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Zion-Seed_515_第08話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:12:02

 エイプリルフール・クライシスを機に反コーディネーター思想は爆発的に燃え上がり、ブルーコスモス上層部はその動きを
快く思いながらも、予想ほど増えないブルーコスモス構成員に首をかしげていた。

 反コーディネーター感情を持ったナチュラルの多くが選んだのは、狂信性の高いブルーコスモスではなく、またSEED思想と
呼ばれる救世主待望論でもなく、かつて多くの宇宙移民を惹きつけた、故ジオン・ダイクンの提唱したニュータイプ史観であった。

 これは全ての人類(ナチュラル、コーディネーターの区別無く)が宇宙へと進出する事で、人類が次の段階である
ニュータイプに進化するというものである。

 このニュータイプ史観、一般には提唱者ジオン・ダイクンの名を取ってジオニズム思想と呼ばれている。

 かつてブルーコスモス穏健派の重鎮であったジオン・ダイクンは、深まるナチュラルとコーディネーターの対立を非常に憂慮
していた。
 C.E.46年、ナチュラルでありながら地球を飛び出し、宇宙で生活を営む宇宙移民たちに新人類の可能性を見出したジオンは、
自身に従う側近とともにL2へと移住し、そこでニュータイプ思想を提唱した。
 この思想に惹かれ、多くの宇宙移民、地球在住者がL2に移住してくることになる。

 これがジオン公国成立へと続く道となった。

 政治家としては失敗に終わったジオンではあったが、思想家としては、かのジョージ・グレンをもっても及ばぬほどの影響力を
残す事になる。
 ジオンの死後、ジオニズム思想はデギン、ギレンら時の権力者により都合の良いものとして、ジオン公国のエリート意識を
助長させたものに変革されてゆくが、根源である全ての人類のニュータイプへの進化は、変えられることなく受け継がれてゆく。

 現在、このジオニズム思想が地球のナチュラルたちの間で広がり、ジオン公国への移住を望むものが増大していた。

 C.E.70年、5月20日。ザフトによるアフリカ侵攻作戦が開始される。
 マルコ・モラシム率いる潜水艦隊を中心にしたジブラルタル攻略部隊が、夜明けとともに出航。
 これに続いて、後に名声を上げるアンドリュー・バルトフェルドらの乗艦するレセップスを旗艦とする地上軍主力が
輸送艦隊を護衛しつつ、カーペンタリア基地を発進した。

 本来、カーペンタリアの正式稼動を持って行われるはずであったこの作戦が、この時期まで持ち越されたのは戦力の集結
を待つという事もあったが、NJ投下の際の暴走事件の処理にてこずったからである。

 当初は実行犯の処罰、管理不届きで部隊長の一時的降格とザフト内で秘密裏に処理するはずが、4月4日のギレン・ザビの
演説により、地球連合の国力回復を恐れたプラント市民が、ジオンとの対決姿勢を強めていったからである。

 これに慌てたのが評議会である。
 ザフトは自信を持って両面作戦の可能を説いたが、そんなもん信じられるわけが無い。
 第一、今回も作戦は失敗したようなものである。

 これ以上敵を増やすわけにはいかないと、評議員たちは必死に世論を抑え、ジオンとコンタクトを取り、地球連合構成国への直接の
支援だけはやめるよう、警告の艦隊展開と資源衛星(後のア・バオア・クー)引渡しと言う、土下座しながらの脅迫でこれを要請した。
 開戦の意図のなかったジオンもこれを呆れつつも受け入れ、物資支援は中立国のみ、特に義勇軍駐屯地に優先して行うことになる。
 当然、この本国の意図を察した司令官達により、これらの支援物資は速やかに周辺国に配られる事になるのだが。

 などといったことがあり、プラント本国がアフリカ侵攻どころではなかったのである。

 この作戦に投入された戦力は、ボズゴロフ級潜水母艦5隻、レセップス級地上戦艦3隻、ピートリー級地上戦艦8隻、
MSはAMF-101ディン30機、TFA-2ザウート50機、UMF-4Aグーン40機、TMF/A-802バクゥ20機、ZGMF-1017ジン60機と
ザフト地上軍の大半を占めるもので、色々とミスの続くザフト上層部のこの作戦にかける熱意が伺える。

 5月24日、レセップスら後続艦隊が剣呑な空気のスエズ運河を通過した翌日、先行していた潜水艦隊と、地球連合軍の
地中海艦隊が衝突。
 後に第一次カサブランカ沖海戦と呼ばれるこの海戦は、実戦に初投入した水中用MSグーンが猛威を発揮。
 反対に、NJにより原子力空母が使用不能となり、さらにはイージスシステムの無力化により主力水上戦闘艦は、
ザフトのMSの目視距離までの接近を許すことになり、なすすべも無く沈められていくばかりであった。

 この戦闘でザフトが受けた被害はほとんど無く、グーン3機が小破した程度である。

 この海戦で勝利したザフトは後続艦隊と合流すると一路、ジブラルタルを目指す。

 ジオンとザフト。ともにMSを次世代の主力兵器と考え、その戦術を考案しているが、その戦術ドクトリンは大きく異なる。

 ジオンが、MSを対艦戦闘用の一撃離脱に特化した兵器として考えていたのに対し、ザフトでは戦車、航空機、MAが行う全ての戦闘を
こなす万能兵器と考えていたためである。
 このジオンとザフトがMSに求めた性能を、それぞれのMSはよくクリアしいる。
 ジオンのザクは4週間戦争にてその性能をフルに発揮し、ザフトのジンはバッテリー以外の全てにおいてザクを上回る性能を持つ。

 また、両国の戦争指導も大分違っている。

 ジオンにおいてブリティッシュ作戦は数年がかりで綿密に準備され、その失敗により短期決戦プランが狂いかけたものの、世界樹での
大勝利をもとに外交手腕をもって終戦に至っている。
 反対に、血のバレンタインにより感情まかせで開戦に踏み切ったプラントは、いささか準備不足のまま長期戦の様相を見せている。
(オペレーション・ウロボロスが開戦後に立案される時点でおかしい。
 評議会はどう見ても場当たり的な対応しかできておらず、それを疑問に思っていない節がある。
 ナチュラルが自分達に勝てる訳ないとの思い込みであれば、その自信がどこから来るのかが謎である)

 この両陣営の現状に至った要因に、ミノフスキー粒子とニュートロンジャマーの相違点も挙げられる。

 繰り返し言うように、MSは元来長距離誘導兵器のいい的である。
 であるからこそ、ジオンはMSの展開はミノフスキー粒子散布下でしか行われない。
 ザフトのコーディネーターがいかに優れた技能でMSを操ったとしても、第一次ビクトリア攻防戦に見られるように、長距離ミサイルの
飽和攻撃に耐えられるものではない。

 これはNJの地球上完全展開により、レーダーが使用不能となったことでザフトのMSも、この問題をクリアし、第一次カサブランカ沖海戦の
勝利に見られるように、ようやくジオンのMSなみに猛威を振るう事となった。
 だが、NJの最大の目的は核兵器、核エンジン、原子力発電の使用を不可能にする事で、電波障害、レーダーの撹乱等の効果は副作用である。
(この副作用により、ザフトのほうでも初期にかなりの混乱が見られている)
 また、レーザー通信を使えば長距離通信も可能である。

 対するミノフスキー粒子は、一定量散布されるとその特殊電磁波効果により、この時代の電子戦装備を完全に無力化する。
 これにより通信はほぼ完全に無効化され、デジタルによる長距離観測も不可能となり、光学端末を備えるジオンのMS以外の兵器は、その性能をほとんど
発揮できなくなるのだ。

 で、何が言いたいのかと言うと、つまり、地球連合の主力戦車リニアガン・タンクは、ことザフトのMSを相手にするのであれば、
いまだ十全の戦闘力を発揮しうるのだ。

 カサブランカ沖での敗戦後、ザフトの目標がジブラルタルである事を察知した地球連合は、ジブラルタル方面に軍を集結させる。
 その数、主力戦車800両、その他戦闘車両1000両。
 多くの航空機も参加しており、この地にユーラシア連邦の総戦力の3割近くが集結していた。

 NJへの対応は投下後二ヶ月近くも経過していた為、レーザー通信であれば通信が可能な事ぐらい分かるものである。
 ただ、地中海艦隊は装備が装備だけに対応の取り様が無かったのだが、地球連合の主力戦車はNJからの影響は皆無であった。

 ジオンとの戦いでは目も耳も潰され、一方的に殴られるだけであったが、今回は両方ともに万全である。
 敗れればヨーロッパ本土への侵入を許してしまうし、ザフトにはNJによる死傷者、難民の恨みがある。
 ユーラシア連邦を主力とする地球連合ジブラルタル方面軍は、恐ろしく高い戦意を持ってザフトを待ち受けていた。

 5月30日、ジブラルタルに上陸したザフトのMSを、地球連合軍は砲弾の雨でもってこれを歓迎する。

「はっはっはっ、見たまえダコスタ君。我が軍のグーンがまるで的のようだよ」
「はっはっはっー? そんな場合じゃないでしょう! どうするんですか!」

「どうするも何も、……グーンとボズゴロフ級は下げるしか無いないねぇ。続いてディンで上から敵戦車隊を撹乱」
「え? は、はいっ! 了解!」

「ザウートは艦上から敵戦車隊に向かって砲撃。当たらなくていいよー、牽制、牽制」
「了解!」

「で、レセップスはこのまま前進。橋頭堡に突っ込んじゃってくれ」
「は、はい! 了解ー!」

「バクゥ隊出撃準備、できてる? 僕も出るよ」
「はっ! 準備完了しています!」

「じゃ、出るとしますか!」

 地球連合軍戦車部隊は、先行して上陸したグーンの撃退には成功するものの、連合の航空機を排除し制空権を握った
ディン隊に戦列を乱され、ザウートの援護を受けて突入してきたバルトフェルド率いるバクゥ隊に中枢を潰され、壊走する。
 総計1800両の戦闘車両のうち、無事バルセロナにたどり着いた車両は6割に満たなかったと言う。

 この戦いでザフトはジブラルタル攻略に成功するものの、MS48機を喪失、73機が損傷を負う大損害を受ける。
 また艦艇の撃沈は無いものの、レセップス級一隻が大破。
 本来であればジブラルタル攻略後、即座にヨーロッパ・アフリカ両方面に電撃戦を仕掛ける予定であったが、あまりの
損害の大きさに上層部はこれを断念。
 当面は周辺地域の制圧に勤しみ、戦力の回復と本国からの補充を待って、アフリカ侵攻作戦は再開する事となる。