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Zion-Seed_51_第04話

Last-modified: 2007-12-12 (水) 20:15:58

 ジオン公国は地球連合に休戦を持ちかけた。その内容は事実上の降伏勧告であったが、世界樹戦役の大敗と
ユニウスセブンの落下により連合はこれ以上の抗戦を行う戦力が残っておらず、条約をのむしかないと思われた。
 その最中、L4宙域で改装中の資源衛星「新星」こと宇宙要塞ソロモンにひとつの艦隊が接近しつつあった。
 ザフトである。
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 L4では、ソロモンの防衛を指揮しているキシリアの突撃機動軍艦隊とザフト艦隊が戦いを繰り広げていた。
元々ソロモンはドズルの支配下に置かれるはずなのだが、緒戦から戦い続けていた為に疲労も大きく、今は
本国へ引いていた。


「このタイミングで攻めてくるとはな」
「以外でした。しかし敵艦隊の規模それほど大きくはありません」
「だが先遣隊はどうなった?」


 報告されたザフト艦隊の数の少なかったが、迎撃に当たらせた先遣隊は敗退していた。生き残った者の話を
聞くと、突如としてMSが動作不能になったらしい。


 艦艇数からザフトが本気で攻めていないことは分かっていたが、この報告はキシリアにとって気になるもの
であった。


「奴らは先遣隊に何かしたのか」


 キシリアは言い様のない不安を感じていた。
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――――第4話
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 一体の白いMSがザクのコックピットを重斬刀で貫く。


「こんなものかね!? ジオンのMSとやらはっ!!」


 別のザクが隙をみてそのMS『ジン』に斬りかかる。
 普通の相手ならばこの一撃で終わっているがこのザクの相手は普通の相手ではなかった。


「甘いのだよ!!!」


 その一撃を往なすと、先程と同様にコックピットを貫く。
 刀を持ち直すとパイロットのラウ・ル・クルーゼは次の獲物を探す。


「次はお前かっ!」


 自分に向かってマシンガンを乱射しているザクに目をつけると何なく回避する。御返しとばかりにクルーゼも突撃機銃を放つがザクの装甲が銃弾を跳ね返す。


「やはり76mmではダメか……」


 通常、兵器は自機の装備を防げるように造られている。ザクのマシンガンは120mmであり、ジンが持つ76mm重
突撃機銃では然したるダメージを与えることはできない。おかげでクルーゼは重斬刀中心の戦いをするしかない。
それでも彼は、MS5機、巡洋艦2隻を落としている。


「これならばどうだ!」


 先程貫いたザクを投げつけると、相手が怯んだ隙に間合いをつめ斬りかかるが、


「終わりに……むっ!!」


 横槍が入る。クルーゼの邪魔をしたその機体は真紅に塗装されていた。


「なるほど、噂の……」


 真紅のザクは友軍を引かせるとクルーゼに向き合った。


「いいだろう、噂を確かめてやる!!」


 クルーゼは牽制だというように突撃機銃を放つ、勿論真紅のザクはそれを避けてマシンガンを撃つ。
 その正確な射撃にクルーゼは一つの確信を得た。


「やはり奴はコーディネイターか!」


 世界樹で5隻の戦艦を沈めた男の強さに納得したクルーゼは重斬刀を抜きザクに斬りかかった。
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 同じ頃、南極ではジオンと連合の条約締結のための会合が開かれていた。
 ジオン側の代表はジオン一と言われる地球通のマ・クベ中将で、彼は会合を終始コントロールした。
 連合側は何とか譲歩できないかと様々な案を提示していたがマ・クベは全て拒絶する。
 いよいよ全面降伏しか道は無いと高官達があきらめたまさにその時、奇跡は起こったのである。


『私はこの目で、ジオンの内情をつぶさに見てきた。


 我が軍以上にジオンも疲れている。


 月での戦い、世界樹での戦い、そしてコロニー落とし……


 すべてジオンにとってはギリギリの勝利でしかなかったのだ。


 我々も苦しいが、ジオンも苦しい。


 彼らに残された兵はあまりにも少ない』


 ハルバートン提督がジオン本国からの脱出に成功し、全地球規模の演説を行なったのだ。
 演説の内容は連合以上にジオン軍も疲弊していることであった。
 結局、この「ジオンに兵無し」演説により連合軍首脳部は抗戦継続を決意する。
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 南極での会合が終わりを迎える中、ソロモンでの戦いも終局に向かいつつあった。


「くっ! パワー負けだとっ!!」


 クルーゼは重斬刀とザクとの鍔迫り合いによって、ザクの出力がジンを上回っているのを感じた。先程から
押し切ろうとしても押し返せないのだ。


 元々ジンとザクは同スペックと思われていたのだが、実際には火力も装甲も出力さえもジンを上回っている。
クルーゼは持ち前の技量の高さで難なくザクを撃墜していたが他のパイロット達は苦戦を強いられていた。
そして自身も目の前の真紅のザクに押されている。


「しまった!!」


 一瞬の隙を見逃さなかった真紅の機体がジンをはじき返すと、そのまま体当たりを行なう。ザクの肩には
タックルの為のショルダーアーマーが付いているためジンへのダメージは計り知れない。クルーゼは必死で
体勢を立て直すが時すでに遅く、目の前にはザクが銃口を突きつけていた。


(バカな……私がこんな所で……望みもかなえられぬまま死ぬというのか……)


 信じられないという疑念と絶望の中クルーゼは死を覚悟した。その刹那、ザフト艦隊から信号弾が上がる。
それは撤退の合図であった。だが、クルーゼには関係なかった。自分はこれから撃たれるのだ。思っていた
その時――


『聞こえるかザフトのパイロット』


 真紅のザクが通信を入れてきたのだ。


『さっさと行きな』


 信じられない言葉にクルーゼは思わず答える。


「見逃すというのか!?」
『そっちが撤退信号が出したってことは俺達の勝ちだ』


 たしかにソロモンを攻めきれていない以上ジオンの勝利である。


『大尉ッ!』
『おう、今行く……じゃ、そういうことだから』


 言うと、真紅のザクは銃を下げ身を翻してソロモンのある方向へ去ってしまう。
 クルーゼはその光景を唖然と見ていたが、次第に怒りがこみ上げてきた。


(殺す価値すらないというのか……)


 屈辱に身を震わせ真紅のMSが去っていった方向を見る。


(赤い彗星……私を生かしたことを後悔させてやる)


 こうして「ソロモン攻防戦」はザフトの敗退で幕を閉じた。
 だがこの戦闘でジオンは、ザフトの脅威の科学力を知ることになる。
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 ギレンは報告書に目を通し終えると独り考え込んだ。何故なら、この日はジオンにとって厄日とも言えたのだ。


「ハルバートンのことはいい、奴が戻ったところで大勢は変わらん」


 ハルバートンの脱走は想定外だったが、MSがあるジオンの有利は変わらない。むしろ、以前計画していた
地球侵攻作戦を実行にうつし、徹底的に連合を叩いてやろうと考えたのだ。
 しかしソロモン攻防戦での報告書を読むと、作戦を根本から練り直さなければならなくなる。


――ニュートロンジャマー


 この装置は、全ての核分裂を抑制させてしまう。つまり核ミサイルをはじめとする核兵器、核分裂炉などは
使用不可能となってしまうのだ。ザフトはこの装置を、先の攻防戦で使用した。先遣隊のザクの動力源である
核分裂炉が使用不能となってしまったのである。
 ジオン公国のMSは全て核分裂炉を動力源としている。今回は試験的に投入したのだろうが、もしザフトが
本格的に使用するとジオンのMSは只の鉄くずになってしまう。


「致し方あるまい……」


 ギレンは現状のMSを分裂炉からバッテリー駆動への変更を決断をした。之により侵攻作戦は1ヶ月近くも
遅れてしまうことになる。
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 ジオンがMSの改良に躍起になってる間に、ザフトは「オペレーション・ウロボロス」を決行。地球上に
ニュートロンジャマーの散布を行なった。これは後に「エイプリル・フール・クライシス」と呼ばれ、多数の
餓死者、凍死者を出す事態となる。そしてC.E.0070年4月2日、前日のエイプリル・フール・クライシスの混乱に乗じ、オーストラリア地区のカーペンタリア湾を占領、48時間でカーペンタリア基地を建設し地球侵攻の
足がかりとした。
 ジオンも4月27日に月面からのマスドライバーでオデッサ基地の対空防衛を弱体化し、5月4日に資源発掘隊を
天然資源の多いカスピ海及び黒海沿岸部、コーカサス地方のオデッサに降下し占領する。その後はロシア全域と中東へ侵攻し占領する。更にアフリカ大陸へと進むがそこは既にザフトの領域であった。結局アフリカ北部において、地球方面軍司令ガルマ・ザビ大佐率いる機動部隊と「砂漠の虎」の異名を持つザフト軍北アフリカ
駐留軍司令官アンドリュー・バルトフェルドのバクゥ部隊が睨み合う形となる。
 この三つ巴の戦いは開戦から1年が経っても決着は付くことはなかった。