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Zion-Seed_51_第24話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:06:10

 3月1日、ガルマ・ザビ率いるアフリカ侵攻軍はバナディーヤを占領した。
 投降した数百名のザフト将兵は捕虜として収容所に入れられる事となる。その中には“砂漠の虎”も
含まれていたが、重傷のせいで戦時病院に入れられ、その際捕虜の女性が世話係として付いたそうだ。
 結局のところ、今後のアフリカ戦線におけるミリタリーバランスは一変し、アフリカ北部はジオンの
占領下となる。これでアフリカ大陸でジオンが占領していないのはビクトリアのみ。
 司令官のガルマは、これらの功績から准将に昇進するのだった。
「ガルマ・ザビ准将、この度のバナディーヤ占領作戦、お見事でした」
「謝礼はいい。私は命じただけだ。部隊を編成したのは貴公だろう」
 ガルマはマ・クベに遠慮がちに話す。そんな彼にシーマが口を挟んだ。
「ご謙遜めされるな。咄嗟の判断はガルマ様のものです」
「……そうまで言うなら、ありがたく受け取ろう」
 ガルマはホッとしていた。侵攻作戦が足踏みしてから、どこか焦りがあったのかもしれない。破竹の
快進撃を続けていたジオン軍が停滞したのは自分にあるのでは、とも思った。しかしそんな思いも、
バナディーヤ占領で吹き飛んだ。
「ところでラル大尉の姿が見えないのですが」
「ラルか。彼にはいの一番にこの地に立たせかった」
 言葉足らずのガルマに、マ・クベが補足する。
「ランバ・ラルは宇宙へ上がった。三連星と共にな……」
「黒い三連星も……?」
「兄上達が命じてな」
 ガルマがバナディーヤへ侵攻する数日前にドズルとキシリアから上記の4名を至急宇宙に上げるよう
命令書が出ていた。ラルは元々ドズルの配下なので理解できるが、三連星は2週間前に地上へ降りた
ばかりにも拘らず。
「彼らにはジブラルタル攻略の先陣を切ってもらいたかったが……」
 不可思議な人事に、ガルマは首をかしげていた。

 同時刻、宇宙要塞ソロモンではランバ・ラル大尉がドズル・ザビ中将に謁見していた。
「おお、戻ったか!!」
 ドズルは豪快に言った。
 今までガルマの護衛として地上に降りていたランバ・ラルは、その任務を完璧にはたしていた。
リビア砂漠会戦では殿を務め、後退するガルマ軍を無事に脱出させている。
「地上はどうだった? ガルマの奴はっ!?」
「うまく纏めておられます。占領政策もよく機能しておりまして……」
「そうかそうかっ! 奴は俺さえも使いこなす将軍だからな!」
 豪快に笑うドズルにラルは本題に入る。
「ところで、私を宇宙に戻したのは……」
「そうだったな。2人とも、入れ!」
 別室の扉が開き、2人の青年が入ってくる。彼らを見て即座にラルは思った。
 ――コーディネイターだな……双子か?
 その整った顔立ちには、まだ幼さが残っている。おそらく十代の前半だろう。しかし少年らしい
明るさや若いエネルギーのようなものはない。『熱』というものが感じられないのだ。
 青みをおびた髪は、短く刈られている。瞳は海のように青く、肌の色は使者のように蒼白かった。
 そんな蒼白く均整の取れた顔が二つあった。ラルが双子と思ったのも道理である。
「お前にこいつ等を見て欲しいのだ」
「この2人をですか?」
「特別な事情があってな。操舵技術は申し分ないが戦術面でお前の知恵を借りたい」
「ハッ。しかし戦術面と言っても具体的には……」
「こいつ等はナチュラルを攻撃できん」
 ラルは怪訝な表情で2人を見る。
「その様に出来ているのだ。他にも数百人いる」
「どういうことです?」
「メンデルを調査した際に、こいつ等を、“ソキウス”を見つけた」

 切っ掛けはブリティッシュ作戦前までにさかのぼる。
 本来この作戦はL4宙域にあるメンデルコロニーを使用する手筈だった。その為にドズル秘蔵の
将軍の一人で、ブリティッシュ作戦で護衛艦隊の指揮を執るキリング・J・ダニガン中将を中心に
徹底した調査が行なわれた。
 調査を進めるにつれて、内部には様々な情報が手付かずで残っている事が分かる。人工子宮研究や
クローン、更には戦闘用コーディネイターという、より先進的なコーディネイターを生み出すものだ。
 そして調査隊は、ある部屋で積み上げられたコンテナを発見した。その数、数百。中には胎児の状態で
凍結保存されたコーディネイターが眠っていた。
 コレが戦闘用コーディネイターとして生み出された“ソキウス”である。
 人類が元々持っている「服従遺伝子」によりナチュラルの利益にならないことは、個人の意思とは
関係なくできないようになっていた。
 メンデルの調査結果はギレンやキシリアに報告するはずだったが、キリングは彼らを不憫に思った。
何とか保護することはできないものか。事情を知ったドズルは彼らを保護することを決めた。冷凍された
“ソキウス”の赤子を見るたびに娘のミネバと重なったのだ。
 数ヶ月間、彼らの存在はドズルとキリングによって隠されていた。2人が現れるまでは――
「そんな時に、この2人が連合から亡命してきた。連合のMSを手土産にな」
 2人は自らをイレブン・ソキウス、セブン・ソキウスと名乗った。2人は地球軍を脱走して自身の
存在意義を確かめるべく、互いに様々な質問を自分の分身ともいえる相手に問いかけたらしい。
 結論は「最もナチュラルに害をなしているのは、地球連合の指導者」という一つの答えに達した。
さらには「ニュータイプを守ることが、ナチュラルにとって最も利益になる」という結論も導いた。
これに2人はジオン公国への亡命を決意したのである。
 だがこれはソキウスの存在を隠してきたドズル達にとって面倒だった。亡命するだけなら問題は無いが
2人は連合のMSに乗ってきた。2機のMSが近づいてきた時はソロモンが厳戒態勢になったのである。
 これは隠し切れないと、ドズルは仕方なくギレンに経緯を話した。そして2人をドズル直属としたが、
今度はメンデルのソキウス達が、自分も役に立ちたいと言い出した。
 凍結されたソキウスの中には成長していた者達もいたのだ。
「結局断れんでな……」
「なるほど。事情は解りました」
「2ヶ月でこいつ等を含む計24名を鍛えてくれ」
 ラルは真剣な表情でうなずいた。それだけあれば十分な軍人となれる。だがラルはその2ヶ月という
期間が気になった。
「2ヶ月? 2ヶ月ですか、それは……」
「聞くな!!」
 ラルの言葉をドズルは大声で制した。顔を強張らせ、目を見開くと何かを察するように叫ぶ。
「それ以上聞くな! ラル、察してくれ!」
「……まさか」
 ソキウス達はナチュラルを攻撃できない。しかし2ヶ月後に彼らを必要とする作戦がある。
 ラルに出てくる答えは唯一つ――ヤキン・ドゥーエ攻略しかなかった。

「うっわぁ、気持ちいいーっ!」
「やっぱり地球の海はいいねーっ、さいこーっ!」
 アークエンジェルは大西洋を進んでいた。レセップスを突破し、アフリカ大陸を離れた彼らはその
足で地中海を通過しユーラシア連邦へと渡った。奇跡的に敵襲もなくベルファウスト基地にたどり
着いた彼らに待っていたものは、アラスカのJOSH-Aではなく大西洋北部アイスランド島にあるヘブンズ
ベースに向かう命令だった。
 海上に出て間もなく、クルーが交代で甲板に出ることが許可された。連戦続きので碌な休みも与えられ
なかったクルーのストレスをセイラが気遣ったのだ。初めは渋い顔をしていたナタルだが、医者である
セイラの進言に首を縦に振ったのである。
 トール達が甲板ではしゃいでいる。宇宙生まれのカズィは怖いものを見るように水面を覗き込んでいる。
 キラはそんな光景を眺めながら一人思考に耽っていると、後ろからクリスが声をかけた。
「どうした少年」
「クリスさん……」
「なにか悩んでるの?」
 思わずは押し黙る。キラはソンネンの事を考えていたからだ。コーディネイターと言うだけで敵視された
キラにとって、敵兵との接触を口に出せない。
「言えないかー。じゃあ、私の悩みを聞いてくれる」
 キラは驚いた顔になった。
「ジオン兵と会ったのよね〜。バナディーヤでさ」
 クリスの告白にドキリとするが、それと同時に奇妙な感覚だった。彼女も自分と同じくジオン兵に会い、
話をしたと言う。彼女が話すバーニィと言うジオン兵は、ソンネンとは違いおおよそ軍人らしくなかった。
「コロニー落とす奴らだからどんな連中かと思ってたけど、実際に会ったら普通の奴なの。拍子抜けだわ」
 それでもバーニィは自分を考えを持ってた。この戦争を独立戦争と名付け、故国の為に戦っていた。
「私もコロニー生まれだから。あんな連中と戦争してると……考えさせられちゃうな」
「……僕もジオンの兵士に会いました」
 言葉の見つからないキラは、唐突にソンネンとの出会いを語りだした。
 彼は自分の信念を守るために戦っていたと言える軍人だ。アークエンジェルにも軍人はいるが、
彼らにソンネンほどの信念があるとは思えない。軍人と言うより、警察と言ったほうが似合う。
官僚的と表現すべきか?
 ――女子供残して……逃げるわけには……いかんだろ……。
 友人達を見捨てて逃げ出した自分に、一番突き刺さった言葉だ。友人達に後ろめたく感じてはいた。
そんな自分に正面から言葉を浴びせた彼はもういない。たとえ戦車1両しかなかろうと、おのれの職務を
果たし、散ったのだ。そんな彼にキラは戦う理由を見出していた。
「僕は、僕は男だから……」
 そんなキラの独白に耐え切れなくなったのか、クリスは笑い出した。
「可笑しいですか、こんな理由?」
「いいえ、さっすが男の子だな」
 クリスはバシバシとキラの背中を叩く。
「それでいいのよ。艦を降りても、レディに対しては紳士的にね、王子様」

 そしてアークエンジェルはヘブンズベースに到着した。この基地は、大西洋連合がユーラシアで
猛威を振るうジオン軍に備えるべく建てられた基地である。ジオンの地球降下作戦を見たハルバートン
提督は、その電撃作戦に脅威を感じ、宇宙からの侵攻を想定してこの基地を建てた。その対空包囲網は
アラスカやパナマ以上であり、地下にはMS工場も設けている。ヘリオポリスを出て以来、安全とは
言えない場所を転々とし、やっと大西洋連合勢力圏にたどり着いた。これでキラ達は艦を降りられる。
誰もがそう思っていた。

「いや、ヘリオポリス崩壊の知らせを受けたときは、ダメかと思ったよ」
 長身の将校が、気さくにナタル達を出迎えた。地球連合軍中将デュエイン・ハルバートンである。
「閣下、お久しぶりです!」
 マリューが嬉しそうに挨拶する。
「ナタル・バジルールであります」
「クリスチーナ・マッケンジーであります」
「第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガであります」
「おお、君がいてくれて助かった」
 ハルバートンがフラガに労いの言葉をかける。
「いえ、さして役にも立ちませんで」
 ハルバートンは士官たちとの挨拶がすむと、今度は後ろの方で整列しているキラたちに目を向けた。
「ああ、彼らがそうかね」
 キラたちはハルバートンがこっちにやってくるのを見て、慌てて背筋を伸ばす。
「はい、繰艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです」
 ナタルの紹介にハルバートンは1人1人を見つめる。その目は優しかった。
「君達のご家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、ご無事だ」
 みんなの顔がぱっと明るくなった。何より嬉しい褒美であった。
「とんでもない状況の中、良く頑張ってくれたな」
 オーブ組はハルバートンを実際に見るのは初めてだ。あの南極条約の交渉中の『ジオンに兵無し』
演説はテレビで何度となく観ている。堅いイメージがあったが、実際のハルバートンはとても気さくで
意外な印象をキラ達に与えていた。
「君達の活躍は連合全体に大きな貢献をしている。本当に良くやってくれた」
「いえ、僕達は必死だっただけです」
 ハルバートンの賛辞に、キラは照れながら答えた。
「ところで提督。彼らの除隊申請は、受理してもらえるのでしょうか?」
「ああ、申請が出された分は間違いなく受理しよう。それは約束する」
「そうですか、良かった」
 マリューはハルバートンの言葉に安堵した。キラは連合に協力した数少ないコーディネイターだ。
そんな彼を連合は手放さないのではないのかと危惧したのだが、それは杞憂であったらしい。

「2機だけとはいえMSを送り届けてくれたことは感謝の言葉も無い。こちらでも量産ラインが動き
出したばかりでMSは30機と無い。パイロットも養成が遅れている中で、実戦を経験した君らは貴重だ」
 浮かれる子供達をよそに、ムウは嫌な予感がした。ハルバートンが面倒な事を持ち込もうとしている
のに気づいたからだ。案の定、ハルバートンは言いずらそうに本題に入る。
「バジルール大尉、“赤い彗星”や“砂漠の虎”と戦った経験はすばらしい。そこでアークエンジェルは
1ヶ月後のオデッサ作戦に参加してもらう」
「お言葉ですが、提督。私は少尉で……」
「正式な艦長とするには階級もそれなりのものが必要だからな」
 ハルバートンはナタルの言葉を遮り言った。
「さすがに佐官とするのは難しい。そこで君を特務大尉とし、少佐の権限を持たせる。フラガ少佐には
このままMS隊隊長として頑張ってくれ。辞令は追って通達する。以上だ」

 ハルバートンとの話を終えると、ナタルは除隊許可証をキラ達に渡した。カズィは喜んでいたが
キラはどこか後ろめたい気持ちがあった。戦う理由を見つけた途端、戦う必要が無くなる。戸惑って
いると、まだ説明を続けるナタルに声をかけた者がいた。サイである。
「俺、軍に志願したいんです」
 一瞬誰もが呆気に取られ、驚愕した。フレイも驚いた顔をしている。
「何を馬鹿なことを」
「いいかげんな気持ちで言ってるんじゃありません!」
 サイは必死に食いさがった。
「俺は、この戦争をテレビの中だけと思ってました。自分とは関係ないものと……」
 誰もが言葉も無く、彼女の言葉を聞いていた。
「中立の国に居たから気づかなかった。でも解かったんです。自分達の周りの平和が、どれほど幸福なことか」
「サイッ! バカな事言わないで、オーブ人は戦争とは関係ないのよ」
「違うんだよフレイ。ヘリオポリスが襲撃された時からもう関係なくないんだ」
 サイの言葉はキラに大きな衝撃を与えていた。サイがここまで考えているとは。
 そんなサイに続き、セイラが自分の除隊許可証を破り捨てた。
「セイラさん」
「私に身内はいません。家もヘリオポリスにありました。知っている人も皆いなくなってしまって……」
 その言葉を聞いて、トールの決意も固まった。彼が許可証を破り捨てると、ミリアミアが目を見開く。
「アークエンジェルは人手不足だからな。俺が降りた後に艦が沈められたら、なんか嫌だし」
 すると、
「トールが残るなら、私も」
「みんなが残るって言ってるのに、僕だけじゃな」
 ミリアミアとカズィが続いた。そしてキラも何か決意したように自分の許可証を引き裂いた。
 一人残されたフレイは仕方なくといった具合で許可証をナタルに返すのだった。

 ナタル・バジルールは中尉としての任務を終え、大尉に昇進しようとしていた。
「はぁ……」
 この6時間、彼女は特務中尉として艦長の任務に就いていた。連合では生者に2階級特進は出来ない。
そのために時間差を経た形で辞令を受ける破目になる。
 現在アークエンジェルはドック入りし改装作業へ、キラ達オーブ組は正規訓練を受ける事になった。
特にサイとトールはパイロットとして訓練を行う。困った事に2人は自分もMSに乗ると言い出した。
ナタルもムウも反対したが、2人は戦闘シミュレーターでカガリ以上の成績を叩きだしてしまった。
航行中にシミュレータで練習したらしい。この結果にナタルもムウも首を縦に振るしかなかった。
「サービスしすぎだ。使い物になるかどうかも分からんのに……」
 その2人の件がハルバートンに知られると、彼はさっそくMSを2機も送りつけた。MSの量産は
出来てもパイロットの養成が追いつかないことが理由だそうだ。しかし逆に考えれば、それだけ
ハルバートン派に人材がいないことが分かる。
「本当に大丈夫なのか」

「おいおい、新型かよ!」
 ムウの声が響く中でそれは搬入された。
 ストライクをベースとした先行量産型のGAT-01A1、通称“105ダガー”である。PS装甲は無いが、
ストライカーパックの運用機能を持ち様々な戦況に対応出来るこの機体は、作戦の虎の子であった。
「いいのか、こんな新品をヒヨッ子どもに与えて?」
 このMSをサイとトールに与える。隊長を任されたムウは気が気ではない。
「それは大尉……じゃない、少佐の判断次第でしょう」
「俺の?」
「少佐はMS隊隊長になったではありませんか」
「……隊長に教官役。上は俺を過労死させる気かね」
 責任の重大さを感じながら、ムウはマリューの言葉を聞き入れるのであった。
「おいこいつは何だ!? こんなの書類には無えぞ」
 そんな時、マードックの声が大きくなる。見ると見慣れない機体が降ろされる。それを見たマリューは
目を見開き、興味津々といった様子でそれに駆寄った。
「これって……」
「GAT-A01/E2バスターダガー。名前のとおり、GAT-X103バスターの量産型にあたる機体よ。書類に
無いのは記載ミスね。突然決まったから」
 答えたのはマリューではない。振り向くと一人の女性士官が立っていた。
「何であんたがここにっ!?」
 彼女を見るなりムウの顔色が変わる。
「久しぶりねムウ・ラ・フラガ。私がいると何か都合が悪いのかしら」
「い、いや、そんな事はないが……」
 どうやら2人は顔見知りらしい。女性士官の階級章を見ると大尉であることが分かるが、腐っても
ムウは少佐だ。そんな彼に威圧的に話しかけるこの大尉は何者なのか。
「すみませんが、貴女は?」
「これは失礼。レナ・イメリア大尉です。彼は私の生徒ですの」
 長い髪を後ろにまとめたその彼女は姿勢を正し、敬礼した。
「生徒?」
「……俺のMS教官だ」
 ムウは疲れるように言った。

 レナ・イメリアは連合で真っ先にMSに乗った軍人である。動体視力がコ−ディネイター並みに
優れていたことから開発と戦略術に携わり、カリフォルニア士官学校の教官を勤め、さらに教習用に
使用されていたザクキャノンにヒートホークを装備させてジンを5機落とした経歴を持つ。
 ムウはそんな彼女からMSの高機動戦闘を教わっていた。
「じゃあサイ君達の訓練を貴女が?」
「ええ、それとキラ・ヤマトというコーディネイターも……あの子達ですのね」
 ちょうどキラが格納庫に立ち寄った。サイとトールも一緒だ。
 まるで獲物を見つけた蛇のように、レナは彼らに近づいた。
「貴方達がパイロット志願者かしら」
「えっと……貴方は?」
「レナ・イメリアよ」
 友好的な物言いから握手を求める。サイ、トールときてキラの番になったとたん、彼女は周囲を
凍らせる一言を口に出た。
「貴方が裏切り者のコーディネイターかしら?」
「なっ!!」
 レナの言葉にキラは思わず手を離そうとしたが、彼女は力を込め手を離さない。握り締められた
手にキラの顔は苦痛に歪む。
「体を鍛えているわけではないようね」
 レナは機嫌よさそうにキラに言った。キラは体を振るわせ言い返すが――
「何なんですかあな……っ!」
 言葉に出したとたん、手を捻りキラの体を投げ飛ばす。
「警戒心が足らない。私が敵兵ならお前は殺られている」
 コーディネイターというだけでここまでやられる筋合いは無い。投げ飛ばされたキラに怒りと
悔しさが込み上げた。あまりの出来事にサイとトールは呆然と立ち尽くす。
「本当に一から叩き込まなければならないようね」
 事態を見ていたムウが慌てて駆け寄ってくる。
「おい、やりすぎだ!」
「フラガ少佐、私のやり方は知っているでしょう?」
「そりゃそうだが……」
「なら口出しは無用よ」
 レナは改めて振り返ると、
「私はレナ・イメリア大尉よ! 今後、貴方達の教官を務めるわ! 軍人になったからには、妥協も甘えも
口答えも許さない。分かったのなら返事をなさい!」
 この一連の流れを見守っていたマリューは言い知れぬ不安を感じるのだった。