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Zion-Seed_515_第18話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:13:55

 プラントの一方的な宣戦布告により始まった、ジオン・プラント間の戦いはジオンの準備不足もあり、
ソロモンでの大規模な攻防戦の後は、制宙権を廻る小規模な戦いに終始することになる。

 また地上では、プラントが赤道連合ら3ヶ国に対しジオン軍の国外退去を勧告、三国を対プラント戦に
巻き込むのを嫌ったジオンは撤退準備を始めるが、赤道連合らはこのプラントの勧告に激怒した。
 内政干渉甚だしいと、プラントの思惑とは逆にジオンと軍事同盟を締結、プラントに対し宣戦布告する。

 思惑が外れたプラント評議会が動揺する中、ザフト地上軍は決して多いとはいえない戦力での二正面作戦を
強いられる事になる。
 この事態に、アフリカ方面軍の指揮を取っていたアンドリュー・バルトフェルドは、汎イスラム会議・赤道連合の
首都強襲作戦を立案、ジオンの主力が地上に降下する前にこの二国を降伏させようと目論む。

 作戦は12月26日から開始され、カーペンタリア・ジブラルタルから相当数の兵力が抽出されていた。
 それだけにザフトの進軍は凄まじく、28日にはジオン駐留基地のスエズ、シンガポールまで到達していた。

 赤道連合、汎イスラム会議ともに各地にMS部隊を配備していたものの、まだまだ練度が不足しており
開戦からここまで戦い続けてきたザフトの精鋭には敵うものではなかったのである。

 このときスエズ・シンガポールのジオン駐留軍の奮戦が無ければ、この二国は準備不足のまま首都までの進軍を
許していたかもしれない。
 それほどまでにザフトの進軍は速かったのだ。

 ■ 坊やと巨星 ■

「大したものだな、砂漠の虎とやらは。海路の味方を囮に直接首都を狙うとは……」
「はい、フェンリル隊、シュマイザー少佐らの活躍が無ければ開戦早々に汎イスラム会議が脱落するところでした」

「だが、なんとかザフトの速攻は凌いだ。シンガポールのカーティス大佐もザフトを押し返している」
「ですが、対岸の北アフリカ一体は完全にザフトのものになりましたな。東南アジアもインドネシア一帯はザフト
潜水艦隊のなすがままです」

「うむ、何より問題なのが練度不足とはいえ、砂漠用のD型ザクがあの4本足に手も足も出なかったことか……」
「ええ、ドム・タイプの配備が終わるまでは、こちらから攻めることは自殺行為ですな」

「トローペンの量産はもう始まっていたな?」
「はい、ですがある程度の数が揃うのは来月半ばまで待たねばならんでしょう」

「水陸両用のMSの開発も急がねばならん。それにしてもザフトめ、二正面作戦とは、それだけの自信があると
いうことか……」
「……そのようですな(とはいえ、焦りのようなものを感じたのも事実。さて……)」

 ジオン及び同盟国となった赤道連合ら三国の参戦により、地球圏の国家でプラントとの戦争に関っていないのは
オーブ連合首長国のみとなった。
 エイプリルフール・クライシスによるエネルギー危機を地熱プラントで乗り切り、コーディネイターとの
共栄による高い技術力をバックに、プラントと連合の間で中立と言う立場を利用しボロ稼ぎしてきたオーブで
あったが、同じく中立(とはいえいくらか連合より)のジオンが参戦した事で立場が微妙になっていた。

 また、国内でもプラントの暴挙に憤るナチュラルが増えており、コーディネイターとの間がギクシャクしつつある。
 ただ大半の国民はウズミ・ユラ・アスハの掲げる中立政策を支持しており、彼らにとって戦争は対岸の火事であり、
液晶画面の向こう側の出来事でしかなかったのである。

 しかし、世界は大きく揺れ動いており、三極化していた世界が、ジオンがプラントとの対決に流れた事で、
二極化しつつあったのだ。

 ■ 天空の姫と薄紫 ■

「やあ、ミナ姫。ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます」
「黙れ、ユウナ。その虚飾に満ちた口を閉じねばくびり殺すぞ」

「うへ、相変わらず容赦が無いね、ミナ姫は」
「ふん、相変わらずのニヤケ面だ、貴様は」

「で、僕をジオンのオーブ大使館から呼んだのは、何かあったんだろう?」
「そうだ、例のヘリオポリスの件でセイランとの協議が必要になった。それと、そちらの進展を聞きたい」

「うわ、Gがらみか……じゃ、先にこちらから。例のコロニー建造でいくらか政経界のお偉いさんとはお近づきに
なれたんだけど、肝心の総帥府の方々とはまったく接触できなくてね」
「では、進展はなしか……」

「いや、それが偶然ってのは怖いね。この間ズムシティを散歩してたら迷子にあっちゃってさ」
「何の話だ?」

「それでその子を案内してあげたら、なんと行き先がジオン政庁!」
「……」

「で、その迷子ってのが、これまたなんと総帥秘書でお礼に何かって言われたんで、駄目もとでギレン総帥に
会いたいんですけど〜って言ったんだよ」
「バカか、貴様」

「うん、まったくバカな話さ。こんなんで本当にギレン総帥に会えるんだから」
「会えたのか!!」

「それまでの苦労がバカバカしくなるぐらい簡単に会えたよ。一応、非公式な会談ってことになったけどね」
「……それで、言質は取れたか?」

「オーブが理不尽な理由で戦火に踏みにじられるような事があれば、我がジオンはあらゆる支援を惜しまないだろう。
ただし」
「ただし?」

「ただし、それはウズミ・ナラ・アスハ以外の人物が代表の座についている事が条件である」
「……それは、また」

「ま、体よく断られた感じだね。と言っても、ウズミ様ならジオンが支援を申し出ても突っぱねると思うけどね」
「そうだな……(今回の件、うまくやればウズミを排除できるやも知れぬ)」

「で、ヘリオポリスのGはどんな按配?」
「ああ、GATシリーズは中々の出来だ。少なくとも同じ技量の持ち主が一対一で戦えば、現行のMSでこれに敵う
機体はあるまい。まあ、問題はその技量なのだがな」

「まあ、そりゃね。で、それだけ? それならわざわざセイランを呼ぶ必要も無いんじゃない?」
「そう、ここからが本題だ。お前もA計画については知っているだろう?」

「A計画……ああ、あの国産MS開発計画か。たしか技術的な問題があって、今は計画を凍結していたはずだけど?」
「今回の連合との共同開発、実はこのA計画を連動して行っている。共同開発で得た技術を元に、と言えば聞こえはいいが、
要は技術盗用だ」

「……って、そりゃマズイよ! ただでさえバレたらプラントから敵視されるのに、その上連合からも!?」
「それは承知の上だ。なれど、我がオーブが中立を貫くにはMSという力が必要なのだ」

「……それ、ウズミ様は知ってるの?」
「無論。もっとも最近になってのことであろうがな。奴の取り巻きは計画を破棄しろとうるさいが、ウズミ自身は何も言わん。
おそらくこれを国防の要にするつもりであろうよ」

「……わかったよ。ウズミ様もご存知なら、セイランとして僕がこれ以上いう事は無いさ。プラント、地球連合両方から
戦争を吹っかけられる事を念頭に、ジオンに伝手を作っておくよ」
「ああ、頼むぞ」

「ところでミナ姫。ギナ君は? いっつも君にくっついているのに」
「ああ、ギナは今、ヘリオポリスだ」

 こうして、ジオン・プラント間の開戦という大事件を最後に、C.E.70年と言う幕を閉じる事になる。

 ジオンは現有戦力でプラントを攻略しうるギリギリの戦力を所持していたが、ソロモンでの痛み分けにより統合参謀本部は
ザフトの戦力を幾分過大評価してしまう。
 このためリック・ドム兇稜枷が終わるまでは、防衛ラインと地球航路の維持に専念し、戦力が整い次第プラント攻略を
行うこととなった。

 また、ジオン公国首脳部もプラントを討つ事にためらいは無かったが、そのためにジオンが対プラント戦の矢面に立つ
必要性はないと考えていた。

 これによりプラントは貴重な戦力回復の時間を得る事になる。

 プラントはなし崩しに始まってしまった二正面作戦に勝利する為、レイ・ユウキを中心にザフトの構造改革が始まる。
 この改革は、ソロモンでの敗因ともなったクルーゼら独断専行を好む前線指揮官を更迭し、単独での戦果にこだわる
ザフト兵に集団戦を強いるもので、ザフト内でも受けが悪かった。
 だが、ユウキの卓越した指導力によって訓練におけるカリキュラムは改革され、ソロモンの生き残りを中心に新たなMS
戦術が考え出されていく。

 ただし、クルーゼらの更迭は相次ぐ戦闘により兵士が不足していた事、なにより評議会の横槍で更迭は適わず後方もしくは
辺境任務に当てられるのみですまされてしまう。
 そして、兵員不足を解消するため評議会は訓練校での訓練期間の短縮を決定する。
 これを聞いたユウキ特務隊長は思わず天を仰いで嘆いたと言う。

 地球連合はようやく始まったジオン・プラント間の争いにニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 直接の圧力が減ったユーラシア連邦はジオンのザク改のライセンス生産を急ぐとともに、同機のバッテリー・タイプの
開発も進めていた。
 これはザク改の心臓部である融合炉がジオンから供与される分しかなかったため、ジオン・プラント間の戦いにより
供給量が激減した為である。
 また、随伴車両としてYMT−05を元に、ジオンと共同でYMT−06ヒルドルブ兇魍発。
 YMT−05で問題となった点を、ユーラシアの陸戦兵器技術で改良することで完成する。
 これらの配備を待って、ユーラシア連邦はジブラルタル攻略に焦点を当てる事になる。

 大西洋連邦では、予想通り始まったジオンとプラントの抗争にアズラエルはイヤッホー! と哄笑し、G兵器の量産で
コーディネイターを一掃する事を夢想して、部屋の中をゴロゴロと転げまわった。

 そして、オーブは得意の二枚舌外交(各首長家が独自に動くので三枚にも四枚にもなる)でG兵器に使われたあらゆる
技術を無断で盗用、国産MS・ASTRAYシリーズを開発する。
 無論、バレれば即開戦ともなりかねない大西洋連邦への重大な裏切り行為であったが、幸いにしてこれは発覚せずに
終わることになる。

 C.E.71年、1月25日。

 様々な思惑が交錯する中、L3宙域ヘリオポリスにて小さな火種が点くことになる。
 そして、その火種が世界を巻き込む大火となるとは、この時、誰も予想してはいなかった。