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Zion-Seed_515_第22話

Last-modified: 2008-02-24 (日) 12:52:11

Zion-Seed 第22話 PHASE-04『サイレントラン』

 ■ 彗星と蜉蝣とレムおじさん ■

「……以上がヘリオポリス崩壊の顛末です」
『おやおや、コレはまたひどい……』
『少佐、住民の避難状況は? なんなら輸送艦の手配もしなきゃならないよ』

「一応ほとんどの住民がシェルターへの避難を終えていたようです。救命艇回収用の輸送艦の手配お願いできますか?」
『お役所仕事は大佐に任すよ』
『OK、任されよう。ハッハッハッ、これでオーブへの外交カードが一枚増える♪』

「ありがとうございます」
『しっかし、アンタがしくじりをやらかすとは珍しいね』
『中佐、若いときの失敗などあって当たり前、要はいかに失敗から学ぶかだよ』

「では、これより我が隊は救命艇の回収をおこないます」
『フフッ、自分を騙せないような嘘はつくもんじゃないよ?』
『そうだね。後のことは我らに任せて少佐はなすべき事をするといい。宇宙でコロニーを破壊するという事が、どういう
事態を引き起こすか、愚か者によく思い知らせるように』

「……ご配慮、感謝します。これより我が部隊はザフトの追撃に移ります」
『叩きのめしてきな!』
『たか〜い授業料を払わすように♪』

 ■ 変態仮面 ■

「このような事態になろうとは、いかがされます? 中立国のコロニーを破壊したとなれば、評議会も……」
「地球軍の新型兵器を製造したいたコロニーが、どこが中立だ」

「しかし……」
「住民の殆どは脱出している。さして問題はないさ、血のバレンタインの悲劇に比べれば、な」

 こう言われるとアデスとしても返す言葉は無い。
 それほどまでに血のバレンタイン事件はプラント住民のナチュラル憎悪の元であった。

「敵の新造戦艦の位置は、つかめるか?」
「……まだ、追うつもりですか?」

 オペレーターの芳しくない返事を聞きながら、アデスは隊長のクルーゼがまだ地球軍の新造艦を追うつもりである事に
驚いていた。
 こちらにはもうMSが無いと告げると、自信満々で奪取機体を用いると返答される。
 再び声に詰まるアデス。
 データを取れればもうかまわんさ、と軽く言うクルーゼだが、その場合このヴェサリウスがプラント本国に帰還できな
ければ意味がない。

「帰還すべきです。地球軍相手であれば奪取機体を用いての戦闘も可能でしょうが、ジオンも相手となればこの情報を
本国に持ち帰るのを優先すべきです」
「……」

 クルーゼは怯むことなく奪取機体を用いてのAA追撃を行おうとしていたが、ジオンの介入により事態はそれどころでは
ない。
 しぶるクルーゼであったが、アデスにこれ以上隊のザフト・レッドを失うと評議会の査問ではすみませんよ? と言われ
ると、流石にこれ以上は無理か……と溜息をついた。

「この宙域より離脱する。ガモフにも通信を送れ、撤退だ」

 ■ ■

 ヴェサリウスへと帰還したアスランは通路の窓から外を見やり、崩壊したヘリオポリスの残骸を眺める。
 脳裏に浮かぶのは連合のMSに乗る幼馴染の姿。

「バカヤロウ……なんで利用されているだけってのがわからないんだ」

 そう呟き、歩を進める。
 ロックを解除し部屋へと入る。いつもアスランと会話を交わしていたラスティはもういない。
 私物がまとめられ、ベッドの上に置かれているだけだ。

 それを確認し、力なくベッドに倒れこむアスラン。
 脳裏に浮かぶのはラスティに、先の戦いで失った3人のパイロット達。

「ラスティ……ミゲル……」
「ん? 呼んだか?」
「……うぇおぁーーーーーー!?」

 その声に驚いてベッドから飛び上がる。すると頭と腕に包帯を巻いたミゲルが、扉に寄りかかるようにしているではないか。

「ミ、ミゲル……生きて?」
「おう、足はついてるぜ……って、勝手に殺すなよ」

 そう言ってミゲルはにやりと笑う。
 どうやら赤い彗星に機体を真っ二つにされたとき、咄嗟に機体をひねってコクピットへの直撃を避けたらしい。
 器用なものである。

「ま、セーフティーシャッター様様ってワケさ」

 ■ またまたまた超人類(笑) ■

 宇宙空間に放り出され、ヘリオポリスが崩壊していくさまをリアルで見せられたキラは恐慌状態に陥っていた。

「こんな、こんな……」
『X-105ストライク、応答せよ! X-105ストライク、聞こえているか? 応答せよ! X-105ストライク……』

「ヘリオポリスが……壊れて……どうして……」
『X-105ストライク、X-105ストライク、キラ・ヤマト! 聞こえていたら、無事なら応答しろ!』

 通信から流れるナタルのかなり必死な呼びかけにも、しばらく反応できなかったキラであったがようやく正気に返り、AAへと
返信する。
 その返事に胸をなでおろすナタル、一息で気を取り直しキラに帰還するように指示を出した。
 ナタルの指示を聞いたキラは、崩壊したヘリオポリスを見て両親の無事を祈る。
 そして機体を動かそうとした時に救難信号をキャッチする。

「あれ、ヘリオポリスの救命ポット!?」

 ■ ■

「ただいま帰還しました」
「おう、お疲れさん。やっぱ、赤い彗星は怖いねえ、生きた心地がしなかったぜ」

 一足先にメビウス・ゼロはAAへと帰還していた。
 現在、AAには佐官が不在で4人の尉官しかいない。また下士官含めて十数名でこの巨艦を動かすのは、無謀としか言い様が
なかったが、それでもやらねば生き延びれなかった。

「大尉、本艦はまだ戦闘中です!」
「お、悪い悪い。ザフトとジオンの動きはつかめそうか?」

 いつものように部下を出迎えに艦長席を離れたムウをマリューが叱責する。
 悪い悪いと頭をかきながらムウはザフト及びジオンの動きを尋ねるが、返答は芳しいものではなかった。

「どうしますか? 大尉……」
「また攻撃受けたらどうしようもねえもんな〜、最大戦速で振り切るってのは? かなりの高速艦なんだろ?」
「ですが、隊t……艦長代行、ザフトにはナスカ級がいますし、ジオンも赤い彗星の母艦はザンジバル級です。振り切るのは
きびいしいのでは?」

 AAの艦橋ではCICにつめるナタル以外の士官3人が無い知恵を絞って、今後の方針を協議していた。
 所謂ハルバートン派のマリューは一刻も早く地上への降下を考えていたが、ムウは降伏もありなんじゃない? と苦笑しながら
ジオンへの投降も一つの道だと提示する。
 だが、AAにG兵器は地球軍、中でも大西洋連邦がその技術を結集してのものである。
 初期から開発に関ってきたマリューには投降は受け入れられるものではなかった。
 中尉としても降伏は好ましいものではなかったが、では代案は? と聞かれれば良い案は全くなかった。

「なんだと!? ちょっと待て、誰がそんな事許可した!」

 三人の話し合いはナタルの声により中断される事となった。
 マリューの問いかけに、ナタルはX-105ストライクが帰還したことを告げる。
 そして、その際に救命ポットを保持しているという事を。

 ■ ■

『認められない!?』

 漂流していた救命ポットを運んできたキラは、ナタルの返答に憤る。
 推進部が破損し、漂流していた救命ポットを放り出せと言うのか!? キラの地球軍に対する不信は絶賛上昇中であった。
 
「すぐに救援艦が来る! AAは今戦闘中だぞ、避難民の受け入れなどできるわk……」
「いいわ、許可します! よろしいですね、艦長代行?」
「お、おう。許可するぜ〜」

「ラミアス大尉、艦長代行?」
「今こんな事でもめて、時間をとりたくないの」
「収容、急げよ〜」

 X-105ストライクの収容作業がおこなわれる中、今度はナタルも交えてAAの今後の方針を協議する事となった。

 マリューが再びAAとX-105の重要性を説き、大西洋連邦司令部までの搬送を行わなければならないと力説する。
 その言葉に2人のパイロットの内1人は頷き、今は艦長代行を務める方もしゃあねえかー、と同意する。
 三人の上官の意見が一致したところで、ナタルがアルテミスへの入港を具申する。

 現在、地球連合の宇宙で唯一の軍事拠点であるアルテミスは、ジオンから地球を挟んで反対側のL3に存在するだけに
ザフトからはうざったく思われながらも、距離的な問題で攻略対象となる事はなく、地球連合宇宙軍再建の拠点として
存在していた。
 AAの現状として、物資の積み込みも途中であり、ここから地上への降下など現実には不可能である。
 マリューは艦に識別コードがないことから少し難色を示すものの、他に手段がない以上どうしようもない。

「傘のアルテミスか〜、行くっきゃないかね」
「はい、事態はユーラシア連邦にも理解してもらえると思われます」

「いや、そりゃ何とかなると思うよ。たしか今、あそこにゃサザーラントのおっさんがいたはずだ」
「サザーラント大佐がですか? 相変わらず神出鬼没ですね、あの人」
「……あの血のバレンタインの?」

「そ、色々と悪名高いブルーコスモス盟主の懐刀だ。俺が心配してんのはアルテミスまで行けるか? ってこと」
「識別コードさえあればジオンの攻撃はないんですけどね」
「しかし、今はそれを言っても……」

 いや、それは分かっている。と、ムウはナタルの言葉をさえぎる。

「それでも、俺個人としてはジオンとは二度と戦いたくなかった、てことさ」

 ■ ■

 救命艇を艦内へと運んだキラはX-105をハンガーに固定すると、コクピットから出て救命艇から引き上げられる人々の
様子を伺っていた。
 すると中から出てくる見知った顔発見、研究室でトールにからかわれる原因となった件のフレイ・アルスターではないか。
 唖然としているキラを横目に、懐から這い出した謎の航空力学を駆使して飛行するペットロボ・トリィが、アスルター嬢
目掛けて突っ込んでゆく。
 キラは慌ててトリィを追いかける。

「まてっ(くそ、何でこんなに言う事聞かないんだコイツ!)」

 製作者のアスランの拘りなのか、このペットロボやたらと行動が奔放でキラも振り回される事が多い。
 しかも大概、ろくな結果にならない事が多いのだ。

「? あっ、あなたサイの友達の!」

 トリィの声に気付いたアルスター嬢がキラの方を振り向くと、地獄に仏を見たような顔でキラへと抱きついてきた。
 フ、フレイ!? と慌てた声を出すキラ、だが内心では密かに憧れていた少女に抱きつかれ、ヨッシャ役得!とガッツ
ポーズである。
 そいえば彼女の服ってピンクじゃん、占いのラッキーカラーってこのことかな〜、などとちょっと浮かれていた。

 友人とはぐれ、かなりテンパっているアルスター嬢を宥めながら、サイやミリアリアが乗艦していることを彼女に
告げるキラであった。

 ■ ■

「んじゃ、ラミアス大尉後は頼む。俺のゼロの修理もある程度済んだみたいだし、調整しておきたいからな」
「了解しました。艦長代行代理、謹んでお受けします」

 艦長代行代理って変な話ですね、と苦笑するマリューに、まったく、と肩を竦めるムウ。
 アルテミスへの進路を決定したAA、最悪の事態に備えムウは一旦艦長職をマリューに譲り自機の調整に向かう。
 彼の部下は最後までマリューが艦長になるのを渋っていたが、ナタルが固辞したため仕方なしに承認していた。

「しっかし、なんでお前、ラミアス大尉が艦長になるのにあんなに反対なの? 俺もゼロに専念した方が生還率上がり
そうだが」
「……技術士官に指揮を執らせるなんて正気ですか、隊長?」

「もちろん正気だぜ。それに、大尉がこの艦の事に一番詳しいんだ、妥当じゃないか?」
「まともな軍事教育を受けていない人間に命を預けたくはありません。それにスペック厨に戦闘はできませんよ」

 そんなもんかねぇ? と呟くムウ。
 この手のことを深く考えないのがストレスのない生き方なのだろうか? 中尉はムウの隣を歩きながらそんな風に
考えていた。

「アルテミスまでのサイレントラン……およそ2時間ってところか、後は運だな……」

 ■ 赤い彗星 ■

「ドレン、どうだ? 追いつけるか?」
「ナスカ級のみですと厳しかったかもしれませんが、あちらにはローラシア級もいます。あと1時間ほどで追いつけますな」

 艦橋で航路図を見ながら部隊長のシャアと艦長のドレンが作戦を練っていた。
 現在、“赤い”ザンジバルは全速でクルーゼ隊を追撃中である。
 艦橋にはシャアとドレンのほかにはブリッジクルーのみで、他のパイロットは乗機の整備中である。
 いや、マリオン・ウェルチ少尉はいまだに公国軍最高司令官令嬢の話し相手を努めているが……。

「しかし、素直に引くとは思わなかったな。連合の新型艦を追うと踏んでいたのだが……」
「ええ、一石二鳥が狙えると思ったのですが……スン少尉の進言がなければ空振りに終わるところでしたな」

「まったく、ララァはかしこい」

 当初、シャアはクルーゼが連合の新造艦への追撃を行うと予測し、アルテミスへの進路をとろうとしたのだが、その直前でララァ・スン少尉がザフトが撤退すると進言したのだ。
 普通であれば一回の少尉の言う事など気にも留めないのであろうが、彼女は幾多の戦果をたたき出している公国軍最高峰のニュータイプである。
 彼女の言に全面的な信頼を置いているシャアとドレンは進路をプラント本国へと修正する。
 その結果、ヘリオポリスの残骸でできたデフリ帯を抜けた時点で、ザフトのNジャマー反応を捕らえる事に成功していた。

「では第一種戦闘配備知らせ!」
「了解! 総員第一種戦闘配備!!」

「今回は私が単機で先行する。あの2人はエルメス2機の護衛だ。アウトレンジでけりをつけるぞ!」
「了解、ご武運を」

 ■ ■

 避難してきたヘリオポリスの住民が続々とAA居住区に腰を落ち着けていく。
 そんな中で一足先にここの住人となったキラたちは、ある程度事情を知るだけにこの先の動向に不安を感じていた。

 戦闘の言葉にアルスター嬢が慌てふためき、ミリアリアに窘められる。
 それにしてもかなり究極の選択であろう、戦闘行動中の戦艦に乗艦するのと、壊れた救命艇に乗ると言うものは。

 一旦自分達が落ち着くと、今度は肉親の行方が気になってくるものである。
 親ば無事だろうか? と心配するトールたちに、サイが年長者らしく状況を踏まえながら無事だろうと告げる。
 希望的観測ではあったが、ないよりはましであろう。

「キラ・ヤマト」

 そこに空気の読めない男が参上である。
 呼ばれて返事をするキラに、整備班のマードック軍曹が怒っているぞ〜と言うムウ。
 自分の機体と言われて困るキラ、成り行きで乗っただけなのに整備しろとはあまりに理不尽すぎる。
 しかもまるで自分が軍属扱いではないか、そう言って反論するキラに、

「いずれまた戦闘が始まったとき、今度は乗らずに、そう言いながら死んでくか?」

 それまでの軽薄さが嘘のように、まじめな口調でムウが尋ねる。

「子供にそんな事まで押し付けるほどに人がいなくて?」

 そこに後ろから声が掛かる。
 ようやく負傷者の治療の手伝いから開放されたセイラさんである。

「仰るとおり、今この艦を護れるのは俺ともう1人のMAパイロット、そしてこの少年だけなんですな、残念な事に」

 セイラさんのきつい視線に晒されながらも軽口を叩けるあたり、エンディミオンの鷹の名は伊達ではないと言う事だろう。
 あっさりと手の内を晒すムウに呆れたセイラさんであったが、すぐに気を取り直すとムウと向かい合う。

「正直ですのね。……では、私に何かお手伝いできる事はないかしら? 人手が足りないのはパイロットだけではないのでしょう?」
「……そりゃ、手伝ってくれるのであれば歓迎しますがね。よろしいんですか?」

「ええ、オーブの理念は嫌いではないけれど、なにもせずに死ぬのは好みではないわ。生きる努力は常にすべきでしょう?」
「ご立派ですな。いや、皮肉でなく本心ですよ。歓迎しますよ、それが美人なら尚更だ」

 そういってにやりと笑うムウ、怒涛の展開に呆気に執られるキラに、できる力があるならやるべきだろ? と言い残し、セイラさんを案内するために立ち去る。

「キラくん、でよかったかしら?」
「あ、はいっ!」

「あの人はああ言っていたけれど、あなたが戦わなければならない理由はないわ。どう生きるかはあなた自身が決めることですもの。しっかり考えて、決して後悔だけはしないようにね」

 でも時間はあまりないわよ、と告げてムウの後をついてセイラさんは去っていった。

「僕は、僕は……」

 ムウの言葉に、セイラさんの決意を見せられキラは大いに悩む、だが戦いたくはない、相手は幼馴染のアスランかもしれないのだ。
 思考は乱れとてもまとまらない、キラはこの場から逃げ出すように走り出した。

 ■ 変態仮面 ■

「追いつかれたか……」
「ガモフの足にあわせた以上、仕方ありますまい」

 後方でミノフスキー反応が増大した事でクルーゼはジオンに追いつかれたかと舌打ちする。
 ナスカ級のみであれば逃げ切れたかもしれないが、その場合ガモフを見捨てる事になる。
 少々、査問会がやばいかもしれんと思っているクルーゼに、これ以上の失点を追加するつもりはなかった。

「奪取機体での戦闘、相手はかの赤い彗星……少々分が悪いやも知れんな」
「ザンジバル級ですとジオンのMSは最大で12機、ヘリオポリスで確認した3機以外にどれだけいるかが問題です」

「連合の新型の機体性能に頼るのは癪だが、フェイズシフト装甲はジオンのMSに対し絶大な防御力を誇る。上手く敵艦にダメージを与えられれば……」
「状況を見てアスランらを二手に分けますか」

 流石のクルーゼも、1会戦でザフトの1部隊を丸ごと撃破するだけの腕を持った『赤い彗星』相手では少しばかり弱気であった。
(繰り返し言いますが、ソロモンでのシャアの撃破とされているものの5分の3はジョニーのものです)

 ■ ■

 アスランは自室でミゲルと衝撃の再会をかわした後、ヘリオポリスで散った同胞の思い出話を交わしていた。
 ただ、それはいつの間にかナチュラルに利用されるボケボケな幼馴染の愚痴に変わっていたが。

「ん? アスラン、どうもクルーゼ隊長がお呼びだぞ?」

 なんかやったのか〜? とニヤニヤ笑うミゲルを横手に、色々思い当たる事が多すぎて顔を青くするアスランであった。

 幸い、クルーゼにアスランを処罰する気はなく、ヘリオポリスでのアスランの行動を疑問に思ってのことだった。
 ここでまた幼馴染への愚痴をこぼすアスランにクルーゼは同情気味に声をかけるものの、はじめて見たときから臭いと思っていたが本当にガチだったかと確信するのであった。

 ■ ■

 キラが去った後、カズイの発言を経てサイがアルスター嬢にキラがコーディネイターであることを説明すると、彼らの脳裏でムウの言葉とセイラさんの行動が思い出される。
 キラという友人に頼りっぱなしの現状は、彼らとしてもあまり心地よいものではない。

「できるだけの力を持っているなら、できることをやれ、か」

 ミリアリアのキラに頼ってばかりと言う嘆きにトールが先ほどのムウの言葉を口にする。
 そして覚悟を決めた顔で、対面のサイとカズイを見た。2人も同様に頷く。

 キラは未だ決断ができずに艦内をうろついていた。

「キラ!」
「トール、みんな!」

 すると正面からトールら友人4名がチャンドラ伍長につれられてやってきた。
 地球軍の軍服を着用しており、その格好に驚くキラに、

「ぼくたちも艦の仕事を手伝おうかと思って、人手不足なんだろ?」
「ブリッジに入るなら軍服着ろってさ」

 そう答えるサイとカズイ。
 トールが軍服はザフトのほうがカッコいいよな、と軽口を叩く。

「お前ばっかに戦わせて、護ってもらってばっかじゃな」
「こういう状況なんだもの、私達だって、できることをして」

 友人らの心遣いにちょっと感動するキラ。
 じゃ、後でな、と4人は艦橋への道を急いでいった。
 4人の後を追いかけながら、チャンドラがキラに次も出撃するならパイロットスーツを着ろよ、と声をかけた。

「あの!」

 友人らの行動に、キラもついに覚悟を決めるのであった。

 ■ 暴走少女 ■

「では、ハマーン様。マリオン・ウェルチ少尉、これより出撃します」
「ええ、マリオンも気をつけて」

「はい。戻ったらまたお話しましょう」
「そうですね」

 微笑むハマーン。マリオンも同じように笑みを浮かべた後、戦場に向かうため気を引き締めてドアに手をかける。
 その瞬間であった。

 ガスッ!

 背後からの強烈な一撃をくらい、マリオンは声を上げる間も無く昏倒した。

「フフフ、シャア少佐、待っていてくださいね。この私があの女から開放して差し上げますわ!」

 マリオンを一撃でのしたハマーンは彼女からパイロットスーツを剥ぎ取ると、いそいそとスーツに着替える。
 ジオンのヘルメットは色々な宇宙線対策の為バイザーが青色であり、良く見ないと顔の確認がけっこう困難である。
 しかもマリオンも小柄なのでパイロットスーツを着てしまうと、なかなか見分けがつかなかった。

「私だって、ニュータイプの素質は負けていません! 私の方がシャア少佐の隣に立つのに相応しいですわ!! オホホホ!!!」

 それにしても、このハマーン様ノリノリである。

 ■ ■

「何だ!? このプレッシャーのようなものは?」

 その頃、ララァにパイロットスーツを着るよう注意されたシャアは、スーツに着替えて乗機に乗り込もうとしたところで凄まじい悪寒に襲われていた。

 ■ 蜉蝣とレムおじさん ■

「さーて、あたしらも動くかね」
『おや、中佐もかい?』

「まあね、あたしは連合の新造艦とやらにちょっかいかけてくるよ」
『ま、いいんじゃないかい。外交問題にならない程度に頼むよ?』

「まかしときな。さてと、あの赤いのを退けた連合の新造艦、楽しみじゃないか」