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_LP ◆sgE4vlyyqE氏_「因縁の終わり」06

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:45:16

暗闇に堕ちて行く意識の中、シンは見た。

ずっと会いたかった大切な人達、護れなかった人達。

もう少しで手の届きそうな場所にいる彼らは必死に何かを訴えていた。

声は聞こえない。だが、近付けば近付く程、それは強くなる。

そして、結局彼らの声を聞けず、触れる事もできず、シンの意識は彼らから遠ざかって行った。

目を覚ましたシンが最初に見た物は、天井の照明だった。

身体を起こそうとするが、中々思うように行かない。
必死に足掻いて、何とか上半身を起こす。
周囲を見渡して、自分が集中治療室らしき場所にいるという事を認識した辺りで、1人の人間がそこへ訪れた。

「ああ、やはり目を覚ましましたか。流石ですね」

研究者だった。だが、何時も以上に白衣はヨレヨレで、目の下に盛大な隈を作って、
その上でやけにテンションの高そうな表情をしている。徹夜仕事後といった感じだろうか。

「あれから何日経った?」
「ざっと一週間って所です」
それほど驚きはしなかった。聞きはしたが、そんなに気にしている訳でもない。
「本当に、よくもまああれだけ派手に壊した物ですね。自分自身も、デスティニーセカンドも。
 流石の私でも3日徹夜して3時間寝てまた3日徹夜なんて真似は辛いですよ?」
「そこまで自分の作った機体が可愛いのかよ、あんたは」
シンは思わず苦笑した。

「当然じゃないですか。我が子も同然のあの機体をエンジン起動しただけで即座にバラバラになるなんて
 状況のままでほっとける訳無いでしょう!?
 ああ!何で貴方はそんなに重体なんですか!?そうで無いなら殴って殴って蹴たぐりまわして
 あの子を傷物にした責任をこの場で取らせるのに!!」
その姿を見て、シンは彼女が羨ましいと、そう感じた。
それだけの想いを抱ける相手がいる事が。

「別に責任取って死ねって言うならそれでも構わないけどな」
だから、皮肉の1つも言いたくなってしまった。
「要りません。第一そんな事したら私が捕まるじゃないですか。
でも、貴方と言う人は命を粗末にし過ぎです。ほんと、よく生き延びましたね」
「死人に嫌われてるだけだよ。俺の顔なんざ見たくないんだろ。誰も彼もな」
何処までもネガティブなシンに、研究者は肩を落として溜息を付いた。
「死人に嫌われてる?そりゃ逆でしょう。でなければ貴方はもう死んでます」
「は?」

そして、研究者はシンが救助された経緯の説明を始めた。

「貴方がストライクフリーダム連れて思いっきり戦場から離れた後、かなりあっさり勝負は決まったんですよ。
 まあ、そりゃそうですよね。ラクス・クラインが死んで、最大戦力たるキラ・ヤマトのストライクフリーダムは
 私怨で貴方を追った。そんな状況で英雄頼りのプラント軍が戦える訳も有りません」
さもありなん。自分を庇護する者がいなければ戦えないような者達ならそうなるだろう。
「で、問題はここからです。消息不明の貴方を探す為に捜索隊が派遣されたんですけど、
 手がかりが最後に貴方とフリーダムを見た親衛隊のデータのみ。
 しかも最初に向かった方向しか判らないからどうしようも無いって状況だったんです。
 でも、捜索隊の1人が声を聞いたんです」
「声?」
「複数の女の声だったと聞きました。右とか左とか、普通なら幻聴か何かと思うんでしょうけど、
 貴方が見つからない事で自棄になってたその兵士は声に従ったんです。
 で、見事貴方を見つけた と。まあそんな所です」

その話を聞き終えた時、シンの瞳から流し尽くした筈の涙が溢れ出した。

「シン……?」
「畜生畜生畜生ッ!ああ、そうだよ。そんなの判ってたさ!!
 俺なんかに会いたくないんだろうとかどうとか言って、俺は皆の言葉から目を逸らしたんだ!」

声は聞こえなかった。だが、口の動きから読み取る事は出来た。

『まだこっちに来ちゃ駄目!』

『生きて……』

『お前にはまだ早い』

『命は大切にしたまえ』

『辛いかも知れないけど、もう少し頑張りなさい』

他にも大勢いたし、言い方は違っていた。

けど、想いは同じだった。

彼らは皆、シンに訴えていたのだ。

 
  ” 生 き ろ ” と 。

あの時、敗北に呑まれそうになった時に、ルナマリアとステラが自分を護ってくれたのは
断じて復讐の手助けの為などではない。ただ、彼女達は

「決まってるんだ。同じ状況だったら俺もそうするだろうさ!!俺だって皆に生きていて欲しかったんだ!!」

好きな人に、大切な人に死んで欲しいなんて思う人間がいる筈が無い。
今までずっと目を逸らし、忘れようとしていた本当の悔恨。
怒りと憎しみの対象が消えた事で、逃げ場を失った想いが溢れ出し、どうにもならなかった。

「でも、貴方は幸運じゃないですか」
「何がだよ!?俺にはもう何も残っちゃいないんだぞ!?
 大切な人1人護れなかった癖に自分は護られたなんて無様な男の何処が幸運だって言うんだよ?!」
「だって、普通死人の想いなんて知る事出来ませんよ。
 まあ……貴方の救出された経緯が無ければ貴方自身の願望か、妄想か何かで片付けられる事ですけど」

それだけ言うと、研究者は気まずそうに集中治療室を後にした。
シンは呆然としながらその後姿を見守っていたが、暫くするとその瞳には再び強い意思が生まれていた。

最後の戦いでボロボロになった身体のリハビリを終えると同時に、シンはデュランダル派から離れる事を決意した。

対外的には、シン・アスカという人間は意識を失ったまま今も眠り続けているという事になっている。

そして基地のゲートの前で、彼は研究者と出くわした。

「ああ、あんたか。世話になったな」

「いえ、こちらこそ。ずっとバタバタしてた所為でお礼を言い損ねていました。
 
 ありがとう、シン・アスカ。貴方がいたから私の夢は叶いました。 
 
 それが一瞬の煌きであったとしても、最強という言葉を私の子に与える事が出来たのは貴方のおかげです」

「礼を言うのは俺の方だ。あんたがいなけりゃ俺は今頃何処かで野垂れ死んでただろうからな」

どちらからともなく差し出された手を握り合う。

「じゃあな。今度は人に合わせて機体を作れよ」
「そちらこそ、命は粗末にしない事です」

そして、友に別れを告げ、シンは歩き出した。

結局、失ったものだらけで残った物はこの身一つ。

けれど、大切な人達の想い、願い、そして思い出は確かに残っている。

だから、生きていこうと思う。何時か、自分の人生が終わる日まで全力で。

また、大切な人達に出会えるその日まで。

The End

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