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Zion-Seed_515_第19話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:14:04

Zion-Seed 第19話 PHASE-01『偽りの平和』

 ■ ■

 C.E.70年1月のジオン独立戦争から始まり、続く地球連合・プラント間の戦い、そして12月のプラントの
ジオンへの宣戦布告により、世界は戦争一色に包まれていた。
 それは年が明けたC.E.71年になっても変わらなかったが、唯一戦火から離れた国家も存在していた。

 自称中立国、オーブ連合首長国がそれである。

 エイプリルフール・クライシスの惨禍を最小に抑え、一連の戦争にも加わらなかった事により国民は平和を謳歌していた。
 どれくらい平和かと言うと、すぐ隣の宙域でザフトとジオンが小競り合いなどしていても、中立だから攻めて来ないと
資源コロニー『ヘリオポリス』の住民がのんきに地上の戦争談義に花を咲かせる事ができるぐらい平和である。

 1月25日。この日も何一つ変わることなく、『ヘリオポリス』の住民たちはそれぞれの日課を過ごしていた。
 カレッジの学生は見慣れないスーツの人達を物珍しく思いながらも研究室へと急ぎ、モルゲンレーテで働く社員は
今日の機動テストに備え、G兵器のチェックに余念が無かった。

 商船に偽装した連合艦がヘリオポリスに入港する。
 G兵器のテストパイロットを送り込むのと同時に、新型艦アークエンジェルの護衛を行うためである。
 このとき二隻のザフト艦に追尾されていたが、艦長は部下の不安を払うかのように笑う。
 いかなザフトとて、中立国に喧嘩を売るはずがあるまいと。

「中立国、でありますか。聞いて呆れますな」
「ハッハッハ、だがそのおかげで計画もここまで来れたのだ。オーブとて地球の一国という事さ」

 だが、そんなことを気に留めぬ人間もまた存在するのだという事を、この後すぐ彼らは思い知る事になる。

 ■ 招かざる客 ■

 仮面の男、ラウ・ル・クルーゼは腹の底からこみ上げてくる笑みを抑えるのに苦労していた。

 ソロモン攻防戦での責任を取らされ、辺境任務に命じられ、しかも新規補充パイロットはザフト・レッドとはいえ、
扱いの難しい評議員の子息である。
 この扱い辛い赤服たちを部下の『黄昏の魔弾』に押し付けると、なんとか中央に返り咲く戦果を上げようと、自身を
現状に追いやった憎きレイ・ユウキを顎で使ってやる事を夢想しながら、必死に情報を収集していた。

 その甲斐あってか、クルーゼは『ヘリオポリス』でのMS開発にザフトで真っ先に気付く事に成功する。

 ソロモン以降、ユウキ特務隊長の改革により前線指揮官による独断専行は少なくなりつつあったが、そんなものを
気にするクルーゼではない。
 本国への連絡は一応行うが、その返答を待たず自身の部隊のみで地球連合製MSの奪取を立案する。

 この計画に顔を顰める副官のアデスであったが、長い付き合いでクルーゼが一度決めたら梃子でも動かないのは
良く知っている。
 ならば、少しでも計画が成功に近づく為に努力するのが副官としての務めだと、クルーゼとともに計画の細部を
詰めるのであった。

「そう難しい顔をするな、アデス」
「しかし、評議会の返答を待ってからでも遅くは無いのでは?」

「遅いな。私の勘がそう告げている」
「……(アンタの勘はいまいち当てにならんのだが……)」

「ここで見逃さばその代価、いずれ我らの命で支払わなければならなくなるぞ」

 ■ 超人類(笑)■

 この日、キラ・ヤマトの気分は非常に鬱屈していた。

 寮を出る前に、偶然点いていたTV画面で丁度占いをやっていたのだ。
 そして、その占いではキラの運勢は最低であった。仕事をやっても上司には認められず、友人とは齟齬をきたし、
人生における大きな転機を迎えると言う。ちなみにラッキーカラーはピンクであった。

 こうして元々あまり高くないテンションが最低値まで下降したことにより、カレッジに行く気も失せたため近くの
公園でゼミの課題をやることに決めたのであった。

「でも、占いの通りならこの課題もいい評価はもらえないってことかな?」

 いや、しかし、でも……などブツブツと言いながらもキラの右手は超高速でキーボードの上を動き回る。
 
「キラ!」

 と、呼ばれた方を向くと同じゼミの友人、トール・ケーニヒとミリアリア・ハウのカップルが近づいてくる。
 どうやらゼミのカトウ教授が彼をお呼びであるようだ。
 また課題の追加か、とうんざりする。すると課題の暇つぶしに流していたニュースにトールが食いつく、どうやら
カオシュン戦線が危ないらしい。
 一週間前のことなのでもう陥落しているんじゃないかと、トールが危惧する。
 ミリアリアも距離が近い事に不安を感じたのか、表情を曇らせる。

「ああ、それは心配ないでしょ。近いったってウチは中立だぜ、オーブが戦場になることはまず無いって」
「そう? ならいいけど……」

 二人の会話を聞きながら、キラは今朝の占いを思い出す。
 この後、トールやミリアリア、あと二人のゼミの友人との仲に齟齬をきたすと言うのだろうか?
 上司からの評価や、人生の転機はともかく、友人間の仲は悪くしたくないものだとキラは思う。

 そうして、ふとプラントにいる幼馴染の事を思い浮かべた。

 ■ ■

「なんという平和な事だ、まったく」

 新造艦の乗組員として派遣された連合士官たちは、ヘリオポリスの呑気な学生達に眉を顰めながらも、モルゲンレーテで
秘密裏に建造されているアークエンジェルの元へと向かう。

 ナタル・バジルール少尉とアーノルド・ノイマン曹長。
 この後、数奇な運命をたどる事になる二人は、この先何が待ち受けているかなど知るよしも無かった。

 ■ キラと愉快な仲間たち ■

 キラたちが研究室につくと、奥のパソコンでゼミ仲間のカズイ・バスカークがすでに作業を始めていた。
 いつもの調子でトールが挨拶を交わすと、奥の棚からゼミ最年長のサイ・アーガイルが姿を現す。

「あ、キラ、やっと来たか」

 その声に、ウエッとキラは顔を顰めた。教授がいないところを見ると、サイがなにやら伝言を受けている事を
感じたからである。
 ふと横を見ると見慣れぬ客がいた。
 真っ先に部屋の奥へと進んでいったトールが、カズイに客について尋ねる。

「誰?」
「教授のお客さん。ここで待ってろって言われたんだと」

 とりあえず、客を思考の外に追い出しキラは教授の行方を尋ねる。

「これ預かってる。追加とかって」
「うへぇ〜」

 予想通りであった。内容についてサイが尋ねるが、正直キラにとって内容などどうでも良い事であった。
 
「とにかく、プログラムの解析さ」

 ふーん、とこれまたサイもあまり興味がなさそうにキラの答えにうなずいた。

 その後、タクシー待合所での一件をトールが茶化すように持ち出し、キラが慌ててそれを止めようとする。
 ミリアリアは笑いながらそれを嗜めるが、あえて止めようとせずこの状況を楽しんでいるのは間違いなかった。
 サイは不思議に思いながら3人のやり取りを見やり、カズイはミリアリアから耳打ちされニヤニヤしながらそれを
見守っていた。

 ■ ■

 秘密裏にヘリオポリス内に入り込んだザフト兵が着々と任務を遂行していた。
 新造艦のドックに次々と爆弾を設置し、続いて機動兵器の奪取に向かっていた。

「時間だ」

 そう、クルーゼが笑みを浮かべた。

 ■ 鷹と隼 ■

「なーんか、嫌な予感がしないか?」
「ええ、同感です」

「ようやく連合にもMSが、って言うかユーラシアの連中はジオンのザクを使ってるけどな!」
「正確には大西洋連邦の国産MSですね。ユーラシアは国産を諦めてまで、ライセンス生産で数を揃えてウチの
先を行くつもりでしょう」

「たしか、ジオンの教導隊がわざわざ出向いてるって聞いたが?」
「おそらく事実です。ジオンとしても地上での戦訓は多ければ多い方が良いでしょうしね」

「ふーん、そんなもんかねぇ……しっかし、このざらつく感じ、不快だな」
「ええ、同感です」

 二人が苦笑したその瞬間、アラートが鳴り響く。

「やれやれ、俺は一旦上にあがる。お前は部下どもの指揮を頼む!」
「了解!」

 ■ ■

 ヘリオポリスからの警告を無視し、クルーゼの指示とともに、3機のジンが発進した。

「敵は?」
「二隻だ。ナスカ及びローラシア級。電波妨害の直前にMSの発進を確認した」

「ちぃ、ルークとゲイルはメビウスにて待機。以後は副長の指示に従え」

 艦橋に上がったフラガが状況を確認しつつ部下に指示を出す。偽装された連合艦も慌しく動き出した。

 ドックのアークエンジェルでは艦長がザフトはヘリオポリスに任せつつ、落ち着いて作業を進めるように指示。
 同時に、G兵器の搬送も急がせるように指示する。

 対するザフト艦からも、ジンが更に3機出撃する。

「港湾部を叩いたら一気に抑えるぞ」
「ハッ!」

 クルーゼがそう指示を出し、先行するジン部隊がヘリオポリスの無人機動ポッドとの戦闘に入るその瞬間、ドックに
仕掛けられた爆弾が一斉に爆発した。

 ■ ■

 メビウス・ゼロとメビウスが2機づつ出撃し、連合艦もヘリオポリスから出るが、それとほぼ入れ違いでザフトのジンが
侵入する。
 瞬く間に港湾部は制圧され、3機のジンはヘリオポリス内部へと侵入していく。

 そのころドックの破壊に成功したザフト兵は、搬送される連合の機動兵器を視認していた。

「あれか、クルーゼ隊長の言ったとおりだな」
「つつけば、慌てて巣穴から出てくるって? やっぱり間抜けなもんだ、ナチュラルなんて」

 3機のジンは先発隊からの連絡を受け取り、工場区への進路を急ぐ。

「流石、イザークだな。早かったじゃないか」

 専用機が修理中のため、通常のジンで出撃している『黄昏の魔弾』ことミゲル・アイマンは笑みを浮かべる。

 ■ ■

 宇宙では2機のメビウス・ゼロが奮戦するも、メビウス2機が猪突しあっという間にやられてしまう。

「だー!! これだから新入りは! ちゃんと指示を聞けっての!」
「申し訳……ありません。手綱を捌ききれませんでした……」

「いや、お前のせいでもねぇ……くそ、訓練課程がゆるすぎだ!」
「はい……」

 また、ヘリオポリス内でもアークエンジェルとの交信が途絶した為、G兵器を搬送していた部隊も混乱しつつあった。

 その状況下で内部に侵入したジンの攻撃を受けたのである。
 ある意味、形だけの護衛部隊はあっという間に沈黙してしまう。

「ザフトの! X-105と303を起動させて! とにかく、工区からだすわ!」
「わかりました」

 G兵器開発に携わっていた連合士官、マリュー・ラミアス大尉はそう指示を出し駆け出した。

 ■ バカ姉弟 ■

 一方、キラたちカレッジの学生はザフトの攻撃を受けた事を知り、避難を開始する。
 
 このとき客人が避難をせずに奥に進んでしまった為、キラが追いかけることになった。

「工場区に行けば、まだ避難シェルターが!」

 こうして工場区に逃げたキラたちは、銃撃戦の真っ只中に突っ込む事になる。
 なにやらザフトのMSに似た機動兵器をめぐっての戦闘のようだった。
 これが人生の大きな転機ってやつか? とキラはひどく冷静に思考していた。

「お父様の裏切り者ー!」

 途中で女の子と分かった客人が絶叫するが、正直それどころではない。
 状況はよくわからないが、女の子が叫んだ事で銃口がこっちを向いたのである。
 キラは女の子を引っ張って、慌ててシェルターに向かって駆け出した。

 ようやくシェルターについたキラたち2人であったが、残念ながらそのシェルターには一人分しか空きが
無かったのである。

「いいから入れ。ぼくは向こうへ行く。大丈夫だから、早く!」

 しかたなく女の子をシェルターに押し込むと、キラは反対側のシェルターに向かって走り出すのであった。

 ■ ■

 工区での戦闘が続く中、イザーク・ジュールら3人はG兵器の奪取に成功していた。

「アスランとラスティは? 遅いな……」
「フッ、奴なら大丈夫さ」

「ともかくこの3機、先に持ち帰る。クルーゼ隊長にお渡しするまで、壊すなよ」
 
 フフンと笑いながらイザークは器用にG兵器を操ると、ジンの護衛を受けながら母艦へと帰還する。
 地球連合、なかでも大西洋連邦の威信をかけて建造されたG兵器は、早くも3機がザフトの手に渡ってしまった。

 工区での戦闘は激しさを増していた。

「危ない! 後ろ!」

 キラのその叫びに反応したマリューは、コーディネイター顔負けの射撃術でもって狙撃を行おうとしていたザフト兵を射殺、
キラに一瞬目をやるのものの交戦を続けていた部下を射殺したザフト兵を、今度は拳銃でもって見事に射殺する。すごい。

 来い! と、マリューに呼ばれたキラであったが、できれば関りたくないので向こうに避難するのでお構いなく〜と
逃げようとするが、そこのシェルターはすでに無いようであった。

 うへぇと思いつつ、キラは指示に従い機動兵器に降りる。

 そんな乱戦の最中、ザフト・レッドのラスティ・マッケンジーが戦死。
 ブチ切れたアスラン・ザラが突貫し、連合兵士を一掃する。切れたアスランは無敵である。

 残るマリューに対しても、その驚異的射撃術を見せ付けるが、おっぱい神の加護を受けた彼女へは通じず、右肩に掠らせるのが
精一杯であった。
 直後に弾切れである。さすがおっぱい神、巨乳・美乳への加護は伊達ではない。

 うぬぬ、とナイフにて止めを刺そうと接近するアスラン。

 そこに立ちはだかるのが我らが主人公、キラ・ヤマト。

「……あすらん?」

「っ! キラ!?」

 見詰め合う2人。残念ながらこの世界に負債の加護は無い。
 この至近距離でコーディネイターを上回る脅威の射撃術を持つマリューが的をはずすわけが無い。

「うおっ!」

 だが、彼女の放った銃弾はアスランの右肩をわずかに掠るだけに止まる。
 危なかった。右肩を負傷してなければ間違いなくアスランはここで死んでいた。
 おそらく、ピンクの電波神の加護でもあったのだろう。ハロの分ぐらいは……。

「てい!」
「うわっ!」

 アスランが離れたるのをボーと見ていたキラは、マリューにコクピットに押し込まれる。
 どこかの燃料が引火したのであろう、工区内が炎に包まれていく。

 炎の中でX-105が力強い駆動音を出しながら立ち上がった。

 ■ 赤い彗星 ■

「中立コロニーで戦闘だと? 気に入らんな、ザフトのやりようは……」
「はい、レーザー通信にて全方向にSOS信号が出されています。どうしますか、少佐?」

「ふむ、ザフトにいいようにされるのは好みではないな。近くに僚艦は?」
「はい、シーマ中佐の『リリー・マルレーン』、エリオット大佐の『ポータル』が巡航中です。ですが、ヘリオポリスに
一番近いのは我々ですね」

「そうか。では、その2艦に通信を。我々はヘリオポリスへと先行する!」
「了解!」