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Last-modified: 2009-01-31 (土) 19:59:11
 

コードギアスSEED
第7話 狂気の胎動

 
 

「……アークエンジェルは、補給作業を完了。反転し、敵戦艦に攻撃を迎撃するとのことです。姫様」

 

 バルトフェルドの言葉を聞いたラクスは頷くと、受話器を持ちアークエンジェルに連絡を行なう。

 

「ラクス・クラインです。敵に対する攻撃より、私は接触を図ろうと思いますわ」

 

 そのラクスの言葉にスザクはラクスのほうを見る。
 部屋内に迎えに行ったとき、ラクスは暗い部屋からでてきた。
 その様子はどこか違っていた。表情は虚ろであり、かなり疲れた顔をしていた。

 

「……はい、それは重々承知しています。ですが、私達は同じ人間なのです。
 話をして通じない相手ではないと思います。どうか……チャンスだけでも」

 

 ラクスの言葉に、どうやらマリューはその話を受けたようだ。
 アークエンジェルは回頭し、連合軍の戦艦のほうを向く。
 一定距離を保ち、こちらにプレッシャーをかけていた連合軍の戦艦もまた、アークエンジェルの覚悟がわかったのだろう。
 接近し、その姿を現すこととなる。

 

「あ、あれは!?」

 

 スザクはその戦艦を見て驚く。
 それは『黒いアークエンジェル』……

 

「同型艦だね。同じ連合軍が作ったというのなら、ありえない話じゃないけど」

 

 ロイドは落ち着いて分析する。
 同型艦、ということはアークエンジェルの武装と同じであるともいえる。
 主砲の陽電子砲……見たことはないが、かなりの破壊力を持つという。それさえも持っているとなると厄介な相手であることは確かだ。
 連合艦から通信が入る。女の声だ。

 

『……私は地球連合軍《ドミニオン》艦長、ナタル・バジルールである。
 貴艦アークエンジェルには、戦場からの逃亡・任務の妨害などで参謀本部への出頭命令が出ている。
 直ちにこの命令に従ってもらいたい』

 

 ラクスは知らないが、ナタルはアークエンジェルの元副艦長であり、その実直な性格で幾度と無くマリューと対立してきた。
 だが、それは任務であって、決して仲が悪いわけではない。
 マリューもナタルもそれはわかっていた。
 時として、ナタルの冷静な采配が、窮地を救うことも幾度と無くあったわけだから……

 

『……こちらはアークエンジェル、マリュー・ラミアスです。久しぶりね、ナタル』

 

 アラスカ本部にての防衛任務についたマリューと違い、ナタルはアラスカ本部に到着後に転属命令が出され、二番艦であるドミニオン艦長に就任することになる。
 それは、ある1人の人間の意見でもあった。

 

『お久しぶりです、ラミアス艦長…。このような形でお会いすることになるとは思いませんでした』
『えぇ……そうね』
『お願いします!武装解除し我々と供に本部に来て下さい。助力ながら私も弁護させていただきます』

 

 ナタルは自分でも驚くほど感情的になっているように感じた。
 おかしな話だ。
 アークエンジェルの搭乗員であったときは、そこまで一緒にいようとは思わなかったというのに……

 

『ごめんなさい、ナタル。私は連合軍の体質、構造、理念…そのものに疑念を抱いているの。
 私だけじゃないわ。連合に街を焼かれたオーブの人たちも一緒よ』

 

 クサナギに乗るカガリもそのやりとりを眺めている。

 

『……おっしゃりたいことはわかります。ですが!軍というのは…』
『いいの、ナタル……本当にありがとう』

 

 ナタルの優しさを感じてマリューは礼を告げる。
 だが、ナタルはそれでも諦めたくない。

 

『……このドミニオンにはアークエンジェルの武装と同程度の力があります。
 そして私は、かつてそこにいた。あなたの癖や指揮を知っている。
 これでも戦うというのですか?』
『……それでも、自由と正義が正しく行なわれるために、私達は私達の道を行く』

 

 ナタルは、良く悪くも相変わらずだなと感じた。
 そのナタルの背後では戦場では場違いともいえるスーツを着こんだ男がクスクスと笑い始める。

 

「アハハハ! 艦長さん、話はもうおしまいですよ。
 さっさとあの目障りな《不沈艦》アークエンジェルを仕留めちゃってくださいよ。
 こっちの兵士も戦いたくてうずうずしているのですから」

 

 ナタルは横目でその男――連合軍に資金提供を行なう軍需産業体の理事であり、反コーディネイターの政治団体《ブルーコスモス》の盟主でもあるムルタ・アズラエルを見る。
 ナタルは仕方が無く戦闘開始命令を出そうとした。

 

『なりません!!』

 

 その言葉に、マリューとナタルは発せられたエターナルのほうを見る。
 エターナルにて立ち上がり声を荒げるラクス。

 

『貴方達は、かつて一緒に戦場を渡り合った戦友、お友達なのでしょう?
 なぜ、戦う必要があるのですか?それが、軍隊としての立場だからでしょうか!?ザフト、連合…そんな立場は必要ないはずです。
 あなたは、あなた……何の縛りも無い1人の人間のはずです。自分の気持ちに逆らってまで、大切な人を撃つ必要がどこにあるのですか!?』

 

 MS内で待機しているキラとアスランは、出撃の合図を待ちながらラクスの言葉を聞いていた。
 彼女は、あくまでも戦うことを拒み続けるのか……
 そして、自分達のように、友人で戦う悲劇を避けようというのか……
 アスランは拳を握り締める。
 やはり…彼女は戦場に出る人間ではなかった。
 このような優しさはかえって混乱を与えるだけだと……

 

『『……』』

 

 マリューとナタルの間に沈黙が流れる。
 友人……戦場の無い場所で会うのならばきっとそうなるだろう。
 だがここは戦場であり、お互い立場もある。
 ならば、それに答えるのもまた友人としての責務。

 

 ……ナタル……
 ラミアス艦長……

 

『フリーダム、ジャスティス発進』
『第一戦闘配置、各MS部隊出撃、後続艦隊からも順次MSを出撃』

 

 ラクスはその声に、席に崩れ落ちるように座る。
 やはり……ダメなのだろうか?
 戦いは止められないのだろうか?
 悲劇を繰り返すことだけは避けなくてはいけない。
 これ以上、誰にも辛い思いをさせたくはない。
 そのためなら……

 

『そのためなら……あなたにはこれがあるじゃない?』

 

 一瞬、ラクスの目に赤い光が灯る。ラクスは頭を横に振る。
 自分はギアスを使ってはいない。なぜ勝手に?
 これも、《彼女》……私の心に宿り始めた《黒き心》、の影響なのだろうか。

 

「ラクス?大丈夫かい?」
「は、はい…スザク、私は大丈夫です。スザクもアークエンジェルを援護に……
 出来ることなら、敵の戦力を無力化し、命だけは助けるように……」
「わかった……」

 

 ラクスの傍にいたかったスザクだが、この場は出撃するしかない。
 同盟関係を結んでいる艦が戦っているというのに、自分たちだけ放ってみているわけには行かないのだから。
 スザクがブリッジからでて、本日二度目の出撃の用意に取り掛かる。
 ラクスは、頭に鳴り響く声を振り切るように頭を振る。

 

「エターナル前進。敵戦艦に接近し、注意をこちらに向けさせてください!」
「了解」

 

 エターナルが前進することで、ドミニオンはアークエンジェルだけを攻撃することが出来なくなる。
 ドミニオンから出撃した連合軍の強化人間《ブーステッドマン》の搭乗するカラミティ、フォビドゥン、レイダーは、キラのフリーダム、アスランのジャスティスと戦闘しており、ドミニオンの援護には回れない状況となっている。
 ラクスは、親しいものが戦闘をし、傷つき合う姿は見たくはなかった。
 よってそうさせないために、自らが楯となろうとしたのである。

 

「……なんなんですか?あのザフトの艦は……こちらに体当たりでもするんですかねぇ?」

 

 目の前に近づいてくるエターナルに、アズラエルは不機嫌に吐き捨てる。
 ナタルとしてもアークエンジェルを抑えなくてはいけないという気持ちから、エターナルを相手にする暇は無い。
 だが、ブーステッドマンが抑えられている以上は……

 

「……ローエングリン、スタンバイ! 目標、正面、エターナル」
「アークエンジェルのためにとっておきたいところですが、仕方が無いでしょう。
 平和はザフトがいなければ可能だっていうころを、身をもって示してもらいましょう? あのお姫様に」

 

 アズラエルの言葉など耳を塞いでしまいたいところだが……
 ナタルはローエングリンを発射態勢にして、エネルギーの収束を開始しようとした。
 だが、そこでレーダーに映る機体を把握する。

 

「まさか!?」

 

 それは、ローエングリーンを狙うランスロット・トラファルガーの姿。
 スザクはこの状態では敵は主砲を撃つであろうことを予測していたのである。
 これではローエングリンは使えない。
 ストライクダガーでは、高い運動性を誇るランスロットを止めることはできないだろう。

 

「……このままではエターナルに突撃される。ドミニオンを後退させ、距離をとれ」
「なるほど……アークエンジェルだけが脅威というわけではないようですね。いい参考になりました。
 今は艦を撤退させ、再び距離を置いて追撃をかけましょう。次の攻撃可能ポイントを提示しておいて欲しいな、艦長さん」

 

 アズラエルは、エターナルのラクス・クラインが思い切りのいい存在であることを認識した。
 世間知らずの夢想家であることに変わりは無いが。

 

「……了解しました」

 

 ナタルは撤退信号をあげて、戦闘宙域から撤退する。
 マリューは、ドミニオンを眺めながらラクスの言葉を思い出す。
 キラとアスランは、友人であり…そして分かり合えた。
 自分たちにもそれが可能なのだうか。
 だが相手は連合の艦長、それも軍人としての意識が強いナタルだ。

 

 ▽ ▲ ▽

 

「……ドミニオン、撤退します」

 

 エターナル、いや…ラクスの勇猛果敢、下手をすれば落とされていたかもしれないその行動に、ロイドとセシルは内心かなり焦った。
 それにしても……腑に落ちないことがある。

 

「……お姫様を信頼しきっているのかな? 躊躇いも迷いも無いよね、ここの兵士クンたち」
「そういわれれば……」

 

 ロイドの言葉にセシルは小声で答える。
 ラクスはそんな2人のやり取りなど気がつくことなく、頭痛に悩まされていた。

 
 

『やっぱり……あなたの言っていることは夢』

 

『誰も救えない、誰も守れない』

 

『誰も…誰も……』

 

『あなたができる事は、力を使用すること……』

 
 

 ラクスはこの後、再び体調不良の訴えで自分の部屋に戻ってしまう。
 スザクは、そんな彼女を気遣いながら部屋まで見送った。

 

「ごめんなさい、スザク……迷惑ばかりかけてしまって、本当に……」
「いいんです。ラクスはラクスの最初の目的を守って頑張ればいい……」
「ありがとう、スザク……あなたがいてくれなければ、私はどうなっていたか……」

 

 ラクスにとって、スザクと会話をしているときだけはあの声を聞かずにすむ。頭痛の和らぐのだ。
 どうせならずっと話をして欲しいと思う。
 部屋のベットの上に倒れるラクス。
 暗い部屋の中……耳を塞いで聞こえてくる声を無視する。

 

「ラクス!ラクスはどこだ!?」

 

 それはアスランと彼を止めにきたカガリ・ユラ・アスハである。

 

「アスラン!落ち着け、お前が怒鳴ったところでどうこうなる問題じゃない!」
「そうはいかない、カガリ。あんなことがいつまでも通りはしない。
 俺達は平和を求めるために戦いをしてはいるが、全員にそれがわかりはしない。
 時には暴力も許容されるということを、ラクスにはわかってもらわないといけない!」

 

 我侭な子供の躾に親からの暴力というのは許容される。それと同じことだとアスランは思っていた。
 ラクスのいっているのは甘やかしなのだと。
 アスランはスザクの到着を待たずに、カガリとともにラクスの部屋にと到着する。

 

「ラクス!アスランだ、はいるぞ?」
「お、おい!アスラン!」

 

 カガリの制止を振り切りアスランは部屋の中に入る。
 そこは真っ暗だ。

 

「ラクス?いないのか?」

 

 アスランは部屋の中にはいり、あたりを見回す。
 カガリは扉で待ったまま、電気をつけようとスイッチを探す。

 

「……どなたですか?」

 

 カガリはその声がすぐ隣から聞こえたのに驚いて、思わず身体を後ろに下げる。

 

「……ラクス?」

 

 ラクスは、壁に寄りかかりながら立っておりうつむいている。
 その表情はアスランが知っているラクスとは程遠い。
 疲労も重なっているのだろうか……
 アスランは彼女が精神的に参っているのだろうと判断した。

 

「やっぱり、君には軍隊を指揮するなんて無理だ。
 すぐにバルトフェルド隊長に連絡をして、君を……」

 

 アスランはラクスに近寄り、彼女の状態を確認しようとした。
 ラクスはそんなアスランの手を払いのけ、顔をあげる。
 虚ろな表情の中、その左の瞳には……赤い光があった……

 

「ら、ラクス?その目は…一体?」

 

 アスランの目の中に、赤き光が吸い込まれていく。

 

「あ……あぁ……」

 

 突然声をあげ、その場にしゃがみこむアスラン。
 カガリはなにがあったのかとアスランに駆け寄る。

 

「お、おい!お前……アスランに一体何を!?」

 

 カガリもまた、ラクスのほうを見る。
 そこでカガリは寒気を感じる。

 

 ラクスは微笑んでいた。
 それは《平和の歌姫》とは程遠い……《悪魔》の笑顔。
 そしてその左の瞳には赤き光が照らされている。

 

 ▽ ▲ ▽

 

「ラクス!!」

 

 スザクが兵士を連れて部屋にとやってくる。
 丁度、アスランとカガリが部屋から出て行こうとしていたときだった。

 

「2人とも、用件は済んだのかい?」

 

 こちらに乗船したときのアスランの憤慨振りから、トラブルでも起こったのではないかと思ったスザクだったが、どうやらそういうことはなかったようだ。
 スザクはラクスを見つめ、『大丈夫?』と問いかけると、ラクスは優しい笑みで頷く。
 スザクはラクスから視線をそらし、廊下を歩いていくアスランとカガリのほうを見る。
 淡々と歩いてく2人……
 スザクは彼らがラクスに何を言いに来たかは見当がついたが、よく納得してくれたなと思ってもいた。

 

「……でも、今は味方の中でいざこざを起こしている場合でもないから、わかってもらうしかない」

 

 スザクは、そう結論づけて、ラクスには暫くの間再び休ませることにした。

 
 

 廊下を歩くアスランとカガリ……
 その目は大きく開かれ、《ギアス》の効力を示す赤い光が輝いていた……

 
 

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