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Zion-Seed_515_第06話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:11:42

 1月31日の南極条約締結とともに、ジオン公国への経済封鎖は解かれ、非プラント理事国を中心とした交易が再開していた。

 これはプラント理事国がプラントへの対応に苦慮し、宇宙艦隊の再建に国力の大半をつぎ込んでいたためで、ジオンが相手を
えり好みしていたわけではない。
 地球、ジオン、月面間を行きかう交易船が賑わいを見せる中、2月5日のコペルニクスの悲劇を皮切りに始まったプラント事情は、
血のバレンタインでピークを迎え、プラントの積極的中立勧告により南アメリカ合衆国が、地球連合に併合されることになる。

 これに慌てたのは赤道連合ら、地球連合未加入国の面々であった。
 大洋州連合は早々にプラント支援に回り、地球連合との戦闘に参加するが、赤道連合、汎イスラム会議、スカンジナビア王国ら三国は、
プラント支援もプラントとの戦いも正直御免であった。
 なぜならばどちらかに付き、その陣営で勝ったとしても国益が全く見込めなかったのである。
 プラント理事国が勝てばプラントからの利益を独占するのは目に見えているし、プラントが勝った場合の利益は全く目算が付かなかったのである。

 これら一連の動きを天啓と捉えたのは、ジオン公国総帥ギレン・ザビその人である。
 南極条約までの国連の動向を決定付けたともいえる外交ラインを通じ、これら三国とすばやく交渉を行い、2月22日の第二次世界樹戦役の
直前には、ジオンと三国との間に安全保障を中心とした秘密条約を締結していたのである。

 ジオンは4週間戦争で見せた迅速さをここでも発揮。表向きは通常交易の様に見せかけて26日の地球連合の侵攻までに、実に450機以上の
MSをこれら三国に送り込んだのである。
 これらは徹底的に秘匿して行われ、周回軌道を警戒するプラントのパトロール艦隊が、行きはMSを満載して降下し、帰りは希少資源を満載して
ジオン本国に帰還するHLV船団に気付かなかったほどである。

「しかし……プラントの動きも理解しがたいが、それ以上に地球連合は何がしたいのだ?」
「はーい、ミーアはブルーコスモスさんの仕業だと思いまーす」
「ミ、ミーア! 総帥、申し訳ありません。良く言って聞かせますので……ミーア! こっちに来なさい」
「えー」

「いや、よい。それで、ミーア・キャンベル。ブルーコスモスの仕業というのは?」
「はーい、総帥。多分、ブルーコスモスさんは私達コーディネーターがだーいキライだからプラントごと消しちゃえーって、感じだと
ミーア思うんです。それでプラントよりの国も、ジャマだーって、感じてやっつけようとしてるんですよー」
(ミーア、流石にそれは無いと思うわ……)

「……なるほど」
(え!! 納得しちゃうんですか!?)
「両名とも下がってよい」
「はーい」
「はい(……大丈夫かしら?)」

 ミノフスキー効果の元でMSが絶大な戦力となるのは、先の4週間戦争で地球連合は嫌というほど思い知らされていた。

 故に、ジオン義勇軍と鉢合わせた地球連合軍は、一時的に恐慌状態に陥る事になる。
 特に中南米侵攻のときと同様、一方的なワンサイドゲームになると確信していただけに、混乱は大きかった。
 そして相手は、それを見逃すようなジオンMSパイロットたちではなかったのだ。

「よう、あんた白狼だろう? うわさは聞いてるぜ。お互い有名になると大変だよな〜」
「ほう、貴公がかの有名な赤い彗星か」

「ちげーよ! 赤い彗星じゃなくて、真紅の稲妻。イ・ナ・ズ・マ!」
「おお、すまない。貴公があの真紅の稲妻……シャア・アズナブルか!」

「そうそう、俺があのシャア・ア……って、ちっがーう!」
「どうした? 何を怒っているのだ、シャア?」

「俺は、俺は真紅の稲妻! ジョニー・ライデンだ!」
「そうか、すまなかったなジョニー・ライデン」

「い、いや、もういい(……わざとか?)」
「では、赤い彗星の名が伊達で無いことを見せてもらうぞ」

「……(天然かよ)」

 ミノフスキー粒子により、目をつぶされた電子戦対応の戦車、航空機はMSに対して何一つ有効打を持たなかった。
 主力戦車の主砲は、当たればMSの装甲も撃ち抜けたが、電子戦に慣れきった兵士がいまさら観測射撃で、しかもMSに攻撃を
命中させることなど不可能に近かった。
 また、航空機も電子誘導兵器が無力化した上に、有視界戦闘では逆にその速度が足枷となり、さらに機銃程度ではMSの装甲に
たいしたダメージを与えられなかったのだ。

 各地で地球連合地上軍はジオンのMS隊に敗退、一部地域では逆侵攻を食らうなど散々であった。
 この戦いにおいて、白狼ことシン・マツナガは戦闘車両31両、航空機5機を撃破してその名を轟かし、真紅の稲妻こと
ジョニー・ライデンも戦闘車両14両、航空機38機を撃破するも、同じく戦果を挙げた赤い彗星シャア・アズナブルと誤認され、
相変わらず赤い彗星に間違われる日々を過ごすのである。

 かくして、地球連合の三国侵攻作戦は失敗に終わる事になる。
 ジオンのMSは地上においてもその性能を十分に発揮かせ、地球連合上層部を青ざめさせるとともに、ザフト上層部にMSの強さを
確信させる事になる。

 2月28日、赤道連合、汎イスラム会議、スカンジナビア王国が共同で地球連合に対し、休戦条約を打診。

 条約内容は唯一つ、旧に復す、のみである。

 地球連合は早期併合プランが崩れた以上、この休戦を受け入れるほかなかった。
 周回軌道ではザフトが、地上侵攻の準備を着々と進めている。
 最早、中立諸国に構っている時間はなかった。

 また、赤道連合ら三国も地球連合との戦争を継続するつもりは全く無かった(ジオンはそうでもなかったが)。
 なにせ地球上の富の6割以上を独占する地球連合と、地球のエネルギー事情の大半を握るプラントとの戦争である。
 せいぜい長引いて、共倒れしてくれれば最高である。
 それに、自国が関わらない戦争の特需ほどおいしいものは無い。
 ジオン他三国、そしてオーブ首長連合国は着々と物資を蓄え、商売のタイミングを計っていた。

 月があけて1週間。3月8日、ザフト軍は地上侵攻作戦を開始した。
 目標はアフリカ、ビクトリア宇宙港とマスドライバー「ハビリス」。
 人類史上初の周回軌道上からの地上降下作戦は、大方の予想に反し、ザフトの敗退に終わる事になる。

 ザフト上層部ではこの敗因は、地上戦の経験不足や降下部隊が対空砲火にさらされた事や、地上戦力の支援が無かった事と考え、
この敗退を踏まえた新たなる作戦が立案されてゆく。

 この戦いにおける敗因は、ザフト上層部が判断したとおりのものであったが、最大の要因が抜け落ちていた。
 MSを投入する前提に、ミノフスキー粒子散布下である事があげられる。ミノフスキー効果の元、その戦闘力を最大限発揮するMSだが、
それがなければ長距離誘導兵器相手にはただのでかい的である。
 それをザフトは、いつでもどこでも使える無敵の兵器と勘違いしていたのだ。

 このため、ザフト降下部隊は高高度航空機の迎撃と、地上対空ミサイルの十字砲火にさらされ壊滅、地球連合相手に
手痛い敗北を喫するのである。

 ザフトは第一次ビクトリア攻防戦の失敗を踏まえ、新たなる計画を立案。

 ・地上での支援戦力を得るための軍事拠点の確保
 ・宇宙港やマスドライバー基地制圧による、地球連合軍の地上への封じ込め
 ・核兵器、核分裂エネルギーの供給抑止となる、ニュートロンジャマーの散布

 これら三点からなる赤道封鎖作戦「オペレーション・ウロボロス」が評議会に提案される。

「これは、いささかやりすぎではないか? 地球連合のみならいざ知らず、赤道連合ら中立国をも巻き込むとなると……」
「無論、中立国への散布は恫喝以外の何ものでもない。機能を停止して送り込むだけになる」
「しかし、それでもこれは……」

「だが! ユニウス市の7番から9番までの穀物生産プラントを失った我らが、速やかなる地上拠点確保以外に生き延びる方法があるのか!」
「ジオンであれば……いや、所詮奴らもナチュラル。信用はできんか」
「南アメリカ合衆国が落ちたのが響くな。パナマの宇宙港が使えれば……」

「……では、採択を取る。賛成者は挙手を」
「……」
「……」

「では賛成多数につき、我らプラント評議会は「オペレーション・ウロボロス」の発動を許可する。ザラ国防委員長、くれぐれも
ニュートロンジャマーの降下ポイントは慎重に頼むぞ」
「言われずとも分かっている。我らザフトに失敗など有り得ん」
((((このあいだ失敗してんじゃねーか))))

 3月15日、「オペレーション・ウロボロス」は評議会で採択され、きたる4月1日に発動する事になる。

 後に、エイプリルフール・クライシスと呼ばれる惨劇の始まりであった。