Top > Zion-Seed_51_第08話
HTML convert time to 0.015 sec.


Zion-Seed_51_第08話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 18:05:29

1.

「ミゲルとの交信が途絶えた!?」

 その報告を受けたアデスは、思わず聞き返した。

「間違いないのか!?」

 彼はザフトのナスカ級高速戦闘艦“ヴェサリウス”の艦長である。
 ヴェサリウスとローラシア級MS搭載艦“ガモフ”の2隻がヘリオポリスを襲撃したのだ。

「“黄昏の魔弾”を失うとはな……」

 アデスは俯きながらつぶやいた。
 クルーゼ隊には赤服と呼ばれる優秀なパイロットがそろっている。
 しかし彼らはいずれもアカデミーを出たばかりで実戦経験に乏しかった。
 ミゲルは赤服ではないが、戦場で武勲を立て、パーソナルカラーを許された歴戦の戦士である。
 彼を失った意味は大きい。

<アデス聞こえるか>

 帰還途中のクルーゼから通信が入る。

<全MSにD装備をさせろ>
「D装備ですか?」

 アデスは驚いた。D装備は要塞攻略用の最重装備だからだ。
 クルーゼの命令に不満を擁きながらも、彼は部下に命令する。

「分かりました。すぐにジンへD装備を!」
「フレドリック艦長」

 その時、ブリッジにアスランが入ってくる。

「自分を出撃させてください」
「なんだと? しかし、機体が無いだろう」
「ミゲルのシグーを使わせてください!
 自分が“G”が奪取していれば彼は死ななかったかもしれません。仇をとらせてください」

 アデスは一瞬迷ったが、アスランの赤服を見て承諾した。

「分かった。許可しよう」
「ありがとうございます」

 言うなりブリッジを飛び出す。

(あれは……キラなのか?)

2.

 自己紹介をすました少年達の心は連合のMSに移っていた。

「しかしすげーなー。キラが動かしてたのか?」
「『ガンダム』? なにそれ?」
「ちょっとー! 見るだけで、乗っちゃダメよ!!」

 ストライクのコックピットに入り込もうとしている彼らをクリスが必死に制止する。

「軍人さんも大変ね」
「ええ、まあ……」

 和気藹々といったなかでマリューが目を覚ました。
 彼女は身を起こし現状を確認すると、慌てて腰にある拳銃を抜きキラ達につきつける。

「その機体から離れなさい!」
「何をするんです! 止めて下さい!」
「助けてもらったことは感謝します。でもあれは軍の重要機密よ。民間人が無闇に触れていいものではないわ」
「た、大尉落ち着いてください」

 クリスの制止も聞かず、彼女は断固とした口調で続ける。

「私はマリュー・ラミアス。地球連合軍の将校です。申し訳ないけど、あなた達をこのまま解散させるわけにはいかなくなりました」
「一緒に行動するんだろ。クリスさんに聞いたよ」
「なら話は早いわ。こっちにきなさい……クリス、貴女がいながらこれはなに?」
「すみません、でも!」
「言い訳はいいわ!」

 そんな二人の間にセイラが割ってはいった。

「銃をおろしなさい――」

 銃をつきつけたマリューにセイラは静かに言う。

「――相手は子供よ」
「関係ないわ。私は開発責任者としてこの機体を任されてるの」
「エリートでいらっしゃるのね」
「!?」

 その一言にマリューは眉間にしわを寄せた。

「それは皮肉かしら?」
「別に……でも、もう少し肩の力を抜いてもいいのではない? 大尉さん」

3.

「ラミアス大尉!!」

 マリュー達がアークエンジェルに到着すると、アーノルド・ノイマン曹長が駆け寄ってきた。

「ご無事で何よりです」
「あなた達こそ、よくアークエンジェルを守ってくれました」
「その子達は?」

 ノイマンはマリューの後ろにいた少年達について尋ねる。

「ヘリオポリスの民間人よ。Xナンバーを目撃してしまった為に一時的に拘束しました。学生と医療ボランティアの方が……」
「医者がいるのですか!? どなたが!?」

 ノイマンは慌てて少年達に問いかける。
 中からセイラが手を上げて前に出る。

「私です。まだ医者の卵ですが……」
「構いません! すぐブリッジまで来てください!」
「怪我人ですか?」
「艦長が重態なのです」
「待って、衛生兵はどうしたの?」
「それは……とにかくいらしてください」

 セイラ達がブリッジに着くとナタルが賢明に指示を出していた。

「大尉! ご無事でしたか」
「ナタル、貴方も……カシアス艦長!」

 艦長席の傍らには簡易ベッドがあり、艦長のパオロが横になっていた。
 セイラはノイマンに案内され診察に入る。

「何をしている……私のことはいい……」

 パオロは軍医の治療を拒否していたのである。
 自分に構うよりも、他の怪我人を治療するように命令したのだ。
 ただでさえ人員が不足していることもあり、パオロは簡単な応急処置しか行なわれていなかった。

「彼女は兵ではありませんから、その命令は無効です」

 ノイマンは屁理屈を言う。
 皆が見守る中でセイラは診察を終えた。

「ここでは無理。早くちゃんとした施設でないと」

 その言葉は時間が無いことを意味していた。

(やはり早急にアルテミスまで行かなくては)

 思考の海に潜ろうとするナタルだったが、横からパイロットスーツ姿の男が声をかけた。

「地球軍第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ、よろしく」
「第2宙域、第5特務師団所属、ナタル・バジルール少尉であります」

 互いに敬礼して名乗ると、ムウが切り出す。

「こんな時になんだが乗艦許可をもらいたい」
「あ……乗艦を許可します、大尉」
「俺はパイロットになるヒヨっ子達の護衛で来たんだが、連中は?」

 ナタルは沈痛な面持ちで首を振る。

「……そうか。だったら、ストライクとイージスは誰が?」
「それは……」

 マリューが口を開こうとした時、クルーの一人が声を上げる。

「少尉! またMSです!」

 情報分析をしていたトノムラ伍長はさらに続ける。

「ジンの編隊です。シグーもいます」
「ちぃっ! ゼロで出る!」

 言ってムウはブリッジを飛び出す。
 マリューとナタルは互いの顔を見合わした。

「――ストライクとイージスはまだ外ですか!?」
「ええ、回収している余裕はないわ。自力で合流させましょう」

 頷き、ナタルは艦長席に座る。

「アークエンジェル発進準備! 総員、第一戦闘配備!」