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_LP ◆sgE4vlyyqE氏_「因縁の終わり」05

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:44:52

「道は僕が開きます!皆さんはエターナルを護って下さい!!」

未だ最強と呼ばれるキラ・ヤマトの駆るストライクフリーダムは
動き始めて数分で、この戦場に存在する誰よりも多くの戦果を挙げていた。

ここで終われば次は無いとばかりの気迫で迫るデュランダル派の猛攻にザフト軍は押されていた。
少しずつではあるが本陣に敵が近付きつつある。
故に、キラとラクスは打って出る事を決意した。
出来る事ならば、最初からそうしたかったが小規模な1勢力でしか無かった頃とは2人とも立場が違い過ぎたのだ。

「私達も前線へ向かいます」

無論、反対の声は大きかった。だが

「大勢の方が、プラントを守るため、大切な人を守るために戦っています。
 なのに、私達だけがこのような場所で戦わずにいるなど許される事でしょうか?」

彼らの聖女たる歌姫のこの言葉に、奮起しない者などいる筈も無かった。

眼前の敵は10機。ストライクフリーダムに気付いて弾幕を張るが、
キラはその全てを当然の如くすり抜ける。

「このっ!!」

撃ち抜いて、切り刻む。ストライクフリーダムが動く度に、デュランダル派のMSは無力化されて行った。
圧倒的な速さと精度で武装、メインカメラ、腕等の部分のみを破壊し、パイロットは殺さない。
不殺の伝説は未だ健在だった。

ストライクフリーダムとエターナル率いる親衛隊の獅子奮迅の活躍により、状況は挽回されつつある。
だが、彼らの最大の不幸は混乱した情勢からたった一つの事を見落としていた事だった。

エターナルの直援に回っていたMSが切り裂かれ、爆発した。
唐突にその姿を見せた彼らが最も忌むべき赤いMSがエターナルの艦橋に向かって右腕を向け

「やめろおおおおおおおお!!」

キラの腕なら、敵だけを撃ち抜く事など容易。
だが、敵はストライクフリーダムの位置からすると、エターナルの影に隠れる場所に陣取っていた

目の前に現れた死神を前に、ラクスは全く動じていなかった。
来るべき時が来た ただそれだけだ。当然の報いだとすら思う。

だが、たった1つだけ心残りがあった。

「私は………最後まで貴方の重荷にしかなれませんでした」

最後の最後まで愛した男を苦しめる事しか出来ない自分。それが、何よりも悔しかった。

そして、その無念すら嘲笑うかのように、デスティニーセカンドがエターナルを撃ち抜く。

炎を上げながら形を失っていく歌姫の艦を前に、シンはひたすらに笑う。

「ははははははははははは!!!」

可笑しくて堪らない。ようやく直接の意趣返しができた。
憎くてたまらないあの偽善者から、誰よりも大切だったであろう者の命をその目の前で奪った。

「あ、ああああ……うわああああああああああああああああ!!!」

有り得ない。こんな馬鹿な事があって良い筈が無い。

「女1人死んだ程度でそこまで喚くなよ。お前はもっと大勢殺しただろ?」

ふざけるな。そんな命がラクスの命と釣り合うものか。

「不殺?それで自分の手が汚れないと本気で思ったか?
 お前が生かしておいた相手を嬲り者にして喜ぶ馬鹿共に餌をくれてやっただけだろうが」

そんな奴は僕達の中にはいない。何でそんな謂れ無き中傷を受けなきゃならないんだ。

「黙れ」

それに、大勢殺したのは自分だろう。何でそんな奴に僕達がここまで貶められなきゃならないんだ。

「まあ、根っからのテロリスト野郎に何を言っても無駄だろうけどな」

テロリスト?僕がテロリストだと言ったのかこの男は。だったら今お前がやった事は何だ?
許せない。絶対に許せない。こいつさえいなければラクスもアスランもカガリも
ムウさんもマリューさんも死んだりはしなかった。一体どれだけ僕から奪っていけば気が済む。

「ふざけるなああああああああああ!!」

キラは、ラウ・ル・クルーゼとの戦い以降戦場で封じていた思いを―――殺意を込めて引き金を引く。
だが、シンはそれを相手にせず、最大速度でその場から離脱する。

「追って来いよ。あの電波女の仇を討ちたいならなあ!」
「何処までラクスを侮辱すれば気が済むんだああああ!!!」

挑発であると判っていても、今のキラにそれを無視する事はできなかった。

そして、ストライクフリーダムがデスティニーセカンドを捕捉。
他に誰も無く、何も無い宙域で2人の男の復讐が幕を開ける。

「シン・アスカアアアアアアアアア!!」
「キラ・ヤマトオオオオオオオオオ!!」

ザフト、デュランダル派の決戦宙域から離れた場所で、2人の男はただひたすらに怨念をぶつけ合う。

「何故ラクス殺したああああ!」

ストライクフリーダムの、両手に握られたビームライフルの光が、
デスティニーセカンドの全てを撃ち抜かんとばかりに迫る。

「テメエに被害者ぶる資格なんてあると思ってるのかよ」
直撃を避けるべく、シンは更に機体を加速させる。

そして、攻撃の止んだ一瞬のタイミングに合わせてマスカレイドを投擲。
だが、フリーダムは簡単にそれを弾き返した。

「被害者ぶってるのは君の方だろうが!!」

しかし、弾いた筈のマスカレイドは消え、目の前には両手にマスカレイドを掴んだデスティニーが迫っていた。
そのままコックピットを切り裂かんと振り抜かれた両刃を、
キラもまた両手に展開したビームサーベルで弾き返し、更にはデスティニーに蹴りを入れて吹き飛ばした。
そのまま追撃をかけようとしたが、相手はバーニアを吹かして滅茶苦茶な機動で距離を離し、体勢を立て直した。

「ハッ!流石だな。スーパーコーディネーター様は面の皮の厚さも世界一ってかあ?」

デスティニーはフリーダムの周囲をでたらめに飛び回りながらゴルゴーンを乱射。

「虐殺者の言えた事かああああ!!」

それに対してフリーダムはシールド、ビームサーベルで弾幕の全てを防ぎ切り、
右手にビームサーベルを構え、左手のビームライフルを乱射しながら突撃。

「ああ、お前の言う通りさ。俺は大勢殺したよ。けどなあ!!」

マスカレイドを構え、ゴルゴーンで牽制をしつつ、デスティニーもまた突撃。

「俺は自分が人殺しだっていう事実から目を背けはしない!!」

あれだけ殺しておいてまだ自分達をキレイな何かだと信じ込む男を、その偽善を必ず叩き潰す。

「だったら、その罪を償って消えればいいだろう!!」

右腕のゴルゴーンが、打ち貫かれる。

「それはお前を殺してからだ!!」

左腕のビームライフルを切り裂く。

刃が、弾丸が、互いの機体を食い破らんと放たれるが、どちらの攻撃も直撃には至らない。
精々が肩アーマー部分等の戦闘に影響の無い部分を掠る程度。

機体性能、パイロットの技量、どちらも互角に見えた戦いではあったが、その天秤は傾きつつあった。

「クッ、どうなってやがる!!」

デスティニーの攻撃は受け止められ、流され、かわされる。
フリーダムの攻撃もまた、防がれ、かわされるが、デスティニーは回避に全力を費やし、
フリーダムは回避のついでに反撃を入れる余裕まで見せ始めた。

これが、全ての人類を超えるべくして生み出されたスーパーコーディネーター
たるキラ・ヤマトの力。人知を超える学習能力がもたらす圧倒的速度の能力進化。

「お前は!!お前だけはああああああ!!」

キラはシンの存在そのものが許せない。
敗者の分際で、自分が望んだ物―――愛する人との平穏な暮らしを得て、
世界に広がる戦火を他人事と断じて戦おうとしなかった。
そして、危惧した通りに自分達の敵となり、戦争の均衡状態をたった一人で切り崩し、
更なる混乱を世界に振り撒いた。挙句の果てに、自分に近しい人を次々と死に追いやった。

その原因を作ったのが自分であると省みる事すら、今のキラにはできはしない。
そうして、溜まりに溜まった怒りと憎しみが、今までに無い力をキラに与える。

左腕のゴルゴーンも破壊され、ビームライフルも吹き飛ばされた。
どう動いても敵に攻撃は届かず、敵の攻撃は確実に自分を捉えかけている。

「俺は………こんな事で……俺は……俺はあああああ!!」

自らが敗北に瀕している事を理解した瞬間、彼の心はこれまでにない怒りに支配された。

何故なら、ここには絶対に許せない人間がいる。

家族を、友を、愛する人を、大切な人を

次から次へと自分から奪っていった憎んでも憎みきれない人間が目の前にいる。

「ふざけるなふざけるなふざけるなあああああああああ!!俺はあ!お前も俺も!!」

そして、それよりも更に許せない人間がいる。

それは目の前で奪われ続け、誰も護れず、復讐という大義名分に縋り付き、

自らの罪から目を背け続けながら生にしがみついた自分自身。

「絶対に許すものかあああああああああ!!!」

シンは、デスティニーを縛る枷を解く。

デスティニーセカンドは、その性質上、パイロットを殺してしまわないように、
最大速度、ブーストの連続使用に制限がかけられていた。
とは言え、その制限のかかった状態でもパイロットには相当な負担がかかる。
故に、現状のシンが耐え切れるギリギリの性能を引き出すように設定されていたのだ。

しかし、シンはその封印を不要と切り捨てる。ただ、勝利するために。

「うううあああああああああ!!!」

背部の両翼、全身の放熱フィン、バーニア、全てがその枷を解き、
唸りを上げ、けたたましい音量の警告音がコックピットに鳴り響く。

そして、その動きは非常識に過ぎる物だった。
前後左右、不規則に方向転換をしながら、速度に緩急を付けつつフリーダムに食らい付かんと迫る。
その動きは地を破砕せんと迫る稲妻のようだった。

「計算が……間に合わない?!」

対エルメス用装備、真実の目がエラーメッセージと共に沈黙した。
それは、エルメスによるブーストで移動する機体ですら捕捉可能な最新型のレーダーシステムである。
しかし、捉えた映像と現実の動きの誤差を埋めつつ、機体の操縦もしなければならないため、
1人で扱いこなせるような人間はそれこそ数える程度しかいない。
だが、そのシステムすら、デスティニーの出鱈目過ぎて、早すぎる動きに対応が間に合わなくなり、キラは目を失った。

「クソッ!!」

故に、キラは防御に全力を傾ける。ビームシールドを展開し、
ランダムな機動で動き回り、デスティニーの動きから逃げ続ける。

そう、確かに相手は速い。だが、それだけなのだ。
その速さを持て余し、こちらを捉えきれずに出鱈目な攻撃を続けている。
その上、あんな機動から生まれるGに耐え切れる人間などいる筈も無いのだ。

故に、あと数分。いや、1分でも凌げれば勝利は確定する。

だが

そんな方法で勝って何になるというのか。負けを認めて敵に勝ち逃げをさせるような物だ。

故に、キラは挑む。

「お前は……お前だけはこの手で殺す!!!
 機械が駄目ってんなら自分で計算すりゃいいんだろう!!
 計算機能停止速度算出監視機能のみ起動相対速度距離算出機動速度限界予測開始……」

ヒトという種が行える限界を超える領域。
キラ・ヤマトという人間の夢と業によって生み出された存在だからこそ、
簡単に手を伸ばす事のできる場所。そう、何時だって彼は常人ならば越える事の
叶わぬ壁を至極簡単に乗り越えた。

そして、デスティニーがフリーダムを完全に捉えようとした瞬間

「機動予測………完了」

またも、彼は壁を越えた。突き出された刃と打ち合う事はせず、
向かってくる勢いに合わせて何も握らない拳を突き出し、完璧なタイミングでカウンターを決めた。
デスティニーが吹き飛ぶ。
だが、敵の追撃よりも先に、シンは自分の機体を敵のそれに向かって突っ込ませる。
流石にそこまで無茶をしてくるとは予想していなかった
キラに、それを避ける事は叶わなかった。
だが、急激過ぎる制動、軌道転換はシンの肉体に深刻なダメージを与えていた。
機体の枷を解いた時点で崩壊を始めた肉体は、既に生きている方がおかしいレベルの段階にまで来ていた。

最初に煩かったアラームの音が無くなり、視界が紅く染まり、正常な部分が矢継ぎ早に失われていった。
そして、再び敵に捉えられ、吹き飛ばされ、それも判らずに更に向かって機体を突っ込ませた。

目、耳、口、鼻から血を垂れ流し、死んでも離すまいと決めていた指から力が抜けていく。
思考能力も殆ど消え失せ、残っているのは殺意のみ。

だが、手から最後の力が抜けようとした瞬間、シンはそれを見た。

包み込むように、支えるように、シンの両手の甲に添えられる手。

怒りと憎しみに呑まれ、全てを失った後でも、その温もりだけは忘れはしなかった。

「ああ……心配はいらない。俺は……大丈夫だから」

だからこそ彼女達の前で無様な姿を晒す事など絶対にできはしない。

そして、体勢を立て直したデスティニーは、同じく体勢を立て直したフリーダムと向き合った。

「これで……最後だ」
「全力で来るんだね。その上で叩き潰さなければ意味が無いんだから」

両機の構えは同じ。残された武装が共に同じであるが故に。

デスティニーはマスカレイドを連結し、フリーダムはビームサーベルを連結させた。

「「ううううおおおおおおおおおおおお!!!」」

全ての感情を込めて、2人は叫ぶ。

怒り、憎しみ、執念、奪われたモノへの悲哀。

2機は同時に飛び出した。

全てを裂くデスティニーの最終兵装グラム。それに真正面から対抗する事の叶う武器は存在しない。
故に、それを振らせた時点でキラの敗北は確定する。

だが、どんな強力な武器であっても

「当たらなければ意味は無いんだ!!!」

キラは、刃ではなくそれを握る腕を狙って空いていた左手を突き出させた。
そして、目論見通りに振り抜くより先に拳をぶつけ、グラムを握る右手を弾いた。

勝利を確信し、引き絞られた右手に握られたビームサーベルをコックピットに叩き付けようとした
瞬間、フリーダムの右手が吹き飛んだ。

「え……何が……?」

有り得ない。グラムが弾かれ、手から抜け落ちた時点でデスティニーは全ての 武装を失った筈。
なのに、何故自分の機体の右手が吹き飛ばされている?

それは、一瞬の困惑だった。だが、死線を分けるに十分な一瞬。

右手を失ったまま動きを止めたフリーダムのコックピットに、
グラムを弾かれ、無手になったデスティニーの右手が添えられ、報いの炎が放たれた。

シンが使った手はどうしようも無く無謀な物だった。
マスカレイド、そしてグラムのエネルギー供給口は、オミットされたパルマフィオキーナの
発射口を利用して作られたという事実を利用し、グラムを弾かれてもエネルギー供給を止めず、
行き場を失ったエネルギーを放出させたのだ。

「………ははは……ざまあ……みやがれ。ガハッ……う……ぐああ……」

安堵すると同時に、身体が痛みを思い出し、血を吐き出す。
ディスプレイを見れば、またもアラームが鳴り響いているようだった。
限界を超えた機動、そして最後にやった無茶がたたったのか、 エンジン部に異常が発生している。
このまま放置すれば、機体毎吹き飛んでしまうという状況だった。

「それも……いいか」

目的は果たし、生きる意味などもう存在しない。
なら、消え果てるのも悪くは無い選択肢だ。

だが、そこで彼は思い出した。この機体にかけられた願い、
この機体を自分に与えてくれた馬鹿の願い。

それは、今消え行こうとしているデスティニーに、最強となって欲しいという
子供じみた願いを自分に託した馬鹿な女との約束。

「そうだよな……アイツは約束を……果たしたんだ。なら……俺も……」

自分は与えられた力によってその願いを果たした。
なら、自分にはこの力を与えてくれた者の願いを果たす義務がある。

シンは最後の力を振り絞り、エンジン部のセーフティーシャッターを起動させた上で、
デスティニーの動力を完全に停止させる。

「……ああ、俺はこれでやっと……」

約束を果たせた その誇りと喜びを与えてくれた友に感謝し、彼は意識を手放した。

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