Top > _LP ◆sgE4vlyyqE氏_「因縁の終わり」01
HTML convert time to 0.004 sec.


_LP ◆sgE4vlyyqE氏_「因縁の終わり」01

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:42:24

5年に満たない期間で2度に渡る世界全てを滅ぼしかねない戦争を乗り越え、
世界は変わったかに見えた。しかし、それも偽りでしかなかったと民衆が
理解したのはCE77年6月だった。日の出と共に、世界各地に身を潜めていた
ブルーコスモス、ザラ派、デュランダル派の残党が一斉に蜂起。
世界は再び争いの炎に包まれる事になった。これが後の世に言われる、
ジューンブラッディであった。

そして、CE78年4月。当初の予想を完全に裏切る形で戦争は続いていた。

ラクス・クライン率いるプラントの盾、キラ・ヤマトの駆るストライクフリーダム、
カガリ・ユラ・アスハ率いるオーブの剣、アスラン・ザラの駆るインフィニットジャスティス、

前大戦に於いて、圧倒的不利な状況と思われていた最終局面をあっさりと
勝利に変えてしまった英雄達がいれば、半年も経たない内に終わるだろうと。
誰もがそう思っていた。しかし、単なる残党としか思われていなかった
各軍はセオリー破りの方法で英雄に対抗した。

それは、完璧なる撤退戦術だった。
相手側に、どう足掻いても勝てない相手がいた場合、新型の陽電子バリアを装備した
部隊が敵を足止め、然る後に新型ブースターによる迅速に過ぎる退却(無論、バリア装備の
機体にもその新型ブースターは装備されている)というあまりにも臆病な物だったのだ。
彼らの間でもその性質から賛否両論な戦法ではあるのだが、
エースのいない戦場を確実に狙い撃ちできる事、闘いが進む毎に、エースが世界中に
分散され、1個1個の戦場に於ける勝率が上がった事等も有り、辞めるに辞められない状況なのである。

しかし、プラントもオーブもやられっ放しではいない。
奪われた場所にはフリーダム、ジャスティスを送り込み、あっさり
奪還してしまうのだ。しかし、奪還する頃には新たな場所が占領され………

とまあ、このような無駄な闘いを繰り返す内に完全なる膠着状態になってしまったのだ。
ちなみに、ブルーコスモス、ザラ派、デュランダル派は味方同士と言う訳ではない。
単に倒すべき優先順位の最も高い相手が同じという利害の一致から、
ラクス、カガリ達を倒すまでは互いに不可侵を貫いているだけなのである。

「ここか………」

かつて、そして現在の英雄アスラン・ザラが訪れたのはガルナハンにある一軒家。
情報が正しいのなら、ここに彼の探していた人物がいる。

緊張した面持ちで、ドアをノックした。

「はい、どなた……って……うわあ………」
ドアを開けた赤髪の女性−−−彼の記憶にある姿より多少髪が長くなり、
雰囲気が変わったルナマリア・ホークは露骨に嫌な顔をした。

ま、当然の反応だろうな。と自嘲しつつも、表情を変える事無く彼は尋ねた。
「久しぶりだな、ルナマリア。最も、君……いや、君達にとって俺は会って嬉しい相手では無いだろうが」
君達 と言われた瞬間、いや、この男が来たというだけで事情を大体理解した
ルナマリアは、一発鼻っ柱に拳を叩き込んでゴーホームしていただきたい気持ちを
必死に抑え、出来る限り無表情に返事を返す。
「判ってるなら来ないで下さい。で、用件は?」
「シンはいるか?」
やはり予想通りか。と言った感じでルナマリアは溜息をつき、そして
「……ええ、います。ちょっと待っててください」

ドアを閉められた。露骨に過ぎるが、この程度で済んだだけ運がいいだろう。
正直、どちらに会っても出会い頭の一発程度は貰う事を覚悟はしていたのだから……
そして、少し経った後再びドアが開き
「どうぞ」
とだけ言われて中に迎えられた。

「こんなど田舎の山奥なんて言葉じゃ言い足りないような場所に何しに来たんだ?」
再会第一声がこれだった。その表情から読み取れるのは
”あんたこんな場所で何してんの?”という呆れだけだった。

呆気に取られた。自分の目の前にいる青年−−−シン・アスカは、
少なくとも、彼の知っているシンは恨む相手−−少なくとも自分は確実にそうだろう−−を見て
冷静な態度を崩さずにいられるような落ち着いた男では無かった。
むしろ、周囲を鑑みる事無く感情赴くままに振舞う。
そんな、良い意味でも悪い意味でも子供っぽい奴だったのだ。

だから、余計な言葉は無用とばかりに本題から切り出した
「力を貸して欲しい」
「「は?」」
シンとルナマリアは同時に、「何言ってんのこいつ?」という表情を見せる。
後は、先ほど述べたような世界情勢をアスランが彼らに聞かせた。

だが、答えは決まっていた

「お断りだよそんなの」
「恥知らずな英雄様は言う事が違いますね」

明確な拒絶だった。シンは淡々と、ルナマリアは彼のやってきた事を揶揄しながらに

「シン、お前が守りたかった力の無い人が苦しんでいる。それでも戦おうとは思わないのか?」

彼がまだミネルバにいて、シン達と共に出席したデュランダル元議長との会食の時の
言葉をアスランは引き合いに出した。

”力の無い人達は守られるべきだと思います”

道は間違ったかも知れないが、彼の想いは真っ直ぐだった。

「アスラン。あんたは勘違いしてる。俺が今もそんなご立派な意思を持った人間だったら
あんたに言われるまでも無くとっくに戦場に戻ってるぜ?」

自嘲するように、蔑むようにシンは言う。

「俺は……オーブで何もかも失って、それを忘れられるような場所が欲しかったんだ。
ザフトのアカデミーは丁度良かった」

戦場へ向かう人間の育成場なのだから、余計な事を考える余裕も無く、
自分の本当の願いも判らないままに、ただひたすらに力を求めて駆け続けた。

「力が無くて泣いてしまう人を守りたいっていうのは本当だった。
でも、それは別に誰かのためって訳じゃなかったんだよ。そうすれば俺が……
目の前で家族を失った自分をもう一度見なくて済むって、自分の無力を
思い知らされる事は無くなるって……そう思ったから強くなりたかったんだ」

だが、それは無意味だった。ザフトの赤服として、最新鋭機を任され、
戦って戦って戦い抜いた。しかし、彼の守ろうと思った物は殆ど守れずに全てが終わった。
自分に未来を託した友も、守ると約束した少女も、道と力を与えてくれた人も、
何もかも彼の目の前で失われて行った。そして、多くの物を奪われ、
ただ無様に自分の無力を嘆いて泣いていた自分に手を差し伸べて、抱きしめてくれた人がいた。

そして、ようやく自分の願っていた事に気付いた。

「でも、そんなのは誤魔化しだった!俺は……!ただ失った物に見合うだけの
何かを手に入れたかっただけなんだよ!!」

自分を取り巻く多くの物に裏切られ、背負った多くの想いを果たせなかった少年の本当の願い。
失った家族と同じ……いや、それ以上に大切な誰かに会いたい。
そして、そんな誰かに出会えたら今度こそ絶対に守り抜く。もう目の前で奪わせはしない。

そんな想いを抱えた彼が誰よりも貪欲に力を求めるのは当然だったのだ。

「そして、もう俺の願いは叶ってる。戦場に出て命を懸けるなんて気なんて無い」

垣間見た激情は一瞬。だが、それだけでアスランは気付いた。
今のシンは、彼の隣にいる女性を守る必要が無ければ戦う事など無いと。
自分と、自分の大切な人を危険に晒すような真似は絶対にしないと。

「そうか。邪魔したな」

アスランは、2人が予想したよりもあっさりと諦めた。
訳の判らない正義を振りかざして、逆切れでもするだろうと
思っていたシンとルナマリアが今度は呆気に取られた。

「1つだけ、教えて欲しい。今お前は幸せなのか?」

「ああ、あんたの顔を見るまでは幸せの絶頂期にいたよ」

「そうか。なら安心しろ。二度と会う事は無いだろうからな」

それが、彼らの最後のやり取りだった。

「シンってさ」
「ん?」
アスランが去った後、2人は何時も通りに戻った。
「結構真顔で恥ずかしい事言えるよね」
「う……それは、その」

いい歳になった男女2人が顔を赤くして俯く様は、思った以上に滑稽で、
だからこそ、その光景にはありったけの幸せが篭っていた。

戻る】【