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_LP ◆sgE4vlyyqE氏_「最後の欠片」

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:41:48

討とうとした故郷におめおめとやって来て
家族に泣き言を言った。一緒に来たルナに俺はどう映っただろう?
少なくとも俺からすればこれ以上無い程に惨めだ。
だが、それでも運命とやらは俺を貶め足りないらしい。
家族の墓の前で立ち尽くしていた俺の前に現れたのは裏切り者と仇。
怨んでも怨み切れない連中が目の前に揃っている。

だが、俺は所詮敗者だ。これ以上無い形で負けた今、
戦う気も無ければ何かをしようとする気も無い。
敗者に許されるのは退場、もしくは勝者の作る世界を下から見上げる事だけだ。

故に、立ち尽くす。話を聞く気も無ければ恨み言を言う気も無い。

そう、思い込もうとしていた。

だが、奴は何と言った?
吹き飛ばれてもまた植えるだと?
無くなっても代わりがあればそれでいいと言うのか?

「ふざけるな……」
「え?」
「吹き飛ばされても植え直すだ?要は代わりさえあれば
失われた物はどうでもいいって訳か。ふざけるなあっ!!
家族に代わる人間がいるか?目の前で救えなかった子の代わりなんているのかよ!」
置き去りにされていた怒りが目を覚ます。
「違う!キラが言いたい事はそんなことじゃない!!
戦争で大切な人を失ったのはお前だけじゃないだろう!
もう憎しみに囚われるのは辞めるんだシン!」
裏切り者が喚いている。ああ、そういえばアイツはいつもそういう奴だった。
理屈も何も無く、自分の知り合いの擁護を続けた挙句の果てに俺達を裏切って立ちはだかった……
「知った事かよ。要はこう言いたいんだろ?俺達を憎むな、許せって。
何を馬鹿な事言ってやがる。俺はそんな聖人君子になんざなりたくもないね」
表情が歪む。何時か、同じような事があったな。
ああ、あの時場をとりなしてくれたのはレイだった。
だけどもうレイはいない。
「シン、どうして判らないの?アスランさん達は……」
悲しそうに、責めるように、裏切り者と道を共にしたかつての仲間が俺を見ている。
「判らないさ。判りたくも無いね。何で俺から何もかも
奪っていった連中の事を理解してやる必要があるってんだ」
家族を奪われた。仲間を奪われた。守ると誓った少女を奪われた。
自分に願いを託した友を奪われた。道を示してくれた人も、示された理想を奪われた。
無力を嘆き、力を得て、糠喜びをして更なる無力を思い知らされる。
そんな事を繰り返してきただけだった。

「あんた達は強い。望めば何でもできるんだろうな。
だけどな……俺は絶対にお前達の自由にはならない。俺は死んでもお前達を認めない」
それでも、魂までは渡さない。まだ、この手に残っている物はある。

「シン……お前は……」
哀れんだような視線が突き刺さってくる。
口にしないでも判る。つまりは、

”どうして判ってくれないんだろう”

と言いたいのだろう。それを理解した瞬間、殴りかかりそうになったが、
その寸前に俺の手を掴んだヤツがいた。

「もういいよ……もういいから。行こう」
ルナだった。凄い力で俺の手を引っ張っていく。
離してくれ と言おうと思っていたらルナは動きを止めた。
そして、あいつ等の方を一瞥すると

「さよなら。二度と会わない事を祈ってるわ」

訣別の言葉を口にして、また俺を引っ張って行った。

「おい、もう大丈夫だから離せよ」
流石にずっと引っ張られ続けるのは恥ずかしい。

「本当に?」
「本当だってば」
まだ渋った様子だったが、近くに連中がいない事を確認すると
ようやく離してくれた。

「ったく、凄い力で掴んでくれたなあ。思いっきり跡が残ってるじゃないか」
「そのぐらいやらなきゃ止まらなかった癖に」

負けた後、やっと彼女と正面から向き合って話ができた。
アルザッヘル戦の後は色々有り過ぎてまともに話す機会も無かった事もあり、
話したい事はお互いにあったのだ。

「………その、ゴメン………俺、ルナの事を……」
「ううん、悪いのは私の方。あんな状況で割り込んだら殺されても文句なんて言えないもの」

俺は目の前の強敵に集中し過ぎていたためか、状況がさっぱり
判っていなかった。あの時、既にレイは破れ、メサイアに主力部隊が突入され、
続出する裏切り者もあってか、勝負は既に決していたらしい。
レジェンドはフリーダムに敗れた後、オーブ軍によって残骸も残らない程に破壊されたそうだ。

「あのまま戦ってたらシンが殺されるような……そんな気がして、
そう思ったら居ても立ってもいられなくなって………」

確かにそうだろう。あのまま戦い続けていたとしたら、
最悪ジャスティスとフリーダムを纏めて相手にする羽目になっていたかも知れない。
いや、それ以上に酷い状況もあり得ただろう。

「いいよ、別にルナは悪くない。俺に力が足りなかったってだけの話さ」
そう、単にそれだけだ。他に何があるというのか。

「そんな事無い!シンはずっと頑張ってた!誰にも負けないぐらい戦って、
傷付いて……なのに……こんなのって……こんなのって無いよ……」
もう、言葉にもならない嗚咽の声しか出ない。
アカデミーの頃からずっと一緒だった。攻撃的で独善的な部分もあった。
力に対する貪欲な部分は見ていて恐怖を覚えた事もあった。
だが、それでも力の無い人達を守りたいという思いは本物だった。
仲間を守ろうとする思いも本物だった。彼がいなければ自分も、
他のミネルバのクルーもとっくの昔に死んでいた。
彼によって救われた人がどれだけいるかなんて判らない。

なのに、何故報われない。何故彼の思いは踏み躙られる。
何故自分は彼を助ける事ができない。何故ここまで自分は無力なのか。

許しを請うように、嘆くように咽び泣く少女のその姿を見て、思う。
”守りたい”と。
誓った事は何一つ守れなかった自分に、残された、
辛うじてこの手から零さずに済んだ最後の断片。
そんな彼女が悲しむ姿は見たくない。
だから、何もかも零し続けた頼りない手で彼女を抱き締めた。

「もういいから、泣くなよ」
「……なさい……ごめんなさい……」

ああ、そうか。彼女は俺と同じなんだ。
何よりも自分の無力が悲しくて、辛くて、それをどうにもできない
自分が嫌で堪らない。

だが、それは違うと伝えなければならない。

「ありがとう」
「……え?」
やっと顔を上げてくれた。

「ルナのおかげで俺は助かったんだ」
これは、嘘偽り無い本心だ。
「嘘……冗談言わないでよ。私、何もしてない。
シンに助けられてばかりで、シンの為になる事なんて何もできなかった……」
「ルナは生きていてくれた。今、こうして目の前にいてくれている。
この手で触れる事ができる。そのおかげで俺は救われたんだ」
「あ……ああ……」
だから、今度こそ約束する。
「今度こそ守らせてくれ。もう大切な人を失うのは嫌なんだ」
この願いだけは絶対に守る。この手から零した全てに誓う。
「うう……うあああああああ!」
だが、更に泣かせてしまった。先行き不安だ……

「本当に怒りっぽいんだから……話しても無駄だって判ってるのに」
「う……そりゃそうだけど……でも、腹が立ったんだからしょうがないだろ」
やはり、性格というのはそうそう変わらない物で、
すぐカッとなる俺の欠点はそう簡単には直りそうも無いらしい。

「あ、ヤバイ」
「どうしたの?」
「愚痴とか謝る事ばっかり考えてたから父さん達にルナを紹介するの忘れてた……」
畜生、それもこれも全てあいつ等の所為だ。
「うわ、信じらんない。何その話」
睨まれてる。滅茶苦茶睨まれてる。よし、俺も男だ。さっさと失態は取り返そう。

「じゃあ……もう一回行くか」
「またあの連中と会ったらどうすんのよ」
「無視する。全力で」
「できるの?」
「できるさ。もし、駄目でもルナが何とかしてくれるだろ?」
俺一人で駄目でも、彼女が隣にいればどうにかなる。
「判ったわよ……だから今度はちゃんと紹介してよ?シンの家族の事」
「OK。よし、そうと決まれば行こう」

今度は俺が彼女の手を引っ張って走り出す。
胸を張って、今度こそ家族に伝えよう。
自分は大丈夫だと、生きる意味も、守るべき物もあるから頑張っていけると。

−Fin−

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