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seed restructures_03_イザーク・ジュール

Last-modified: 2016-01-09 (土) 22:00:33

イザーク・ジュールは困惑していた。
ザフトが接収したレクイエムを修理し、使用したのである。
この一撃によって、地球連合の宇宙艦隊は月のアルザッヘル基地と共に消滅した。

 

それが撃たれるまでは、それの存在自体を否定しようとは思わなかった。
抑止力になるのならば必要だとさえ考えていた。

 
 

しかし、それは放たれた。

 
 

その時点で、それはもう抑止力などではなかった。
相手に交戦の必要性を自覚させるだけの存在でしかなかった。

 

なぜザフトはレクイエムを発射したのだろうか。
行為の主体はザフトである。
だがその行動には評議会ひいては議長の指示があるはずだ。

 

もう評議会、特に議長を信じることはできなかった。

 

今回のことだけではない。
この戦争の発端となったアーモリーワンの襲撃では警備体制が明らかに不十分だった。

 
 

さらに、アスランのこともある。

 

奴が裏切ったのにはきっと理由があるに違いない。
一度復隊した以上、よほどのことがない限り奴がそんな行動をとるとは思えない。

 

仮にも俺より優れていたのだからな、奴は。

 
 

今度の戦闘は防衛戦である。
防衛目標は、レクイエムおよびその1次中継コロニーであるステーション1。
敵軍はオーブ・地球連合艦隊。

 

しかしあちらには、歌姫の騎士団がいる。
すなわち、アークエンジェル・クサナギ・エターナル。
前大戦時において重要な役割を果たした三隻である。

 

中でもエターナルには当然、正真正銘のラクス・クラインがいる。
我が軍の士気は低くならざるを得ない。

 
 

もうすでに戦闘は開始されていた。
我がジュール隊もそろそろ戦闘に参加しなければならない。
すべては隊長である俺に委ねられていた。

 

(どうして議長は強攻策に出る。
そんな必要が一体どこにある。
そして俺は今、どうすればいい)

 

「あ〜い〜つ〜ら〜〜〜!!!」
 俺は苛立っていた。ディアッカを除く隊員は皆、俺の指示を待っていた。
「でも連絡無いのは当たり前だぜ。俺たちはザフト軍なんだからな。やっぱり」
「わかっている!」
今ディアッカに怒りをぶつけても何も解決しない。怒りは増すばかりだ。
「ともかく発進だ。とっとと船を出せ」

 

その間にも、両軍の被害は増していく。
なかでも、ジャスティスとフリーダムは一瞬で数機を戦闘不能にしていく。

 

「まだ怒ってんのかよ」
いちいち五月蠅いディアッカだ。
「怒ってなどいなぁい!!!!!」
こんな頭では最善の方法など思いつくはずがない。
「ヘソ曲げんなよいつまでも」
「わかってる!」
こいつの言うとおりだ。冷静になる必要がある。俺のとるべき行動は何だ!
「俺はもう、スタンバイするから。隊長、頼むぜ」
そう言ってディアッカは、ブリッジを出た。
そう、奴の言うとおり俺は隊長だ。最良の判断をする義務がある。

 
 

そう考えながらモニターを見ていると、見覚えのない奇妙なモビルスーツが画面に映った。
紫色で無骨なシルエット。
スカートのような腰周りと大きな脚部、そしてモノアイ。

 

「何だ。あの機体は!」
「わかりません」

 

それは明らかにザフト系列の機体であった。
しかし、その様子はすぐに覆い隠されてしまった。
ディアッカからの通信によって。

 

「そんなことよりどうするんだよ、隊長。俺たちは?」
「はあ?」
そんなことだと!
「一応出て行って瞬殺されてくる?」

 

この言葉で、俺は切れた。

 

「馬鹿者!そんな根性なら最初から出るな!」

 

「いや、だってな……」
こんな事ばかりしていてもどうにもならない。
「俺が出る」
後ろを向き、ブリッジの出口に向かう。
「はあ?」
「隊長!」
艦長が俺のほうを向く。エレベーターに乗りこみながら、俺は指示を出した。

 

「ヴォルテールは後ろから支援だけしていろ」
艦長はあっけにとられたままだ。
「いいな!前に出るなよ、死ぬぞ!」
俺は扉を閉めながらそう言い放った。

 

「は、はい」
艦長の返事がかろうじて聞こえた。

 
 

もうザフトにはいられないだろう。
これが、ジュール隊隊長としての最後の出撃になるはずだ。

 

格納庫ではすでにグフが用意されていた。
急いでコックピットに座りカタパルトまで移動する。

 

「こちら、シエラ・アンタレス・ワン。発進する」
もう母艦に戻ることはできない。稼動限界までに戦闘は終わるだろうか?

 

発進するとすぐ、ディアッカから通信が入る。
「けどどうするんだよ、イザーク?お前、まさか」
「今、俺が殴りたいのは、アイツだけだぁ!!!」
俺はすぐにそう言った。隊員が周りにいないだけで緊張は減るようだ。

 

「はあ?」
「よくもまたおめおめと、あんなところに!」

 

 ステーション1は混戦になっていた。
これなら、すこしくらい不審な行動をとってもわからないだろう。

 

戦場には、ラクス・クラインの声がこだましていた。
これでは我が軍の士気は上がりようがない。

 

彼女に言われなくとも皆がわかっていたのだ。

 

レクイエムなど不要だということが。
すでにプラントのデスティニープランは受け入れられつつあったということが。

 
 

 火線は二箇所に集中していた。ジャスティスとエターナルだ。
アークエンジェルはミネルヴァと戦闘している。
MSが近づこうものなら両者の弾幕に巻き込まれるのは必至だ。
フリーダムは高速で移動し続けているため、火線が集中できていないようだ。
ザクやグフが次々と撃墜されていく。

 

 ようやく近づいたとき、多数のミサイルがジャスティスに向かっていた。
俺はビームハンドガンで、それを打ち落とし、同時に通信を入れる。

 

「きさまーっ!またこんなところで何をやっている!」
相手から返答が来る。
「イザーク?お前こそ何やってるんだ。」
「何をって、コイツを落とそうとしてんじゃんかよ」
そんなことはわかってるだろうが、ディアッカ。しかし、ほかに言葉があるだろうか?
「……ディアッカ?」
奴が当惑しているのがはっきりとわかる。いい気味だ。

 

「俺が言ってるのはそういうことじゃない」
うまい言葉が見つからない。

 

「もういいだろう、そんなことは。それより早くやることやっちまおうぜ!」
「ディアッカ、貴様!」
「こいつを落とすんだろう」

 

そういって、ディアッカの機体は加速しだした。

 

こういった混沌とした状況のときには、ディアッカは役に立つ。
俺はアスランとともに、ステーション1に向かった。

 

途中、フリーダムが合流した。

 

どうやってあの状況で敵を振り払ってきたのだろう。
ともあれ、エース二機の攻勢が止んでいるのだ。
今、ザフトの被害は最小限にとどまっているはずだ。

 

このうちに少しでも多くの兵が、退いてくれればいいが。

 
 

ステーション1は取り付いてしまえば、意外に脆いものだった。
2体のミーティアによってそれはあっけなく破壊された。
これでレクイエムの脅威は一時的にではあるが、なくなった。

 

しかし、それで戦闘が終わるわけではない。

 

レクイエムの本体が残っている限り、その脅威がなくなることは無い。
中継ステーションは他にもまだ存在しているからだ。

 

もともと、そのつもりで行動を起こしていたらしい。
今度はレクイエム本体に向かう。

 
 

そこへ突如として現れた巨大構築物の中央が、赤く光る。

 

ジェネシスだった。

 

複数のオーブ艦がその光に飲まれた。

 

何てことだ。
議長は再び、愚行を犯した。

 

幸い斜線上に味方はいなかったようだが、退避勧告が遅く、非常に危険な状況だった。
退避勧告を確認すると「メサイア」の「ネオ・ジェネシス」の表示。

 

やはり今のザフトには戻れない。

 

最低限度ネオ・ジェネシスとレクイエムを破壊するまでは。

 
 

ネオ・ジェネシスの発射により、ザフトは盛り返した。
加えて、デスティニーとレジェンドが、エース二機を押さえ込む。
護衛がいなくなり、エターナルへの攻撃は激しくなっていく。

 

「どうすんの、イザーク?」
やつの質問は常に、俺に揺さぶりをかけてくる。

 

「くっ!エターナルを援護する!」
「はあ?」
「ザフトの船だ!あれは!」

 

自分で言った言葉だが、苦しい言い訳だ。

 

しかし、グフとザクで護衛していれば、ザフトは攻撃を緩めるかもしれない。
いや、緩めるのではいい的だ、攻撃してくる数が減ればよいが。
エターナルの火力を考えれば、手出しをしないほうが被害は少なくてすむ。

 

それに、この船にはあの女が乗っている。
あいつさえ、プラントに送ることができれば、この戦闘は終わるかもしれない。
被害を少なくするためには、裏切ってでもエターナルを守るしかない。
こちらに戦力が向けられないようにしなければ。

 
 

「この船を護衛しているのは作戦の一環だから、お前たちは引け」と、
通信を入れようとも思ったが、そんなことを信じられるわけがない。
先ほどから、何機もの機体がエターナルによって行動不能になっている。
俺は相手に傷を与えないよう、船に向けられた弾のみを狙う。
相手を殺さないように戦うのはとても難しいものだ。
だがこんなことも、あの二つが破壊されるまでの辛抱だ。

 

俺の居場所は母上のいるプラントだ。

 
 

アスランたちは何をしているんだ。
さっさとこのくだらない戦闘を終わらせろ。

 

そのとき、アラームが鳴った。ジェネシスだ。
「エターナル!」
俺はためらわず通信を入れる。
「メサイアが撃ってくるぞ、斜線上の連中を下がらせろ!早く!」

 

この通信のおかげかエターナルは無事だった。
この船が沈んだら、どちらがこの戦闘に勝っても戦争は終わらない。

 

責任をとる人物が必要だ。
この戦争も、あの女が雲隠れしたせいで起きたのに違いない!

 

その一方で、メサイアにより近かったザフト艦が数隻犠牲になった。
エマージェンシーから発射までの時間が短すぎる。

 

犠牲をいとわないというよりは、犠牲を作るために撃ったように見えた。
デスティニープランの世界に、兵士は存在しないのだろうか?

 

その後も、苦しい戦闘は続いた。
エターナルを護衛する機体はいつの間にか増えていた。
俺と同じように考えるやつが他にもいたのだ。

 

メサイアが崩壊し、戦闘は終結した。

 

どの機体も被弾していたが、無事生き残ることができた。
俺の母艦は無事だろうか?

 
 

この戦闘でも疑問は残った。

 

何故オーブがメサイアそのものを破壊したのか、俺には理解できなかった。
あそこにはきっと議長がいたはずだ。
この責任はいったい誰がとる?

 

やはり、俺の居場所はこちらではなく、プラントのようだ。

 

残る仕事は、あの女をプラントまで連れて行くことだけ。

 

この戦争も、これで終わりだ。

 
 

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