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Zion-Seed_51_第01話

Last-modified: 2007-12-12 (水) 20:04:18

C.E.0070年1月8日  地球  大西洋連合本部アラスカ基地


「申し訳ありません。相手がプラントならこのような事態にはならなかったのですが」


 モニター越しにウィリアム・サザーランド大佐は頭を下げた。


「しかしジオンはプラントに同盟を持ちかけているようです。盟主が立つのはその時が……」
『君は化け物がジオンと手を組むと思ってるのかい? だとしたら甘いよ、大甘だっ!!』


 モニターに映っている機嫌の悪い男の名はムルタ・アズラエル、ブルーコスモスの盟主だ。ブルーコスモスとは「青き清浄なる世界のために」がスローガンでコーディネイターに対して排斥運動を行っている団体だ。嘗てダイクンやデギンがいた頃は自然環境保護を訴える圧力団体であったが、コーディネイターに対する憎しみ、嫉妬、疑問、恐れから現在は反コーディネイター団体となっている。国籍、年齢、職業はさまざまであり、サザーランドもその中の一人であった。


『ジオンの建国者と現在の主導者を知ってる? ジオン・ズム・ダイクンにデギン・ソド・ザビだっ!
かつてブルーコスモスに居た重鎮のねっ!! 君はそんなジオンにプライドの高い化け物どもが頭を下げると
思っているのか!?』
「軽率でした……」


 サザーランドは再び頭を下げた。


『分かればいいんだよっ!!』


 何故アズラエルはこんなにも不機嫌なのか、その理由は先程まで行なわれていた地球連合軍幕僚会議で
散々な目に逢った所為である。
 ブルーコスモスのメンバーないしシンパはサザーランドのような地球連合軍にも多数いる。おかげで
アズラエルは軍上層部でかなりの影響力を持っているのだが、それに反感を持つ軍人も多い。
 その彼らにアズラエルは――


『相手はプラントではなくジオンですぞ、盟主が口をはさむ問題ではありません』


 と、反ブルーコスモス派軍人の嫌味を言われたのである。しかもそれは正論であり、アズラエルは黙って
聞いてるしかなかったのだ。


『ジオンも余計な事を……どうせならザフトが宣戦布告してくれれば……』


 シンパが多いとはいえ、戦争の相手がコーディネイターでなければ影響力は下がってしまう。


「……それではアズラエル様、私はこれで失礼します」
『君もL1に出撃かい?』
「はい、第2艦隊に所属です」


 月への奇襲攻撃によって出鼻をくじかれた連合軍は第1、第2艦隊をL1宙域にあるスペースコロニー
『世界樹』に入港させる事を決定した。既に『世界樹』には、知将と噂されているデュエイン・ハルバートン
提督指揮する第8艦隊がいる。


『死なないでよ。君には軍内部でやってもらう事が山ほどあるんだから』
「必ず生きて戻ります」


 ジオン総軍をはるかに圧するその戦力で連合は一気に戦局の帰趨を決するつもりだった。
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――――第1話
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同日  L3宙域  ジオン公国


 この日公王府には今後の戦略について議論するべくザビ家一員が集まっていた。


「当面する最大の課題は、L1―― 世界樹 ――の処置であります」


 当初世界樹はジオンにつくか連合につくか割れていた。しかし先日、連合軍第8艦隊が世界樹に入港したことにより敵対的勢力が優勢になってしまう。その為世論は連合に傾きつつあった。


「世界樹は掃討されなければなりません!」


 声を高々に発したのは長男のギレン・ザビである。


「この戦争に勝利せんとするならばっ! 世界樹こそ最も重要なキーストーンになります。ここで立ち停まる
ことは許されませんっ!」
「ギレンよ、お前は一体何人の世界樹市民を犠牲にするつもりだ?」


 デギンの言葉に重苦しい空気があたりを漂うがギレンは動じない。


「何人殺すか……否! 何人が死ぬかという問題ではございませんっ! 連合側が抗戦の意思を明確に示して
いる以上っ!! 敵に勝つことが重要なのですっ!!」


 不敵な笑みを浮かべながらギレンは続ける。


「それに、我々がその後行なう作戦に比べれば取るに足らぬ犠牲です」


 結局議論はそこで終わり、デギンは末弟のガルマと共に部屋へ戻ってしまった。


「やれやれ……老いたな父上も……」


 ギレンは肩を竦めると愚痴るようにつぶやいた。


「一国を束ね、軍を統括し、非常時を乗りきっていけるとは思えぬ」
「御歳の所為だけでありましょうか」


 口をはさんだのはザビ家長女のキシリアである。


「どういうことだそれは」
「どういう、というほどのことではありませんが、父上はああしてこれまでも修羅場をくぐり抜けてこられた
お利口な方なのでございましょう」
「…………」
「それより兄上、プラントはいかがするのですか?」


 プラントとはコーディネイターが中心となって作り上げたコロニー群の総称である。資金を提供した宗主国による『プラント運営会議』の支配下にあるはずのものだが、最近はコーディネイター達の反ナチュラル感情により独立の気運が高まっている。
 プラントにはザフトと呼ばれる武装組織があり、この組織もジオンと同じMSを主戦力として運用していた。
そんなプラントとジオンは水面下で同盟の交渉を行なっているのである。
 この交渉は会戦以前から行われていたものであり、会戦から一週間経った1月10日が最終回答期限日なのだが、今日までプラントは不気味な沈黙を続けていた。


「期限日まで後2日……プラントからは何の返答もありませんが……」
「心配することはあるまい」
「だが兄貴! もし返答がない場合、ジオンは単独で連合艦隊を叩かなくてはならなくなるぞ」


 話を聞いていた三男のドズルは不安を口にする。


「奴らも独立がしたいのだドズル。折れるさ……」


 しかし、期限日になってもプラントからは何の返答もなく、ジオンは単独で世界樹の連合艦隊を戦わなくてはならなくなってしまう。