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Zion-Seed_539_第01話

Last-modified: 2013-10-25 (金) 02:32:34

「効果はあったが、予想したほどではなかった…というわけか」
「申し訳ありません」
マ・クベの仕掛けたアフリカ共同体への工作は、
結果的にはZAFTへの補給をある程度滞らせるだけに終わった。
「いや、中佐を責めているわけではない。半分は私の責任だ」
実際は半分どころではないがな、と内心ガルマは思っていた。
明らかにアフリカ共同体はプラントとジオンを天秤にかけている。
そして、地上でのジオン公国の劣勢が、そのまま天秤をプラント側に傾けているのは明白だった。
「それで、もう一方の首尾はどうなっている?」
「順調です。複数の反政府ゲリラと接触し、こちらの味方に引き入れることに成功しました」
ガルマは、アフリカ共同体からZAFTへのパイプを断つだけではなく、アフリカ共同体からの
ZAFTへのパイプを断つことも考えていたのである。そしてアフリカ共同体がこちらへ協力しない今、
遠慮なく同時にアフリカ共同体の土台も削り倒してやるだけのことであった。
マ・クベから手渡された協力者のリストに目を通していく内、ガルマの目が一点で止まった。
「『明けの砂漠』の協力を取り付けられたのか」
「はい。ただし、ZAFTを北アフリカから排除するまで、という条件付ではありますが」
『明けの砂漠』は反ZAFTを掲げる、(レジスタンスを自称している)有力なゲリラ組織である。
地域住民の支持を得て戦えるゲリラは強い。多くのゲリラが支持者以外からは反感を持って
迎えられることが多い中で、彼らはタッシルを中心とした多く住民から積極的な支持と協力を得ていた。
無論、ジオン公国とて彼らにとっては招かれざる客ではあったが、ZAFTと違い積極的に占領地と
交流を図ってきた――上流階層のパーティーへの高級士官の出席から、エネルギー施設の設置まで――
ジオン公国は彼らにとっては「まだマシ」な交渉相手だと判断したのであろう。
「協力の代償は食料、"対MS用兵器"、医薬品の供与か」
パイロットがいない以上、MSを供与しろと言ってこないのは当然であるが、
"対MS用兵器"といった漠然とした要求を示してきたということは、別の意味を持つ。
「ただの捨石にするつもりか、友軍として扱うか、態度で示せということか」
ジオン公国は、アフリカをどうするつもりなのか。それに対する答えをよこせ、ということでもある。
「……明けの砂漠のリーダー、サイーブとか言ったな。一度会ってみるべきだろう」
「司令、それは」
危険すぎます。そう言おうとするマ・クベを遮って言葉を続ける。
「わかっている。しかし、この男が求めているのは『信用』だよ。
ランバ・ラルやデザート・ロンメルが行って交渉しても駄目だろう。ビッターなら話は別だが……」
ノイエン・ビッターは前線のキンバライト鉱山基地にいる。
「つまり、適任なのは私だけ、ということさ」
「……わかりました。ただし会談の場所はこちらの勢力圏で設定いたしますが」
「当然だ。ただ、護衛の部隊は私に選ばせてもらいたいのだが」
マ・クベは了解し、自分のデスクに向かうべく部屋を後にした。
なお、彼は後で誰を選ぶつもりか聞いておかなかったことを後悔したことを付け加えておく。

マ・クベが退出してから丁度20分後、シーマは呼び出しに応じてガルマの執務室に入室した。
「シーマ・ガラハウ少佐、入室いたします。
 司令官殿は、小官などになんの御用でありましょうか?」
室内にマ・クベがいないことを確認し、慇懃無礼の見本の様な挨拶を上官に向けてみせる。
ラルの「修正」の一件を見て溜飲を下げはしたものの、本心からガルマを許したわけではない。
そもそもジオンでも貧困層が多く住むマハル出身の彼女にとって、
ザビ家の御曹司という立場で司令官になった若者に頭を下げてみせることが面白いはずもない。
「ガラハウ中佐、あなたの隊に私の護衛を頼みたい」
「は?」
「つまりは、こういうことなのだよ」
あっけにとられているシーマに対し、ガルマは今回の会談について説明した。
「いち早く自軍の危機を悟り、迅速に決断できるあなたが適任なのだ」
「……無礼を承知でお聞きいたしますが、私が司令を後ろから撃つとは考えないのですか」
「それはない。そのつもりがあったら、とっくに君は私を殺して部下達と連合に投降している」
「…フフ」
シーマは、笑いをこらえ切れなかった。わかっている。わかっているじゃないかこの坊やは!
「このシーマ・ガラハウ、命令を受けたことはあっても、『頼まれた』ことはございません。
司令官殿の護衛、見事頼まれてご覧に入れましょう」
一礼し、シーマは執務室を出て行った。来る時と違い、その足取りは妙に軽かった。

 
 

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