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Zion-Seed_515_第10話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:12:22

 地球連合軍は善戦しながらも、じりじりとザフトのMSに押され後退していた。

 ジブラルタル陥落から2ヶ月、8月に入るとヨーロッパはピレネーまで押し込まれ、アフリカはバルトフェルド率いる
MS機動部隊に翻弄され、各地で壊滅。
 国力の差で、南アフリカ統一機構が理事国らに泣きつくが、増援を送ろうにも地中海はザフトの潜水艦隊の巣で、
大西洋からの輸送も安全ではなかった。

 幸いにして、地球連合軍の士気は依然高く、ザフトはオペレーション・ウロボロスの発動から4ヶ月が経過してなお、
マスドライバーの占拠、破壊は一つも成功していなかった。

 中立国を介してのジオンの支援もあり、エイプリルフール・クライシスの被害者は最初の混乱によるものが一番多く、
その後のエネルギー不足からなる餓死者、凍死者はほとんど発生しなかった(それでも1億人を超える死者が出たが)。
 また、難民の多くは中立国に流れ込み、地球連合は減少した国力の大半を軍備に費やす事が可能であった。
 これに対し、人的資源に資本の多くがジオンに流れ込む事に警鐘を鳴らすものも少なくは無かったが、何はともあれ
まずは目先のプラントとの戦いが全てである。

 ハルバートン准将は地球に降りると、すぐさまMSの必要性を訴え、MS開発計画の立ち上げを説いたが、ザフト相手には
現有戦力でもある程度の対処ができるため、有視界対応の戦車、航空機の開発のほうが優先されていた。
 無論、それはそれで正しくあったが、それは地上であればの話である。
 宇宙においては、最早有視界戦闘でMSに対応しうるMAの開発は不可能と考えていたハルバートンは、なおもMS開発の
必要を説くが、ユーラシア連邦のある将官がこんな事を言った。

「MSはもう、ジオンから買えばいいでしょう」

 確かにその通りである。
 一から開発するよりも、完成品を買ったほうが手っ取り早い。
 OS開発やパイロットの訓練も、既にあるところから借りてくれば簡単である。

 だが、そんな事冗談じゃない! という人物から待ったがかかり、大西洋連邦を中心としてMS開発計画はスタートする。
 待ったをかけた人物は、国防産業連合理事、ムルタ・アズラエルその人であった。

 ■ 盟主 vs 知将 ■

「よもや、貴方と手を組む事になろうとは、想像もしませんでしたよ」
「ハッ、僕もあんたみたいな無能と手を組みたくなんか無かったさ。サザーラント君が、是非にと言うから手を組むだけだ」

「……フゥ、ここで言い争っても仕方ありませんな。例の件、詳細を聞かせていただきましょう」
「(あんたが先に売った喧嘩だろうに……)そうですね、サザーラント君、書類を用意してください」
「はい、理事。こちらになります」

「……鹵獲したジンと、ジャンク屋から購入したザク。両者を徹底的に解析して良い所取りですか。動力炉はバッテリー式に?」
「そりゃ、地上にヘリウム3はありませんからね〜。ついでに融合炉の小型化自体が無理っぽいですね。例のミノなんたら理論が
ジオンの最高機密らしいですよ」

「開発はL3のヘリオポリス? 理事、これは……」
「ええ、モルゲンレーテとの共同開発になります。流石、オーブ。本当に抜け目がありませんよね。表で中立を謳いながら、
こうやって裏から兵器開発に勤しむ。ウチの会社もびっくりなぐらい、死の商人やってますよ」

「収束エネルギー砲の小型化に、フェイズシフト装甲にミラージュコロイド……」
「予算は最優先で回しましょう。その代わり、空の化け物どもを完全に駆逐するだけの、性能は備えて下さいよ?」

「……理事はプラントをどうするお積りですか?」
「僕がそれに答える必要がありますか? まあ、いいでしょう。僕としては、あの非常に目障りな砂時計ごと、きれいさっぱり
消えてもらうつもりですよ?」

「エネルギープラントごと、ですか?」
「ああ、あれですか。あれは、もういりません」

「いらない?」
「ええ、ジオンのL4の新造コロニー郡はご存知でしょう? あれ、じつは一部がエネルギープラントでしてね、エネルギー送信施設も
同じく建造中、流石に化け物連中ほどの性能は無いようですが。まあ、数で補うのでしょう」

「……」
「ご理解いただけましたか?」
「理事、そろそろお時間です」

「おや、もうそんな時間ですか? では、ハルバートン准将。G計画、お任せしましたよ?」
「……」

 オーブ連合首長国。

 南太平洋ソロモン諸島からなるこの国家は、他の国に比べても一際異彩を放っている。
 国是として中立を掲げるこの国は、先に崩壊した国際連合にも加わらず、地球上の国家のうち唯一ジオン公国を正式に承認していない。
 また、地上では数少ないコーディネーターが合法とされる国家でもあり、そのことから総人口も少ない諸島国家でありながら、
プラント、大西洋連邦に次ぐ、高い技術力を有している。

 連合首長国の名から分かるとおり、複数の首長家が国家の代表である。
 上院下院からなる議会は存在するものの、政府要職はほぼ全て五大氏族を中心とする首長家が独占している。
 また、国民もひどく政治に関心の薄いものが多く、オーブにおける民主主義はほとんど形骸化している。

 現在の代表首長はウズミ・ナラ・アスハ。

 「オーブの獅子」と呼ばれる大変に灰汁の強い人物で、極めて高い理想を持つ平和主義者である。
 それでいて政治家としてはかなりのやり手であり、ジオン独立戦争においてはジオンのコロニー落しを強く非難するが、結局国連には
加わらず、オーブ軍の消耗を避けている。
 また、プラント・地球連合間の戦争が始まると中立維持を宣言しながらも、大洋州連合からのプラントへの食料供給を、自国の
マスドライバー施設を用い一手に引き受けている。

 そして今回、地球連合とのMS共同開発でL3のヘリオポリスと、モレゲンレーテ社の技術を提供していた。

 ■ 薄紫な親子 ■

「ねえ、父さん? 今回の共同開発ってかなり危ない橋渡ってない? この間ミナ姫にお会いしたとき、ウズミ様について
すごく愚痴られたんだけど」
「かなり、ではない。いつプラントから喧嘩を吹っかけられても、おかしくはなかろう」

「……それは、ヤバすぎでしょう?」
「だからこそ、我らはココにいるのだろう?」

「そ、そうだったの? てっきりジオンを正式に承認して、コロニー建造事業に手を出すものと思ってたよ?」
「それもある。が、本命は最悪の事態に備えての準備活動だ」

「最悪って、プラントとの開戦?」
「それもある。そして、地球連合との開戦も考慮に入れておかねばならん」

「なんで、地球連合と?」
「少しは考えろ。ハワイを失い、東南アジアを拠点とできない地球連合がカーペンタリアを望む場合、我がオーブこそ格好の
中継地点だろうが」

「……なんだか中立維持なんて、できる気がしなくなったよ」
「だからこそのMS共同開発だ」

 10月、プラント理事国はジオンとの間に結んだ軍縮条約を破棄。
 状況が状況なだけに、ジオンも理事国らを非難することはせず、終戦後に改めて軍縮会議を開催する事を約束するに止めている。

 理事国らがジオンとの関係悪化の可能性を踏まえてなお、軍縮条約を破棄したのは、MS開発に伴いそれを運用する戦闘母艦の
開発の必要性に迫られたからである。
 この戦闘母艦の開発もモルゲンレーテ社との共同開発で、G兵器と呼ばれる試作型MSとともにヘリオポリスで秘密裏に
建造が進められていた。

 このときモルゲンレーテ社はオーブ政府からの指示で、G兵器開発に使われた技術を大西洋連邦には無断で転用、オーブ国産MS
の開発を同時に進めている。

 11月、アフリカ戦線でバルトフェルド隊が寡兵をものとせず、南アフリカ統一機構を主力とする地球連合アフリカ方面軍を
敗走させる。
 これによりビクトリア基地への進軍ルートを確保したザフトは、ビクトリア侵攻作戦を開始するが、それを恐れた地球連合は
海路、空路を駆使してアフリカに大量の増援を投入。
 ザフトも増援阻止の為、潜水艦隊による海上輸送阻止を目論むが、数が足らずにアフリカ上陸を許してしまう。

 一方、アフリカ上陸を果たした地球連合軍も、増援の半数近くはアフリカにたどり着くことなく海の藻屑となり、ザフトを
アフリカから叩き出すほどの戦力を集結できなかった。

 このため、再びアフリカ戦線はにらみ合いが続く事になる。