い、地球連合非参加国に対し優先的に物資を提供する積極的中立勧告を宣言。
 親プラント姿勢を見せていた大洋州連合、南アメリカ合衆国はこの勧告を受諾、だがこれは地球連合の暴走を加速させる事になる。

 翌2月19日、地球連合軍は突如として南アメリカ合衆国に武力侵攻。
 宣戦布告も無しに行われたこの暴挙は、地球圏諸国家を驚愕させている。
 まともな交戦もできぬうちに、南アメリカ合衆国はパナマ宇宙港と首都リオデジャネイロを制圧され、南米大陸は僅か一日で大西洋連邦に併合された。

 翌日20日、大洋州連合は地球連合軍の中南米侵略を非難するとともに、プラント支援を表明。
 これに対し地球連合は同日、大洋州連合に宣戦を布告する。

 本来であれば地球連合は、南アメリカ合衆国、大洋州連合両国ともに一撃で併合する予定であった。
 だた、太平洋艦隊の消失により、東アジア共和国の大海艦隊単独での大洋州連合への攻撃は、困難と見て戦力の大半を南アメリカ合衆国の併合に
当てたのである。
 また、パナマ宇宙港のマスドライバーは、宇宙戦力の大半を喪失している地球連合にとって、生命線といっても過言ではなかった。
 
 そして、血のバレンタインからおよそ1週間後の2月22日、ザフトは地球連合の宇宙における二大拠点の一つ、『世界樹』に向けて艦隊を発進。
 ザフトが地上侵攻作戦を円滑に行うためには、地球連合の戦力を宇宙から一掃する必要があった。
 それにはハルバートン准将が、世界樹で再建を進める艦隊は邪魔なのだ。
 ザフトはこの作戦に全軍の半数近くを投入、主力艦24隻、MS300機からなるザフト機動艦隊は22日18時10分、世界樹で待ち受ける
ハルバートン指揮下の艦隊に襲い掛かった。